2009-09-18

日本人の身体技法 part3 ~日本人の呼吸法とは?~

こんばんは。part3の今回は、日本人の呼吸法についてです。呼吸法といっても、いろいろあるようです。今回はその中でも、かつて日本人が備え持っていた身体技法という視点で呼吸について紹介していきます。
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なんで屋カード工房HPより
 
 
1.呼吸の重要性
生きるための呼吸は当たり前だが呼吸は必要不可欠なものです。しかし呼吸は、それだけだけでなく、生命維持活動の中で、意識的にその活動を制御可能な点も、呼吸の特徴の一つといえるようです。そのため、環境に応じた呼吸方法が生み出され行なわれてきました。
また呼吸は、コミュニケーションのベースとして重要な役割を演じています。「息使い」を感じ、「息を合わせ」たり、「息が詰まる」状態だったりと、相手の呼吸の状態を受け取ることが、相手と自分との距離間を測るバロメーターとなっています。
最近、感情が切れやすいことが問題になったりしていますが、呼吸は精神状態にも影響を与えているようです。現代の日本人の多くは胸式呼吸を行なっているといわれていますが、胸式呼吸による口を開いた呼吸によって、細菌等を直接喉の粘膜等に晒す危険性がある他、呼吸が浅くなり、空気の摂取量が少なくなること自体が、そもそも生命にとって危険な状態におかれているともいえます。また早くて浅い呼吸は、交感神経を活発にし、ストレスがたまりやすく、疲れやすく、切れやすい状態になっているとも考えられそうです。また深呼吸をすると気分が落ち着き、余計な力が抜けるように、身体的にもその影響はあるといえるのではないでしょうか。
どこかしら問題がありそうな現代日本人の呼吸ですが、このような呼吸になったのは、最近のことのようで、昔は少し違った呼吸を行っていたようです。
では、なぜ、このように、日本人の呼吸方法が変化してしまったのでしょうか?
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2.日本人の呼吸=息が衰退した理由
 
生活スタイルの変化が最も大きい理由の一つになります。昔は、薪を割って火を熾し釜でご飯を炊いていた。また洗濯はたらいに洗濯板を使って行っており、息を使った身体によって生活していた。それが電化製品に置き換わり、スイッチ一つで出来上がる生活スタイルになり、日本人が練り上げてきた身体技法や呼吸法を使用する機会がなくなってしまった。
 
また長距離を歩行することによって安定した呼吸を行なう方法を会得していたが、移動手段の変化に伴い、歩行自体の持続能力の低下、その背後に呼吸の衰退が挙げられます。
 
呼吸法は、日本人が長い年月を掛けて作りだした「型」として伝承されたいたが、戦後、日本人が再び戦争に向かうことを恐れたGHQによって、日本人の闘争性、精神性の形成に寄与していた、武道(剣道、柔道等)といった、呼吸法を基礎とする身体技法を行なうことを禁止し、あわせて教育の現場からも排除することによって、その伝承を途絶えさせようとしたことも衰退の影響としては大きいだろう。
 
 
3.赤ちゃんの呼吸方法
 
心が平静で気持ちのいい状態を維持できるようにするには、呼吸を全うさせる、息のゆったりとした流れを止めないことにあるようです。
 
このような自然の摂理に則った呼吸として、赤ちゃんが行う呼吸が、よくその理想形とされています。
 
実際に赤ちゃんが寝ている時の呼吸は、呼吸でからだ全体が大きく波打つように上下しており、実に自然な形の呼吸だという。
 
この呼吸は体に余分な力の入っていないリラックスした状態の呼吸である反面、結構大人にとっては難しい呼吸のやり方でもあり、特に自意識が強い人ほど赤ちゃんのような呼吸が出来なくなっているともいえるようです。
  
baby1.jpg
「双子ドットコム。」HPより
   
 
4.4つの呼吸法
 
呼吸の種類には、大きく分けて腹式呼吸、胸式呼吸、逆複式呼吸、密息の4種類あるようです。
 
腹式呼吸:ある意味で自然な呼吸法です。吸う時に旨が膨らんで横隔膜を押し下げ、腹部の内蔵を押し下げる。必然的に原が張り出してくる。吐く時は、原をへこませるので内蔵が引き上げられ横隔膜が上がり、肺を潰して空気を出す。体全体を合理的に使う呼吸法。赤ちゃんもこの呼吸に分類されるでしょう。
 
