東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か 4~原子力産業の再編:BWRとPWRとは?~
先週の東北地方太平洋沖地震から、1週間が経過しました。
そして、徐々に今回の地震及び津波による原発被害に関して、その実態が明らかにされつつあります。
『事故原発は“欠陥品”? 設計担当ら35年ぶり仰天告白』 2011.03.18
自衛隊に警視庁機動隊、そして東京消防庁の特殊部隊まで巻き込むことになった空前の原発事故は、実は人災である可能性が浮上している。
福島第1の原子炉は米ゼネラル・エレクトリック(GE)が開発した。そのGE元社員のデール・ブライデンボー氏はロイター通信の取材に対し、福島第1と同型の原子炉について35年前に安全面での不安を指摘していたと打ち明けたのだ。
そのうえで同氏は「分析が終わるまで一部の原発は閉鎖されるべきだと思ったが、GE側は応じなかった。そのため、私はGEを辞めた」と、退社した経緯を説明した。
米ニューヨーク・タイムズも、米原子力委員会の専門家が1972年、この原子炉は水素がたまって爆発した場合、放射能を封じる格納容器が損傷しやすいため、「使用を停止すべき」と指摘した、と報じた。
今回、事故を起こしたのは「マーク1」という沸騰水型原子炉の一種で、60年代にGEが開発した。中心の燃料棒を圧力容器、さらにその外側をフラスコ状の格納容器で守っている。格納容器が小さく、設備建設費が安く済むため、計104基の原子炉が稼働している米国では同型の炉が23基も稼働している。米国外にも9基あり、計32基が現在も運転中だが、格納容器が小さいゆえに、水素爆発で損傷するリスクが高いというのだ。
福島第1の原子炉はGEの設計図をもとに、東芝や日立製作所が関わって建設、運転されてきた。設計に携わった東芝の元技術者、小倉志郎氏(69)は16日、外国特派員協会の記者会見で驚きの証言をした。
「(67年に)設計した当時は、津波は前提になかった。日本で事実上、初の原子炉設計だけに知識に乏しく、耐震設計基準についても判断できなかったと思う」
小倉氏は福島第1原発の1、2、3、5、6号機の冷却部分などを設計した。その小倉氏によれば、津波の対応はその後、日本独自の設計で織り込まれるようになった。しかし、推定で最大10メートルとされる今回の大津波より「想定規模ははるかに小さかった」。また、地震の規模についても「マグニチュード(M)8・0以上の地震は起きない、と社内で言われた」とし、M9・0の巨大地震は想定外であったことを明かした。
地震対策は「私の定年が近くなってやっと見直しをしたが、それでも大地震は想定しなかった。責任を感じる」と語っている。
米メディアの報道と設計者の証言をまとめると、もともと事故時の危険が高い米国発の原発が、津波や地震のリスクを十分に考慮せず建設、運転されてきたことになる。前出のブライデンボー氏は今回の事故について、「マーク1型格納容器が、他の原子炉ほど地震や津波の負担に耐えられないことから(事故が)生じた」と分析している。
福島第1原発の1号機が運転を開始したのは71年。40年もの間、周囲を巻き込む深刻な事故を起こさなかったのは奇跡だったともいえる。
ZAKZAKより引用
画像はデイリー ルーツファインダー様よりお借りしました。
今回は、上記のような問題を引き起こす背景となる「原子力産業の再編」について過去の記事を元に見ていきたいと思います。
応援よろしくお願いします。
■原子力産業の再編:国際金融資本家たちによる『原子力市場』の刈り取りが始まってきた
昨今の環境問題といえば地球温暖化といわれる地球温暖化問題が強力に後押しして、発電時にCO2が排出しないという宣伝のもと、各国とも原子力が推進されようとしています。
特に、中国、アジア諸国、イランで原子力発電所の新設ラッシュが計画されています。
原子爆弾の唯一の被爆国で原子力に対するアレルギーの強い日本でさえ、地球温暖化の洗脳で原子力に対する抵抗が薄まり、日本政府は、地球温暖化対策に貢献するものとして、今年3月のエネルギー基本計画の改訂で原子力利用推進を積極的に支援することをうたい、世界の中でも進んで原子力を推進しようとしています。
このような情勢を見越していた(予定通り?)かのように、原子力発電の燃料となるウランの価格が高騰しています
参考:基礎からの原子力 第3回 ウラン資源は寡占状態
一方、原子力産業も、日本のメーカーを中心として原子炉メーカーの再編も進んでいます。
東芝+米ウェスティングハウス(WH)
日立+米ゼネラル・エレクトリック(GE)
三菱重工+仏アレバ
世界の原子力産業は現在、この3グループに集約されてきています。
画像は「ECOマネージメント」より引用させて頂きました
国際金融資本家たちは、「地球温暖化の原因はCO2」という観念支配を世界でほぼ完成させたので、仕上げとして、これから原子力市場で儲ける段階に入ったようです。
それにしてもなぜ、日本のメーカーが中心になって原子力メーカーが再編されてきているのか?
