日本人は何を食べてきたか 第三部 part3 ~海苔~
熱々のご飯に乗せて食べる焼き海苔の味、あの香ばしさとパリパリした食感。あるいは甘辛い海苔の佃煮をごはんにのせて食べるのもまた格別のおいしさですね。
梅干に続いて今回も、ごはんと切っても切れない代表的なもののひとつ、 「海苔」のお話です。
~熱々のご飯と海苔~写真はhttp://http://www.yotuba.gr.jp/life_2008/08120/nori.htmよりお借りしました。
海苔は嫌いな人がほとんどいないという数少ない食べ物のひとつです。
この海苔を私たちはいつ頃から食べるようになったのでしょうか。
海苔をおいしいと感じるわけは?
海苔にはどんな栄養がある?
世界中で海苔を多く食べているのはどこの国?
などなど。
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●海苔の歴史
まず、海苔の歴史を少し辿ってみましょう。
神話の時代
歴史にあらわれる海苔の最初の記述は「常陸国風土記」です。
日本武尊(やまとたける)が霞ヶ浦を巡回して「海苔の多くを乾かしてある地」を「乗浜(のりはま)」と名付けた。と記録されています(4世紀初め)。
仏教の伝来と海の幸
大陸との交流が盛んになり、仏教が渡来し、肉食を行わなくなった飛鳥・奈良の人々の食卓にのぼったのは栽培野菜と海の幸でした。このころ食べられた藻類は20種以上を数えますが、多くはニギメ(わかめ)、アラメ(ところてん、てんぐさ)、ムラサキノリ(海苔)等でした。大宝律令(702年)の記載によりますと、租税のひとつとして納める海藻の種類毎に量が定められていて、少ないものほど高級であったといえます。海苔で納める場合はほかの海藻のなかでは最も少なく、「海苔」が第一級品であったことがわかります。
江戸時代
江戸中期・元禄時代の俳人芭蕉の句に「衰えや歯に食いあてし海苔の砂」というのがあり、元禄時代までの自然採取の様子がわかります。この時に海苔の製法は、採った海苔をそのまま広げて乾かしたもので「展延法」といわれます。
養殖されるようになってから、海苔を細かく刻んで紙のように「すいて」作る「すき製法」が行われるようになりました。この製法を最初に行ったのが「浅草」だといわれています。(1680年代から)再生紙の「浅草紙」は有名でした。「海苔すき」もこの紙漉き製法にヒントをうけたものと思われますが、「浅草海苔」の名前自体は、海苔の「すき製法」の始まる以前から使われていたようです。
記述はhttp://http://www.yamamotoyama.co.jp/wisdom/nori/history.htmlを参考にさせていただきました。
写真はhttp://http://blogs.yahoo.co.jp/boooy2005/49758878.htmlよりお借りしました。
●海苔の旨み
さて海苔の美味しさの秘密はいったいなんでしょうか。
日本料理では、昔からいろいろな材料から旨み成分を取り出し、これを適当に混ぜて味を整えていたのですが、これによって味を非常に良くすることができました。たとえば、グルタミン酸とイノシン酸とを混ぜ合わせますと、その味は二つを足した旨みではなく、かけ合わせたほどの美味しさになります。ところが、海苔にはグルタミン酸とイノシン酸、そしてグアルニル酸の三つが作られていますので、含まれているそれぞれの量よりもはるかに美味しく感じられます。イノシン酸は鰹節のうまさであり、魚ばかりでなく動物の肉の中には普通に含まれているものです。
ところが、植物の中でイノシン酸が含まれていたという報告は海苔だけです。しかも、乾海苔100gのなかに5mgも含まれているのです。たしかに、海苔は植物ですが、不思議なことに海苔には現在のところ動物にしか含まれていないイノシン酸を作る力があります。植物の中では少し変わり者なのかもしれません。
ところで、海苔が美味しいのは旨みばかりでしょうか。美味しさにとって旨みは非常に大切なものですが、その他の食べ物と同じように、海苔の場合にも香りが旨みを引き立てています。以前こんな失敗をしたことがあります。飲んだあげくにお茶漬けを頼みました。ふたをしたきれいな入れ物に入ったお茶漬けが出てきたとき、「ふたなどいらないよ」と冗談をとばしてしまったのです。そのときに女将が言った言葉は「ふたを取ったときの香りも味のうちですよ」でした。言われてみれば、たしかに味噌汁や汁物に海苔を入れるのは香りを楽しむためであり、お茶漬けでもふたを取ったときの香りがお茶漬けの味を引き立ててくれます。
【焼く効用】
海苔を焼く“これだけのことで海苔は大変な変身をしているのです。海苔を焼きますと途端に美味しい味や香りが際立ってきます。海苔を生かすも殺すも焼き方一つなのです。焼くことによって細胞を包んでいる膜の性質が熱によって変えられ、水分とともに旨み成分や香り成分が自由に通れるようにもなり、口に入れて海苔が濡れますと旨み成分や香り成分が溶け出して”海苔の風味“がさらに倍増します。
農学博士 大房剛著 「のりおもしろ雑学辞典」秀版社文庫 平成4年10月1日初版発行より
海苔には、日本料理の旨みを構成する三つの成分が全て含まれているからおいしのですね。
●海苔の栄養
海苔にはどんな栄養価があるのでしょうか。まず下の表をご覧下さい。
ミネラルとビタミンが優れていると分かりますね。
ミネラルは体に取り込まれたあと、種々の酵素を作り上げる材料として使われています。またビタミンについては、ビタミンA、Cがたくさん含まれており、またビタミンBグループが揃っているのも特徴のひとつです。
表はhttp://http://www.nori-japan.com/eiyou/eiyou-index.htmlから借用しました。
●海苔の普及
海苔はかなり古くから養殖による生産が行われていました。
日本で養殖されている品種は、アサクサノリとスサビノリの系統が中心となっています。
現在、本格的な養殖が行われている国は日本と韓国・中国ですが、韓国では日本から流れ出している品種が中心になっています。
中国では福建省を中心に「壇紫菜(だんしさい)」と呼ばれている、日本には無い品種が養殖されていますが江蘇省ではスサビノリを養殖しています。
ノリの養殖が軌道に乗り、現在のように大量に生産出来、一般の人々の食卓に上るようになったのは、昭和24年、イギリスの海藻学者ズルー女史が海苔の生態を解明し、これに基づく研究で安定的な生産ができるようになったこと、また機械化による労働の軽減に負うところが大きいといえます。
こうした努力のおかげで平安時代は貴族の食べる高級品だった海苔が、全ての人々が食べられる食品になったのです。
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ヘンプヒルズ | 2010.02.05 18:03
>自我ではなく、共認こそ原点>
この言葉は響きますね♪
心の在り様、そして充足の源は共認であり、それを邪魔しているのが自我なんですね。
そして、自分さえよければいい、というあからさまな自己中の自我充足ではなく、周りの役に立ち喜んでもらい充足したい、と誰もが求めている。
その欠乏に蓋をして邪魔しているのは、頭に巣食うほんの少しの“自分”という固定観念。
「自分ではなく、相手・周りが原点」と気が付きさえすれば、充足可能性の実現基盤が開かれる。
その固定観念を溶解して、相手・周りが原点と気付かしてくれるのも、“相手・周り”。
だから、周りに委ねることが必要。
周りに委ねるためには、周りが可能性の言葉をかけ続けることが必要。
ちょっと、禅問答みたいに考えてしまったけど、心に素直になって充足し合うには、周りに可能性の言葉をかけ続けることなんだと、記事を読んでいて思いました。