【自然災害の予知シリーズ】6 ギリシャで成功している予知~VAN(地電流ノイズによる予知)
今回の予知シリーズで、いくつもの宏観現象を取り上げてきました。
これら、先人の知恵とも呼べる現象を、地震予知に繋げられないでしょうか?
実は、いくつもの方法が試行されています。それは動物を異常行動に向かわせたと地電流であったり、植物や雲に影響を与えた大気の電気現象であったりします。
この表は、主に地球上の電気的影響を観測することによって、地震予知をする世界の試みをまとめたものです。
今回から数回に分けて、これらの試みを紹介していきます。
まずは、ギリシャで実績を上げている「VAN法」からです。
上田誠也著「地震は予知できる」
早川正士著「最新・地震予知学」より
1980年代、ギリシャから驚くべき地震予知の成功が伝えられました。なんと、60%以上の確率で地震が予知出来た、というのです。
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◆◆◆ギリシャでの圧倒的実績
◆VANとは?
3人の学者の頭文字が由来です。バロッツォス、アレクソプーロス、ノミコスの3人。彼らは元々地震学が専門ではなく、バロッツォス、アレクソプーロスは物性物理学、ノミコスは電子工学が専門の大学教官でした。
バロッツォス、アレクソプーロスは専門分野の実験で岩石を破壊する実験で、岩石内に起電流が生じることを発見していた。これが、地震の予知に役立つのではないかと、ノミコスの協力を得て、全土の地電流を測定するシステムを作り上げたのです。
バロッツォス教授です
当初は、あるいは今でも、地震学会ではこの方法は認められていません。いわゆる素人のトンデモ研究扱いだったのです。しかし、その内、ギリシャ国内で圧倒的な実績を積み重ね、学会では認められなくとも、ギリシャ国民からは非常に支持されているシステムとなっています。
◆何度もギリシャを大災害から救っている
VANグループは自ら以下の基準で予知が成功かどうかをカウントしています。
①震央位置の誤差100km以下
②マグニチュード誤差0.7以下
③発生時期は前兆検知後、数時間から1ヶ月程度
この基準で見ると、1985年から1998年の間にギリシャで起こったM5.5以上の地震、全12個のうち8個を予測しています。(67%の精度!)
中でも、1988年10月、ピルゴス地震(M5.8)では、政府がVANの忠告に従い市民に屋外にとどまるよう警告した翌日に起き、2000戸が倒壊したが死者は出でませんでした。
また、1993年3月、ピルゴス直下地震(M5.2)でも30%の家屋が修復不可能な霜害を受けたが、VANの予知のおかげで死者は出なかった。
このとき、この予測に対しアテネ大地震学教授が「地震は来ない」と宣言した数時間後に起こっている。ギリシャでは専門学者の言うことより、VANグループの言うことの方が信頼されている。
VANは地震の前触れを察知したとき、マスコミには公表しません。あくまで政府に通知し、市民に告知するかどうかは政府に任せています。このあたりも、信頼される要因でしょう。
第3回一般教養研修講演会 「地震予知への挑戦」より
◆◆◆VANの予知のしくみ
◆地電流のノイズとは?
VANが監視し、地震の前兆たる地電流はどんなものか?
彼らはこれを「地震電気シグナル(SES)」と呼んでいます。これは常時地中を流れる微弱な電流=地電流を24h観測し、そこにVANの、経験から学んだ特徴あるノイズ波形が現れると地震の前兆であるというものです。
これがSESのノイズ波形です。
◆VANネットワーク、ノイズを見つけ出す仕組み
では、どのような観測網で観察し、そのノイズを見つけ出すのか?観測点は、簡単に言えば二つの電極を地中に差し込み、その間に流れる電流を計測するというもの。
VANはギリシャ全土に、この観測点を構築している。そして、一箇所の観測点に異なる方向、異なる距離で地電流を計測しています。そこがVANのミソです。
測定の模式図 観測地の事例、いくつものことなる測線があります
ある観測点でノイズが観測されたとします。
このとき、
①その観測点全ての計測線で出現する。
(都市のノイズのような、ある観測地のある一部局地的現象ではない)
②単位長さ当たりの強度(変化量)はほぼ等しい。
(ある観測地全体に出ている影響ですから、数キロある観測線も数十mの観測線も同じような影響が出る)
という条件を満たすものだけがSESであるとみなせるわけです。
◆VANの弱点
地電流は微弱でいろんなものに影響を受けます。例えば電車が走ればノイズは発生する。そんな中で、SESである波形の特徴を捉え、予知できるのは、VANグループが長年積み重ねた経験によっているのです。
特に、中心人物たるV(バロッツォス教授)個人の経験と感覚に頼るところが大きいそうです。ですから、ギリシャ国外で即、同じ波形で地震が予知できるという訳ではありません。各地域で実績を積み重ね、データを収集する必要があるのです。
◆◆◆日本での試み
VANの輝かしい実績を受け、上田元教授を中心に多くのグループが日本でも観測を初め、ネットワークを築き始めていました。
ただし、地電流のノイズはギリシャに比べ日本は圧倒的に多く、分析は難しいのです。電車の数だけでも違いますし、使われている電気的エネルギー量が桁違いに大きく、特に都市部ではノイズだらけです。
しかし、徐々に経験を積み重ね、実績を上げ始めていました。
だが、その試みは、3・11を前に、突然中止を余儀なくされます。
突然、日本版VAN観測網についていた国の予算が0になったのです。これは、ギリシャ地震学会と同じく、地震学会主流派からの強烈な突き上げがあった模様なのです。
(酷い、3・11の前に、、、この詳細はシリーズ後半で~)
次回は、地電流以外の電気的予兆観測による地震予知の取り組みを紹介していきます。
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匿名 | 2012.09.19 11:40
ホメオパシー自体が自然の摂理に則っていないので、その理論構成には無理がありますね。