密息:密息の一番の特徴は、吐くときの姿勢で、自然の摂理とは異なった形で、腹を張り出したまま息を吐く。日本の伝統的な呼吸法。密息については後ほど詳しく紹介します。
 
胸式呼吸法:壱岐を吸う時に胸が膨らみ、はくときに収縮する。横隔膜はあまり上限しない。力のいらない楽な呼吸法といえるようです。
 
逆複式呼吸:吸う時に腹がへこみ、必然的に胸が膨らむ。吐く時は胸式呼吸と同じように胸が収縮すると同時に腹が膨らみます。呼吸時に身体の挙動が伴う。

 
 
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<4つの呼吸の特徴の比較表>
「密息」で身体が変わる 中村明一著より
 
 
ちなみに、現代の多くの日本人は、伝統的な密息もできない、かといって腹式でもない呼吸、つまり胸式呼吸を行なっているようです。伝統的な密息は、腹を膨らませたまま深層筋を使って横隔膜を持ち上げるのですが、深層筋が衰えた現代日本人が呼吸をすると密息が胸式呼吸になってしまうようです。いわば密息が崩れた呼吸であり、この胸式呼吸では、力はいらないものの、呼吸自体が浅くなってしまいます。
 
 
5.日本人が行なっていた呼吸法 そのすばらしさ
 
 
上記でも少し触れましたが、日本人が古来ごく当たり前のように行っていた呼吸の方法に「密息」という呼吸法があります。
腰を落とし(骨盤を後ろに倒し)た姿勢をとり、腹を吸うときも吐くときもやや張り出したまま保ち、どこにも力を入れず、身体を動かすことなく行う、深い呼吸のことです。
外側の筋力でなく深層筋を用い、横隔膜だけを上下することによって行うこの呼吸法では、一度の呼気量・吸気量が非常に大きくなり、身体は安定性と静かさを保つことが出来、精神面では集中力が高まり、同時に自由な開放感を感じるようになります。
 
では、なぜ密息という呼吸が生まれてきたのでしょうか。
日本の自然環境や生活環境に大きく関係があるようです。
 
 
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<田植え風景>
水郷の原風景HPより
   
   
日本の自然環境の諸条件から腰を落として骨盤を倒し、膝を曲げるという姿勢が恒常化しそこで生活することで骨盤を倒して下腹を張りつつ呼吸するという身体条件が自然に出来上がっていったと思われます。姿勢ができ、その中で密息をするようになると、日常の環境の中でそれが維持され、強化される。呼吸と環境とがフィードバックして発展していった。例えば床の文化ということもそうですし、着物もしかり、その中で周囲が密息により身体の安定と静止感をたもっているわけですから、そこで音を立てると非常に目立つ。不用意な身振り手振り事態が騒がしく移るという静けさになる。
  
着物の着付けにおいて、帯は腰骨のところで結びます。下腹が固定されるとそこに意識が行き、帯がズレ落ちないように、下腹部に自然と力が行くようになり密息によって着崩れなくなる。この着物と帯という伝統的な装束が、密息という呼吸と密接に関わっているといえる。
  
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きーたはうすHPより
   
  
ここから分かるように、かつての日本人を取り巻く自然環境や日常生活が密息文化を生み出していたといってもいいだろうし、当時の日本人が、ごく当たり前のように行なっていた呼吸法であったことがわかる。
  
この密息を行なうことの効果としては、
  
・下腹部のみに力が入り(丹田に意識が集中している)、身体はリラックスしている。
・世界は静止しているように思え、感覚は鋭敏になる。
・脳はリラックスしつつ集中し、身体は静かでありながら脳は非常に速い速度で働いている。
・気配を消す事が出来る。周囲の環境と一体化する感覚。
・視点は部分から全体へ、全体から部分へ、一瞬で移動する事が出来る。
・意識は安定し、あがる事も無くなる。

 
が揚げられます。
  
当時の日本人が精神性、身体能力の高さを伺うことができます。
  
呼吸に関してこのような身体技法が存在していたこと自体が、現在の私達日本人にとって驚くべきことだと思います。自然環境や生活環境が変わり、私達の呼吸方法もまた変化してしまっていますが、かつて密息をおこなっていたころの呼吸方法(骨盤を倒したままで胸式呼吸)のなごりは残っており、西洋人に比べると、はるかに密息が行ないやすいよう身体ではあるようです。
  
