【地球のしくみ】25 ~大気編(11)大気中の電子が、太陽からの強力な電磁波を「吸収→反応→放射」することで、オゾン層も電離層も形成される。
http://rpic.jp/health/■前回は、太陽からの電磁放射エネルギーのうち、紫外線BおよびCによって、
成層圏の酸素分子の電子が励起し、オゾン層(O2⇔O3)が作られる仕組みがわかりました。
【地球のしくみ】24 ~大気編(10)~紫外線を吸収する大気のメカニズム(酸素⇔オゾンの循環サイクル)~
今回は、その成層圏のオゾン層のさらに上空、熱圏にある『電離層』ができる仕組みを紹介します。
(放射線保護情報センター)
◆ ◆ ◆ 「吸収→電離→組替え衝突→解離再結合→放射」を繰り返す大気が電離層
◆電離層とは?
成層圏の上空、数十キロ~数百キロの熱圏になると、大気は分子だけではなく原子(窒素原子や酸素原子)が主なガスとして存在します。
地球には太陽からエネルギーの高い電磁波(紫外線、X線、ガンマ線)が放射されていますが、これら電磁波がこの熱圏中性大気の酸素、窒素ガスに降り注ぐと、その高いエネルギーを吸収して、原子や分子の中から原子核の引力圏外まで電子が飛び出します。
(電離圏の形成)
その結果、酸素・窒素ガスが、自由電子と正イオンである原子イオンや分子イオンに変化します。
これを『電離』そして『プラズマガス化』といい、電離された気体はプラズマ(電離ガス)の層を形成します。
このように、太陽から放射される生物にとっては生存を脅かすほどの高エネルギーの電磁波(紫外線、X線、ガンマ線)を、生物の生存域の地上に降り注ぐことを防ぐメカニズムが熱圏の大気にはあり、そのメカニズムの結果として出来たのが電離層です。
◆電離層は毎日、生成と消滅を繰り返している
熱圏内の原子・分子は、太陽からの放射線を受けて電離します。
しかしながら電離しても、自由電子と陽イオンのプラズマ状態で密度が濃くなった電離層内では電子と陽イオンはすぐに再結合してしまいます。
そのため、太陽からの電磁放射エネルギーの供給がなされなければ、自由電子と原子核の陽イオンのプラズマ状態は維持できなません。
ですから、電離層は太陽の出ている昼間に電離が生じ電離層を生成し、日が落ちている夜間は電離したイオンが再結合し電離層は消滅するというサイクルを持っています。
【電離の仕組み】
(電離)
O + hv → O+ + e 電離生成
N2 + hv → N2+ + e 電離生成
O2 + hv → O2+ + e 電離生成
=============================================================
(衝突による組換え)
O+ + N2 → NO+ + N 組替え衝突
O+ + O2 → O2+ + O 組替え衝突
N2+ + O → NO+ + N 組替え衝突
=============================================================
(再結合)
NO+ + e → N + O 解離再結合によるイオン消滅
O2+ + e → O + O 解離再結合によるイオン消滅
N2+ + e → N + N 解離再結合によるイオン消滅
このように、生成⇔消滅を繰り返します。
◆ ◆ ◆ 電離層の起源
前回紹介したオゾン層は、約4億年前、光合成細菌が増殖し、地球の大気に酸素が充満した時期に完成したと考えられます。
では、電離層誕生はいつなのでしょう
電離層はオゾン層とは違い、大気中に存在する複数の種類の原子・分子が電離することで形成されています。ですから、大気中に特定の原子が誕生した時点で形成されたわけではなさそうです。
太陽からの電磁波は、地球が誕生したときから降り注いでいるので、「電離層が形成されたのは地球に大気が誕生した時期」と同じだと推測できます。
大気は、引力で留めておける惑星のサイズが必要で、また星の温度が高すぎると大気は逃げるので、地球に大気が形成されたのは、原始地球が今の地球の0.4倍の大きさを超え、マグマオーシャンが終えた、46億年前の地球誕生の極初期に形成されたと推測されます。
当時の地球は、脱ガスによってCO2やN2、H2Oのガスの大気を形成します。
大気の主成分がCO2である金星の電離層の主なイオンは、CO2+ とO2+ ですから、
原始地球の電離層の主なイオンも、当時の大気の成分と同じCO2+やN2+、H+、O2+だったのではないかと考えられます。
次は、その電離層の特徴をみていきましょう。
◆ ◆ ◆ 電離層は、大気中の気体の種類と密度、受けるエネルギーによって層を形成する
◆適度な高度、適度な電磁波によって、上空80~500km付近に電離層が形成される。
電離層の電離ガスのつくられる割合は、「電離される大気中の気体の密度」と「電離を引き起こす極端紫外線やX線の強さ(波長の短さ)」の掛け算になります。
高度が上がりすぎると、太陽から放射される極端紫外線やX線の強さは充分強いですが、電離される大気中の気体の密度が薄くなります。そのため電離ガスはあまり作られません。
