【地震のメカニズム】7.熱移送説~地震は熱エネルギー移動が起こす~
画像はこちらからお借りしました。
これまでに紹介してきたプレートテクトニクス理論(以下プレート説)は、地震の発生メカニズムを一定解明しているように思われますが、この理論に基づく地震予測は成功していません。ずっと観測強化地域に指定されていた南関東地域が、2004年に観測強化地域から外されたり、さほど警戒されていなかった地域で大地震(阪神淡路大震災1995年、東北地方太平洋沖大地震2011年)が起きたことが象徴的です。
「そもそもプレート活動が地震発生の原因なのか?」と疑問を掲げ、プレート説とは異なる仮説も多く提起されています。
今回は、その仮説の一つで、埼玉大学名誉教授である角田史雄氏が提唱している「熱移送説」を紹介します。
熱移送説は、地球内部での熱エネルギーの移動が地殻や岩盤にもたらす影響に着目しています。
地球内部の温度分布は、マントルトモグラフィという技術で解析すると、蟻の巣状に高温部と低温部が入り組んでおり、マントル層全体での対流(プレート移動の原動力)が極めて起きにくい状態であることが分かりました。
また、解析された地球内部の温度分布状況と地震の発生地域を見ると、地殻(厚さ約50km)の下が、高温~中温になっている地域と地震が多発している地域が重なっており、地球内部からの熱の移動と地震発生に関連があることが考えられます。
これらの解析結果と地質調査を初めとする種々の調査結果をベースに組み立てられた熱移送説の主要論点は以下の通りです。
マントルトモグラフィーで地球内部の温度が分かるようになった。その結果、従来のプレートテクトニクスで説明されていたようなマントルの対流を示す温度分布にはなっていないことが分かった。
プレートテクトニクスは正しいと思われているが、マントルの対流で地殻が動いている、地殻の移動が地震の原因であるという説は非常に疑わしい。
日本はプレートが沈み込んで、それが地震の原因になっていると言われているが、マントルトモグラフィーでは、日本の地下は高温部になっており冷やされて沈み込んでいるという説明とは矛盾する。
マントルトモグラフィーと地震の多発地帯を比較してみると、地震の多発地帯は高温部に集中しており、地震の原因は地殻の移動と考えるよりも、地下が高温だからだと考えた方が良い。
地下が高温になっている原因は、高温のマントルの固まりが上昇してくるスーパープリュームであり、これが原因でマグマ(溶岩)が発生上昇し、この熱で地殻が膨張し、変形から破壊にいたり、地震が起こる。
地下の温度分布はアリの巣状になっており、熱を伝えるルートがあると考えられる。このルートに沿って熱が移動するので、地震が起こりやすい場所は概ね決まっている。
また、高温のマグマ(溶岩)が上昇することが地震の原因なので、地震は火山活動と連動して起こる。この地震と火山が連動して発生する課程をVE課程と呼んでいる。
熱移送の方法ははっきりしないが、地下の割れ目で熱を伝えやすい部分があるとも考えられるが、VE課程の速度が非常に速いので、高速で加熱ができる電磁波(特に電子レンジで使われるマイクロ波)が原因であるとも考えられる。(地球型電子レンジ構造)
熱移送のルートと、各地域の地殻の構造特性を理解すれば、地震の予測も可能となる。日本では、熱の通り道が西と東で違い、西はフィリピンから西日本に至るPJルート、東はPJルートからマリアナ海峡で分岐して伊豆諸島、東日本へ至るMJルートで熱が届けられる。
熱移送ルートで送られてきた熱は、地殻の下にあるぶよぶよの玄武岩層を膨張させ、その上に乗っている固くてもろい花崗岩層に変形が加わる。そして、固くてもろい花崗岩層が割れやすい位置で分かれて地塊を形成しており、その地塊の境界面で地震が発生する。
スーパープリューム→マグマ・熱移送→玄武岩層の膨張→花崗岩層の変形破壊という流れが分かると、スーパープリュームの発生や熱の流れ、花崗岩層の地塊の境界面を把握することで地震の予測は可能となる。
熱移送説の論点整理<るいネット>より
【参考】
○「地震の癖」角田史雄著
○プレートテクトニクス説のウソ⇒『新・地震のしくみ』その4~地震発生のメカニズム、『熱移送説』~
○地震の発生メカニズム「熱移送説」の紹介(1)~(21)
熱移送説における地震発生メカニズムの概略は以下のようになります。
地球内部(核)からスーパープリュームを通して熱が移送される
地下でマグマの高温化が発生
岩石が溶けて岩盤内の温度と液体圧が上昇
岩盤の体積膨張→弾性変形・破壊
地震発生
地震の発生メカニズムについて、プレート説と熱移送説を比較してみると、プレート説はプレート活動を主要因としており、熱移送説は熱エネルギーの移動を主要因としています。
プレート説は、ここ40年ほどの間に、地震のメカニズムの定説とされてきましたが、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むことで蓄積される歪みがいつ解放されるのかがわからないため、プレート説に基づく地震予知の目処は全くついていません。
熱移送説は、(外)核における熱の発生メカニズムや、熱移送のメカニズム、各地域の地盤はどのくらいの熱エネルギーで破壊するのかなど、追究課題はまだまだありますが、地球内部から運ばれた熱エネルギーのサイクル収支と地震現象の関係を定量的に把握する事で、地震予知が可能になることも考えられます。
日本では、「地震予知はできないから研究もしない」と、1999年からは地震予知の取り組みすら行わなくなっていますが、地震予知の必要性はますます高まっています。
【参考】
○どうする! 日本の地震予知
熱エネルギーに着目した地震研究は、行き詰まっていた地震予知の突破口となる可能性があり、本腰を入れて取り組んで行く価値は十分にあると考えられます。
また、熱移送説では、熱移送の方法については電磁波の関連を示唆するに留められ、これからの検討課題とされていますが、その熱移送のメカニズムについて提起されている仮説を次回紹介したいと思います。
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