プレートテクトニクス(その2)石油の起源
今回は、石油起源説(有機起源説と無機起源説)の両論についてです。
石油有機起源説の基本ストーリーは以下の通りです。
①現在発見されている巨大油田の地質年代は、ジュラ紀、白亜紀、第三紀前期に集中している。
②ジュラ紀から超大陸のパンゲア大陸が分離をはじめ、大陸の隙間に浅い海が形成される。
③当時の地球気温は高く、陸上、海中で生物が大繁殖した。
③生物の死骸が浅い海に堆積していくが、海中の微生物による分解が完全には行なわれず、生物起源の物質が大量に堆積して行く。
④生物起源物質の上に、流出してきた泥が堆積し、生物起源物質の上に、泥岩層が積み重なっていく。
⑤地中深くへ移動した生物起源物質は、地圧と地殻温度の上昇により分解が起こり、石油の主成分である炭化水素へ変成する。
⑥変成して軽く、流動性をもった炭化水素が、特殊な地層の溜まりやすい所(トラップ)に移動し、現在の油田となった。
まず、現在発見されている油田の地質年代を見てみます。
最も古い地質は、約6億年前のカンブリア紀ですが、圧倒的に多くなるのが、2億1200万年前~6500万年前のジュラ紀、白亜紀です。
下図は、「石油はどうしてできたか」(田口一雄著、青木書店、1993年出版)からの転載です。
図 地質時代別にみた巨大油田の埋蔵量
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改めて、三畳紀以降の大陸移動を見てみます(下図)。
三畳紀後半から超大陸・パンゲア大陸が分離を始める。そして、下図右上の様に、三畳紀の末・ジュラ紀の始まりには、ローラシア大陸とゴンドワナ大陸の間に、チチス海が生まれている。チチス海に位置は、世界の最大油田地帯である中東産油国地帯に当たっている。
石油有機起源説では、生物起源の化学的根拠として、「石油ポリフィロン」の存在をあげている。
動物の赤血球の成分である「チトクローム・ヘム」という複雑な成分に非常に似かよった石油ポリフィロンの「ヴァナジール・エチオ‐ポリフィン」が存在する。また、葉緑素の主成分であるクロロフィルに非常に似た成分(石油ポリフィロン)が石油中に存在する。(その他、詳細な生物起源の分析もなされているが、最大の化学的根拠は、田口氏によると、石油ポリフィロンの存在である。)
石油有機起源説の弱点は、大陸移動による堆積地層以外からも、石油が発見されていること。ロシアでは、無機起源仮説により、堆積層以外での石油探索を行い、原油層を発見している。
(なお、私の一つの疑問は、生物の必須成分であるリンについて、石油成分分析のどこにもコメントが出てこない点である。リンはリン脂質膜やDNA、RNA、ATPとして広範に存在し、生物起源物質なら、その痕跡をどこかに残しているはずである。しかし、石油成分の分析ではリンは登場しない。たんぱく質に組み込まれているイオウは登場するが。)
次に、石油無機起源説を簡単に扱います。
①地球創生の時期に、膨大なメタンが形成され、それが、地球深部に蓄積された。
②プレートテクトニクスによる地殻移動により、大陸プレート境界の地球深部に割れ目ができ、メタンが地殻内を移動する。
③地圧と高い地殻温度で、メタンの合成反応が起こり、より原子数の大きな炭化水素に変成しながら上昇する。
④この炭化水素が、特殊な地層構造(トラップ)に溜まり、現在の油田となる。
改めて大陸プレート境界を眺めて見ると、中東地域、アジア地域(マレーシア・インドネシア・ブルネイ)、アラスカ、メキシコ湾、ベネズエラとそれぞれ、大陸プレートの境界に位置する。
(但し、大陸プレート境界から離れた地帯にも油田が存在する。例えば、テキサスの油田地帯はプレート境界と大きく離れている。)
引用先:地震情報サイト
このようにみてくると、以下のように結論づけられるのではないだろうか。
石油有機起源説に立つ場合も、石油無機起源説に立つ場合でも、地球史のある段階で起こった「地殻(と生物)」変動の特殊条件により、石油が形成され、油田として蓄積されたことは間違いない。
その点では、石油資源は、地球史が生み出した特殊資源であり、有限な資源である。
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