【自然災害の予知シリーズ】-4-先人の知恵に学ぶ(植物・雲編)~地震前に、オジギソウは大気の電位差を感知する!
前々回の投稿で、地震発生前、動物は電場や熱の変化を感知しているということが分かりました。
今回は、動物以外の現象を扱います。
では早速、どのような現象があるのかをみていきましょう。
<植物編>
(クリックで拡大 )
<自然編>
(クリックで拡大 )
動物同様に植物でも地震前に「触れていないのにオジギソウの葉が閉じる」や「風が無いのに葉が揺れる」など、地震発生前の不思議な現象が多く報告されています。
おそらく、植物も動物同様に人間の目には見えない何かを感知しているのでしょう。
また、自然現象でも地震前に「井戸の水位が低下する」や「不思議な形の雲を目撃」など、様々な自然の異常現象が報告されています。
特に、地震発生前にみられる雲は、先人達から多数の報告があがっており、一般的に「地震雲」と呼ばれているほど有名です。
地震雲も地震発生前、何かによって引き起こされていることは間違いなさそうです。
そこで、植物と雲に焦点を当て、地震によって起こされる現象の原因に迫ってみます。
まず今回は、植物に焦点を当てます。
そして、次回に雲を扱います。
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◆◆◆植物は地震発生前に何を感知しているのか?
植物は地震発生前に何を感知して、異常現象を起こしているのでしょうか。
動物は五感を使って様々なものを感知しています。
それに対し、植物には特定の感覚器官はありませんが、光合成をして生命を維持していることから、光や水を感知していることは想像できます。
では、植物は何を感知しているのでしょうか。
◆オジギソウは細胞内外の電位差を感知している
オジギソウがお辞儀する(葉を閉じる)のは、細胞の膜電位の変化によるものであることが知られています。
膜電位とは、細胞の内外に存在する電位の差のことです。すべての細胞は細胞膜をはさんで細胞の内と外とでイオンの組成が異なっており、この電荷を持つイオン分布の差が、電位の差をもたらします。
膜電位には2つの状態があり、
①静止電位
生物体の筋肉や神経などの組織で、興奮時でなくても生じている膜電位。細胞膜の内外で電位差を生じ、これによって電流が流れる
②活動電位
生物体の細胞や組織が刺激を受けたときに発生する膜電位。
刺激を受けて興奮した部分が、他の部分に対して負の電位をもつことで電位差が生じ、電流が流れる。
通常時は静止電位になっており、何か刺激を受けると活動電位になる。
この静止電位から活動電位の(電位の差)変化を感知して、オジギソウはおじぎ運動をしています。
◆オジギソウは地震発生前の大気の電圧(=電位差)を感知している!!
地震前の現象で、「何も触れていないのに、オジギソウの葉が閉じる」という現象に着目して、何で地震前に葉が閉じるかを実験しているものがあります。
【オジギソウの葉が閉じる(実験)】
・バンデグラフの高電圧球の上にオジギソウの鉢を置き、高電圧を発生させると、オジギソウはその茎を折り曲げた。
・オジギソウを設置した金属上に置き、高電圧の細線からコロナ放電をさせても同じである。
・昆虫が触れる前に、昆虫の羽ばたきにより生じる静電気で葉を閉じる。
・バンデグラフの高圧電球とアース棒との間の放電による電磁波電場で葉や茎に電流が流れても、オジギソウは葉を閉じる。
・そばを通った車のエンジンプラグの放電でも葉を閉じた。
【オジギソウの葉が閉じない(実験)】
・オジギソウの植えた鉢の土にパルス電流を流したが、葉を閉じない
実験現象からオジギソウは、大地の地電流や地震波のP波で葉を閉じたのではなく、大気中に生じる電位差(電圧)を感知して葉を閉じたと言えそうです。
◆◆◆オジギソウのお辞儀の仕組み
◆オジギソウは主葉枕(シュヨウチン)の水が移動することでおじぎ運動が起こる
オジギソウは植物で運動するどのようにしておじぎ運動をしているのでしょうか。
電気信号が運動器官である主葉枕(シュヨウチン)、いわゆる折れ曲がるところに伝わります。
脳の診断に使われるMRIで水の動きを調べてみたところ下図、葉に刺激を与えると主葉枕の下部の水が上部に移動していることが分かりました。
これは、主葉枕の下部にある水が一気に無くなるために、下部の膨圧が減少しておじぎ運動が起こります。
◆なぜ、水が移動するのか?
主葉枕の骨格を形成する「アクチン」というタンパク質が関係しています。
写真(下)を見ると、繊維状のものがアクチンで、おじぎ運動前はアクチンが網目状に丸く束になっています。カチッとしていて細胞内の水は排出されない状態です。しかし、おじぎ運動後を見ると、アクチンの束がほぐれバラバラになっています。
つまり、オジギソウの葉が閉じるというのは、外部からの電気刺激により、膜電位が変化(静止電位→活動電位)することで外部の刺激を感知し、電気信号がでます。電気信号が主葉枕に伝わると、細胞内のタンパク質の構造に変化が起きます。その細胞の変化によって水が移動し、枝が折れ曲がるという仕組みになっています。
地震の前にお辞儀をするというオジギソウの現象から、地震の前兆には、大気中に電位差がどうも生じるようです。
では、何で地震発生前に電位差が生じるのでしょうか。
ここは、次回の雲を見て、あわせて考えたいと思います。
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