コロナによる「隔離と孤独」は人類にどのような影響を与えるのか?
ウイルス感染に対する恐怖や前代未聞の生活・社会の変化、経済的にも先の見えない不透明さの中でストレスを感じている方も多いと思います。
「コロナ疲れ」や「コロナ鬱」、「コロナ恐怖症」、「コロナストレス」等々数か月前には全く予想もできなかったような事件が多発しています。
今回の緊急事態宣言による外出自粛要請によって、人と人の繋がり、社会との繋がりを断ち切られています。
一方、現代社会においては、SNSなどで、いつでも誰とでも繋がりを持てる中、孤独を感じる人の数も増加しているようです。(以下、『世界の裏側ニュース』より引用)
テクノロジーが進化した社会で強まる孤独感
お互いがデジタルにつながりあったこの現代の世界に、孤独で怒りを抱えている人の数が前代未聞なほど増えています。テクノロジーが原因で人類の共感力(empathy)が低下しているのでしょうか?
今日の経済で相互間の繋がりが拡大する中、分離され、孤独であると感じる人の数が増加するという、新しい世界的な現象が起きています。
我々の身体を構成している細胞がそうであるように、生物は群れを成しており、人類が過酷な自然外圧に対応するために集団単位で適応したという事実にも繋がっています。
つまり、人類にとっては、自然外圧のなかで単体(個人)で生存するという事実はなく、あくまで集団単位(=人と人との社会的関係)で自然外圧に適応してきました。
人類には「相手の喜び=自分の喜び」という感情・感覚が備わっています。この「相手の喜び」とは、自分の存在が相手から肯定的に受け止められていることの現れであり、相手がいるからこそ実現するものなのです。
そしてそれは、人間の生存にとって、食欲や睡眠より遥かに重要なのです。
今回のコロナ騒動によって、人類は社会、仲間と切り離され「活力の源」を奪われようとしています。
InDeepさんの『これから何億人が「コロナウイルス以外で」亡くなるのだろう…』より引用します
それでも世界は続けるのか?
医学誌ランセットに掲載された論文より
・The psychological impact of quarantine and how to reduce it
最も人間を死に至らしめる要因は「抑圧と孤独」そして「失業」
私は一貫して、隔離や封鎖や自宅待機や移動の制限に反対ですが、その簡単な理由は、
「社会全体の死亡率があまりにも上昇しすぎる可能性が高いため」です。
冒頭の医学誌ランセットの論文は、今年 2月26日に掲載された「隔離の心理的影響とその影響を減少させる方法」という内容のもので、これはつまり、この時点で、
「隔離や封鎖や社会的距離に代表される《人を孤独に追い込む政策》は、人体への大きなリスクを含む」
ということが、医学界での認識として存在していることを示します。
しかし、この 2月 26日の時点では、徹底した隔離や封鎖対策がおこなわれていたのは、主に中国で、他の国、特にヨーロッパやアメリカでは、ほぼ他人事でした。
このランセットの論文を書いた研究者たちは、英国のロンドン大学キングス・カレッジなどのイギリスの科学者たちが中心で、まさか、この論文を発表してから 1月半ほど後に、自分たちの暮らしている英国などがこれほどの事態になるとは想定していなかったと思われます。
英国の状況は、4月11日現在「感染確認数 7万3758例、死者 8958人、死亡率 12%」となっています。
イギリスも、イタリア等と同様に極めて高い致死率となっていますが、最も注目すべきは、
「ヨーロッパで封鎖をおこなっている国は例外なく、どんどん致死率が上昇している」
ということです。
ヨーロッパの場合は、感染者数の増加率より、「死亡数の増加率」のほうがはるかに上回って進行しています。
たとえば、以下は、フランスの過去 2ヵ月の感染確認者数と死亡者数の推移です。
フランスの感染者数の推移
・zerohedge.com
フランスの「封鎖(ロックダウン)」は、3月17日に始まりました。
それから、まだ 3週間ほどですが、
・感染確認数 9134人 → 12万4869人
と大幅に上昇しましたが、しかし、それよりも、
・死者数 11人 → 1万3197人
と、極端に上昇していることに注目していただきたいと思います。
そして、封鎖が続く限り、これは、イタリアでもフランスでもアメリカでも、あるいは日本で封鎖が始まれば、日本でも、つまり、
「これは、封鎖をおこなっているすべての国で起きる」
ことが予想できるのです。
なぜなら、「強制的な隔離、封鎖、社会的距離は、人の死亡率を大幅に高める」ことが医学では確定的に証明されているからです。
