2011-12-25

【自然災害の予知シリーズ】-10-地震発生前にラドン濃度が急激に上昇する。予知の確実性の高いラドン濃度測定

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写真は、ラドン濃度観測によって地震を予知したというイタリアの学者、ジャンパオロ・ジュリアーニ氏(こちらより拝借しました)
【自然災害の予知シリーズ】-5-先人の知恵に学ぶ(植物・雲編)~地震発生前、ラドンガスが発生し大気をイオン化させているの中で、地震の前に、大気中のラドンガス濃度が上昇するという記事を紹介しました。
それがもし事実なら、ラドンガスを測定すれば地震を予知できるのでは?
実際に、そのような研究はどれぐらい進んでいるのか?
様々な疑問が湧いてきます。
そこで今回は、地震予知手法としてのラドン測定の可能性について探っていきます。
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◆ ◆ ◆ ラドンって何?
◆ 発生源
ラドンは、マグマの上昇によって、ウランなどとも一緒に、地殻にもたらされます。マグマが冷えて固まり、花崗岩の中に気体として含まれます。岩石の風化等で花崗岩に存在するラドンガスが大気中にもたらされるので、大気中にも常に微量のラドンが存在しています。
◆ ラドンの性質
ラドンはウランの崩壊物(=核種)です(下図参照)。ウランが核崩壊していき、トリウム→ラジウム→ラドンとなります。
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ラドン自体も放射性物質です。「ラドン温泉」というのは、温泉中に含まれる天然ラドンが放つ微弱な放射線を浴びることが健康に良い、といわれています。(本当に健康に良いのかは疑問が残りますが・・・)
注目点は、半減期が他の元素に比べて非常に短いことです。その性質を利用して、短いスパンでの水のトレーサーとしても使われます。
また、ラドンは希ガスであり、気体の中で最も重い元素です。
水溶性なので、地下水等にも一定量溶け込んでいます。
◆ ◆ ◆ ラドンと地震との関係
◆ 地震前にラドンが発生する仕組み
ラドンガスは地殻に存在するので、地震の際に割れた地殻から発生するといわれています。
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e-pisco地震危険予知より
この仕組み(仮説)に注目して、日本でもラドン濃度の測定を地震の予知に役立てる研究が進められてきました。
◆ 地震予知の手法としてのラドン濃度の測定の歴史
リンクによると、

ラドンの発生源は地中にあり、地殻変動、地震、火山活動、地滑りなどと関係があると予想されている。地震発生頻度の高いわが国では、地震予知を目指した研究に特に関心が集まっている。ラドンと地震との因果関係を追求する研究は、放射能測定技術の進展とともに1950年頃からわが国でも行われてきた。その後、1974年に旧ソ連邦タシケントでの地震予知例が紹介されて以降、わが国のこの方面の研究が活発化した。最近の研究によれば、活断層上またはその近傍の大気のラドン濃度と地震発生との間には、何らかの因果関係が認められるとのことである。

このように、ラドン濃度の測定は、50年以上前から地震予知の手法として研究が進められてきました。
では、具体的にどのようにラドン濃度を測定するのでしょうか?
また、過去にどれくらい地震予知の事例があるのでしょうか?
◆ ◆ ◆ ラドン濃度の測定方法と研究事例
◆ ラドン濃度の測定法
リンクによると、

大気中のラドンの測定法には、ポンプを用いて例えば数10リットルの空気を吸入するアクティブ法と測定器を大気中に静置して測定するパッシブ法とがある。その際、ラドンの壊変で放出されるアルファ線を直接測定する方法と、娘核種等を活性炭のような吸着材などで捕集して測定して、間接的に算出する方法とがある。

上記の測定法を用いて、過去何度か、地震の予兆としてラドン濃度の上昇を捉えた事例があるので、紹介します。
◆ 事例①:タシケント地震(M5.5)

1966年4月26日の旧ソ連のタシケント地震(M5.5)前の水中ラドン濃度の上昇と地震後の低下が報告されている。ラドン濃度が地震前に通常の約3倍に増加し、地震後低下したと報告されている。

リンク
◆ 事例②:兵庫県南部地震の大気中ラドン濃度(M6.9)
放射線医学総合研究所の報告によると、

大気中のラドン濃度を、1984年1月から1996年2月(1989年は欠測期間)の期間、1時間毎に電離箱で測定。
・1984年1月から1993年12月(1989年は欠測期間)の9年間のデータから通常年変動(平年値)を求めて平滑化した。
・さらに、この平滑化した通常年変動を1984年1月から1996年2月までの測定データから差し引いて残差(データと平年値との差)を求め、平滑化した。
・この結果、残差は地震発生の約1ヶ月前から、明らかな異常値を示した。

とのことです。(下図)
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◆ 事例③:兵庫県南部地震の地下水中ラドン濃度(M6.9)
兵庫県南部地震前の西宮市における地下水中ラドン濃度変動によると

兵庫県西宮市において、1994年10月末から地下水中ラドン濃度の異常な増加が観測された(下図)。ラドン濃度は1995年に入っても増加し続け、1月8日に平常値の10倍以上という最高値に達した。約3日間高いレベルを保った後ラドン濃度は急速に減少し、1月16日の夕方までにほぼ平常値に戻り、再び増加し始めたところで兵庫県南部地震が発生した。
観測井が位置する地点は兵庫県南部地震により震度7の激震にみまわれており、この激しい揺れで測定装置の1部が破損したため、地震直後のデータを取ることはできなかった。測定装置を修理して観測を再開したのは地震発生5日後の1月22日夕方であるが、この時は既にラドン濃度は平常値に戻っていた。

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◆ 事例④:兵庫県南部地震・北海道東方沖地震の際、岐阜県神岡鉱山で地下水中ラドンが急上昇
ラドンと地震予知についてによると、