また、なぜ、アジア圏そしてアメリカで原子力発電所の新設ラッシュが大きく計画されているのか?
〔2〕我が国原子力プラントメーカーのこれまでの状況
1980年代以降の長い原子力の冬の時代においても、我が国では原子力の利用・開発を持続し、少ないながらも新規建設が継続されてきたため、我が国のメーカーは設計、製造、建設技術面で優位性を有しており、また、これらを支えるコア部品では強い裾野産業を有しています。このため、米国等のメーカーにおける新型炉開発においても、我が国のメーカーは重要なパートナーとなっています。 我が国メーカーが「世界市場で通用する規模と競争力を持つよう体質を強化すること」(「原子力政策大綱」)が政策上の目標とされています。
エネルギー白書2007年版より引用
しかし、業界再編の前提となるPWRとBWRとは一体どういうものなのでしょうか。
山賀 進のWeb siteより引用
沸騰水型原子力発電所(BWR):BWRではウラン燃料から発生する熱エネルギーによって冷却水が加熱され、約70気圧、約280度の蒸気を原子炉の中で発生させます。BWRは、原子炉で発生した蒸気によって直接タービン・発電機を回転させて発電する方式です。沸騰水で発電するので、「沸騰水型」と呼んでいます。
BWRでは原子炉で発生した蒸気をそのまま発電に利用するため、放射能を帯びた蒸気の取り扱いには細心の注意が必要です。具体的には、蒸気を回収して再び原子炉の中を循環させるだけでなく、関係する設備を全て遮蔽し、放射能が外部に漏れることを防いでいます。
加圧水型原子力発電所(PWR):PWRでは、原子炉容器の中の水(一次冷却材)は沸騰しないように約160気圧に加圧されており、ウラン燃料から発生する熱エネルギーによって約320度の高温の水になります。この高温水を蒸気発生器に送り、蒸気発生器によって二次冷却材の軽水を沸騰させ、最終的に高温・高圧の蒸気としてタービン発電機を回して発電する原子炉です。加圧した水から蒸気発生器でエネルギーを取り出すので、「加圧水型」と呼んでいます。
このように、一次冷却系と二次冷却系を有するPWRでは、放射能を一次冷却系に閉じこめることが出来るので、BWRのように全ての関係する設備を遮蔽する必要はありません。また、一次冷却材の加圧水は熱せられても液体の状態であるため、放射能を含む蒸気として扱うBWRと比べて再循環が容易です。また、蒸気発生器により沸騰した二次冷却水は、基本的に放射能を含んでいないので、外部への放射能漏れを防ぎやすいというメリットを有しています。但し、PWRは一般的に仕組みが複雑となり、保守・改修の手間がかかる上、BWRよりコストを要するというデメリットもあります。
NISAメールマガジンより引用
そんな背景の中、BWR、PWRの技術を有する下記の各メーカー群が鎬を削っているというのが現状です。ちなみに世界でのシェアは、PWRが3/4、BWRが1/4となっており、今回の東芝(BWR)による米ウェスティングハウス(PWR)の破格の買収劇は今後、アジア新興市場及びアメリカ新設市場、そして欧州でのリプレース市場(耐用年数に達した原子炉の建替え)などを睨んでPWRにからむ特許の4割を押さえているWHを各社が争ったということのようです。
■原子力産業の再編③:原子力を巡る利権とは?
