【地球のしくみ】26 ~大気編(12)磁気圏~宇宙と大気の間、放射線が飛び交う場で、地球磁力線がプラズマの持つ磁力線と融合し、押し流してくれている
大気編シリーズは、
【地球のしくみ】24 ~大気編(10)~紫外線を吸収する大気のメカニズム(酸素⇔オゾンの循環サイクル)~
【地球のしくみ】25 ~大気編(11)大気中の電子が、太陽からの強力な電磁波を「吸収→反応→放射」することで、オゾン層も電離層も形成される。
で、γ線、X線、紫外線が電離層とオゾン層でブロックされている仕組みを見てきました(層がブロックしているのではなく、大気がブロックしてくれた結果が層になっている!)。
今回はさらに上空(外側)のバリア、磁気圏です。
そこでは、今まで見てきた電磁波より強烈な放射線、荷電粒子(プラズマ)の進入を防いでくれているのです。
画像はhttp://www.geocities.jp/miyazakis2/さんからお借りしました
◆ ◆ ◆宇宙は放射線で満ちている
実は、宇宙は、さまざまな種類の放射線で満ちています。
◆太陽風
太陽は常に核爆発しているような存在ですから、表面は高温で、巨大な爆発を活発に繰り返し、コロナを吹き出しています。その中でも特に巨大な爆発は、太陽の引力を振り切って超高速で大量の粒子を吹き出します。これが太陽風で、約100万度の高温状態の電子と陽子が分離してイオン化したプラズマ粒子のガスです。地球付近に到達した状態では、太陽風は温度が約10万度、速度が秒速450万キロで、プラズマ粒子数が1センチ立方あたり5~10個となっています。
◆宇宙線
宇宙空間を飛び交う高エネルギーの放射線のことです。宇宙線の起源のほとんどは、銀河系内の超新星爆発などであると考えられています。主な成分は陽子であり、アルファ粒子、リチウム、ベリリウム、ホウ素、鉄などの原子核が含まれており、地球にも常時飛来しています。
これらのプラズマ放射線から地球上の生物を守っているのが磁気圏なのです。
◆ ◆ ◆磁気圏とは?
画像はhttp://polaris.nipr.ac.jp/~academy/jiten/aurora/07.htmlさんからお借りしました
磁気圏とは、地球磁場が形成している磁気の場です。その形状は彗星のようなたなびいた形をしています。太陽昼側で地球半径の約10倍、夜側の尾の長さは約100~1000倍にも達します。
荷電粒子(プラズマ)は磁力線に平行して動くことが出来ますが、垂直方向では簡単に横切ることが出来ません。故に、太陽風や宇宙線は磁力線に沿って流れてゆき、大気圏にそのまま進入することがありません。これが磁力圏のバリアです。
長く引き延ばされた磁気の尾には磁力線に囚われたプラズマが薄く引き延ばされた空間に滞留しています。これがプラズマシートと呼ばれ、このプラズマシート中のプラズマが何らかのきっかけで磁力線にそって加速し、地球大気(電離層)へ高速で降下することがあります。大気中の粒子と衝突すると、大気粒子が一旦励起状態になり、それが元の状態に戻るときに発光します。これがオーロラです。
実は、太陽自身も強力な磁力線を形成しており、地球はその中に入っています。地球周囲の磁力線は、地球磁力線と太陽磁力線の合成となっているのです。
◆ ◆ ◆なぜ磁力圏はプラズマの進入を防ぐことが出来るのか?
画像はウィキペディアよりお借りしました
それでは、なぜ、「荷電粒子は磁力線に沿って動く」ことになるのか
それを理解するために磁力とは何か?を調べてみます。
◆磁力とは?磁力線とは?
磁力線とは、磁力を理解するために可視化した便宜上のベクトル線です。
磁力とは何か?はどうも現代物理学も明確に答えられていないようです。ここでは、そのような力が働く、というところから始めます。
磁力を理解するとき、電気的な力、=(+と-で引き合い、+と+で反発する力)と比べると、全く異なるのが、磁力の発生するもの(=磁石)をどこまで分割しても、その極小の磁石にもNとSが存在するというところです。電気的な力では、+か-かに荷電した素粒子が存在します。
では、磁性を持つ最少の単位は何になるのでしょう?