かつての密息による身体能力の凄さを知ると、現在、私達を取り巻く身体的・精神的な諸問題の根幹に、呼吸方法の変化が多少なりとも影響しているようにも思えてきます。その意味でも、かつて日本人が行なっていた呼吸法「密息」について、可能性を感じさせられます。
  
次回は、呼吸法とも深い関係にある「丹田」について紹介したいと思います。 
 
 
■参考・引用文献、投稿
  
呼吸入門 斉藤孝著
  
「密息」で身体が変わる 中村明一著 
  
日本人本来の呼吸法「密息」で身体が変わる (るいネット)
   
赤ちゃんが呼吸法の手本 (るいネット)
 
 

List    投稿者 yuyu | 2009-09-18 | Posted in M01.身体の自然環境7 Comments » 

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コメント7件

 ヘンプヒルズ | 2010.04.13 0:07

原料を輸入して加工品を海外に輸出している分も含まれているとはいえ、日本の金属資源消費量が、世界の中でもこれほど多いとは!
資源の自給自足を考えると、今後は、輸出型産業構造からの転換と、国内での使用量=必要量の見直しは必要になってきますね。
そして、
>海外依存から脱却し、日本国内での金属の自給は可能なのか>
が重要で、次回を楽しみにしています。

 rino | 2010.04.13 20:09

レアメタルについては、昨今の技術革新の中で注目されていますが、コモンメタルも『耐用年数』でいうと、100年を切るのは驚きでした!
ありふれているものだと思ってましたが、意外と耐用年数でいうとヤバイんですね。。。
その点でいうと、ヘンプヒルズさんのおっしゃるとおり、
”国内での使用量=必要量の見直し”が必要になるとは思いますが、
これらの金属類等の消費における”必要量”って、どう判断していくのかが難しい課題になっていきそうですね~
今後も期待しておきます!

 ぴのこ | 2010.04.15 17:35

ヘンプヒルズさん♪
コメントありがとうございます☆
>輸出型産業構造からの転換と、国内での使用量=必要量の見直し
確かに~!
調べている時に、日本は輸出のために輸入しているものが実はすごく多いんじゃないかと思いました!
これらも、わたしたちの産業や経済に関する意識を変えていくことが必要だと改めて思いました!

 ぴのこ | 2010.04.15 22:03

rinoさん♪
コメント、ありがとうございます★
>これらの金属類等の消費における”必要量”って、どう判断していくのかが難しい課題になっていきそう
そうなんです!
でもね♪ちょっと視点を変えて・・!
こういった課題って、「どれだけ必要量があって、それをまかなうか?」=「そのための技術は?」って考えてしまいがち。
でも、そうじゃなくって、みんなの「共認」の問題だとして考えるとどうでしょう!
課題を共認さえできれば、節約だってできちゃうように、必要量も、決められちゃうんじゃないかなって気がしてます!

 ぴのこ | 2010.04.15 22:06

あっ!書き忘れてしまいました!
読んでくださっているみなさんの期待にお応えできるよう、みんなでしっかり調べていきます(^-^)ノ
いつも応援、ありがとうございます♪

 mame | 2010.04.23 1:46

最近よく耳にする「レアメタル」ですが、まだどんなものなのかよく分かっていなかったので^^;
読みやすくって勉強になりました!!
>金属に関して、日本は世界有数の消費国です
というのは驚きでした!!日本の伝統的な住宅は木造だし、畳があって日よけはすだれで・・
そんな日本ですから、金属の原材料供給量を輸入に頼っているのもわかりますね。
とはいえ、現代は工業国の日本、海外依存を脱する可能性を見いだす必要性があると分かって、これも勉強になりました。

 ぴのこ | 2010.04.23 23:44

mameさん、コメントありがとうございます!!
海外依存していることも、グローバリゼーションなんて言葉によって、危機感を生起させないこともすごく危険なことだなぁって思いました。
普通に考えたら、大事なものは自集団でも確保できるようにしておくことって、絶対必要ですもんね。
これからのシリーズもお楽しみに!!

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