【地球のしくみ】28(総集編2/4)~万物は融合し組織化・秩序化する方向に進化を塗り重ねる~<生命の誕生編>
前回の総集編第1回は、「原子そして分子の進化」「地球の誕生」「生命誕生以前の地球環境の進化」の歴史を見ていきました。そしてそこから、『地球に存在する全ては、融合し組織化・秩序化する方向に進化を塗り重ねる』という地球のしくみ(摂理)をみてとりました。
総集編の第2回の今回は、「生命誕生」に至る地球環境の進化過程です。
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生命誕生には、大きく4段階の大進化が必要になります。
【1】 無機分子から生命前躯体となる有機分子が生成する進化
【2】簡単な有機物が重合し、タンパク質を構成するアミノ酸などの生物分子になる進化
【3】生物分子がさらに重合し、タンパク質や核酸などのより高度に組織化された高分子になる進化
【4】その高分がさらに重合し、酵素、RNA、DNAを経て、それが組織化して生命へ至る進化
生命誕生には、水は不可欠で“太古の海は生命の母”である。
しかし、単純に原始の“海中”で生成されたのではなく、地球環境の進化の過程で、
【1】有機分子への進化、【2】生物分子への進化には、『粘土』と『構造水』がカギを握っている。
そして、【3】高分子への進化、【4】生命誕生への進化は、『膜』がカギを握っている。
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それでは、「無機界の原始地球に、どのようなメカニズムで、生命の素となる有機分子が出現し、高分子化して生命までに進化したのか」を見ていきましょう。
D.生命前躯体となる有機分子のカギを握る「水」「ケイ素」「鉱物」の組織化
◆他の惑星と異なり、地球に海(水)が安定して存在し続けてきた条件
46億年前の地球誕生後から39億年前までの隕石重爆撃期を終え、地球が冷却して地表の温度が水の臨界温度(374℃)以下になると、原始大気中の水蒸気は水に変わり(「相転移」)、広大な海洋を形成する。
ただ、それは他の地球型惑星(水星、金星、火星)も同じで、他の惑星と異なり、地球だけが液体の水(=海)が現在に至るまで安定して存在出来たのは、特に以下の理由が大きい。
太陽からの距離が、ハビタブルゾーンの温度帯にある
地球が融合し組織化してゆくなかで、水素を散逸させない重力をもつ質量になった
大気による温室効果
◆様々なものを溶かし融合する「水」
水分子は酸素原子と水素原子の電気陰性度の違いによって、水素が+、酸素が-の電荷に偏った極性を持つ。正の電荷を帯びた水素と負の電荷を帯びた酸素は、電荷引力を持ち、水分子が一種の磁石のような状態になる(「極性分子」)。
極性を持った水素原子が電荷引力によって、他の物質と結び付く(水素結合)ことによって、水は様々な物質を溶かす親和力を発揮する。
また、水分子は極性を持つため、H=O=Hが一直線に繋がっておらず、折れ曲がったような構造をしている。そのため、水分子の連結は隙間の多い構造となり、他の物質がその隙間に入り込み易い。
また、水中の水分子同士は、くっついたり離れたりを繰り返し、かつ同じ水分子同士でくっついたり離れたりしているのではなく、結合・解離する相手は常に変化している。そして、結合と解離を繰り返しながら、2~5個の水素結合した状態の集合体(クラスター)を形成し、クラスター同士が引き合いながら液体の水を形成している。そして、このクラスターも同様に、結合と解離を繰り返すことで、常に新しいクラスターを形成し変化している。
こういった動的な分子構造をしていることによって、さらにすきまができやすく、他の物質を溶かし込みやすい。
さらに、水が物質を溶かしこむ力は温度と圧力に比例している。水にエネルギーが加わることで分子の運動が活発化し、水分子の結合が取れやすくなることで他の物質は水に溶けやすくなる。
原始地球は大気の温度300~400℃、海は150℃、大気圧が10気圧と非常に高いエネルギー状態と言われている。そうだとすると、原始地球の海は様々な物質を大量に溶かし融合していたと考えられる。
◆「ケイ素」と「金属イオン」が組織化した「粘土鉱物」の形成
★D-3(佳作)
【地球のしくみ】7 ~太陽系の中の岩石星である地球、そのカギを握るケイ素の秘密に迫る!!~
