2013-11-04

【地震と水】第6回~脱水反応がアスペリティ(固着域)をつくる!?~

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画像はこちらからお借りしました。
 
「水」をキーワードに地震発生のメカニズムに迫るシリーズ、第6回目です。
第1回~第5回の記事は下記を参照してください。
 
第1回:(プロローグ)水が地震を引き起こす!?~
第2回:水と地震の関係(基礎編1)・地球の中にも水がある!
第3回:地震波分析・マントルトモグラフィーから反射法地震探査へ
第4回:海洋プレートからの「脱水」が地震発生メカニズム解明の鍵!?
第5回:水が引き起こすズルズル地震「スロースリップ」の解明が巨大地震の予知につながる!?
 
第6回の本記事では、近年、地震発生のメカニズムと深い関わりを持つとして着目されているアスペリティ(固着域)と“水”の存在について考えていきます。

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◆ ◆ ◆ 地震の原因はアスペリティ(固着域)の破壊
 
近年、地震は「アスペリティ(固着域)の破壊によって起きる」という考え方が、最も有力なメカニズムと言われるようになっています。
 
「アスペリティ」という概念については、下記のブログで端的に解説されていますので紹介させていただきます。
 
地震のしくみと地震予知(1)<EARTH,OCEAN,and LIFE>より

アスペリティとは、プレートの境い目に分布する、周囲にくらべて摩擦強度の大きな領域です。
地震波の記録を丹念に解析することによってアスペリティの分布が明らかになってきました。
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(アスペリティの空間分布のイメージ)
陸に平野や山地があるのと同じように、海底にも平野や山地・山脈があります。
まだら模様に見えるアスペリティのランダムな分布は、
陸の下に潜り込んでしまったかつての海底の山地(海山 [かいざん])の分布に
相当するのではないかと考えられています。
img_623309_41411702_1.jpg
地下に潜り込んだ海山の「でっぱり」が引っかかって、
プレート運動にブレーキが効いている状態になっているらしい、と言われています。
~後略(詳細は元記事参照)~

 
このように、プレート境界部でかみ合って踏ん張っている箇所=アスペリティが、何らかの力によって破壊されることで、地震が発生すると考えられています。
 
しかし、アスペリティは地震による破壊後も同じ場所に形成されることが観測されています。
前述の仕組みであれば、“でっぱり”が破壊されてしまうと、その場所が再びアスペリティとなることは考えにくいでしょう。
 
アスペリティ(固着域)の仕組みを明らかにするためには、スリップゾーン(非固着域)との違いが何によってもたらされているのかを知ることが、重要なカギと考えられます。
 
 
◆ ◆ ◆ アスペリティとスリップゾーンでは含水量が大きく違う!
 
探査法、測定法の進歩により、地球内部の状況や海底面の形状の詳細がわかるようになってきました。
 
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※反射法の概要は、第3回記事の「●4.現在の調査技術」参照
 
この探査結果より、地中内部には音波を反射するがあり、プレート境界域には、反射の大きい領域と小さい領域が分布していることが判明しました。
また、地震波の縦波と横波の速度比の変化から、反射が大きい層には液体(水)が含まれ、小さい層には液体(水)があまり含まれていないこともわかってきました。
 
一方、地震観測網によってアスペリティとスリップゾーン(ゆっくり断続的に滑っている)の分布がわかってきました。
 
この両者の分布を重ね合わせると、以下のような関係性が浮かび上がりました。
 低反射域(低含水域)=アスペリティ
 高反射域(高含水域)=スリップゾーン
 
上記よりアスペリティの岩盤は含水率が低く、スリップゾーンの岩盤は含水率が高いということが言えます。
これは、岩盤内の間隙水(流体)が多ければ、岩盤を構成する固体間の摩擦抵抗が低下して変形しやすくなる現象と整合します。
 
【参考】
○「先端巨大科学で探る地球」金田義行他著 東京大学出版会
 
 
◆ ◆ ◆ アスペリティはどのようにして生まれ、壊れるのか?
アスペリティは高含水域、スリップゾーンは低含水域ということがわかりましたが、どのようにして高含水域と低含水域に分かれるのでしょうか?
 
ひとつは深度変化に伴う圧力・温度上昇による脱水作用が考えられます。
例えば、粘土鉱物のスメクタイトは、水を吸収しやすく変形しやすい特徴をもっているため、スメクタイトが存在する層は、滑りやすい状態となります。しかし、存在深度が深くなり、高圧力・高温度の環境におかれると化学的変化=脱水を引き起こし、水を吸収しにくく変形し難い鉱物(イライト)に変化します。
 
ただ、上記条件だけでは、一定の深度に達すれば一様に脱水し、帯状に(固着スポットではなく)“固着帯”となるはずです。
しかし、観測事実ではそのような“固着帯”は確認されていません。
 
ということは、深度変化による圧力・温度上昇→脱水以外にも局所的に脱水を促進する何らかの作用があって、低含水域→固着域を形成しているのではないでしょうか。
 
たとえば、熱移送説のように地球内部に熱の通り道が形成されていて、その通り道がプレート表面(境界域)に近接している箇所は、周囲よりも著しく加温されます。
その場合、近接部では局所的に脱水が促進されて“固着域”となると考えられます。
 
そして、形成された固着域に、何らかの強い力(圧縮力の蓄積、熱膨張、解離水爆発、水素爆発etc.)を受けて破壊され、地震に至るのではないでしょうか。
 
また、この脱水→固着作用であれば、破壊後に同じような場所に固着域ができるという現象とも整合します。
 
 
現時点で、地震の発生メカニズムとして最も注目されているアスペリティモデルにおいても、脱水作用→水の存在に注目し、脱水作用を促進する主要因を明らかにしていくことが、発生メカニズムを解明する上で重要なカギとなるように思います。

List    投稿者 aironGst | 2013-11-04 | Posted in D03.地震No Comments » 

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