電磁気の流れからオーロラ発生の仕組みを考える ~上空6万キロにある大発電機
◆◆◆オーロラはどうして光る?
極地方の夜空を彩る「オーロラ」。その名前は、ローマ神話の暁の女神アウロラ(Aurora)に由来します。
昔から、神や悪魔と結びつけられるほど壮大で美しい自然現象とされていますが、オーロラが発生する仕組みには、実はいまだに定説と呼べるものがありません。(オーロラが発光する仕組みについては判明しています。原理については過去記事 http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2012/04/001066.html を参照))
昨年の記事(http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2012/04/001066.html)では、「太陽風が運ぶ電子やプラズマが何らかの原因で磁気圏内に侵入し、加速されて大気の酸素分子、窒素分子などを励起させて発光するもの」と書かれていますが、この説にも謎は多いのです。
そもそも、太陽風は地磁気でブロックされているはずであり、太陽風で運ばれた電子がどのように磁気圏内に入るか、不明なままだからです。また、太陽から放出される電子のエネルギーでは地上数百キロの高さで止まってしまいますが、地球に入り込んだ電子がどのように加速されているのかについても分かっていません。
そこで、着目したいのが、赤祖父俊一氏が提起する「自然の大発電機」説です。
磁気圏でブロックされる太陽風、上空大気の気体分子を発光させるほど強く加速された電子、極近くのみで発生するオーロラ・オーバル。それらを統合的に説明できるモデルとして、オーロラ研究では日本の第一人者、赤祖父氏の「自然の大発電機」を紹介します。
◆◆◆自然の大発電機
太陽風が運ぶ高速のプラズマに対して、地球の磁気圏がバリアとなっていることはよく知られています。太陽風は、地磁気が作り出す半径6万キロ、長さ200万キロという流星型の磁気圏に沿って流れるため、直接地上に吹きつけて生き物を危険に晒すことはありません。
「太陽風の一部が地球に進入し、高層にある大気分子を発光させる」というのが、よく知られたオーロラの発光モデルですが、実は太陽から放出される電子のエネルギーは100電子ボルト程度(コロナ百万度の温度に相当)に過ぎず、この程度のエネルギーでは地上数百キロの高さで止まってしまうことがわかっています。
つまり、オーロラを光らせるためには、上空100キロにある大気の気体分子を連続的に発光させる、数キロ電子ボルトという高いエネルギーが【継続的に】必要となるのです。
そこで考えられたのが、磁気圏を大きな「発電機」と見立てるモデルです。
磁場の中を、電気伝導体が動けば、それは「発電機」となります。
ここで、磁場は太陽から太陽風が運んできます(前記事参照)。そして、磁気圏に沿って流れる太陽風が電気伝導体です。太陽風の実体は電子とプラズマだからです。
そして、この電子とプラズマからなる伝導体が、再結合した磁力線を横切ることで起電力が発生します。
これは、「MHD発電」と呼ばれる発電方法によく似ています。
磁界と直交する方向に高速で伝導性の流体を流し、電磁誘導に基づき起電力を得る方法です。伝導体が回転したり摩擦に伴う損失が無いため、高効率の発電方法とされています。
これを、プラズマと電子の運動から見ると、下図の様になります。
まず、電子はファラデーの右手則により磁場B(北→南)の中で、太陽風の流れVが、太陽から磁気圏尾へ向かっていくとすると、起電力の向きは、夕方→朝方方向となります。すなわち、電子は夕方側へ、陽子は朝方側へ流れていくのです。
すると、ここに電位差が生じ、磁気圏そのものが発電機となりますす。そして、磁気圏の3時の位置がマイナス端子に、9時がプラス端子になります。
こうして、オーロラに大電力を供給できる「発電所」が見つかりました。観測に依れば、この発電機の発電量は100万メガワット、1000万アンペア。通常の発電所が1000メガワット程度なので、これは発電所1000基分に相当します。そのうちの一部がオーロラに使われることになります。
◆◆◆大電力を運ぶ、見えない電線
では、こうして発電された電力は、どのように極付近に流れ、オーロラへと姿を変えるのでしょうか?
実は、磁気圏のような希薄なプラズマの中では、電子は磁力線に沿って螺旋(らせん)状に運動(移動)することが知られています。つまり、磁力線があれば、それを電線代わりにして移動するのです。特定の環境では、磁力線が「見えない電線」になるというわけです。
では、次の図を見てください。
磁気圏の壁から北極へと繋がっているのは、太陽からの磁場と再結合した磁力線です。つまり、この磁力線こそが、磁気圏で発生した電流を北極圏に流し込んでいる、というわけです。(南極でも同様の現象が起きます。)
北極圏上空の電離層まで到達した電子は、そこでプラズマ化した水素原子や酸素原子と衝突して発光。それがオーロラとなります。
北極上空の電離層に流れ込んだ電流は、複雑な流れ方をしながら(上図参照)、最終的には磁気圏に戻るような一種の電気回路を形成しています。こうした地球を取り巻く電子、磁気の流れや収支を解明していくことが、地球上で起きる数々の自然現象となって現れますが、われわれはまだその一里塚にあります。
オーロラの発生原理を巡る探求もまだその途につき始めたばかりなのです。
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