2006-12-25

食品衛生規格によって守られているものは?

以前、ポストハーベストなどの問題点を調べましたが、そもそも「食品衛生基準」というものはどうやって決まっているのか気になっていたので調べてみました。

現在世界的に通用する食品安全基準はコーデックス規格と呼ばれています。(“食品規格”という意味のラテン語。)


1962年、国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAQ)世界保健機関(WHO)が合同で、国際的な食品規格を作る実施機関として食品規格委員会(CAC)を立ち上げました。


このCACが作成するのが「コーデックス規格」です。
以下概要をまとめました。

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★ 目 的 ★
世界の消費者の健康を保護するために、例えば 食品の規格を決めたり、害のある物質の量の限度を決めたり、衛生的に取り扱うための施設作業管理、設備・保守管理、輸送、製品情報の提供から従業員教育・訓練についての規格を作ること。食品表示やHACCP(食品製造において安全確保のための管理手法)などもこの規格に則っています。食品安全基準の整っていない、途上国に基準を提供することも 大きな役割です。


★ 構成国 ★
2004年3月現在でCAC加盟国は世界191カ国のうちの169カ国です。


★ 決定の手続き ★
規格の決定については、基本的に各国のコンセンサスを取ることを原則としています。
投票になる場合もあり、その場合は1国1票の投票権があります。


★ 組 織 ★
CACの下に部会が構成されています。
FAQ/WHO事務局――食品規格委員会(CAC)
                ∟ ①全般問題規格部会(9部会)
                ∟ ②食品規格部会(11部会)
                ∟ ③地域調整委員会(6委員会)
                ∟ ④特別部会(1部会)
例えば①全般問題規格部会9部会は、食品添加物・汚染物質部会(オランダ)、残留農薬部会(オランダ)、食品衛生部会(アメリカ)、残留動物用医薬品部会(アメリカ)などがあります。
②食品規格部会11部会は、加工果実・野菜部会(アメリカ)、生鮮果実・野菜部会(メキシコ)、食肉衛生部会(ニュージーランド)、穀類・豆類部会(アメリカ)などとなっている。*()はホスト国。← これ重要!


★ 問題だと思うこと ★
実はコーデックス規格そのものには何の強制力もありません。ではなぜ?これをどの国も遵守しなければならないのでしょうか?

現在、世界貿易は世界貿易機関(WTO)体制下にあり、この体制を規定したマラケシュ協定を日本も批准しています。そして、もし食品貿易で何らかの紛争 が起こったときはそのWTOが裁定にあたります。この協定に含まれる「衛生及び植物検疫に係る措置に関する協定(SPS協定)や「貿易の技術的生涯に関する協定(TBT協定)」では科学的に証明される特別な理由が無い限り、コーデックス規格が判断基準になります。

つまり 安全や健康を追求する目的でのコーデックス規格には強制力はないが、このようなWTOのいわば私権闘争の裁定機能としての「コーデックス規格」には非常に大きな があるのです。



そして近年はWTOによる自由貿易拡大のために、 食品安全の最低基準が世界基準になってきています。
事実遺伝子組換え食品に関係のある「グリホサート」の農薬残留基準が大幅に下げられ、アメリカのトウモロコシについては、今までの10倍以上ものグリホサート が残留していても日本に輸入できるようになっています。


またコーデックス規格制定の仕方にも問題があります。制定の手続きですが、まずCACの部会の下に各担当会議が設置され、そこで規格案を作成し、部会→総会の承認を得る過程を踏みます。その担当会議の運営は担当国(ホスト)が議長となって、原則的に担当国内で行われます。議長は会議に大きな影響力を持ち、しかも 地理的にホスト国の周辺国は部会に出席しやすく、出席の多い国(大抵は輸出国と食品企業群)の意向が結論を左右しがちです。

さらに 会議でコンセンサスを得るためには言葉の問題もあります。部会や総会では英語、フランス語、スペイン語が使用されますが、ワーキンググループでは専ら英語だけで行われます。つまりここでも欧米の交渉力が幅を利かせているのです。