「隔離は人を死に導く」というのは、完全にエビデンスに則った真理であり、すなわち、上のフランスのグラフにおいても、おそらくは、封鎖と隔離がおこなわれていなければ、このような悲惨な死亡率の上昇は、「なかった」はずなのです。
やはり悲惨な状況となっているアメリカも同じです。
無効な対策により、犠牲にならなくてもいい人たちが巻き込まれている。
大勢の命がウイルス以外でも奪われている。
冒頭のランセットで述べられていることは、おおむね、そのようなことです。
そのランセットの論文の冒頭の「概要」は以下のようになっています。
隔離の心理的影響とその削減方法
The Lancet 2020/02/26
概要
2019年12月のコロナウイルス感染症の発生により、多くの国で感染に接触した可能性のある人たちに、自宅あるいは専用の検疫施設で隔離するように依頼する例が増えている。しかし、隔離の適用方法の決定は、入手可能な最良の証拠に基づいて行う必要がある。
今回、電子データベースを使用し、隔離の心理的影響のレビューを行った。見つかった 3166件の論文のうち、24件がこのレビューに含まれている。
ほとんどの研究では、隔離による、心的外傷後ストレス症状(PTSD)、混乱、怒りを含む負の心理的影響を報告している。
より長い隔離期間、感染への恐れ、欲求不満、退屈、不十分な物資の供給、不十分な情報、経済的損失がストレスを生み出していた。一部の研究は、その影響が、一時的なだけのものではなく、長期的になることを示唆した。
隔離が必要と思われる状況では、職員は、隔離の根拠と手順に関する情報を十分に提供し、十分な物資が提供されることを確認する必要がある。そして、より広い社会への隔離の利点を公衆に考えさせることによって利他主義にアピールすることが有利に働く場合もある。
このロンドン大学キングス・カレッジの研究者たちは、隔離をおこなわなければならない時の重要なキーポイントとして、以下を挙げていました。
隔離を行う際に重要なキー
・隔離された人に十分な情報と状況の説明を与えることが重要。
・隔離された人たちに対しては、効果的で迅速なコミュニケーションが不可欠。
・一般物資と医療用物質の十分な提供が必要。
・極端な状況でない限り、隔離期間は短く、そして期間を変更してはいけない。
・悪影響のほとんどは、自由の制限を課すことから生じる。なので、自発的な隔離を促すことが、苦痛の減少と長期的な合併症の減少に関連する。
などです。
この研究者たちも医学者ですので、パンデミックに対して「隔離はするな」とは言えないのですが、語られている悪影響はかなりのものです。
また、このランセットの論文以外にも、以前から医学の世界では「孤独」というものが、どれだけ人の死亡率を上昇させるかということが何度も論文で述べられています。少し例を挙げます。
孤立と社会的距離が拡大することの影響を述べた医学論文
・社会的つながりやコミュニティとの接点を失うことで死亡率が50%上昇していた(アメリカ国立医学図書館)
・孤独と孤立は、認知症の発生率を50%上昇させる (medium.com)
・孤独と孤立は、脳卒中を 32%増加させる (medium.com)
・孤独と孤立は、ガンの罹患率を 25%上昇させる (medium.com)
・社会的つながりを持たないほど、風邪を含む感染症にかかりやすい (アメリカ国立医学図書館)
・高齢者の孤立は、糖尿病を極端に悪化させる (アメリカ国立医学図書館)
・社会的孤立は、他の疾患の死亡リスクに匹敵する重要な致死要因 (アメリカ国立医学図書館)
このように、孤立は確実に死亡率を上昇させる上に、先ほどの医学誌ランセットにありましたように、「特に悪影響を及ぼすのは、強制的・抑圧的な隔離」であるということで、その場合、単なる孤立よりも心理的な悪影響が大きいことが示されています。
それと共に、現時点で「失業」という問題が大きくなっており、これはこれからも拡大していくと思いますが、2015年の医学論文に以下のようなものがあります。
男性は職を失うと、全死因死亡のリスクが最大 85%増加する。
・What is the effect of unemployment on all-cause mortality? A cohort study using propensity score matching
(失業が全死因死亡率に与える影響はどれほどなのか)
すでに、今現在もそうですが、今後の社会は、ものすごく死亡率が上昇していくことが避けられないようなのです。
それだけに、強制的な隔離政策を拡大していくのは避けなければいけないことだと思うのです。
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