2013-02-23

【地球のしくみ】20~大気編(6)~「有性生殖」とは、20億年前の嫌気性細菌と好気性細菌の共生の再現である

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前回は、光合成を調べるため、代謝系の進化史を追っていきました。おおむね、以下のような流れで進化してきました。
①初めの代謝は、化学合成
②解糖によってエネルギーを得る嫌気性細菌が誕生
③光エネルギーを利用する光合成細菌が誕生
④生物にとって猛毒であった酸素を利用し、酸素呼吸によってエネルギーを生産する好気性細菌(αプロメテオ細菌)が誕生
⑤核内にDNAをまとめる真核生物が誕生。好気性細菌と共生→ミトコンドリア、光合成細菌(シアノバクテリア)と共生→葉緑素など、様々な細胞内小器官を備えていく。
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このような代謝系の進化を捉え直してみると、「あること」に気づきます。
それは、我々=好気性真核生物は、その誕生からずっと、「嫌気性の生命体」と「好気性の生命体」の2つの生命体が織り成す力によって生きているということです。

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◆ ◆ ◆ 2つのエネルギー生成過程:「解糖系」と「ミトコンドリア系」
我々「好気性真核生物」は、20億年前、嫌気性細菌が好気性細菌を捕食することによって獲得した「ミトコンドリア」を持ち、嫌気性細菌由来の「解糖系」、好気性細菌由来の「ミトコンドリア系」の2つのエネルギー生成系を作動させています。
ミトコンドリア系は、解糖系で生産したピルビン酸を元にエネルギーを生産するので、以下のように両者は連動しています。
<細胞呼吸の過程>
グルコース→(EM回路)→ピルビン酸→(クエン酸回路)→H→(電子伝達系)→電子受容体
└―――――解糖系――――――┘└――――――――ミトコンドリア系――――――――┘
しかしながら、この2つの系は特徴的違いがあります。
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◆エネルギー生産の違い
上で示したように、嫌気性の解糖系はエネルギー生産が「速い」ため、「瞬発力」に使われます。
ストレスが加わると、血管収縮による低酸素、高血糖になりますが、これは、解糖系による短時間でのエネルギー生産を促し、「瞬発力」を発揮するための反応です。(参考
このように瞬時にエネルギーを生産する場合は、「嫌気性の解糖系」、それに対し、長期に安定してエネルギーを生産する場合は「好気性のミトコンドリア系」の反応になるのです。
また、ある細胞におけるミトコンドリアの数は、細胞の働き方を大きく規定します。
ミトコンドリアが多い筋肉は、持続力を発揮。Ex. マグロのような回遊魚の筋肉、心筋
一方、ミトコンドリアが少ない筋肉は、解糖系が優位であり、瞬発力を発揮します。Ex. ヒラメやタイの筋肉
◆ 細胞分裂の違い
ミトコンドリアの数は、細胞分裂の活発度も規定します。
・ミトコンドリアが多いのは心筋細胞、骨格筋の赤筋、脳神経。これらの箇所では、細胞分裂は約3歳までに終わり、以後殆ど起きません。
・一方、ミトコンドリアが少ないのは皮膚細胞、腸上皮など。これらは活発に細胞分裂を繰り返しています。
★なぜ、ミトコンドリアが多いと分裂が少なくなるのでしょうか?
仮説ですが、「嫌気性細菌との共生の際、ミトコンドリアは分裂抑制物質or遺伝子を持ち込んだ」と考えられます。
つまり、「嫌気性細菌が好気性細菌を捕食することによってミトコンドリアを獲得した」というのは一面的な見方で、ミトコンドリアの側からすれば「嫌気性細菌との安定した共生関係を築くために、分裂抑制物質or遺伝子を持ち込んだ」という見方になります。
(ミトコンドリアが分裂を抑制した理由については未解明です。どうやら分裂=変異には瞬時のエネルギー生産=解糖系が必要なのに対して、分裂して違う種になる危険性を避けるための分裂抑制物質を作り出すには、ミトコンドリア系を使うようです。この分裂抑制物質の基盤は、安定した修復系の酵素だと考えられます。酸素呼吸を行うミトコンドリアは体内の酸化をもたらす活性酸素を多く排出するので、安定した修復系酵素を多く分泌する必要性が高まったことだけは確かです。)
兎にも角にも、嫌気性細菌と好気性細菌(→ミトコンドリア)の共生、という劇的な出会いが、その後、細胞の役割分化⇒多細胞生物の機能進化を進める土台になったことは、間違いありません。
これは、多細胞化後すぐに起こったと考えられる「有性生殖」の誕生=「精子」と「卵子」の誕生でも同様です。実は、解糖系・ミトコンドリア系の役割分化が最も顕著なのが、「生殖細胞」なのです!

