2008-05-24

水の特徴、物性を探るその3  水の沸点は100℃なのに、常温で洗濯物が乾く (蒸発、気化する)のはなんでか?  ~『水素結合』がもたらす、水の特性~

●常温で水が気化するのはなんで?
水の物性を探る2に続けたいと思います。
>僕らの住む「地球」では、水は常温では液体であり、100℃をこえると水蒸気(気体)となり、、、、、<
フンフンと何げに読よみすごしてしまいますが、「水は常温で液体」これって本当?洗濯物は常温でも(100℃に達していなくても)乾きます。降った雨も、お皿の水も100℃でなくても気化しますよね。つまり実際は常温でも、水は液体から気体に気化しているという事実がありますね。なんで?。改めて考えると不思議ですね。学校では100℃で気体になると聞きました。おかしい。
・100℃で始まるのは『沸騰』で、それは水の『内部』からも気化が始まること。
・常温であっても水の『表面』からは蒸発(気化)する。
と、答えたあなたは凄い。その通りです。(初めて聞く人も、安心して下さい。)
でも、同じ水なのに(常温で)表面は気化、内部は液体のまま、これはよく考えると不思議ですね。水など一部の物質しかこんな振舞いはしません。なぜこんなことがおこるのでしょう。
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●水の表面と内部の構造の違い
実は、水は(コップの水を想像してみると)水表面と内部では別の物質のような状態にあり、違った振舞いをします。
①もともと、H2O分子は非常に小さい。
      %E6%B0%B4%E5%88%86%E5%AD%90%E6%94%B9.jpg   
②しかし、(コップの水で想像して)水内部は、水分子同士が「水素結合」してクラスター構造をもち、大きな分子構造になる。沸点は高く常温で液体です。(水素結合については詳しくはリンク
sei12cluster-01.jpg
③一方、水の表面は、クラスター構造が相対的に形成しにくく、もともとの小さな単独の水分子になりやすい。単独の水分子は沸点が低く、常温で気体になります。(=洗濯物が乾く、コップの水の表面から蒸発する)。
これが、常温で気体とも液体ともなるH2Oの秘密です。簡単に纏めると、
水表面   単独の水分子       分子が小さい  沸点低く  常温で気体
水の内部 水素結合→クラスタ構造  で、塊が大きい 沸点高く  常温で液体

●分子量(分子の大きさ)と沸点の関係の補足
上記で小さな分子は沸点が低い、大きな分子は沸点が高いと書きましたが、以下に分子の大きさと沸点の関係を補足します。









分子式 分子量  沸点(℃) 常温状態
メタンCH416 -162 気体
エタンC2H630 -89 
プロパン  C3H844-42 
ブタンC4H1058 -1 
ペタンC5H1272 36 液体
ヘキサンC6H1486 69 
オクタンC8H18114 126 

上から下に向かって分子式の記号が増えますが、下のほうの物質のほうが、複雑で大きな(分子量が大きい)物質であることを意味します。そして、この表から、大きな物質ほど沸点が高いことが分かります。
さらに、分子量(大きさ)が近ければ、違う物質でも大体沸点は同じになるのですが、
       分子式 分子量 沸点(℃) 常温で
水      H2O   18   100  液体
のように、水は上記の一覧表と比べると、大きさのわりに異常に沸点が高いことが分かります。(水はメタンと分子量が近いが沸点は非常に高い。)
●水素結合がもたらす水の特性
そして、それは水素結合がもたらす水の特質です。水の『内部』は水素結合→クラスター構造を形成しており、大きな分子として振舞うため沸点が非常に高く、常温で液体になっています。
普通に学校で習う水(H2O)はお皿に広がった水。コップの水は、(H2O)×5とか表現しないといけませんね。
るいネットでも紹介されていますが、水素結合は私たち生物にとって極めて重要な結合です(『水素結合が生命体を維持するメカニズムとは?』)。それを身近な現象で体験していたとは少し驚きです。
○「水の特徴、物性を探る」シリーズ、次回は『打ち水(と気化熱)』について扱う予定です。
お楽しみに。 😛

List    投稿者 fwz2 | 2008-05-24 | Posted in D.地球のメカニズム14 Comments » 

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コメント14件

 hihi | 2008.09.27 21:11

すごい!
でも、なんで最初から苦い葉っぱにしておかないんだろう。
初めから苦いと、キリンの方が適応しちゃうからか?

