【地球のしくみ】16~大気編(2)~地球を形成したのは、全て恒星外でつくられた酸化化合物(土・水・大気)
みなさん、こんにちは。
前回は、宇宙で元素がどのように生成されたかを扱いました。
今日は、これらの元素からどのように星ができ、地球上ではどのような物質に変化していったかをみていきます。
◆ ◆ ◆ 恒星外での元素の化学結合によって「分子」が生成された
惑星の形成は、水素(H)とともに、「恒星内元素合成」でつくられた炭素(C)、酸素(O)、ケイ素(Si)、鉄(Fe) を合わせた5つの元素が特に重要となります。
重い恒星が終末を迎えて、超新星爆発で吹き飛んでしまったときに、水素(H)やヘリウム(He)とともに、炭素(C)、酸素(O)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)も周囲の宇宙空間に放出され、原始ガス(多くは水素、ヘリウム)と塵(重い物質)からなる巨大な星間雲(リンク)が生まれます。
46億年前、太陽系の近くで超新星爆発が起こったと考えられ、それにより水素・ヘリウムを主成分とする星間物質の密度の高い部分(=星間雲)が発生し収縮し、原始太陽が形成されました。
そして、質量が大きくなった原始太陽の重力に引き寄せられたガスと微粒子が原始太陽の周りに集まり、円盤状に回転しながら「原始太陽系星雲」を形成するようになります。
そうして、原始太陽系星雲では、水素(H)、炭素(C)、酸素(O)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)の密度が上がっていきます。その中で、原始太陽からの紫外線等のエネルギーを得て、電気陰性度が強く他の元素の電子を引っ張って結合しやすい性質を持つ酸素が、他の元素と結合して安定した酸化化合物である水(H2O)、二酸化炭素(CO2)、土(SiO2)、そして鉄鉱石(Fe2O3)を形成します。
(※ 酸素の結合のしやすさは、【地球のしくみ】11 水は水素結合によって様々なものを溶かす~生命誕生のカギを握る水の特性~をご参照下さい。)
また、恒星内元素合成の過程で原子番号の小さな炭素(C)は多く生成されているため、原始太陽系星雲の中の炭素の量は、(水素を除いて)他の元素に比べ多いです。そのため、ホルムアルデヒド(CH2O)や、メチルアルコール(CH3OH)などの単純な有機化合物もつくられていたと考えられます。未明ですが、これが生命の素となった可能性もあると考えられます。
このように、軽い元素以外にも、これら酸化化合物と有機化合物が原始太陽系円盤のなかで、密度の高いガスやチリとして存在するようになります。
◆ ◆ ◆ 恒星外で生成された分子(酸化化合物)が惑星に成長してゆく
元素から分子化合物ができるというのは、大きな変化です。なぜなら、化合物となれば、分子同士が結合して大きくなることで、安定した質量の大きな物質として存在することができるのです。
「分子」は元素の持つ電気の力(クーロン力)によって別の元素をひきつけることによって生成されますが、分子が形成されると分子同士が電気的結合でクラスターをつくり、そのクラスター同士がさらに電気的に結合を重ねて質量が増えていきます。そうして質量が上がることで今度は重力によって結合され、それが巨大な「惑星」の形成につながるのです。
原始太陽系星雲の中においても、分子が結合して形成した固体微粒子が重力により集まり結合して、直径1~10kmくらいの「微惑星」とよばれる小天体が生まれ、さらにこれらが衝突合体を繰り返し、さまざまな大きさをもつ「原始惑星」ができます。
その過程では、軽い元素も酸化化合物も単純な有機化合物も、微粒子~微惑星~原子惑星として成長するなかに取り込まれ蓄えられていったのです。
微惑星が生まれる前には高温状態になったり、微惑星ができて、衝突合体をすることで微惑星表面が高温のマグマ・オーシャンになったりしますが、酸素は結合が強いので安定的な結合を続けます。
その証拠として、惑星の基で微惑星の一部である隕石のひとつである炭素質コンドライトの中には、軽いガスや酸化化合物、有機化合物が含まれていることがわかっています。
(※ここまでの画像はコチラからお借りしました。)
◆ ◆ ◆ 地球は、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)、土(SiO2)、鉄鉱石(Fe2O3)という酸化化合物の星
前回の記事では恒星内で元素が生成する過程を見ましたが、今回は恒星の外で元素から酸化化合物の分子が形成され、それが基となって惑星が誕生する過程を見てきました。
以下は、元素から惑星への流れをモデル化した図です。
(※図は当ブログで作成しました。)
以上見てきたように、形成された惑星の中で、地球ぐらいの環境条件・気温なら、水(H20)が液体(→海)、二酸化炭素(CO2)が気体(→大気)、土(SiO)や鉄鉱石(FeO)が固体(→地殻)になります。
つまり、地球は、上記の酸化化合物が元となり、誕生したのです。
大気や地殻はもともと惑星の中にあったものから形成されるイメージが湧きますが、「海」は地球外からきた、という説もあるようです。
「海(H2O)」の起源はどこにあるのでしょうか?
最後に、地球の海はどこからきたのか、推測してみました。
◆ ◆ ◆ 地球の海(H2O)は、どこからきたのか
最近の調査では、原始地球や微惑星の元でもある隕石の中には軽いガスの水素(H2)と酸素(O2)との酸化化合物であるH2Oを鉱物の形で持っているものがあることがわかってきました(鉱物の結晶中に水分子としてH2Oを固定している、これを含水鉱物という)。ほかに、NやCも含まれます。
とくに炭素質コンドライト(※石質隕石のうち、いろいろな化合物や有機物の形で炭素原子を含むもの。リンク)の中には、H2Oを6%も含むものがあります。原始太陽系星雲のなかで地球の材料となった微惑星全体を平均しても、1%くらいのH2Oが含まれていたと考えられています。現在の地球の海水の質量は、地球の質量の0.027%です。つまり、微惑星の中のH2Oの40分の1が脱ガスすれば量的には充分ということになります。
そのため、地球集積の終わりの方で、H2Oをたくさん含む炭素質コンドライトや彗星の集中的な衝突が起こった可能性もいわれ、原始地球に降り注いだ炭素コンドライトの隕石が地球の海の起源という説もあります。しかしながら、隕石により持ち込んだというのもありますが、地球を形成した微惑星の中に、すでにH2Oが含まれていたと考える方が自然です。
◆ ◆ ◆ まとめ
・恒星内元素合成で生成された「元素」が、恒星外で電気の力(クーロン力)によって、化学結合することで「分子」が形成された。
・分子同士が電気的結合を重ね、質量が増えることで、今度は重力によって衝突・合体を繰り返し「惑星」に成長する。
・地球は、上記の過程で生成された酸化化合物である「水(H2O)」、「二酸化炭素(CO2)」、「土(SiO2)」、「鉄鉱石(Fe2O3)」が基となり、誕生した。
・地球の海(H2O)も、地球を形成した微惑星の中に存在していた含水鉱物の水分子の結晶が、脱ガスして冷やされ、液体化されることでできたと推測される。
さて、今回は、元素から分子が生まれ、それが元となり惑星(その一つが地球)が誕生するところまでを扱いました。
次回は、このように形成された地球が他の惑星にない大気をどのように形成していったのかを扱います。お楽しみに!!
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2012/10/1207.html/trackback