2010-09-16

『次代を担う、エネルギー・資源』原子力発電のまとめ1~(技術開発編)

 

 

 

 

宇宙は物質とエネルギーの源。

星が誕生と死をくり返し進化するなかで、すべてのものは生まれた。

人間もその例外では無い。

 

 

15回に渡って、原子力発電について追求してきました。当初の目的は、原子力発電に対する一般の人々の漠然とした印象である、

『なんとなく危険そうだが、国や電力会社がやっていることだから、それなりの安全性への裏づけはあるのだろう。』
『現実に、日本の電力供給において、かなりの部分を担っているのだから、なんらかの安全性に対する根拠があるのだろう。』

といった点を、具体的にしていくことでした。

そしてそれらを追求した結果、上記のような考えは、原発推進側が、都合のいいところだけを取り出し、都合の悪いところは隠蔽することで、意図的な社会共認を形成してきたことがわかりました。

その結果、私たちはあたかもそれが事実のように思わされてきたのです。

これら事実を、以下の3テーマにわけてまとめていきたいと思います。

『次代を担う、エネルギー・資源』原子力発電のまとめ1~(技術開発編)
『次代を担う、エネルギー・資源』原子力発電のまとめ2~(推進体制編)
『次代を担う、エネルギー・資源』原子力発電のまとめ3~(脱近代科学編)

第一回は、『技術開発編』です。ここでは、確立されていない技術をあたかも、完成して問題の無い技術であるかのような意図的共認形成が行われています。
この解明から、はじめましょう。

 

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☆☆☆都合の悪い部分は隠蔽しながら、開発を進める原子力技術開発

☆「埋設処分」が安全な処分方法であるとする社会共認の形成

現状の核廃棄物の最終処分は、全て「埋設処分」に行き着きます。高レベル放射性核廃棄物の場合、ガラス固化させた後、キャニスターと呼ばれるステンレス製の容器に入れて埋設されます。低レベル放射性核廃棄物の場合は、ドラム缶に入れセメントで固めて埋設されます。

一見、これで「安全に処分された」と思われがちですが、実はそうではないのです。

「埋設処分」されようとも、その核廃棄物は有害な放射線を何千~万年もの間、出し続けることになるので、人間の生きている時間スケールを逸脱した期間、それらを管理しなければなりません。そしてそれには非常に精密な制御と管理体制が必要になるのです。

つまり、「未来永劫と言っても過言では無い長期にわたり、核廃棄物を安全に管理できること」が前提になっているのです。

これは、管理体制維持の問題もありますが、技術的側面から言うと、そのような長期にわたる経年劣化に耐え得る技術が確立(または保障)されていないという点にあります。

当然、埋設された核廃棄物は放射線を放射しつづけるのですから、それを遮蔽する物質にも少なからず影響を与えることは避けられません。ましてや、放射線を浴びなくても、地球上の物質であれば、何千~万年も時間が経てば朽ちていくのは当然です。

このように、『長期間にわたり、管理を継続していかなければならないという問題』と、『経年劣化は避けられないという問題』には触れずに、目先的に、「地上に影響の出ないような場所に埋設すれば安全である」という社会共認を形成させ、現実に埋設処分場を建設しているのです。

※参考
シリーズ11~地球の物質循環から切り離された廃棄物の増量→蓄積の危機~

☆核廃棄物の“再処理技術”を通じて核廃棄物量が減ることは無い

日本原燃の説明では、「核廃棄物を”再処理”をすると繰り返し資源として使えます。」しています。まるで、“リサイクル”を思わせるようです。一般的に”リサイクル”と言われると、当然資源が節約されて、廃棄物も減り、安全に処分されると捉えてしまいますが、実態は違います。

実は“再処理”とは、核廃棄物の中から、資源として使うプルトニウムを取り出す技術であり、核廃棄物を安全に処分することではないのです。

しかも「資源の節約」という意味で言うと、再処理によって取り出すプルトニウムの量もごく微僅かなものです。

さらに、肝心な「廃棄物が減る」という点では、プルトニウムを取り出した後の残りの核廃棄物は、最終的に「埋設処分」へ行き着きます。また、取り出したプルトニウムを資源として使った後にも、当然核廃棄物は発生します。厳密に言うと、別の放射性核廃棄物に変わり、これらもまた、「埋設処分」へ行き着くのです。

したがって、”再処理”をしても核廃棄物量の総量はほとんど変わらないのです。

”再処理”を、まるで”リサイクル”かのように思わせることで、上記のような問題を見えにくくし、あたかもこのような問題が解決されているような社会共認が形成されているのです。

しかも、確立されているように思われる“再処理”技術ですが、実は現状の技術では、実用の域に達していないことも追求の中で分かりました。

※参考
シリーズ8~“再処理”とはどういうことなのか?~
シリーズ9~再処理は実用の域に達しているのか?~
シリーズ10~計画通りに進まない”再処理”計画~

☆☆☆過剰な放射性物質は自然の物質循環に乗せられない 隔離するしかない

☆生態系は、ごく僅かな放射性物質が存在する世界に適応してきた

石炭・石油といった化石燃料は、炭酸ガスに変わって大気中に放出され、それを植物が吸収して光合成に使います。それを草食動物が食べ、草食動物を肉食動物が食べ、やがて死んで微生物に分解され…と、最終的には食物連鎖へと循環します。