 もっといえば 食品に対する考え方は必ずしも世界共通ではありません。
 例えば常に暑い地域では熱をかけない食品は極めて危険なものと見なされるし、逆に比較的寒冷な地域から見れば何でもゴトゴト煮るのがいいとは言えない。また寒冷な地域では農薬の使用量も少なくてすみ、食品中の残留農薬も少ないでしょう。

 そもそも人体事態も皆同じとは言えません。
 例えば肉食の欧米人と菜食中心だった日本人とはの機能も異なります。日本人の小腸・大腸の長さは欧米人より2.2m長く、消化しにくい植物性食品を消化するのに適しています。
 また酪農民族である西欧人は、乳糖(ラクトース)を分解するラクターゼという酵素を生成できる小腸が形成されていったが、農耕民族の日本人は牛乳を飲む必要がなかったため、ラクターゼを生成できる人は5%程度しかいない。したがって日本人は、牛乳を飲むと下痢(=健康を害)しやすいのです。

こうなると、本当に「健康保護」を考えるのであれば、その基準は食品摂取する側の状況に応じて異なるはずで、その特徴を踏まえて事実追求をすべきテーマでしょう。

ミソも○ソも一緒にして規格化すること自体が世界の人々の健康を破壊しているのです。規格によって守られているのは健康ではなく、先進国(と企業)の私益だったわけです。

またもや、欧米か!っと突っ込みたい人はポチっと御願いします。
byコバヤシ

List    投稿者 goqu | 2006-12-25 | Posted in N02.食品衛生規格・添加物って何?7 Comments » 

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コメント7件

 日本一のみかん農家 | 2007.01.17 22:54

日本人の見た目のきれいさという観点は
なかなかくずしにくいですね。
妥協できるところに、いかに自然の美しさを見せられるかとも思います。

 さんぽ☆ | 2007.01.20 8:38

コメントありがとうございます!
>いかに自然の美しさを見せられるか
なるほど、自然の美しさですか。
お店で売られているものって、確かに人工的な美しさばかりですもんね。

 雑草Z | 2007.01.23 1:47

 不二家の事件はあんまり関心がなかったので、この記事読まずにいましたが、読んでみると、しっかり環境問題の本質を突いていて興味深い内容ですね!!
利便・快美=人工=環境破壊
という図式は環境問題の根本の一つですね。
>「命(自然)と利便・快美(人工)」のどちらが重要か?
という問いかけは、いたる所でどんどんなされて是非とも早く社会で共通認識を形成したいですね。

 NagashiMagazine | 2007.01.24 0:04

不二家に自主再建の道はなし!

連日の不二家バッシングに沸く報道番組を、「みのさん怒りすぎだよ!」と突っ込みなが…

 ぐうびるこ | 2007.01.25 15:27

不二家さんのテキトーさは さておき、
人間が、1つの安全の目安のために決めにすぎない「消費期限」を絶対視して、まだまだ十分食することのできる食品を、大量廃棄することが、「正義」とされる社会って、やはりどこか歪んでいると感じます。
どんな食べ物も、すべて元は「命」。
環境問題的には、それは大問題だと思うのですが、どうでしょうか?

 雑草Z | 2007.01.26 0:38

ぐうびるこさんに共感致します。賞味期限を過ぎても大抵のものは食べれます。この食料自給率の低い日本で、賞味期限切れたからと廃棄・・・生ごみでなく、燃えるごみとして出すから酷いもんです。・・・するのも勿体無いし、食べ物を残して残飯にして捨てるのも悲しいものがあります。私は迷信深くはありませんが、こんな事続けているといつか天罰が下りるような気がします。

 さんぽ☆ | 2007.01.27 0:33

確かに、マスコミ等では、賞味期限切れの問題はとりあげても、「十分食することのできる食品を、大量廃棄」しているという点につては、ほとんど取り上げられないですね。
こっちの方が、問題の本質に近いが故、何も解決策等が提示できないからでしょうか?

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