2012-11-19

地震予知の現状(7)・・・「科学だけで地震を予知していいのか?」

『地震予知の科学(東京大学出版会)』を元に、地震研究の世界で行われている“地震予知の現在”を押さえるシリーズの第7回です。
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第1回 地震予知の現状(1)・・・地震予知とは?  
第2回 地震予知の現状(2)・・・これまで何が行われてきたのか(地震予知研究の歴史)  
第3回 地震予知の現状(3)・・・日本、海外の地震予知の歴史について
第4回 地震予知の現状(4)・・・この10年で何が明らかになってきたのか~「アスペリティ」は「水」がつくる?
第5回 地震予知の現状(5)・・・地震観測網・シミュレーションモデル ~地震予知の進歩と壁~
第6回 地震予知の現状(6)・・・地震予知のリスクマネージメントと東海地震説
についてを考察してきました。
第7回は、「科学だけで地震を予知していいのか?」 について考察していきます。
科学的な観測技術が進化している日本の地震予知ですが、それらを駆使した地震予知は可能なのでしょうか?
皆さんがご存じの「緊急地震速報」「津波予測システム」はまさに観測技術を駆使したシステムで、急な判断には無くてはならない予知情報です。
しかし、これは超短期な予知情報であり心の準備をする暇などなく、瞬時の判断(数秒程度)を期待するものであり、本来期待したいのは防災に役立つ予知なのです。
ようやく、沈み込むプレート境界では「かなりの程度は予知が可能」となった様ですが、内陸部で変化の少ない断層などについては観測データが取りにくい為、「評価が困難=予知は困難」というのが現状の様です。
要するに、現在の科学技術でも中長期予知も予測可能ですが、全ての場所には適応出来ず完全では無いと言うことになります。
以下、
「そもそも地震予知は可能か?」
「緊急地震速報のしくみと、津波予報のしくみはどの様なシステムなのか?」
を見ていきたいと思います。
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■「そもそも地震予知は可能か」

ここで「そもそも地震予知は可能なのか?」という聞いを改めて考えてみよう。(中略)では、今、この問いにどのように答えられるだろうか。
その場所で発生する最大級の地震(日本の内陸ではマグニチュード七程度以上、沈み込むプレート境界ではマグニチュード七・五から八程度以上)についての長期予知は原理的に可能で、前述のようにすでに長期評価として実施されている。ただし、内陸で発生する地震のうち、地表に食い違い(断層)などの地形変化を残さない規模の地震については、長期予知すら困難である。
「いつ起きてもおかしくない」状態を予測する中期予知も、少なくともプレート境界の地震については原理的に可能と言えるとにろまできており、実現に必要な観測データやンミュレーシヨン手法の研究が進められている。一方、前兆現象に基づく直前予知は、前兆すべりの発生が理論的に期待されるが、それが観測可能な規模の場合に限り可能と言えるというのが、現時長での答えである。
(中略)
このように「そもそも地震予知は可能か」という問いには、プレート境界の大地震の長中期予知や内陸活断層での長期予知等、予知の対象や期間を限定すれば、「かなりの程度は可能である」と答えられるところまできた。
地震が発生する場所と規模に関しては、ほぽ実用的な予測はできている。
その場所でその規模の地震が「いつ」発生するか?という問いに関しては、すでに実現している長期予知の場合で地震発生間隔の数割程度の誤差がある。
過去の地震発生の履歴をより正確に求めることで誤差を少しでも減らすことと同時に、中期予知によって精度の向上を図ることが課題である。直前予知については、前兆すべりの観測精度高めることと、前兆すべり以外で地震発生直前であることを示す現象を見出し、そのための観測手法を開発することが当面の課題である。

