【地震のメカニズム】14.2011年±4年・・・富士山大噴火?!~富士山噴火の5つの兆候
江戸時代初期、宝永4年(1707)11月の富士山大噴火の様子
画像はこちらからお借りしました。
前回の『【地震のメカニズム】13.2011年±4年・・・富士山大噴火?!~「地震の目」「噴火の目」に出現する地震活動の「3つの山」で地震・噴火時期を予測する!』に続き、今回も琉球大学名誉教授木村政昭氏の近著「富士山大噴火!不気味な5つの兆候」を元に、富士山噴火の前兆と思われる諸現象を見ていきたいと思います。
■富士山大噴火5つの徴候
●兆候①伊豆諸島の噴火と静岡沖地震
周辺の火山活動や地震活動が活発化している。特に、同じフィリピン海プレート上にあり、富士山とは兄弟と行っても良い三宅島、伊豆大島三原山、そして伊東市沖合いの海底火山である手石海丘。
太平洋プレートが東方からフィリピン海プレートを圧縮して、伊豆諸島の火山下のマグマだまりを押し縮める⇒マグマが上昇し火山噴火。その力は東北方向に向かうため、伊豆諸島の火山噴火は南から北へと移行する。
三宅島,大島,富士山の活動と火山群発地震,巨大地震発生の関係を示すモデル。地殻歪みは東から西へ次々と伝播されていく。(画像はこちらからお借りしました。)
その結果、1980年代には、1983年三宅島→1986~87年伊豆大島→1989年手石海丘の順で南から北へ噴火が起きた。そのまま北に進むと富士山。次は富士山噴火が連想されたが、2000年再び三宅島が噴火。
同じフィリピン海プレートにある火山が活発化する中、富士山だけがまだ活動をはじめていない。
連続する三宅島、大島、富士山の「噴火の目」
画像は木村政昭氏のホームページからお借りしました。
●兆候②2000年からの低周波地震の活発化
噴火が近くなるとマグマの動きを反映して富士山周辺の地震活動が活発化する。2000年三宅島大噴火の際、富士山の「低周波地震」が突如活発化。
低周波地震とは、震動がゆっくり長く続く地震。震源近くに液体があると、大きな揺れをもたらすS波は伝わらず、初期微動となるP派だけが地上に伝わり低周波地震となる。つまり、低周波地震の震源近くにマグマだまりがあるということを示唆している。
2000年以降富士山周辺の低周波地震は増減繰り返し2008年後半より増加。回数が増えただけでなく浅くなってきている。通常20~30kmだったのが東北大地震前には10~15kmまで上昇。マグマだまりが上昇している証拠。2010年末現在震源が富士山北東部地下10~20kmに集中している。
●兆候③富士山東北東斜面からの噴気
2003年9月26日、富士山東北東斜面に4箇所の陥没と噴気孔があり、噴気が上がった。噴気は火山から噴出するガスや水蒸気。噴気孔位置は低周波地震が多発した北東部のほぼ真上。
現地調査の結果、数百メートルに渡り大小の穴が点在。硫黄臭はせず、火山性ガスではない。地下のマグマ活動が活発化して地下水を温めているのが原因と思われる。(山梨県は「地中の木材が発酵したのが原因」と発表。)
●兆候④河口湖での発泡現象
1986年の伊豆大島三原山噴火から半年後、河口湖にて発泡現象が目立ちはじめた。泡は北東方向を向いて3列並行し発生。
そして、1987年に続き、2006年にも発泡現象発生。気泡は直線状に並び、その向かう先は富士山。湖底から天然ガスが噴出。
富士山地下のマグマだまりが圧力を受けて縮まり、マグマが上昇し湖底に亀裂ができ、水中にガス成分が噴出したと思われる。
富士山に向かって気泡の列が伸びているのは、マグマの上昇により富士山の山体が膨張し、山頂から放射線状に亀裂が入った可能性を示唆している。
また、(記録が完全でない本栖湖以外の)河口湖、西湖、山中湖、精進湖で水位低下現象が見られる・・・山体下のマグマが上昇し火道から周辺に放射状に圧縮力が働き地表の亀裂が開いたため、湖底の亀裂から湖水が漏れたと思われる。特に河口湖は2008年まで5年間で1m水位低下。但し、2010年からはいずれも上昇に転換。東日本大地震に向かう地下の変動が原因か?
●兆候⑤静岡県東部地震
2000年から富士山周辺で低周波地震が活発化しているが、東日本大地震直後から富士山付近で通常の地震活動が劇的に増加。大地震前は月10回越すことはなかったが、3月に2112回、4月に766回と増加。
規模も大きくなり、大地震4日後にはM6.4の静岡県東部地震が発生。
2011年3月15日の静岡県東部地震は富士山の南側斜面3合目付近の地下十数キロを震源として発生した直下型地震(M6.4)。これ以後、地下20キロ付近で微少地震が頻発。
1960年以降に富士山及び周辺域で起きた地震の震源分布を見ると、富士山の火口を中心として地下に放射状に亀裂ができていることがわかる。
富士山の“噴火の目”付近ではコンパスが狂い、地磁気の異常が認められる。これらの事実を見ると、富士山のマグマがかなり浅いところまで上昇し、富士山の山体が全体的に持ち上がってきていると考えられる。
これと関連してか、富士山の“目”内の地震活動は1983年以降、富士山火口方向へ移動中。
画像は木村政昭氏のホームページからお借りしました。
●その他の予兆
・地熱上昇:荷揚げ業者の話:1972年頃まで山頂に地熱を感じたが以降なくなり、山頂に冬雪がつきはじめたが、1986年の伊豆大島噴火以来、冬雪がついていない。
マグマ上昇によって山体が温まってきた?
・2001年青木ヶ原の天然記念物の風穴内の氷柱が融解。これまでは夏でも溶けることはなかった。2010年7月には氷筍(氷の柱)の発達は更に悪化。9年前の3分の1の高さ。
・2007年には水分を多く含む「スプラッシュ雪崩」が発生。規模が大きく、地熱上昇により発生した可能性否定できない。
■富士山噴火時の降灰シミュレーション
最後に、富士山が噴火した場合、どの程度降灰するのかのシミュレーションを紹介します。
過去最大規模の火砕噴火である1707年(宝永4年)の噴火(冒頭の画像)での降下火砕物の累積厚さのシミュレーションです。
画像はこちらからお借りしました。
宝永噴火では、降灰が1週間程度続いたようです。
今回は割愛しますが、引用元の「富士山大噴火!不気味な5つの予兆」では、噴火に備えどのような対策が有効かも載っていますので、時間のある方は是非ご一読を。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2012/05/1075.html/trackback