岐阜県神岡鉱山の地下千メートルで断層水中のラドン濃度と水温を測定している。兵庫県南部地震の発生と同時に急激にラドン濃度は増加し,水温は低下している。また1994年10月4日の北海道東方沖地震でも,同様な変化が観測されている。

(下図)
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と、なんと北海道東方沖地震の震源から1000km以上離れた岐阜県においても、地震発生直後に地下水中のラドン濃度の上昇が認められたそうです。
本文では、地震発生後のラドン濃度の急上昇と水温の急低下のみに焦点が当てられていますが、よく見ると、地震発生の1ヶ月ほど前からラドン濃度がジリジリと上昇しているようです。(ちなみに、水温の上昇も見られることから、地震前に熱の発生→水温の上昇→井戸水の水位低下が起こりうることも示唆されます)
この事例から、地震時には、かなり広範囲にわたってラドン濃度の上昇が見られることが分かります。
◆ 事例⑤:イタリア中部地震(M6.3)
Blubit Blogによると、

イタリア・ローマの北東約100キロに位置するラクイラで2009年4月6日に発生したM6.3の地震では、ラドンの観測から地震を予知した研究者がいましたが、当局によって口封じされたということです。
Nemo氏のサイトには以下のように紹介されています。
―――――――――――――――――――――――――――
Italy muzzled scientist who foresaw quake (イタリアの当局は地震を予知した科学者の口を封じた)
記事をまとめると ―― この地震学者はラドン・ガスの濃度上昇にもとづいて地震を予知、地震発生の 1か月前にラウド・スピーカーを載せた自動車で街の住民に避難を呼びかけた。
しかし、この行為が市長の怒りを買い、不安を煽っているとして警察に通報された。この地震学者がインターネット上に掲載した地震予知情報は、当局によって強制的に削除された。

(ちなみに、そのことは、日本の毎日新聞にも掲載されました。詳しくはリンク続き参照)
◆ 事例⑥:東北地方太平洋沖地震
atmc-Tokyoより

東日本大震災の発生前に、大気中のラドンガス濃度昨年6月から半年間増加していたことが、東北大と神戸薬科大、福島県立医大の研究で分かった。12日から静岡市で開催される日本地震学会で発表する。研究グループは「今後の地震予測に寄与する可能性がある」と期待を寄せている。
研究グループによると、季節により規則正しい増減傾向を示す大気中のラドンガス濃度が、平成20年ごろから数値が乱れ始め、昨年6月から12月初旬まで 増加。その後急激に減少し、東日本大震災発生までの約3カ月間、通常よりやや低い濃度レベルを維持した停滞期間が続いた。
東北大の長濱裕幸教授は「大気中のラドンガス濃度の計測は、放射線測定をしている施設でも可能だ」としたうえで、「今後大気中のラドンガス濃度を計測するモニタリングネットワークができれば、大規模な地震発生地域の予測に貢献できる」としている。

◆ ◆ ◆ 地震予知としてのラドン濃度測定の可能性
以上の事例などから、ラドン濃度測定による地震予知の可能性について考えてみます。
◆ 可能性
地震予知に「使えそう」な根拠を挙げると
①「地震前にラドンが発生する」という根拠が明確(花崗岩の亀裂)
②ラドン濃度の測定手法が確立されている
③過去に事例がいくつもあり、グラフを見てもその変化が明確
④ラドンのもつ電離作用によって大気中の窒素や酸素がイオン化し、地震雲などや電離層の擾乱等の予兆を発生させる、という仮説が成り立つ。(詳細は今後追求していきます)
⇒この前提に立てば、ラドンが原因で発生すると思われる地震の予兆(地震雲・電離層の擾乱)とも併せて見ると、より予知の可能性が高くなりそう。
つまり、「地震前には確実にラドンが発生し」、「その測定も容易で」、「結果も分かりやすい」
ことが、ラドン濃度測定の特徴だといえます。
◆ 今後の課題
次に今後の懸念点・課題を挙げると、
①ラドンガスが水溶性なので、海中では溶けてしまい、海溝型地震の予知には向かないおそれがある。
②震源から1000km離れた地点にも影響が出るほど、ラドン濃度上昇は広範囲にわたってみられる。そのため、発生地の特定がしにくい。
③観測手法にバラつき(大気中or地下水中の両方ある、地下水中ラドンを測定する深さの違いetc.)があり、地震前のラドン濃度変化を法則化するまでには至らない。
⇒①への反論としては、東北地方太平洋沖地震の例(事例⑥)のように、海溝型地震で
あっても大気中ラドン濃度の上昇が見られました。②にあるように広範囲にラドン上昇が見られるので、大陸に影響のある地震に関しては予兆を感知できると思われます。
⇒②③の課題は、「測定方法の統一」と、全国各地での測定を行えば、可能性が開けると思います。
全国各地でラドン濃度の測定を行えば、おそらくは震源に近い地点ほどラドン濃度の上昇が顕著に見られるはずです。様々な観測結果を分析すれば、その変動具合から地震発生の時期を予知することも可能になると思います。
それに伴い、「大気中ラドン」と「地下水中ラドン」のそれぞれの傾向や、どちらの観測の方がより確実なのかについても徐々に明らかになってくるはずです。

いかがでしたでしょうか?地震予知としてのラドン濃度測定、大いに可能性がありそうですね!

List    投稿者 kayama | 2011-12-25 | Posted in D05.自然災害の予知1 Comment » 

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コメント1件

 ふな | 2014.03.28 11:55

ふなです。
東京で大気中のラドン濃度を
測定しています。
https://twitter.com/tokyoradon

で、発信していますので
ご参考にどうぞ、
しかし、今、濃度が過去最高に
上昇してます。

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