2012-02-06

【地震のメカニズム】6.地球内部の物質循環に着目したプレートダイナミクス(大陸動力学)理論



前回の記事(12月4日)からずいぶん間があいてしまいましたが、【地震のメカニズム】を考えるシリーズを再開したいとおもいます。

前回の記事は、「プレートテクトニクスによる地震動の発生メカニズム」というタイトルで、プレートテクトニクス(大陸移動)理論の紹介をしました。
この理論は現在の地震学の基礎となっており、理論そのものも塗り重ねられ、新たな調査結果や仮説を組み合わせながらプレートが移動するメカニズムの解明がすすんでいます。
本日紹介する記事は、 巽 好幸氏は発表した 「地球内部のダイナミクスと環境大変動」
という論文で、地球内部のメカニズムを解明しようとするものです。
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内容的にはプレートテクトニクス(プレートの水平移動)とプルームテクトニクス(地球の中心から表面に向かう垂直移動)を組み合わせ、熱の移動に着目した最新の論文です。
添付してある手書きの図解と見比べながら本文を読んでみてください。

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●地球の内部構造
そもそも地球内部はどうなっているのか?その構造はゆでたまごに例えられる。「地殻」が殻、「マントル」が白身、「核(コア)」が黄身だ。コアは液体の「外核」と固体の「内核」に分かれる。
地殻とマントルの最上部を含む厚さ約100kmは、プレートとよばれる硬い岩板となっている。地球表面は数十枚のプレートで覆われており、プレートは海嶺と呼ばれる海底山脈で生まれ、移動し、海溝から地球内部へ沈みこんでいる。では沈み込んだプレートはどうなるのか?

●プレートの沈み込み
地球内部からマグマが湧き上がる海嶺でうまれたプレートは地球表面を移動する間に冷える。そして冷えて重くなることで、やがて海溝から地球内部に沈みこむ。
そもそも地球内部は、深度が深くなるほど温度と圧力が高くなる。それに伴い、深度670km付近でマントル物質は、主にペロブスカイトという密度の高い結晶構造を持った鉱物となる。
この深度でマントルは「上部マントル」と「下部マントル」に分けられる。ただし沈み込んだプレートは、すぐにはペロブスカイトに変化できない。そのため深度670km付近で滞留する。やがてペロブスカイトに変化した後に、マントルの底まで沈降すると考えられている。

●大陸地殻と反大陸の生成過程
このプレートの沈み込みにより、地球内部へ持ち込まれる水が注目されている。
一部の水はプレートの沈み込みとともにマントル遷移層へもちこまれ、鉱物に取り込まれている可能性があります。
その場合マントル物質の粘性が下がり、マントル対流にも大きな影響を与えていると考えられる。またプレートの沈み込みにより地球内部に持ち込まれた水は、マントルを溶けやすくしてマグマを作る。
そのマグマが地表へ上昇することで、大陸地殻と反大陸が生まれることがわかってきた。
そもそも海と陸では地殻の厚さや岩石の種類が異なる。海洋地殻は厚さ約5~7kmで玄武岩などの重い岩石から成る。一方大陸地殻は約30~60kmの厚さで、平均した化学組成は軽い安山岩である。
太陽系の天体の中で、大陸地殻が見つかっているのは地球だけで、これは地球の進化を理解する鍵を握っている。
大陸地殻は、もともと玄武岩質であった島弧地殻が、再融解することで安山岩質中部地殻(大陸地殻)をつくり、その融け残り(反大陸)をマントルへはきだすことで、島弧地殻は安山岩質の大陸地殻へと進化していく。

(図は地球の中心で何が起こっているのか 巽好幸 幻冬舎新書 よりお借りしました)
このようにして海洋地殻と堆積物の脱水分解残り滓、それに反大陸(融け残り)は地球の深部へと持ち込まれていく。

●地球内部の物質循環
マントルの底には沈み込んだプレートや反大陸が堆積していると考えられている。そこでは物質はどのような状態になっているのか。深度670km以深ではマントル物質はペロブスカイト構造に転移する。
さらにある実験により、深度2700kmに相当する温度・圧力からペロブスカイトはより密度の高い結晶構造に変化することを発見、これをポスト・ペロブスカイトと呼ぶ。
コアーマントルの境界の物質の結晶構造を再現できたことは、マントル対流を考える上で大きな意味をもつ。マントルを対流させる熱源には2種類ある。1つはマントル物質に含まれる放射性元素の崩壊による熱。もうひとつはコアからマントルへ伝わる熱だ。従来はマントル対流を引き起こす熱源のほとんどは放射性元素の崩壊によるもので、コアからの熱の影響はとても小さいと考えられてきた。
ところが最近の研究では、コアからの熱流量はかなり大きいことがわかってきた。マントルから地表へ伝わる熱流量の1/4はコアからの熱が起源だと考えられはじめている。
またコアには鉄・ニッケルのほか外核には軽元素が約10%程度含まれている。水素・炭素・酸素・ケイ素・硫黄などと推測され、これら軽元素がマントルへ供給されマントル対流を活発化させている可能性もある。
またマントルに沈み込んだプレートや反大陸などの重い物質に軽元素が加わることでホットプルームの浮力を生み出しているとも考えられる。
こうしてコア付近にまで沈み込んだプレートや堆積物は、ホットプルームによって再び地表にリサイクルされ、地球内部の物質循環を生み出している。

以上が論文の骨格です。
プレートテクトニクス・プルームテクトニクスの理論に、地球内部の物質循環(軽元素や大陸の融け残り滓)を組み合わせることで、プレート移動(水平移動)とプルーム移動(垂直移動)にダイナミクス(動力)をもたらしています。

こういった大陸移動のメカニズムに加えて、今回注目したのは地球規模での熱の移動・伝播とそれにともなう地殻の変化です。

地球では深部へ行くほど温度は上がっていく。地球の真ん中「核」と呼ばれる部分は5,000~6,000度の高温といわれている。そこから約6,400kmの距離にある地表の平均温度は15度。この温度差は中心から表面に向かって段階的に低下していく。
このような温度の変化は地球断面すべてで均質ではなく、温度の高いところや低いところがあることが「地震波トモグラフィー」という最新の技術を使って発見されています。
温度の変化は地球内部の構成物(地殻やマントルなど)の物性も変化させ、構成物の膨張・収縮、比重の変化も引き起こす。
このように地球内部では、45億年の間、温度の偏在や構成物の組成の違いが複雑に組み合わさりながら全体のバランスをとってきたのではないでしょうか。
一方でこの論文で扱っている熱の移動やマントルの対流は、数億年スケールの変化に着目していますが、地震の予知・周期の予測を考える場合、もう少し短期のスケールで地球内部の動きを観測する必要があります。
この論文で扱った熱の移動が非常に大きな幹線の移動だとすれば、そこから四方八方に枝道となる熱移動の経路があるはずで、その移動経路上で地殻に変化が現れ、地震に繋がるのではないか?という推測がたてられます。
従来の地震予測の手法であるプレート移動の観測に代えて、熱の移動や熱の分布・偏在を観測することで地震予測を行おうという試みが次回紹介する「熱移送説」です。

List    投稿者 chai-nom | 2012-02-06 | Posted in D03.地震No Comments » 

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