2008-08-17

「くすり」ってなんだろう?人類初の抗生物質ペニシリン

くすりシリーズその3は、ペニシリンです。ペニシリン<は人類が初めて発見した「抗生物質」であり、1929年にアレキサンダー・フレミングによって発見され、感染症に絶大な効果を発揮しました。

ペニシリンはどうして発見されたのでしょうか、抗生物質ってどんな病気に、どのように効くのでしょうか。それを知るためには、先ず感染症の歴史からひも解いてみましょう。

『感染症の歴史は生物の発生と共にあり、有史以前から近代までヒトの病気の大部分を占めてきた。医学の歴史は感染症の歴史に始まったと言っても過言ではない。感染症は、民族や文化の接触と交流、ヨーロッパ世界の拡大、世界の一体化などによって流行してきた。1929年に初の抗生物質であるペニシリンが発明されるまで根本的な治療法はなく、伝染病は大きな災害と捉えられてきた。』
ウィキペディアより。
14世紀に中国からヨーロッパに広がり、世界中で推定7500万人が死亡したという黒死病(ペスト)を初め、19世紀に流行したコレラ、ハンセン氏病、天然痘、結核、敗血症など大災害を及ぼした病気は全て『細菌感染』による『感染症』でした。
抗生物質の発見はこの感染症を克服する大発見だったのです。
Holbein-death.png
死の舞踏(Michael Wolgemut画、1493年)
14世紀の「黒死病」の流行は全ヨーロッパに死の恐怖を引き起こした

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■ ペニシリンの発見
ペニシリンを発見したフレミングという男はとてもずぼらな性格をしていました。彼は細菌の培養皿を窓のそばに放置したままにしており、その培地に青カビを生やしてしまったのです。
廃棄する前の培地をよく観察すると、カビの周辺だけ透明になっており細菌が溶けていることに彼は気づきました。そのまま培地を捨てていれば抗生物質の発見はありませんでしたが、彼は「なぜ細菌が溶けたのか」と考えました。
そして、青カビが作っている「菌を殺す物質」がまさにペニシリンだったのです。
ただし、フレミングペニシリンを精製・単離したのではありません。ペニシリンの大量生産が可能になったのは、フレミングペニシリン発見から10年以上経った後でした。
フレミングペニシリンの精製・単離を断念して年月が流れ、フレミングの報告が1940年にフローリーチェーンの二人の科学者の目に止まりました。
フローリーチェーンはこのペニシリンの精製に成功し、大量生産を可能としました。そして、この瞬間から抗生物質の時代の幕開けとなったのです。
ペニシリン
の発見に対してこの3人はノーベル医学・生理学賞を受賞しました。そして、 ペニシリンは第二次世界大戦において、兵士達の感染症を治療するという重大な役割を果たしたのです。』
「役に立つ薬の情報~専門薬学」より。
 
フレミングの大発見も、大量生産技術が発明されて初めて、多くの人の命を救う薬として効果を発揮出来たわけですね。
なお、大量生産の技術開発についてはファイザー社の社史ページを参照ください。

世界を変えたカビhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/150_history/1928.htm

■ 抗生物質とは?
 『抗生物質、anntibioticsの語は1941年に
セルマン・ワクスマンが定義した「微生物によってつくられ、微生物の発育を阻止する物質」が原義』でした。
『その後、真菌類や放線菌類などの産生する天然物が探求された結果、抗腫瘍性抗生物質のように、必ずしも微生物ではないウイルスや悪性新生物の化学療法剤も抗生物質に含まれるようになり』、
『また天然物を化学的に修飾し、その作用の増強や性質の改良が研究され、それら修飾された薬剤も抗生物質とよばれるようになった。したがって、今日では「微生物の産生物に由来する化学療法剤」が広義には抗生物質と呼ばれ』、るようになりました。『』内はウィキペディアより。
つまり今では、「人工の抗生物質」も増えてきたということですね。
■「選択毒性」を利用して細菌を殺す ~抗生物質が効くメカニズム~
抗生物質は、どのような働きで人体に悪影響を与えずに細菌だけを殺すことが出来るのでしょうか。
『抗生物質を含む抗菌剤は、細菌が増殖するのに必要な代謝経路に作用することで細菌にのみ選択的に毒性を示す(人体への毒性はそれに比べはるかに小さい)化学物質で、化学療法剤というものに分類されます。化学療法(chemotherapy)とは「化学物質を用いて病原となる寄生生物もしくは悪性腫瘍物を宿主の生体内で発育阻害・死滅させる治療法」です。抗ガン剤なども化学療法剤の一種となります。
 化学療法を行う上で問題となってくるのは、用いる化学物質が人体に対しどれだけ影響を及ぼすかということ、すなわち副作用の強度です。このことを表すキーワードが「選択毒性(selective toxicity)」です。選択毒性とは、化合物が宿主には毒作用を及ぼさず、寄生異物にだけ選択的に毒作用を及ぼす性質です。
例えば異物が細菌である場合を考えてみます。細菌細胞とヒトの細胞ではメカニズム・構造に差があります。細菌が生存していくうえで必要な生化学的機構・構造はかならずしも人間には必要とされません。逆も言えます。ということは、人間には存在しない、細菌に特有の構造・生体機構を阻害する物質であれば、人間には影響を与えず細菌だけを攻撃することができるわけです。つまり、選択毒性が高い化学療法剤であれば、副作用は少なくなります。人間にとってはこの上なく都合のいい性質といえます。』「有機って面白いよね」より。
■ペニシリン (Penicillin)は細菌の細胞膜を壊して菌を死滅させる