◆ ◆ ◆ 「有性生殖」とは、20億年前の解糖系とミトコンドリア系の合体の再現
ミトコンドリアの極端に少ない細胞と、極端に多い細胞があります。それが、「精子」と「卵子」です。
精子のミトコンドリアは1細胞あたり100前後であるのに対し、卵子は10万前後もあります。他の部位でミトコンドリアが少ないのは皮膚細胞で200~300個、多いのは心筋で5000個なので、「精子」と「卵子」がいかに両極端な特徴を持っているかが分かります。
実際、精子はひたすら分裂し続け、瞬発力を発揮して運動するのに対し、卵子は出生前に分裂し切ってからは、ほとんど分裂せずにひたすら成熟させます。
「有性生殖」とは、ほとんどミトコンドリアのない「精子」と、膨大な数のミトコンドリアをもつ「卵子」の合体。つまり、20億年前の嫌気性細菌と好気性細菌との共生のやり直しだったのです!!

精子と卵子の誕生によって、生物の二大課題である「変異」と「安定」の分化と高度化を実現し、その後の多細胞生物の劇的な進化を促します。

(参考)
事実、進化の源泉はDNAの多様性にある。つまり、同一の自己を複製するのではなく、出来る限り多様な同類他者(非自己)を作り出すことこそ、全ての進化の源泉であり、それこそが適応の基幹戦略である。しかし、同類他者=変異体を作り出すのは極めて危険な営みでもある(∵殆どの変異体は不適応態である)。従って生物は、一方では安定性を保持しつつ、他方では変異を作り出すという極めて困難な課題に直面する。その突破口を開いたのが組み換え系や修復系の酵素(蛋白質)群であり、それを基礎としてより大掛かりな突破口を開いたのが、雌雄分化である。つまり、雌雄分化とは、原理的にはより安定度の高い性(雌)と、より変異度の高い性(雄)への分化(=差異の促進)に他ならない。

(参考)
・そして精卵分化の本質は、精子:変異配偶子と卵子:安定配偶子への分化であることが見えてきました。変異と安定の分化、これがオスメス分化の原基となったと考えられます。
・これは、変異+安定を両立しながら種を残していく生殖システムと言えます。

この劇的な進化を実現できたのは、嫌気性細菌と好気性細菌の共生があったからに他なりません。とりわけ、卵子の安定性を実現しているのはミトコンドリアだったのです。
まとめると、
・20億年前の「嫌気性細菌と好気性細菌(⇒ミトコンドリア)の安定的な共生」を可能にしたのが、ミトコンドリアの「分裂抑制物質or遺伝子」。
・その共生の実現を基盤にして、細胞の機能分化⇒多細胞化を進めることができた。
・その一つである精卵分化(性システムの進化)においても、嫌気性細菌→精子、好気性細菌→卵子のように、両者の共生が実現基盤になっている。
・こうして生物は、「変異」と「安定」という二大課題を分化し高度化させることに成功した。これが、DNAの多様性→生物の適応可能性を高め、その後のカンブリア大爆発etc.生物の大進化に繋がっていく。
・こうした進化の塗り重ね上に存在する我々も、新しい子孫を作り出す度に、20億年前の「嫌気性細菌と好気性細菌の共生」という劇的な進化を再現している。

List    投稿者 kayama | 2013-02-23 | Posted in D01.地球史No Comments » 

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