2012-04-21

【地球のしくみ】4.マグマはどこでどうやってできる?

地球内部で何が起こっているかを探るべく、火山やマグマの働きを追求している本シリーズ。
前回までは、地下のマグマの働きによって、
・地盤が薄くて硬い、プレート境界では地震が起こり、
・地盤が軟らかい所では火山の噴火が起こる
という仮説を提示しました。
また、火山の噴火は地殻岩石に含まれる二酸化ケイ素が多いほど、大規模な爆発を起こしやすい、ということを明らかにしました。
今回はマグマの発生の仕方に迫ります。
地震や火山の噴火を引き起こすマグマは、どこでどうやってできるのでしょうか?
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◆◆◆そもそもマグマって何?
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(カンラン岩http://arth-mineral.jp/index.php?main_page=product_info&products_id=16405
マグマの主な材料は、マントルの主成分である「カンラン岩」という岩石だと言われています。
そのカンラン岩が何らかの要因で高温になり溶解したものをマグマといいます。
マグマの主成分はシリカ(二酸化ケイ素SiO2)で、この他に金属や火山ガスなどが含まれています。
そのマグマは一体どうやってできるのでしょうか?
◆◆◆マグマはどこでどうやってできる?
マグマは、岩石が高温になって溶けたもの。熱溜まりとも言い換えられます。
では、地殻の下部に熱溜まりができるのは何でなのでしょうか?
◆電磁波が集中する所=マグマ化する所
地下で熱が発生する原因として考えられるものに、核分裂反応が挙げられます。しかし、核分裂が発生する条件として高温高圧下である必要があります。また、核分裂で熱くなっているとすると、噴火時に放射性物質が出てくるはずですが、そのような形跡は見当たりません。
他に考えられるのは、電磁波による加熱です。
これは、ある場所が電磁波によって集中的に熱せられる、電子レンジ状態になると、電磁波=エネルギーを吸収した岩石が溶けてマグマ化する。そして、そのマグマが電磁波を出して、熱の移送ルートの次の場所を玉突き的に温めてゆく、という仮説です。
参考:なんでや劇場(5) マントル内部で電子レンジ状態⇒熱の通り道ができる
地球内部で電子レンジ状態になり、岩石がマグマ化するとは、どういうことなのか?電子レンジの原理を元に、考えてみたいと思います。
◆電子レンジの原理(電磁波の反射・透過・吸収・放射について)
電子レンジの原理の前に、まずは電磁波の基本的な性質を抑えたいと思います。
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図の様に物体に入射した光は一部が反射され,一部が透過し、一部が吸収されます。
反射光の割合がA%とすれば、この物体の反射率はA%となります。同様に透過率はB%,吸収率はC%です。
ここでA+B+Cは必ず100%になります。
これはエネルギー保存則の通りで、エネルギーは形はかえても、その量は増えも減りもしないという事で、入射光のエネルギーは(透過光エネルギー+反射光エネルギー+吸収されたエネルギー)になるという事です。 
また放射率と言われるものがあります。これは物体がある温度になったときに、そこから光(マイクロ波~赤外線~可視光域が主)の形でエネルギーが放射されますが、この放射度合いの数値です。最も放熱し易い仮想物体が黒体で、全ての波長で放射率が100%です。現実には存在しません。
重要な点は必ず「吸収率=放射率」の関係になることです。吸収しやすいほど放射もしやすく、吸収率がゼロであれば放射による放熱もできません。
正確にはこの関係はある波長についてのみ成り立ちます。ガラスは可視光域の透過率が100%に近く、吸収率はゼロに近いのですが、赤外域(約3μm以上)では透過率がほぼゼロになり、ほぼ完全な吸収体になります。
光科学の物理学より
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つまり、【ある波長の電磁波は、物質によって、どのくらいの割合で吸収・透過・反射されるかが決まる】ということです。
この性質を押さえたところで、電子レンジの原理を見てみます。

電子レンジは、熱を出さないマイクロ波という波長の短い電波を使って食品を温める機器です。マイクロ波は、空気やガラス、紙などを通り抜け、金属には反射され、水に吸収されるという性質があります。レンジの中には小さな穴がたくさん見えます。このなかにある「マグトロン」という真空管がマイクロ波を発生させ、食品に発射されるのです。
電子レンジの科学より)
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つまり、水が吸収しやすい波長の電磁波を出して、水分子を熱することで食品を温めるのが電子レンジの仕組みです。
では、地球内部での電子レンジ状態とは、どんなものなのでしょうか?
◆地球内部では、高エネルギーの電磁波が放射されている
電子レンジ状態になるには、電磁波が必要です。
光科学の物理学によると、