■科学を防災に用いるということ① 緊急地震速報のしくみ
記憶に新しい3.11東日本大震災では、本震の後も余震が頻繁に起こり落ち着かない毎日が続きました。そんな時、緊急地震速報を結構頼りにされたかと思います。
携帯電話やPCへも地震速報が入る様に設定をされた方は多いのでは?
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【緊急地震速報のしくみ】
東海地渓予知の枠組みである大震法が作られてから三O年近く、幸いなことに、大地震に結びつくような前兆すべりは検出されていない。しかし、一度も経験をしていないが故に、科学者のいう地震予知にいたるシナリオにいま一つ説得力がないと感じる読者も多いと思う。極端な意見では、難しい地震予知よりも手っ取り早く耐震工学のみにお金をかければよいという議論すらある。
しかし、「地震予知が無理なら、あとはいきなり強いゆれに襲われるのを待つだけ」と諦める前に、地震学を用いればまだやれることは残っている。それが二〇〇六年八月から、気象庁が先行的な配信を開始した「緊急地震速報」である。
読者の皆さんは地震のゆれに遭遇したとき、最初にガタガタとした縦ゆれを感じ、しばらくしてゆさゆきと大きくゆれる横ゆれを感じた経験があるのではないだろうか。
これは地殻(固体) 中を伝わる地震波には、伝わる速度が相対的に速いP波(六O㎞/秒前後)と遅いS波(三・五㎞/秒前後)の二つがあるからである。
実際に地震災害を引き起こすのは、ほとんどがS波やそのあとに続く表面波であるが、最初に届くP波を解析することによって、これからどのような振幅のS波が来るかを知ることができる。
これを瞬時に伝わる電気信号、つまり通信ネットワークによってゆれの予測情報として伝えれば、S波が伝播してきて強くゆれる前に、これから強くゆれることをある場所に知らせることが可能である。
(以下略)

■科学を防災に用いるということ② 防災技術として確立された津波予報システム
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【防災技術として確立された津波予報システム】
(中略)
津波は、地援の断層運動に伴う海底の地殻変動ゃ、海底あるいは海岸付近での大規桜な土砂崩れ、阪石の衝突等により、水塊が急激かつ大規模に移動することで発生する、波長の長い(数十キロメートル以上)海水の波動現象である。日本に住んでいると、津波予報はあたりまえのサービスと思われがちであるが、実は、地震観測から津波予報を行い、かっそれが直ちに全国民に伝達されるような総合的なシステムを持っているのは、世界の中で日本とハワイぐらいである。
科学技術的手法ばかりではなく、全国に張り巡らせた地震観測網の保守や、昼夜ニ交替で監視する職員の配置、法整備など、ふだんは見えてこない部分にも努力が払われている。それでようやく「あたりまえ」の状況が形作られているのである。これまで日本沿岸において繰り返されてきた度重なる津波災害の犠牲の上に、日本町津波予報ンステムは構築されてきたのである。
(以下略)
日本では気象庁が、初期の海面変動さえ与地震とそれに伴う津波の発生を二四時間体制で休みなく監視する業務を担っておよびマグいヲ匂。いずれかの観測点で地震波が検出された後、ニチュlドが推定される。震源が海底下の浅い領域で、複数の観測点のテlタによって震源、かつマグニチュードが五五を超、えると推定されると、あらかじめ約一O万通りの数値ンミュレ|ションを実行して作っておいた津波データベlスから最も条件に近い結果を検索し、津波発生可能性を評価する。もし津波が沿岸に到達する結果
が得られれば、該当する地域に津波予報を発表する。これが現在の津波予報のしくみである。その後、潮位計で観測された実際の津波の高さをもとに、津波予報の変更(注意報、警報の切り替え)や解除などを行う。
陸地近くで発生した津波は、地震波より伝播速度が遅いとはいえ、わずかな時間で海岸を襲う。
一九八士一年の日本海中部地震に伴う津波は七分ほとで、また一九九三年の北海道南西沖地震に伴う津波は、奥尻島に三分ほどで到達した。そうすると、いきおい津波予報を発表するまでの時聞を短縮することが期待される。現在は、地震波の検出から津波予報の発表まで、最速二分(地震の震源と観測網の位置関係による)を目標として作業が行われている。津波予報を業務的に開始した当初(一九五〇年代) は、予報を発表するまで二〇分以上の時間がかかっていた。
(以下略)

日本では、地震や津波予報はあたりまえのサービスと思われがちですが、相当な数の観測網が張り巡らされ、直ちに全国民に伝達されるシステムを持った世界でも有数な国だと言えます。
しかし科学的な解明と、それに対応する社会はそれに対応出来るでしょうか?
次回からは「地震予知のこれから」について考察したいと思います。

List    投稿者 minene71 | 2012-11-19 | Posted in D03.地震No Comments » 

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