★D-4(佳作)
【地球のしくみ】8~“岩石星”であるとともに、“水の星”でもある地球にしか存在しえない「粘土」~
地下深部に埋没した堆積物孔隙中の熱水にある岩石は、長い時間をかけて水分子と岩石中の鉱物が化学反応を起こし、鉱物中の金属イオンを含め様々な陽イオンを水のなかに溶かし込んでいく。
そして、陽イオンを切り離された岩石は、二酸化ケイ素単体(SiO2)(※石英の単結晶)に分解される。
ケイ素の電荷は+4(Si^4+)のため、二酸化ケイ素(SiO2)に水が含まれると、その4つの手全てに酸素イオンが結びつくことで、ケイ素イオンを囲む四隅を酸素イオンが配位した「ケイ素酸化物(SiO4)四面体」を形成する(共有結合)。(SiO2 + 2H2O → SiO4^4- + 4H^+)
そして、SiO4四面体は、特に酸素の供給が十分に行われていない原始の海の中では、四面体の3つの酸素イオンの頂点を隣の四面体と共有し“六角形網目状”に連結しシート状に伸びて広がる。
酸素イオンの成す正四面体空隙は、ケイ素イオンの最優先席となっていて他の金属陽イオンは四面体空隙に入ることはできないが、アルミニウムイオンは、イオン半径がSi^4+に近く、Si^4+と置換される場合がある。(「Al-同形置換」)。
置換された酸化力の高いアルミニウム(Al^3+)は、酸素(O)または水酸化物(OH)のイオンが配位してできる「水酸化アルミニウム(AlO6)八面体」を形成する(共有結合)。
そして、AlO6八面体も、上下の頂部を除く四隅の酸素イオンを隣の八面体と共有し“六角網網目状”に連結しシート状に伸びて広がる。
SiO4四面体シートは、隣の四面体と共有していない残りの1つの酸素イオンを、AlO6八面体シートの頂点と共有して強く結合するようになる。
そのため、2枚のSiO4四面体シート(T層)が、AlO6八面体シート(O層)を挟んだ、サンドイッチ構造(T-O-T層)をつくり、そのT-O-T層が基本単位となり、積層立体構造の巨大な結晶「粘土鉱物」が形成される。
そして、T-O-T層の底辺・上辺は、マイナスに荷電した酸素イオンになるため、電荷バランスを保つために、その層間にナトリウムイオンやマグネシウムイオンなど様々な金属の陽イオンを取り込み収着させる。(「包摂」)
そして、層間にある金属は、バラバラのイオンではなく、最小単位を保った構造の鉱物として存在する(「鉱物の超微結晶」)。
T-O-T層とT-O-T層の間で、金属の陽イオンは、水と結合している方が安定して存在できるので、その層間には、極性をもつ水(H2O)も、OHまたはH2Oの形で取り込む。(「粘土鉱物の親水性」)
E.生命の誕生
◆粘土鉱物の層間で、鉱物と水の構造化(組織化)が、生命前躯体の生体分子を形成する
★E-1
【地球のしくみ】13~原始から一貫して、生命は「海=鉱物が溶け込んだ水中」で誕生し、育まれてきた
★E-2
【地球のしくみ】14~鉱物によって構造化された水(構造水)こそが、生命誕生に不可欠な環境条件だった!
鉱物は、T-O-T層とT-O-T層の間で、ケイ素酸化物(SiO4)四面体とイオン結合して、SiO4の最小単位の構造を保ったまま、3段階の大きさの塊の階層構造になっている。
この鉱物の3段階の階層構造は、「水」にも見られる構造で、一次・二次・三次粒子の大きさが、鉱物と水とでほぼ同じ大きさになっている。(「鉱物と水の相互作用」)
一方、水は様々な物質を包み込み結合するが、結合・離散を繰り返す水分子の中に、同じく構造をもった鉱物が入り込み鉱物が水に溶けこんだ状態になる。
そのことにより、水は、周囲の鉱物が持つ構造に沿って変化して構造化される。(「構造水」)
一方、鉱物を含んだ水中では、紫外線のエネルギーを加えると、アミノ酸、核酸、グルコース、脂質、糖類、アルコール類、炭化水素といった様々な生命の材料である生体分子(生命体前駆物質)が生成される。
そして、岩石(鉱物)の種類を変えると、生成される物質の種類も変わり、例えば、リン酸塩の多く含まれる玄武岩質の岩石を使うと、リン酸化合物であるATPやADPなどができやすい
⇒粘土鉱物の層間で形成された「構造水」のすき間に入り込んだ物質が、海底熱水孔などからのエネルギーが加わることで化学反応を起こし、無機物から簡単な有機物(アミノ酸、脂肪など)が生成される。
