2009-02-27

地球環境の主役 植物の世界を理解する⑪ 植物界は全体として進化した。植生遷移の極相としての森林

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仁徳天皇陵。「歴史ブログじゃなくて環境ブログでしょ、写真間違ってんじゃないの?」と突っ込まれそうですが間違いではありません。

今はこんもりとした森になってますが、築造された当時は、木が植わっていなくて丸裸、石張りの光り輝く古墳だったって知ってました?。1500年もかけてこんなに生茂るんですね不思議です。どんな過程を経てこんな状態になるんでしょうか?

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仁徳天皇陵は築造された当時はこんなだったらしい。明石海峡を通って大阪湾に入る船から光り輝く様子が見えたという。

① 植物界の数千年の営み、植生遷移

前回まで、植物進化=適応の歴史について、先端機能の進化=新しい種の誕生の歴史を見てきました。海から陸への上陸、シダ植物の繁栄、裸子植物が生まれ、さらに被子植物へ、、、、、、新しい外圧と、それに適応するための先端機能→種の誕生の歴史でした。

しかし、植物の進化は、そのように「種」の登場、先端機能の誕生だけでみると、見逃してしまう面があります。
植物はもっとダイナミックに林や森全体として外圧適応している。個体単位や、種単位で適応しているのではない。もっと大きな単位、何世代にもわたる、いくつもの種の間にわたる連係プレーで、全体として適応しているのです。

動物の種間の連携がせいぜい食物連鎖や共生といった概念であるのに対して植物は、もっと大きな概念、「遷移」という概念が必要になります。上記の仁徳天皇陵も、元は丸裸だったのが、高々1500年でこんなにに生茂るのは、種間の数世代にわたる見事な連係プレーのお陰なのです。

ウィキペディアより、遷移(生物学)より引用します。
植物が土地で生育することによる、環境形成作用が主な原因となり、時とともに場所の環境が変化して行く現象を植生遷移という。

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【岩石風化とコケ類による土壌の形成】

岩盤のくぼみや裂け目などに、岩石表面そのものが徐々に風化して得られたり、風雨によって運ばれた砂礫が堆積し、土壌を形成する。この土壌の形成の有無が一次遷移と二次遷移の最大の違いである。土壌のないところは保水力がないため、植物は生育できない。よって、この土壌の形成が最初の大きな変化である。
次に、コケ類や地衣類の胞子が風雨によって運ばれると考えられる。コケ類は岩のくぼみのようなところを中心にはえてくる。やがて、風や雨によって岩の表面は風化して砂礫が生じ、また、苔や地衣類の生育による有機物の蓄積によってわずかずつ土壌が成熟される。土壌には土壌動物や土壌微生物も当然出現する。
【草の進出、土壌の蓄積】

ある程度の量の土壌が蓄積すれば、草が侵入することができるようになる。当初は一年性の草が中心になるが、年を追って多年性の草が量を増やし、次第に背の高い草原となる。草の根は苔より深くまで侵入し、砂礫と土壌の層は厚くなる。土壌中には、ミミズなど大型の土壌動物も姿を見せ、陸上には昆虫や鳥も侵入する。
【樹木の進出/陽樹の成長】

やがて、「木」の侵入が始まる。あらゆる種類の「木」が進入するが、最初に低木林が形成される。
陽樹が優勢の陽樹林が形成される。この段階でも陰樹(後述)の侵入も起こるが、陽樹や多くは最大光合成量が多いものが多く、比較的成長も早いために優勢となりやすい。陽樹が選択的に侵入または生育するわけではなく、あくまでこの環境条件で優勢になりやすいということである。代表的な陽樹にはシラカンバやマツなどがある。陽樹が成長してくると、その下は次第に日陰になるので、草原の植物は勢いを失う。その代わりに日陰であっても成長可能な植物が侵入する。こうして陽樹林ができる。樹木は草本よりも深く根を下ろし、土壌層はさらに厚くなる。土壌にも陸上にも、動物相はさらに豊富になる。

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陽樹の代表白樺

【陽樹から陰樹に転換、森の最終形態・極相】

森林ができると、その内部は湿度が高く、林床の照度は低くなる。こうなると、陽樹の苗木が生育しにくくなる。その代わり、暗い林床でも成長できる種類の樹木が出てくる。これを陰樹という。陰樹が成長し、森林を構成する樹木になると、しばらくは陽樹と陰樹が交じった森林になるが、陽樹は追加されにくいため、次第に陰樹林となる。陰樹林内では陰樹は生育できるので、見かけ上はこの形の森林はこれ以上は変わることがなくなる。この状態を極相(クライマックス)と言う。土壌層は豊かになり、地上には森林性の草本が次第に生えるようになる。

個体の適応でも、種としての適応でもなく、まさに森全体で環境に適応していっていると言えそうですね。

② 植物界の摂理(遷移)からの脱線/人工樹林

さて、話は変わりますが、何と日本の森林の40%が人工林だそうです。日本の人工林の代表のスギは元々北方の植物で針葉樹です。針葉樹は大きく育ち、また、ゆっくり育つので密な構造をしていて木材に適しています。しかし、ゆっくり育つ分、日本のような温帯では、下草の成長の早さに負けてしまいます。そこで小さい間は、下草を手入れして無理やり、適応させ人工林を作り上げたわけです。

因みに、広葉樹林(常緑樹と落葉樹)と針葉樹林の違い。
幅広い葉を持つ木を広葉樹,細長い葉を持つ木を針葉樹と呼びます。さらに広葉樹には,秋に葉を落とす落葉広葉樹と,葉を落とさない常緑広葉樹があります。大まかに言うと、常緑広葉樹、落葉広葉樹、針葉樹の順に寒冷地への適応となる。
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日本の天然林は80%以上が広葉樹林で、やはりスギ=針葉樹は元来は少数派です。今までも、人工林は、花粉症の原因にもなっているし、非常に問題だ、自然に大きな異変をもたらしていると漠然と思っていました。しかし、今回紹介した「遷移」の構造を理解し、植物は(森)全体で適応しているという視点に立つと、いっそうこの人工林の問題性がはっきりと意識されます。単に自然を破壊しているだけでなく、数世代にわたる緻密な連係プレーを台無しにしてしまっているのですから。

List    投稿者 fwz2 | 2009-02-27 | Posted in D.地球のメカニズムNo Comments » 

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