逆に、高度が下がりすぎると、電離される気体の密度は高くなりますが、極端紫外線やX線は途中で吸収されてしまい、やはり電離ガスはつくられません。
このため、低空では気体の電離を維持することはできません。
その結果、地上80kmから500kmの範囲の気体分子が、ちょうどよく電離された状態になります。
◆大気中の気体の種類と密度、受けるエネルギーの違いによって層を形成する
.高度によって原子・分子の分布する種類が違うため、電離される原子・分子も変化する。
.太陽から放射される電磁波は太陽風、波長10~100nmの遠紫外線、波長1~10nmの極端紫外線、X線といった様々な要素がある。その電磁波の波長によって、大気中のどの高さで、原子・分子を電離するかが違うため。
.太陽との距離によって、大気が受けるエネルギーが変化する。
これらの条件によって層を形成します。
電離層は熱圏中の各要素の違いによって、性質の異なる4つの層を形成し、地上に近い側から順にD層、E層、F1層、F2層の4つの層に分かれ、生成・消滅を繰り返しているのです。
(サラリーマン宇宙を語る)
◆各層の性質と特徴
<D層>
高度:65~100km付近、電離層の最も下部の領域をD層と呼びます。
反応する波長:121.6nm(極端紫外線よりも長く、紫外線Cよりも短い波長)
主要なイオン:主にNOが電離しています。
<E層>
高度:90~150km付近です。
反応する波長:極端紫外線、90nmより長い波長です。
主要なイオン:一次イオンとしてN2+ 、O2+、O+が電離生成されるが、その後、化学反応するので、基本的に存在するのは、NO+(75%)、O2+(25%)程度です。
<F層>
F層には昼夜発生し続けるF2層と、夜になると消えてしまうF1層があります。
-F2層-
高度:250~300km付近、F2層は、電離圏の中でも最も高い電離密度を持つ層です。
反応する波長:極端紫外線、15~90nmの波長です。
主要なイオン:主要なイオンはO+です。F層のさらに上層では、より軽いH+、He+が主要なイオンになってきます。
F2層の高さは季節で変わり夏は250~300km、冬では350km~500kmです。
-F1層-
高度:150~250km付近、F1層はE層と類似の層で150~250kmに現れて、昼間の正午に電離のピークを向かえ、F1層へ電子を供給して夜に消滅します。
反応する波長:極端紫外線です。
主要なイオン:主なイオンはNO+ 、O2+です。
~F2層が消えない理由~
電離圏の上空は、プラズマ圏又はプロトン圏と呼ばれ、昼間、電離圏で起きる電離生成によって、電離圏からプラズマ圏へと電子を供給しています。
逆に、夜間のF2層での電離生成がなくなるとプラズマ圏のH+が磁力線に沿って下降し、下の式のように電離層へ電子を供給してF2層の持続に貢献しています。
プラズマは、常に+イオンと電子が対になった量で存在し、常にそのバランスを取ろうという性質を持っています。夜になり、F2層の電子が消滅してそのバランスが崩れると、それを補完するように、ゆっくりとプラズマ圏から電離層へ電子が供給され始めます。
そうすることで、一晩中F2層への電子の供給が保たれるので、F2層は消えないのです。
◆ ◆ ◆ 大気中の電子が、太陽からの強力な電磁波を「吸収→反応→放射」することで、オゾン層も電離層も形成される。
電離層は、各層ごとに異なる超短波長の電磁波を原子・分子が吸収し電離・再結合し、熱エネルギーとともに吸収したときよりも弱い電磁波で放出します。
その結果、熱圏は、下層の成層圏上部よりも恒温状態になるのです。
電離層もオゾン層も原理は同じで、『吸収→反応→放出』です。
電離層は、極端紫外線(X線など)を吸収し、「電離→再結合」することで紫外線B・Cを放出します。
オゾン層は紫外線B・Cを吸収し、「励起→遷移」することで紫外線Aを放出します。
その放出された紫外線Aは、オゾン層付近で原子・分子に吸収されますが、原子・分子を電離・励起するほどのエネルギーはありません。せいぜい原子の電子を振動させる程度です。
振動にエネルギーを使うので少し弱まって放出されますが、一見すると透過したように見えます。
紫外線Aは電離層、オゾン層を透過し直接地上へ到達しているように見えますが、実はこれも吸収→放出なのです。
大気の原子・分子による電磁波の吸収→反応→放出という一連の流れにより、Ⅹ線などの極端紫外線が弱まり、紫外線B・Cのような短波長の電磁波を成層圏の酸素やオゾンが吸収することで地上に生物の生存を脅かす高エネルギーの電磁波が降り注ぐのを防いでいるのです。
そして、電離層のさらに上空では、より高エネルギーの太陽風を防いでいる磁気圏という層が存在します。磁気圏もまた、地球の持つある特徴によって形成され、結果として私たちを太陽風から守っています。
次回は、その磁気圏に迫ります。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2013/04/1316.html/trackback