原子力に関わる利権として、原子炉製造(メーカー)以外に、同時に資源を巡る争奪戦も発生します。世界的な原子力推進の潮流ができ、10年先を見越してウラン資源の高騰もすでに始まっています。
『温暖化脅威論は原子力利権そのもの』2007/12/04 01:59
何度も何度も書かなくてはならないだろう。
「CO2による地球温暖化脅威論」に込められた恐るべきねらいを。どっから見てもはっきりしているのは、原子力利権だ。
■原子炉は誰がつくっているか?
・東芝(日本)がウェスティン(米)を買収したグループ、日立製作所(日本)とゼネラル・エレクトリック(米)の連合、三菱重工(日本)とアレバ(仏)の連合、の3グループにほぼ独占されている。(エネルギー白書2007より)
・世界中の原子炉のほとんどは、日・米・仏の会社が作っている。■燃料のウランは誰が売っているのか
・世界のウラン鉱山は、Cameco(カナダ)、AREVA NC(フランス)、ERA(オーストラリア)等の主要8社で、世界の天然ウラン生産の約8割 (前出白書より)
・さらに、南アフリカの「リオ・チント・チンク」という会社もある。会社と言うよりも、ロスチャイルド財閥系のウラン・シンジケートのようなものらしい。
・原子炉にもウランにも名前の出ているアレバ(仏)は、実はドイツの巨大企業ジーメンスが34%の株を保有している。このジーメンス社の大株主もリオ・チント・チンクだという。 (広瀬隆氏より)■ウラン資源を巡る利権
・ウランは足りないのだ。単純に埋蔵量と需要を比較すると、50年ほどで枯渇する。(330万÷6.7万)。危険きわまりない再処理やプルサーマルを行っても、需要が増え続ければ、いつまで保つか?
・10年後にも需給逼迫が懸念され、世界的なウラン獲得競争は更に激化していきます。このような状況を受け、近年、ウラン価格が急騰しています。その一方で、需要の拡大や価格の上昇による投資環境の改善を背景に、世界的な天然ウラン増産に向けた動きも見られます。
(前出白書)
・なんと、7年間で7倍近くに高騰している。原油よりもひどい。この濡れ手に泡のボロもうけに、世界最大のウラン埋蔵国が指をくわえているワケにはいかない、ということで、オーストラリアはめでたく京都議定書を批准した。原発でCO2を減らすことなど、実は当の本人も考えていないだろう。今後、ウランが足りなくなって原発が稼働できなくなるのを見越しているのである。おそらくは、今後オーストラリアでは、ラッド首相率いる国産勢力と、多国籍勢力とのウランをめぐる争いが激化するだろう。
「反戦な家づくり」さんのブログから引用させていただきました。
これらの情報をもとに、少し整理してみます。
◆石油利権構造の変遷:米英勢力(旧セブン・シスターズ)>反米勢力(新セブン・シスターズ)
↓
◆「地球温暖化脅威論」のプロパガンダ:マスコミによる共認形成(支配)
↓
◆CO2削減の世界共認:京都議定書の締結
↓
◆原子力発電推進の共認形成:温暖化と石油資源枯渇が前提条件
↓
◆新市場の形成と拡大:その成長に乗じた投資市場
①原子炉の建設市場
②ウラン資源市場
③CO2排出権の売買市場
というように新たな市場がいくつも生み出され、金融資本家がその新たな利権構造を目当てに投資していく。つまり、「地球温暖化問題」とは、実はあくまでも旧利権から新利権へと乗り換えていくためのストーリーであると見ることができると思います。
次回は、上記のような背景を踏まえて、日本における発電所設備の全体状況、そして冒頭の紹介記事にあった福島第1原発の実態について迫ってみたいと思います。
読んでいただいてありがとうございました。
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佐橋傳一郎 | 2014.06.01 8:12
BWRが米国の東部から中央部にかけての範囲でのみ、稼働しているのを、青山繁晴氏がTVで言われていたのをもとに、GoogleでGEのプラントがどのように分布しているか検索したところ驚くべきことに、地震の発生が多い西海岸にはまったくBWRが存在しないことを目の当たりにしました。この視点からの原発に関する議論が公になされないことに元再処理プラント設計に関与した個人として、この国に暗澹たる気持ちを持たされました。何とかならないものでしょうか。