2007-03-07

ダイオキシンって危険なの?(1)






daiokisin.png
画像は農業環境技術研究所さんからお借りしました


『ダイオキシンは危険なのか?』と問われれば、大半の人が危険だと答えるでしょう。

しかし、『どのくらい危険なのか?』という問いには、答えに詰まるという人が多いようです。



実は、危険だという認識が先行し分かったような気がしているだけで、

何がどのように危険なのかはあまり知られていないようです。 🙁



確かに、危険ではあるが

ダイオキシンは自然界に当たり前のように存在しているです。



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【火を使えば殆どダイオキシンが発生します】

ダイオキシンは炭素、水素、酸素、塩素というどこにでもある元素の化合物であり、

これらの四元素を含むものを数百℃の熱にさらせば必ず発生します。



つまり、山火事が起こればダイオキシンができるし、少し前の日本では釜戸や囲炉裏、風呂焚きによってもダイオキシンを発生させていたのです。





【ダイオキシンの重さの単位】










表1.重さの単位
記 号
読 み
意 味
μg
マイクログラム
百万分の1g(0.000001g)
ng
ナノグラム
十億分の1g(0.000000001g)
pg
ピコグラム
一兆分の1g(0.0000000001g)


ダイオキシンの重さでは、日頃あまり耳にしない単位が出てきます。 🙁

mg(ミリグラム)は大きすぎるため、ダイオキシンの話ではめったに出てきません。主な3つ(μg、ng、pg)を表1にまとめています。



尚、『ダイオキシンは規制強化、内分泌撹乱化学物質の規制は骨抜きなのはなんで?』でHonda氏も書いていましたが、pgのイメージは次のとおりです。

1辺が100mの立方体入れた水(100万トン)の重さを1gとみたときの、1cm3の水(=1円玉)の重さが1pgに当たります。






【ダイオキシン類の毒性ってどんなレベル?】




















表2.TCDDのLD50
動 物
LD50
μg/㎏体重
pg/㎏体重
モルモット
0.6~20
60万~2,000万
ミンク
5
500万
ラット
10~300
1,000万~3億
サ ル
50
5,000万
ウサギ
100
1億
マウス
100~3,000
1~30億
ハムスター
1,000~5,000
10~50億


ダイオキシン類には222種の物質があります。その中で一番毒性が強いのがTCDDであり、TCDDの毒性を1とした場合に、0.01以上の毒性を持つものは17種類あり、それ以外の毒性は極めて低く、ほぼ無害な物質となっています。



この最も強いTCDDがどのくらいの毒性があるのかというと、半数致死量;LD50(※1)として右の表2のように表されています。



一般的に体重が大きいほど毒性に強いことから、LD50は体重1㎏当たりで表され、LD50値が低いほど毒性が高いことを示しています。



現在、我々は1日にせいぜい100pg(TCDDに換算した値)のダイオキシンしか摂取していません(下記、参考文献より)。つまり、体重50㎏の人ならLD50値は2pg/㎏となります。

一方、表1でもっとも毒性が強いモルモットのLD50値は60万pg/㎏となっており、30万倍もの差があります。



仮に、人類のLD50値をモルモットなみだとした場合、30万日(820年)分のダイオキシンを摂取しなければ半数致死量には至らないということになります。

ちなみに、我々が摂取するダイオキシン類の95%以上は食品からくるため、30万日分の食事を一気にしないと半数致死量には至らないということになります。

(補)人類のLD50値は実験できないため未明であるが、過去の事故などから840万pg/㎏でも死なないことが分かっています。

※1;動物が体重1㎏あたりどのくらい摂取したら、摂取固体の半数が死ぬかを調べた量



■体内に入ったTCDDが毒性を示す仕組み






TCDDはまず細胞に入り、特別なタンパク質と結合します。そのあと進む化学反応の結果として毒性(おもに甲状腺機能の阻害→死亡)が現れます。

このタンパク質のつくりが生物種で微妙に異なるため、TCDDと結合する強さ(=毒性の強さ)に差が出るらしい。
体内に入ったTCDDを排出する速さが生物種ごとに異なり、さっさと排出する生物ほどTCDDに強いのです(排出する速さを示す「体内半減期」については、今後どこかで扱います)。























表3.人に対する毒物のLD50
物 質
LD50
μg/㎏体重
pg/㎏体重
破傷風菌の毒素
0.002
2,000
ボツリヌス菌の毒素
0.01
1万
ブドウ球菌の毒素
0.1
10万
テトロドトキシン(フグ毒)
10
1,000万
サリン
200(最小値)
2億
アフラトキシンB(カビ毒)
300
3億
青酸カリ
3,000
30億


【他の毒物などは?】

自然界には、ダイオキシンなど足元に及ばない猛毒がいくらでもあります。その一部を表3として右に挙げています。


TCDDと比べてどれだけ毒性が強いのかはLD50値の比で分かるが、TCDDのほうは人のLD50値がわからないため、サルの値を用いて算出してみます。



破傷風菌の毒素、ボツリヌス菌の毒素、ブドウ球菌の毒素、フグ毒は、それぞれ25,000倍、5,000倍、500倍、5倍も毒素が高いと云えます。これらは天然毒素であるためLD50値は情報源ごとに何桁も誤差が生じていますが、現実には中毒事故が起き、命を落とす人もいます。



これら以外でも、我々の暮らしの中ではダイオキシンより危険なものがかなりあります。それは、摂取量がふだんの数倍から10倍程度になるだけで命にかかるものも少なくありません。



例えば、1ヶ月後ぐらいに多くなるであろう「急性アルコール中毒」であり、食事のたびに摂取しているヒ素や水銀、カドミウムなどです。









どんな猛毒でも一定量以上が体内に入らないかぎり心配はありません。

毒になるかどうかは摂取量と体内濃度によって決まっているのです。


しかし、ダイオキシン騒動では、その肝心なポイントが語られずに危険意識を煽る議論が多かったように思えます。



では、なぜそようなことになったのでしょう?

これについては次回にしたいと思います。



長文にお付き合い頂きありがとうございました m(_ _)m



by 村田頼哉


<参考文献>

 ・ダイオキシン(神話の終焉)/渡辺正、林俊郎/日本評論社





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List    投稿者 yoriya | 2007-03-07 | Posted in K01.ダイオキシン2 Comments » 

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