2012-03-26

【地震のメカニズム】9.岩漿(マグマ)貫入説~プレート説より以前に発表された日本独自の地震学説~

1、【 地震時に生じる地面の起伏形状に着目した「岩漿(マグマ)貫入説」 】
 
これまでは
【地震のメカニズム】5.プレートテクトニクスによる地震動の発生メカニズム
【地震のメカニズム】7.熱移送説~地震は熱エネルギー移動が起こす~
【地震のメカニズム】8.マグマ化説~電磁波による玉突き的熱移送~
を紹介してきました。
 
それぞれの学説を少し整理すると・・・、
「プレートテクトニクス説」はプレートに蓄積された歪エネルギーが開放されて起こる地震
「熱移送説」はマグマの熱膨張エネルギーによる地殻破壊で起こる地震
「マグマ化説」は、マグマが融解するメカニズムを電磁波による電子レンジの原理とし、熱移送説を進化させたもの。
となります。
 
今回は、地震時に生じる地震の起伏現象に着目し、そこから導き出された説である「岩漿(マグマ)貫入説」を紹介します。
 
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石本巳四雄
 
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2、【 戦前から発表されていた「岩漿(マグマ)貫入説」 】
 
この学説は、大正時代に石本巳四雄博士により発表されたもので、地殻下層にあるマグマが地殻内間隔へ急激に貫入する事による衝撃が地震を引き起こすという説です。
 
地震後の調査によって地盤に起伏生じていることが確認されていますが、「押し(隆起)」現象と「引き(沈降)」現象の分布が特徴的な分布となる事に注目しこの論理は組み立てられています。
また、地層には「断層」が出来ます(出来ない場合もある)が、あくまで地震の「結果」であり、「原因」ではないと捉えているのも特徴です。
 
この学説は大正時代に発表された学説ですが、プレート説が輸入されて以降、地震学の解説書から姿を消してしまいましたが、改めてその理論を押さえてみようと思います。
 
新・地震学セミナーからの学び」より引用

(以下引用)
□62 マグマ貫入理論の変遷
「岩漿(マグマ)貫入説」
弾性反撥説の着想が、大地震の測地学的な特徴(断層とか三角点の移動等)に基づいているのに対して、岩漿貫入説は地震初動の押し引き分布からヒントを得たものと云うことができましょう。
この学説はその名の示す通り、地下のある部分に岩漿の溜りがあるという仮定の上に立てられています。岩漿には相当量の水や炭酸ガスその他のガス成分が含まれていますが、温度が低下すると鉱物成分が析出し始めるために余分なガス成分は分離するようになります。
この分離作用がきわめて急激に行われると岩漿溜りの圧力は大幅に増大し、遂にはまわりの岩石の弱いところを破って岩漿を突入(貫入)させることになります。
その結果として突入の方向に押し波が射出され、一方岩漿溜りの内部は圧力が急に減りますから横方向には引き波が現れることが想像されます。こういう立場から震源力の型が説明できるのではないかというのが石本博土の岩漿貫入説です。
従ってこの学説では、地殻変動は岩漿の運動によって二次的に起きる現象と考えられています。地質構造を調べて見ると、ある岩盤の中に別の種類の岩が貫入している実例がありますから岩漿貫入説にも確かに一理あります。
(引用終わり)

 
まとめると・・・
①地殻には岩漿(マグマ)の溜りがある(仮定)
②温度が低下すると鉱物成分が析出
③この分離作用が急激に行われると岩漿(マグマ)溜りの圧力が増大
④岩石の弱いところを破って岩漿(マグマ)が突入(貫入)
⑤突入の方向に押し波、岩漿(マグマ)溜り方向に引き波が現れる

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となります。
このマグマが貫入するときに生み出される衝撃が、地震を引き起こす原因なのです。そして、マグマが貫入する軸方向に押し波が生じ、貫入軸に垂直な方向に引き波が生じる事で、押し波と引き波の境界は円錐形状となる「円錐発震機構」と言えます。
 
 
 
3、【 「押し引き現象」とは?? 】
 
では、「岩漿(マグマ)貫入説」を導き出す入口となった「押し引き現象」について見ていきます。
地震時には最初の動き(初動)が震源から離れる方向に動く「押し(隆起)」と呼ばれる領域と、震源に向かうように動く「引き(沈降)」と呼ばれる領域がほぼ同時に起こっていることが知られています。
実際、阪神大震災や昨年の東北大地震でも見られた現象です(あまり報道されていない)。
→「押し」・・・初動が震源から離れる方向に動く→土地が「隆起」する現象
→「引き」・・・初動が震源かに向かう方向に動く→土地が「沈降」する現象
 
その押し引きの型には「四象限型」「双曲線型」「楕円型」とあり、過去に発生した地震に当てはめると下記の表の様に分類できます。
 

 
表の様に平面的な沈降分布から、阪神地震は「四象限型」、中越地震は「双曲線型」、東北地震は「楕円型」と分類する事ができます。
また地殻断面図から、地下のマグマだまりの爆発的貫入による押し波が、水平方向なら「四象限型」「双曲線型」、垂直方向なら「円や楕円型」となります。
 
東北では陸側が沈降し、震源域が隆起したと発表されましたが、6月に発表された沈降分布図をみると、震源域を中心に楕円上に隆起し、陸側だけでなく太平洋側も沈降しているのが分かります。
(※プレートテクトニクスに近い弾性反発説でも四象限型は断層面の両側に働く2組の偶力によるもの=“ダブルカップリング”現象として説明しているが、双曲線や楕円分布は説明できていない。)
 
以上の事から、押し引き現象の「四象限型」のみならず、「双曲線型」や「楕円型」も説明し得るのが「岩漿(マグマ)貫入説」である!!!という事になります。
 
 
 
4、【 「岩漿(マグマ)貫入説」の課題 】
 
「岩漿(マグマ)貫入説」は地盤調査結果を基にした理論ですが、マグマ貫入の衝撃力が大地震を起こすほどのエネルギーを持っているかは不明です。
そこで「円錐発震機構」の発想を受け継ぎつつ、地震の源を“爆発=化学反応エネルギー”に求めたのが石田博士の「解離水爆発説」です。
 
以前も当ブログにて紹介しました プレートテクトニクス説のウソ⇒『新地震の仕組み』その9~その他の地震学説
次回は、その爆発メカニズムについて、紹介したいと思います。
 
お楽しみに!
 
 
 
■参考
東京帝国大学地震研究所 石本巳四雄
1893-1940 大正-昭和時代前期の地震学者。
明治26年9月17日生まれ。
昭和3年母校東京帝大の教授となり,8年同大地震研究所所長。
土地の傾斜をはかるシリカ傾斜計や加速度地震計などを考案し,地震の原因としてマグマ貫入説をとなえた。
8年学士院賞。
昭和15年2月4日死去。48歳。東京出身。
著作に「科学への道」。
http://www.ailab7.com/ishimoto.html
http://www.ailab7.com/lib_016.html
http://kotobank.jp/word/%E7%9F%B3%E6%9C%AC%E5%B7%B3%E5%9B%9B%E9%9B%84
 
 
 

List    投稿者 minene71 | 2012-03-26 | Posted in D03.地震No Comments » 

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