それは、なんと、電子らしいのです。
◆ 磁力は電子のスピンから生み出されている
電子は角運動(ここでは回転と考えます)を行っており、スピンと呼ばれ、アップとダウンの2方向があるようなのです。このスピンによって電子は磁力を持っており、モデルとしては、地球と同じように磁力線を発生させています。電子だけでなく、荷電している陽子や原子核も同じように考えられます。
では、全ての物体が磁力を持つのか? プラズマ状態まで分解してみると磁力を持っているのですが、原子の状態で見ると、スピンの向き、アップとダウンが同数になっており、磁力の向きが相殺されて磁力を持っていないように見えるのです。
鉄が磁性を持つのは、その電子軌道にアップダウンの向きの数が偏る軌道が存在し、磁力を持つことになるのです。ただし、それも原子の磁性の向きが揃うという条件の時だけで、一般的には磁性の向きはバラバラで、鉄の塊としては磁性を表しません。その磁性の向きを揃えることによって磁力を持ちます。鉄の針を磁石で擦ると、針も磁石になる、アレです。
画像は電気の歴史イラスト館さんからお借りしました
◆プラズマの磁力線と地球の磁力線が融合し、動きを制限する
ここからは、推論です。
すると、太陽風や宇宙線で飛んで来るプラズマ=放射線は、荷電状態で、磁力を持っていますから、当然、その極小の世界で磁力線を発生させています。
それが、地球磁気圏に入ろうとすると、プラズマの磁力線と地球の磁力線はベクトル合成するように融合し、磁性を持つプラズマの動きを制限します。これが磁気圏がプラズマをブロックしてくれる仕組みではないかと考えます。太陽風の圧力によって、地球磁気圏が吹き流される現象もこれで説明出来ます。
※磁界を持ったプラズマが地球磁気圏に突入すると、磁力線が融合し、絡め取られ押し流される
◆ ◆ ◆宇宙は放射線で満ちている、大気と地磁気の守りがなければ生物は生きていけない
◆ 放射線~電磁波の種類と地球バリア
前々回からの、降り注ぐ有害放射線、電磁波とバリアの関係は、以下のような表になります。
地球生物にとって危険な、荷電粒子線と高エネルギー電磁波は、地球が持つ3重のバリアで防がれていることが解りました。これらの内容をまとめると、
◆ 高エネルギーのものだけを遮蔽してくれている
・ 最も高エネルギーであるプラズマ~粒子(質量がある)として認識出来るほど高エネルギー~をブロックしてくれているのが、磁気圏。自ら磁界を持つ粒子は磁気圏によって絡め取られる。
・ 次ぎに有害である放射線γ線、X線は、電磁波としてしか認識出来ない~質量を把握出来ない~ものであり、磁力線には巻き取られない。故に、磁力圏を通過してくるが、地球の持つ大気圏、窒素の働きによりブロックされる。
・ 放射線と認識されないが、その次ぎに有害である電磁波、紫外線は大気圏の酸素の働きによってブロックされる。
・ これらの働きの結果として形づくられたのがオーロラや、電離層やオゾン層である。
◆地球生物はこれらの働きを前提に進化してきた
以上、宇宙から降り注ぐ有害放射線、電磁波を地球自身がそのバリアで生物たちを守っていることが解りました。大気と磁気の両方がある星が、生物を育むことが出来たのです。
地球の生物は、この条件下で進化してきました。逆に言えば、だから地球上の生物は放射線、高エネルギー電磁波に非常に弱いのです。
私たちが、放射線廃棄物を処理できない原子力利用に反対し、一般生活の中での電磁波の影響を懸念する根本はここにあります。
これで、【地球のしくみ】の「大気編」を終わります。地球が持つ、他の惑星には無い、「磁気圏」、「電離層」、「オゾン層」は46億年の歴史の中で、地球と生物の両者で形成してきたものなのです。
次回は、【地球のしくみ】全体のまとめを行います。
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