そしてそのなかの「脂肪酸」と、原始の海に多く溶け込んでいた「リン酸」が結合して膜の材料となる『リン脂質』が創られる。
◆膜内部で濃縮し融合させて高分子化することで、生物は誕生した
リン脂質の大きな特徴は、1つの分子が親水性と疎水性を併せ持つことにある。親水性の頭部は水とイオン結合するため、水に溶け込もうとするが、一方、疎水性の尻尾は水とくっつかないため、水と向き合おうとはしない。
それゆえ、リン脂質は集合し「膜」を形成していく。さらにリン脂質の膜は、疎水性の尻尾が水に触れ合わない形になろうとするため、自然と球形の袋になる。
そして、粘土鉱物の層間でアミノ酸が重合を塗り重ねてタンパク質が形成されると、そのタンパク質は高分子のためリン脂質の膜の厚みに比べて十分大きいため、リン脂質の袋の膜にタンパク質が突き刺さった形状の膜が登場する。
そして、膜にタンパク質が突き刺さることで、膜には小さな「穴」が開き、これにより水、金属イオンといった大きさの小さい分子しか透過出来なかったリン脂質の膜を、アミノ酸や糖といった比較的大きな有機物が透過できるようになる。
そうやって外部から膜内部に生体分子の有機物を取込む膜が形成される。
膜内部では外部の海に比べて、圧倒的に有機物同士が出会える可能性があがるため、膜の中で出会った有機物は、重合(結合)し『高分子』となる。
そして一度高分子となったら、大きくなるので袋の中から出る事はできなくなり、また、外部から取込んだ有機物と重合を繰り返し、どんどんと“組織化”して、より高分子で複雑な物質がつくられる。
そしてその中には、塩基と糖そしてリン酸が高分子化してできる核酸もあり、この核酸がさらに高分子化したものがRNAであり、それが2重構造をとったものがDNAであり、そして生命誕生に至る。
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◆生命誕生のプロセス(まとめ)
「原始の海」は、水の高い溶解性で「大気」成分や様々な「鉱物」が溶け込んだ海。
熱水中の鉱物を含む岩石は、化学反応により金属イオンを含めた様々な陽イオンを水中に遊離させる。
陽イオンを切り離された岩石は、ケイ素酸化物(SiO4)四面体を基本単位に六角網を構成してシート状に広がる(T層)。
ケイ素を置換した酸化力の高いアルミニウムは、水酸化アルミニウム(AlO6)八面体を基本単位に六角網を構成してシート状に広がる(O層)。
T-O-T層が基本単位となって積層立体構造の巨大な結晶を形成する。(「粘土鉱物」)
T-O-T層とT-O-T層の間は、電荷バランスを保つために、ナトリウムイオンやマグネシウムイオンなどの様々な金属の陽イオンを取り込み収着させる。(「包摂」)
そのため、金属は、バラバラのイオンではなく、最小単位(SiO4四面体)を保った構造の鉱物として存在する。(「鉱物の超微結晶」)
T-O-T層とT-O-T層の層間には、極性をもつ水(H2O)も、OHまたはH2Oの形で取り込む。(「粘土鉱物の親水性」)
そして、鉱物によってこの水が構造化される。(「構造水」)
粘土鉱物の層間にある構造水の隙間に入り込んだ物質の化学反応が、海底熱水孔などからのエネルギーが加わり促進され、無機物から簡単な有機物(アミノ酸・脂肪など)が生成された。
そして、その有機物から「膜」が生まれ、「膜の内部」で有機物は濃縮され高濃度化し重合を塗り重ねて組織化することで、高分子化合物(タンパク質など)が生成され、始原生命は誕生した。
今回はここまでです。
生命誕生には、海底で組織化して形成された「粘土鉱物」「構造水」という場が密接に関係している。
その場において、タンパク質を構成する20種のアミノ酸がなどの生命発生に必要な生物有機分子が、重合(連結)を塗り重ね、タンパク質(酵素)や核酸などのより高度に組織化した高分子になる過程に生命誕生がある。
そしてそのことは、『地球に存在する全ては、融合し組織化・秩序化する方向に進化を塗り重ねる』という地球のしくみ(摂理)に則った一過程に生命があることを教えてくれます。
今回の「無機物の地球環境から有機物の地球環境への進化」⇒「生命誕生」の歴史に続いて、
次回の総集編第3回は、「生命の進化」を扱い、そのなかで地球のしくみ(摂理)を見ていきます。
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