では、ペニシリンは細菌にどう働いているのでしょうか。

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『 A.Flemingによって青カビの一種Penicillium属から単離された抗生物質です。この化合物は特徴的なβラクタム環と呼ばれる4員環構造を持ちます。この構造を持つ抗生物質はβラクタム系抗生物質と呼ばれ、強い抗生作用をもちます。βラクタム系は現在の抗生物質の主流をなしています。
 ペニシリンのβラクタムを含むL-Cys-D-Valの立体構造は、細菌の細胞壁を架橋する目的で生合成される、D-Ala-D-Alaの立体構造に酷似しています(下図)。このため、細菌内に存在するトランスペプチターゼがペニシリンとD-Ala-D-Ala構造を誤認識し、細胞壁の架橋が行われなくなります。 これにより菌の細胞壁が脆弱化し、浸透圧に耐えられなくなった菌は溶菌を起こし死滅します。ヒトの細胞にはこういった細胞壁構造が存在しないため、ペニシリンは全く作用しません。この意味で選択毒性はかなり完璧であると言えます。』「有機って面白いよね」より
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図:D-Ala-D-Alaとペニシリンの立体構造類似性 
つまり構造が似ていることで細菌をだますことが出来るわけですね。
■ 薬剤耐性菌の発生
しかし良いことばかりではないようです。
『抗生物質関連で最近よくとりあげられるのが薬剤耐性菌増加問題です。昔と違い、抗生物質が効かない菌が増えてきたのです。たとえばPenicillin耐性菌はpenicillinase(β-lactamase)という酵素を産生する遺伝子を突然変異により獲得しています。これによりβラクタム環が分解され、菌内でPenicillinは失活してしまい、効果を発揮できません。
 薬剤耐性菌問題を考えるキーワードとなるのが、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)です。MRSAはメチシリンをはじめとする多くの抗生物質に対して耐性を持ち、院内感染菌として知られています。この菌に有効な抗生物質はバンコマイシンだけだ、と言われてきました。
 しかし後に、このバンコマイシンの効かないバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が発見されました。VREは、黄色ブドウ球菌と違い、腸球菌は人間に害を及ぼすことはありません。VRE以外にバンコマイシンの効かない菌はほとんど発見されて無いので、とりあえずは大丈夫なように思えます。しかし、ことはそんなに簡単ではありません。耐性化のプロセスは、耐性遺伝子がプラスミドDNAなどを介して、菌から菌へ伝達されることによって起こりえるということが分かってきたのです。バンコマイシン耐性遺伝子をもつ腸球菌から、耐性を持たない黄色ブドウ球菌に遺伝子の伝達が起これば、バンコマイシン耐性な黄色ブドウ球菌ができあがるというわけです。つまり特効薬のない菌になるわけで、一度感染してしまうと重大です。また、遺伝子伝達先は黄色ブドウ球菌に限らず、もっと危険な菌でも良いわけですから、これがいかに恐ろしいことかは想像に難くありません。』「有機って面白いよね」より

ペニシリンの発見以降、感染症に対して勝利を収めてきた抗生物質による化学療法は、今、耐性菌の誕生という新たな局面を迎えていると云えるようです。
 文章中、『 』部、は「ウィキペディア」及び、「役に立つ薬の情報~専門薬学」http://kusuri-jouhou.com/yakubutu/penicillin.html、及び協和発酵「有機って面白いよね」http://www.chem-station.com/yukitopics/antibiotics.htmのページを引用して作成させていただきました。

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コメント1件

 ぽにょ | 2009.01.06 18:01

植物ってすごいですね~!
動物だった時期があるなんて!!!
なんか生命の集合体って感じです。

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