物体がある温度になったときに、そこから光(マイクロ波~赤外線~可視光域が主)の形でエネルギーが放射されます

これをグラフに表すと、下のようになります。
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(横軸は波長、縦軸は放射強度(≒エネルギー)を表しており、ある温度における両者の関係が描かれています。)
これを見ると、300Kで放射強度10のマイナス5乗に対して、1000Kで放射強度10のマイナス3乗になっており、温度が3倍になるとエネルギーは100倍にもなります。地上は300K程しかないので、数千Kの地球内部は、かなり高エネルギーの電磁波が常に放射されている、ということです。ここからも、地球内部の熱の移動は電磁波によるのではないか?という発想が出てきます。
またリンクには、「500℃以上では放射による放熱が大半になる(伝導や対流の影響は比較的小さくなる)」とも書かれています。したがって、溶けたマグマが電磁波を出し、熱の移送ルートの次の場所を玉突き的に温めてゆく、という熱移送も十分に考えられます。
地球内部で高エネルギーの電磁波が放射されているとすると、ある波長の電磁波がある物質(岩石)に集中的に当たることによって、その部分が熱せられ、マグマ化することもあり得ます。これが地球内部の電子レンジ状態の大きなイメージです。
では、具体的に、地球内部のどの部分が、どのように熱せられ、マグマ化するのでしょうか?地球内部の電子レンジ状態の詳細に迫りたいと思います。
◆マントルのカンラン岩は電磁波を透過し、地殻の玄武岩・花崗岩が電磁波を吸収する
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マントルトモグラフィーによる地球内部の様子。青い部分は硬く、冷たい岩石。赤い部分は軟らかく、熱い岩石で、一部はマグマ化しています。
図の赤い部分には電磁波が集中的に当たり、周囲よりも電磁波を吸収する割合が高くなり、マグマ化すると思われます。
では、何故その部分だけ電磁波が集中するのでしょうか?
まず、マントルの成分と考えられているカンラン岩は、電磁波を透過しやすい性質があるようです。
リンクによると、カンラン岩の主成分であるフォルステライトはマイクロ波を透過しやすく、また、可視光も透過し(→透明に見え)ます。したがって、可視光~マイクロ波の領域までは、透過すると考えられます。
実際、カンラン岩に電磁波を透過する性質がなければ、地球内部で発生した電磁波が地殻まで届くことはないでしょう。
次に、地殻の成分と考えられている花崗岩や玄武岩などの岩石は、電磁波の吸収率が高い物質です。
光科学の物理学によると、玄武岩の電磁波吸収率は、長波長ほど高く、遠赤外線領域で0.95にもなっています。
玄武岩などの岩石は、赤外線やマイクロ波領域=長波長で吸収率が高くなる傾向があるのです。
ここから、マグマ化するのは、カンラン岩ではなく、花崗岩や玄武岩ではないか?という発想が出てきます。
(マグマの主成分と考えられているカンラン岩は、マグマに引っ張られて地上に出てくるのではないでしょうか?)
しかし、仮にそうだとしても、地殻付近の花崗岩や玄武岩の中で、特に電磁波が集中する部分だけがマグマ化しているはずです。
電磁波が集中する所は、どんな構造になっているのでしょうか?
◆地殻の蛸壺構造
地殻には、凹凸があります。(平らであることはあり得ない)
そこで仮説ですが、地殻の凹凸が激しく、入射した電磁波が出て来れずに反射を繰り返す、蛸壺構造になっている部分があるのではないでしょうか?
例えば、反射率0.9のアルミでさえ、5回反射しただけで反射率は0.9の5乗=0.59になります。つまり反射を繰り返した分だけ、そこの吸収率がどんどん高くなるのです。
マントルトモグラフィの日本の地下の図でも、赤い部分の周囲に、青い=冷たく硬い岩盤が覆っています。
このような、入射した電磁波が出て来れず、反射を繰り返して集中的に加熱する部分が、マグマ化するのだと考えられます。
【結論】
マグマは、地殻下部の蛸壺構造になっている部分でできる。そこでは、電磁波が入射した後、反射を繰り返し、周囲より電磁波を吸収するため、高温化→マグマ化する。

◆◆◆課題
今回は、カンラン岩が電磁波を透過し、花崗岩・玄武岩が電磁波を吸収する、という前提で進めましたが、
・何故カンラン岩は電磁波を透過するのか?
・何故玄武岩・花崗岩は電磁波を吸収するのか?
という疑問が残ります。
おそらく、結晶構造の違いにヒントがあるのでは?と思いますが、これらの疑問については次回、追求していきます。

List    投稿者 staff | 2012-04-21 | Posted in D.地球のメカニズム, D01.地球史No Comments » 

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