【人類の成功の秘密は、社会脳(=共認形成力)にあり】科学を身近に☆NewStream
こんにちは!
旬の話題から自然の摂理が学べる!科学を身近に☆NewStreamです。
今週の科学ニュースを紹介します。
今日は人類の進化についてのニュースです。
人類は、哺乳類の中でも力が強いわけでも、脚が速いわけでもありません。
それでもここまで生き残れた(⇒進化した)理由は何だと思いますか?
火や道具を使えるようになったから?
それとも言葉を使えるようになったから?
実は、それよりも「重要な能力」が人類の進化(成功)の鍵を握っていたという研究発表がされました。
以下、人類の成功の秘密は、社会脳にあり/WIRED.jp より引用します。
「人類と、個々人の成功の秘密は、その社会脳にある。数多くの多様な関係をつくることのできる能力のおかげである」。
これが、イギリスの人類学者ロビン・ダンバーが行ってきた、20年に及ぶ霊長類の脳についての研究の結論だ(最新の研究は「Proceedings of the Royal Society B」に掲載されている)。
動物のなかで最も力が強いわけでも最も脚が速いわけでもない人類が成功した理由は、抽象的思考を行う能力や、道具を操作する能力や、非常に多様な状況に対応する能力のような、大きな脳に起因する能力にあると、長い間考えられてきた。
しかし、ダンバーにとっては、こうした説明は十分ではなかった。彼をはじめとした人々は、多様で柔軟な仕方で他人と継続的な関係をつくり、共同作業をしたり、考えや意識を共有することができる能力が大きく貢献したと確信していた。
こうして、「Scientific American」が報じているように、ダンバーはこの主張を実証するために調査を始めた。
1992年にダンバーはある研究を発表し、人類以外の霊長類における大脳皮質の大きさと脳の残りの部分の比率は、それぞれの種の典型的な社会グループの大きさに連関して増加することを示した。
例えば、タマリン(オマキザル科に属するサルの一種)のこの比率は約2.3で、平均的な社会グループは5個体でできている。これに対して、オナガザルは約40個体の社会的ネットワークをもっており、比率は3.8だ。
この研究を出発点にして、ダンバーは社会脳について仮説を立てた。これによれば、大脳新皮質の相対的な大きさは、社会グループが大きくなるにつれて成長する。このようにして動物は、安定的共存に必要なだけの関係の数を維持し管理することができる。
ダンバーによれば、同じ比率に従うと、人類にとって社会グループは約150人となるはずだ。これが、この研究者が「クラン」と呼んでいるものの大きさだ。
「Proceedings」に掲載された研究では、ダンバーはさらに一歩進んで、彼の推測を種のレヴェルから個体のレヴェルに移している。わたしたちの脳は大きいため、わたしたちが必要としている大きく複雑な社会的ネットワークを管理することができるというのだ。実際、この人類学者と彼のチームは研究のなかで、わたしたちそれぞれの社会的ネットワークの大きさが、脳の前頭部の特定の領域、前頭前皮質のヴォリュームと線形で相関していることを示している。
しかし研究者たちは、大きな数の社会関係を維持できるかどうかは、単に前頭前皮質の大きさの問題ではないことも示している。よく発達した前頭前皮質の存在に加えて、しっかりとした「心の理論」をもつことが必要だというのだ。
すなわち、他人の精神状態や、彼らの感情や、彼らの意識を理解し、これらを基にして彼らや自分自身の行動を予測できる能力が必要ということだ。
そして、人類においてこの「心の理論」は、ほかの霊長類と比べて非常によく発達しているのだ。
大脳新皮質の相対的な大きさは、社会グループの大きさと連関があるということ。
つまり、社会的なネットワークを形成するには、(ここでは“社会脳”と呼ばれていますが、)他者との共認形成(他者と共同したり協力したり、他者と課題や役割、評価等を共に認め合う能力)が不可欠。この共認形成力が、脳の進化→人類の進化の鍵であるということです。
話は少し逸れますが、人類は他の動物に比べて、生まれてすぐに(本能的に)とれる行動が実に少ないと思います。例えば、動物の場合、生まれてすぐに立ったり、歩いたり、飛んだりすることができるのに比べ、人類はゆっくりと周囲の人々から歩くことについて学び、食べること(動物は本能的に自ら食べられる動植物を認識しているが、人類は殆ど認識できない)を学びます。
このような生きていくうえで重要な本能次元の機能だけでなく、喜び、悲しみといったような感情=共認次元の機能、言語など観念次元の機能も廻りのみんなから教えてもらって獲得していきます。
人類の進化適応過程には、共認形成力が重要であることを示唆している事例かと思います。
そして、この共認形成力には他者の意識を理解する能力、つまり「同化能力」が必要になるということもこの研究で述べられています。
>他人の精神状態や、彼らの感情や、彼らの意識を理解し、これらを基にして彼らや自分自身の行動を予測できる能力が必要ということだ。
人類は同類だけではなく、自然対象に対しても共認機能を駆使し、対象に同化応合することで観念機能を形成した。つまり自然対象の語りかける声を聞き取る=それが意味するところや、背後に働く力を読み取ろうとしてきた。つまり人類は全ゆる対象に対して共認機能=同化機能を用いており、それがなければ適応できない存在なのである。人類とは「同化存在」なのだ。
【対象への同化について/るいネット】
人類とは、まさに「共認動物=共認によって統合される動物」であり、同時に他者と共認形成するには「同化能力」が不可欠であることから、「同化存在」でもあるということです。
(参考)
・共認適応/るいネット
・対象への同化について/るいネット
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