 finalcut | 2008.09.27 21:17

へぇ~、そうなんや。
そういえば、蝶やさまざまな虫たちに花のにおいを発して報せ、花粉を運んでもらったりするのも、やっぱりコミュニケーションですね。
ただ、突っ立っているわけじゃないんですねぇ。大きな気づきです。

 kz2022 | 2008.09.27 21:21

驚きました!植物が、食べられないように苦味物質を出すとは。私達が知らない事は多いのですね。また新しい事実の紹介を楽しみにしています。

 くすの木 | 2008.09.27 21:23

匂いで他の植物とコミュニケーション伝達していたとは驚きでした。
異なる植物間同士でも匂いで共有する機能があるんでしょうね。
植物の生態やその機能にますます興味が湧いてきました。

 ぜんまいざむらい | 2008.09.27 22:03

微量化学物質で植物同士が交信を行なっているって面白いですね。
アレロパシーって、森林浴の有効成分だと聞いたことがあります。
植物同士だけでなく、人間に対しても、なんらかの影響を感じることができるのかもしれませんね。

 egisi | 2008.09.30 0:11

hihiさん、こんにちは。
タンニンによって植物が身を守ることは、恐竜がいた時代の植物にも見ることができるそうです。とっても渋く、舌を萎縮させ、口内の粘膜と喉を乾燥させるくらい苦いらしいのですが、タンニンは下痢止め、化膿止め、抗菌剤、駆虫剤の効能もあるらしいのです。
『はじめから、タンニンを含んでいないのはなんで?』は、ちょっと継続して調べてみますね。

 egisi | 2008.09.30 0:13

Finalcutさん、コメントありがとうございます。
植物が、他の生物たちとどのように関わって共に進化してきたかということは、知れば知るほど面白いですよね。新しいテーマでもありますが、また新しい気付きを紹介できるよう頑張るので応援よろしくお願いします!。

 egisi | 2008.09.30 0:15

kz2022さん、こんにちは。
植物の進化の歴史を抑えることで、農業にかんする無農薬栽培を成功させるヒントがあったりと非常に追求しがいのあるテーマなので、次回も応援よろしくお願いします!。

 egisi | 2008.09.30 0:18

くすの木さん、こんにちは。
実際、森林など様々な種の植物が生息する場所など、異なる種同士でもにおいのコミュニケーションをしているそうです。例えば、違う種の成長を遅らせるようなにおいを出したりするそうです。
さまざまな効能の報告があるので、また継続して調査課題としていきますね!。

 egisi | 2008.09.30 0:22

ぜんまいざむらいさん、こんにちは。
アレロパシーには、まだまだ未知の化学物質が多いらしく、植物だけでなく人間への影響も現在調査研究中です。
非常に微量な物質のため解明が難しいのですが、自然の摂理・先人達の気付きに則って仮説を立てることで、追求していけたらいいですよね。

 chang | 2008.10.02 20:12

作物を栽培するときに問題になる連作障害や、農薬使用を減らすために行われる混植も、アレロパシーが関係していると聞いたことがあります。そんな自然の摂理を応用して、人工物質に出来るだけ頼らない農業ができたらいいなあと思います。

 ganbo | 2008.10.02 20:31

去年の今頃、奈良公園のイラクサが、鹿に食べられるのを防ぐために、毒のあるトゲを増やしているという調査報告が新聞に載っていました。
一帯のイラクサが種子レベルから変化しているそうです。アレロパシーによる外圧の共有の結果なんだと思いました。植物が活発なコミュニケーションしていると思うと、植物に対する見方が変わっていきそうです。

 egisi | 2008.10.03 21:43

Changさん、こんにちは!。
僕も以前、里山のリンゴを無農薬で育ててらっしゃる方の本を読んだときに同じようなことが書かれていました。
土を柔らかくして、他のたくさんの植物・生物と一緒に育てることが、本来植物の持っているつよさを引き出す秘密だと教えてもらいました。
自然の摂理に立ち返ることで、改めて気付くことのできる発見を、発信できるよう頑張りますので、また応援よろしくお願いします!。

 egisi | 2008.10.03 21:47

Ganboさんこんにちは。
このイラクサの話は、初めて知りました!。
改めて、このような事例を教えてもらえると嬉しいです。また、新たな気付きが紹介できるよう頑張るので、応援よろしくお願いします!。

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