食材を自ら加工する術を失った民族が生き残れるか?
みなさん、お正月どうでした?おいしいおせちをいっぱい食べましたか?
そろそろ、さっぱりとしたものが食べたいんじゃないでしょうか。やっぱり、和食ですね。
日本料理はヘルシーと言われますが、米と魚と野菜だからでしょうか?
もうひとつ油の使い方があると思います。
日本料理は基本的に鍋で作ります。油はさほど必要ありません。油を使うのは揚げ物。ここでは主に加熱媒体として使われています。水分を蒸発させ、素材のうまみを凝縮します。だから、素材を守るために衣を付けます。
しかし、フレンチではフライパン、中華では中華なべ、必ず油を必要とします。そして、加熱媒体としてだけではなく、調味料、食材そのものとして使われます。フレンチのテリーヌの原型は食材を脂で固め保存食としたものです。
最も違うのが味覚の媒体の差だと思います。
フレンチも中華も料理の中の旨みは油分に染み出ています。油が旨みの媒体となって舌に届きます。
日本料理では、旨みは水分に染み出ています。
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日本料理、フレンチ、中華とも高度に体系化され、味覚を整えるベースとして、それぞれ「だし」「フォン」「湯(タン)」が作られます。
フォンも湯も、大量に油脂含む素材を使い旨みを取り出します。フォンはほとんど油脂の塊です。だしだけが全くの水だけで抽出します。基本の手法からして油の使う量が違います。
これが、和食があっさりしとして胃にやさしい感じを与える理由です。
なぜ、そんな差が出たか?
狩猟・牧畜民にとって、当然栄養源は動物の肉と脂。大陸の料理では肉も脂も同列に食材だったのです。イヌイットの猟に携帯する保存食もテリーヌの起源と同じような、加熱した肉を脂で固めたものがあるそうです。高カロリーで最高の携帯食でしょう。
日本人は動物の脂を大量に摂取する必要はありませんでした。旨み成分は主に海から取ることになります。そして洗練されたのが鰹節などの魚の干し物と昆布です。これらの旨みは水溶性で、野菜など旨み成分(アミノ酸系)が不足する食材に染みこませて使います。
これだけ違いのある料理ですが、共通することがあります。どこの料理も当然「身土不二(身体と環境は不可分である=その土地で取れるものを食べる)」であり、「一物全体食(いただく生命体全てを食べ尽くす)」の手法を持ちます。(日本料理は魚のエラ以外全部食べる手法があるし、フレンチは豚の血も食材だし、中華は鶏の足先も美味しく調理する。)素材を大事に扱うのは、どこの地域の料理でも同じです。
各民族が長い年月をかけて編み出した調理方法は、その民族の置かれた環境の中で最高のもののはずです。本来、体に悪い民族料理なんてあるはずありません、そんなセンスのない民族は滅びているでしょう。
ところが現代はその高カロリーが故に油脂は疎まれ、和食がもてはやされつつあるわけです。
しかし、料理法が健康度を規定するのでしょうか?
海外のジョークで、「イギリス人より日本人の方が魚を食べて健康体だ、アメリカ人よりフランス人の方がワインもバターも摂取量が多いのに健康体だ、つまり英語が体に悪いのだ。」というのがあります。
現代、肥満が多いと言えばアメリカ。軽く30%を超えるらしいですね。
海外子育て事情さんよりhttp://pippi-kaigai.hpnk.jp/article/604528.html
こんなアメリカでも、90年代半ばまでは、殆どの学校でスナック菓子や清涼飲料水を買うことはできなかったようです。しかし、今では、小学校の43%、中学校の89%、高校の98%で、スナック菓子や清涼飲料水が買えるようになってしまったとのことです。そして、20年前、10代の男の子は、牛乳を清涼飲料水の2倍の量飲んでいたが、現在では、清涼飲料水を牛乳の2倍の量飲むようになったと言われております。
・・・・
ニューヨークに住み、息子を現地のナサリースクール(日本の保育園のようなところ)に入れ、最も驚いたことは、食に関する問題です。息子が行っていたナサリースクールでは、学校が有料で朝食と昼食を提供しているのですが、朝食は毎日シリアル(コーンフレーク)、昼食は、ピザやパスタ、サンドイッチ(ハムとチーズだけで殆ど野菜はなし)などなのです。朝食は、予め紙コップにシリアルが入っており、子ども達が来ると牛乳を入れてくれるのですが、一列に並び紙コップに入ったシリアルを食べる姿は、まるで鶏が餌を食べているようでした。とてもこんな朝食や昼食を息子には食べさせたくないと思い、朝は家で食べてから送っていき、お昼はお弁当を持たせました。クラスの中に昼食を家から持って来ている子もいたのですが、食パンにピーナッツクリームを塗ったものや食パンにハムとチーズだけが挟んであるものなど、栄養バランスが取れているものは全く見当たりませんでした。
唖然とする状態ですが、アメリカ人はバカだからと笑っているだけでは済まされないようです。
日本人の母親もこれに似た状況が出てきていると良く聞きます。周りで似たような風景がありませんか?スーパーでお母さんの買い物籠を見ると、過半が半加工食品ですね。そのくせ、TVではグルメ番組が氾濫し、お昼のレストランではお母さんたちが優雅なランチを取っています。何かおかしい。
最近になって「食育が大事」と叫ばれつつありますが、なんかそれで解決する気がしません。
栄養のバランスという観念だけでは「野菜を食べよう、油は悪い」ということにしかなりません。
今の母親たちは、その母親たちから家庭料理を伝えられていません。お祖母さんたちは、そのまた母親が持っていた技術を、その規範や生活様式とともに捨て去ってしまっています。土地々の環境で培われた食に対する様式が、封建的な習慣として、それを支える共同体と一緒に捨てられてしまいました。
おそらく、世界中の先進国で同じようなことが起こっています。スローフードの動きがイタリアから起こったのは、その危機感でしょう。今、問題になっているトランス脂肪酸もアメリカ型ジャンクフードだから摂取量が多いのです(マーガリン、ショートニング使いまくり)。
市場原理は体に悪くても安い食品を世界に供給し、近代観念は過去の規範を否定し食文化も破壊してしまいました。全てがケチャップとマヨネーズの味付けでは人工物質を嗅ぎ分ける感覚が育ちません。(アメリカ文化が生み出した、たぶんトマトソースとオランデーズソースの代用品ですね。)
美味しいものも体に良いものも世界中にあります。しかし、世界中に出回る食品には市場原理しかありません。
工場で作られたものしか食べる術を持たない民族(集団)というのは、どこかおかしいと思うのです。
(古くから味噌・醤油・ワイン・チーズなどの醸造食品・発酵食品が蔵元で製造されましたが、これは集団内での役割分担みたいなものですね。手間のかかる部分の専門分化。食事そのものを工場に依存させるグローバリズムとは違う。)
どうしたら、次の世代にまともな食文化が育つか?考えていきたいですね。
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コメント2件
Boicaftic | 2013.08.17 20:00
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しばた | 2007.01.31 21:33
浄化費用を負担することが困難な大多数の中小企業からもその責任対象を広げることによって、お金を巻き上げる。この無謀な市場拡大は放って置けないですね。