2012-08-10

【電磁波は地震を引き起こすのか?】地震予知の“ノイズ”こそ答えか

これまで、【電磁波は地震を引き起こすのか?】というテーマで追求を続けてきました。

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地震に関連する地圏 -大気圏-電離圏結合

前回と前々回は、有力な仮説として追求してきた「熱移送説」を裏付ける基礎的なメカニズムとして、誘電加熱と誘導加熱という仕組みについて考えてきました。

そこで今回は、熱移送説のエネルギー源となる「熱」を生み出しているメカニズムを明らかにするため、地中で起きている電磁気現象について調べます。

もし、地中で岩盤を溶かすほどの電波が発生しているとしたら、地表、あるいは地上にも漏れ出ているのではないでしょうか?そういった視点で、地中の電波を観測している地震予知研究から電磁波観測に関する成果を取り上げます。

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☆☆☆地震時に地中で発生している電磁気現象の観測

☆VAN法

一般的に地震の数週間から数時間まえには,岩石圧縮・破壊(圧電効果)によって電流が発生していると考えられています。VAN法はこの電流の変化を検出し,短期的に地震を予測する方法です。

測定は原理的には比較的簡単で、適当な距離で地面に埋められた一対の電極間の地電位差を測定します。地電位は、地磁気の変動、降雨、人工のノイズ、電極の電気化学的な不安定さ等により、常に変化しています。したがって、意味のある地震前兆信号が存在するとしても、それを検知するには、これらのノイズから区別しなければなりません。

こうした規準で、予知のおよそ60%が成功であり、M≧5.3(ギリシャで使用されているマグニチュードスケールで)のギリシャの地震のおよそ60%が成功裏に予知されています。

☆超長波放射の観測(0.005~10Hz)

地中からは絶えず電波が発せられていますが、地震の発生前から発生後にかけて、特有のパターンでそのレベルが上昇することがわかっています。このパターンを捉えることで、地震の短期予知に役立てようという研究が進められています。

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ロマ・プリータ地震での超長波(0.01Hz)放射の観測

例えば、1989年に起きたカリフォルニアの「ロマ・プリータ地震」の例では、地中から発する0.01Hzというきわめて波長の長い電波を観測したところ、12日ほど前から強度が上昇し、1週間前まで続きました。その後一時的に強度が沈静化し、1日前から上昇が始まりました。(この上昇は1988年に起きたアルメニアの「スピタック地震」でも同様)。さらに、地震の3~4時間前から急上昇します。

その際の電磁気現象の発生機構は、次のように考えられています。

地震の1ヶ月程度前になると、蓄積された圧力がある限界を超えることになる。この際、岩石内に多数のクラック(ひび)が発生する。そのとき、圧電効果などにより電荷生成が起こり、パルス状の電流が発生し、それらのパルス電流の複合により電波が発生される。初期にはクラックの数が著しい速さで生成され、図2、図4のような1週間から2週間前後までの第1の磁界強度上昇が起こる。その後、クラックのサイズは大きくなるが、電波放射としては鎮静化する。そして、数日前よりはクラックのサイズの上昇が効き、第2の強度上昇となる。

「地震に伴う電磁気現象のいろいろ」より

☆短波放射の観測(300kHz~)

また、高周波の観測も行われています。地下60mおよび6mに電極を設けた観測システムでは、300kHzを超える放射が地震前の3~4日前に発生し、1日前から急上昇を示します。この原因は、地震の前駆段階で岩石が崩壊する際、放射性物質が放出・電離し、それに伴う放電が生じたためと考えられます。

京都産業大学でも、「地中電波の計測による地震予知研究」が行われており、大学の敷地内と和歌山県に地下100m、直径10cmの穴(ボアホール)を掘り、このボアホール内に垂直電界と水平直交2成分の磁界を検出するセンサーを挿入。開発した解析用プログラムで、電磁波パルスの検出と同時に画面地図上に到来方位も表示できる測定システムを完成させています。穴掘りを行った時に出て来た地中の岩石も数mごとにサンプリングしているので、各深さにおける地中媒質の誘電率や導電率が分かり、電磁波パルスの伝播に関するデータが期待できます。

☆まとめ

地震予知研究の成果から、地中の電波に関する知見をごく簡単にまとめれば、以下となります。

1.地震前から地震直後には特定のパターンで震源域から電波または電流が発生している。したがって、その電波を捉えることができれば、地震予知ができる可能性が高い。

2.地上で観測できる電波は、超長波が主体である。

3.地震で発生する電波は、岩盤の崩壊による圧電効果が主となっている可能性が高い。

ところで、下図の通り、地中は地下水に溢れています。

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地球の水の総量中、97.5%を海水が占め、淡水が残り2.5%を占めますが、その淡水の内訳は、氷河などの雪氷が70%、地下水が29%で、地下水の総量は8,342,800km3となっています。これだけの水がゆっくりと循環している地下はいわば水浸しであり、超長波以外の電波が発生していても導電体である水によってほとんど吸収され、遮られてしまうのです。したがって、地中を伝達する電波は、水中でも伝達可能な超長波しか観測できず、少なくとも地殻部分では、短波が発生したところで拡がることはできません。

☆☆☆ 考察 ~地震予知の“ノイズ”こそ答えか

地震予知研究が対象としているのは、当然ながら地震時に発生する電波です。したがって、地震が起きる直前の1週間から地震発生直後までの時間軸で観測できる電波が主役です。「熱移送説」を検証するためには、背景で恒常的に発生している方の電波の姿を知る必要がありますが、上記の研究では、そうした電波は、地震の際に発生する電波観測を妨げるものとして徹底的に排除されているのです。

そして、阪神大震災が深さ16km、東日本大震災が深さ24kmで発生したことからも分かるように、激甚災害となる大地震の震源は比較的浅い場所。したがって、地震予知が対象としている地層も、地下約60kmより浅い層(地殻部分)であって、地震予知研究における電磁気現象を調べても、深さ60kmより深いマントル内で発生している電波や電磁気現象の姿を知ることには繋がらないことが分かります。

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われわれが知りたいのは、地震時に発生する電波ではなく、むしろ地震予知においては「ノイズ」として排除される電波の方です。ノイズとして扱われる電波は、数秒から百秒という、きわめて長い周期を持つ電波として観測でき、これは「地磁気脈動」と呼ばれています。

気象庁によれば、「地磁気脈動」とは、

地磁気脈動と総称されている現象は、低周波自然電磁場の一つで、周期が0.2秒から1000秒くらいまでの周期的な変動で、地磁気・地電流の変動として観測されます。磁気圏内で発生した電磁流体波などが原因で磁気嵐時に活発となります。地磁気脈動については国際的に、周期に基づく分類法がIAGAで決められています。この分類によると、現象を二つに大別し、連続(continuous)で規則的な波形を持つ脈動をPc、波形が不規則(irregular)で、スペクトルの幅が卓越周期に比べて広い脈動をPiとよび、これらを周期によってさらに細かく分類しています。

とあります。

「熱移送説」を検証するために今後われわれが追求するべきなのは、この「地磁気脈動」ということになりそうです。先ほどの地震予知研究によれば、「地磁気脈動」は宇宙(超高層)から飛来するプラズマ波との強い相関があることが分かっていますので、今後は、宇宙論の追求まで必要となるかもしれません。

【参考・出典】

List    投稿者 sztk | 2012-08-10 | Posted in D04.電磁波No Comments » 

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