シリーズ11~地球の物質循環から切り離された廃棄物の増量→蓄積の危機~

放射性物質の危険度はこれまで散々説明してきましたが、実は、自然状態でも“放射性”の同位元素は存在します。例えばC(炭素)には、C12の他に放射性のC13やC14などがあります。

しかし、それらは自然界にごく僅かであり、そのような放射性物質が微量に存在する世界に、生物は適応してきたのです。

単に「放射性物質が危険だから隔離する」というのではなくて、「そういった環境の中に、原子炉が生成する放射性物質を、超短期的に放出する」ということが、自然の物質循環に反しているので、自然の循環に乗せてしまうと生物の生態系を脅かすことになるのです。
だから、隔離するしかないのです。

☆核廃棄物量はトリウム原発でもウラン原発でもほとんど同じ 根本問題は解決しない

トリウム原発についての追求をこのシリーズの中でも追求しましたが、結局トリウムを利用しようが、ウランを利用しようが、「放射性核廃棄物が超短期的に発生する」という点で、現状の原発と同じ根本問題を孕みます。

あまり知られていませんが実は、ウラン燃料のうち、反応するのは5%であり、残り95%は反応しない不純物です。また、トリウム燃料では88%が反応し、残り12%が反応しない不純物となります。だから、物質同士の核廃棄物の発生量を比べる場合、「炉の中で核反応を起こす物質(=同じエネルギーを取り出すのに必要な核燃料)」のみで比較する必要がありました。
そして、それらの核廃棄物量を比較すると、核廃棄物量はほぼ同じであることが明らかになりました。

プルトニウム以外の核分裂生成物に焦点をあてると、ウラン:トリウムの核分裂生成物の生成比は68:88.95≒1:1.3となります。「燃料が同質量ならばウランよりもトリウムのほうがの高レベル放射性廃棄物が多い。」ということです。そして、これが高レベル放射性廃棄物としてガラス固化体となり地中へ埋設されることとなります。

シリーズ12~地球の物質循環から切り離された核廃棄物問題はトリウム発電でも同じ~

(※上記は、以前の記事の一文ですが、トリウムでは、プルトニウムが出ない分「他の放射性核廃棄物」がウランと同量発生することがわかっています。)

結局トリウム原発でも、都合の悪い「核廃棄物」の問題は捨象し、「ウランに代わる資源の確保のため」や「プルトニウムが出ない」などという、都合の良い部分だけを取り出しているだけに過ぎないのです。

☆☆☆核廃棄物問題とは「閉塞空間」を生み出すということ 社会活力が衰弱するという問題

放射性廃棄物は地球の物質循環から切り離されています。核分裂が進み、放射能がなくなるまでの数万年~数億年もの間、分解されることなく残り続けるのです。

しかも、原子炉を作って50年もすれば原子炉を廃炉することになり、原子炉を解体した際に出る放射性廃棄物が急激に増えることになります。こうして増え続ける放射性廃棄物の行き場がなくなれば、廃炉になった原子炉を解体することなく、原子炉ごと周囲を立ち入り禁止区域にすることも想定されます。

いずれにしても、人間の使える土地が地球上からどんどん減っていくことになります。これが、原子力発電の最大の問題点なのです。

放射性廃棄物は、無害化するまでの途方もない期間、人間の暮らす空間から隔離しておかなければなりません。放射性廃棄物が増えて蓄積されるということは、「隔離された閉塞空間」が地球上に増え続けることに他なりません。

それは同時に、その様な閉塞空間で核のゴミを管理する人間を増やすことを意味します。その様な息苦しい管理社会で、社会の活力が生み出されることはありません。つまり、効率だけを考えて原子力発電を続ければ、確かに目先のエネルギーを得ることはできますが、それと引き換えに急速に閉塞空間が増えていき、社会活力の衰弱が進行していくのです。

シリーズ11~地球の物質循環から切り離された廃棄物の増量→蓄積の危機~

自然の物質循環に乗せられない程の、過剰な放射性物質を生み出す原子力技術開発は、上記のような問題を孕み続けるのです。

本来、科学技術というのは、こうした根本問題を回避するべきもののはずなのに、何故いつまでたっても解決に向かうことができないのでしょうか?

それは「現代の科学技術に思考的欠陥がある」故だという疑いを感じずにはいられません。

この本質的な問題である、現代の科学技術に直結した「近代科学」の思考的欠陥については、シリーズ最後にお送りする『脱近代科学編』で切開したいと思います。

乞うご期待!

~次回『推進体制編』へ続く~

<『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発電シリーズ バックナンバー>
シリーズ 1   核エネルギーを利用した発電システムを概観する1/2
シリーズ 2   核エネルギーを利用した発電システムを概観する2/2
シリーズ 3   核化学反応におけるウランとトリウムの比較
シリーズ 4   炉の構造におけるウラン原発炉とトリウム溶融塩炉の比較
シリーズ 5-1/2 トリウム資源はどこにどれくらいあるのか?
シリーズ 5-2/2 トリウム資源は日本にあるのか?
シリーズ 6-1/2 原子力発電を巡る世界の動き【先進国編】
シリーズ 6-2/2 原子力発電を巡る世界の動き【発展途上国編】
シリーズ 7   原子力発電の推進体制を考える1・・・日本の原子力推進体制
シリーズ 8   “再処理”とはどういうことなのか?
シリーズ 9   再処理は実用の域に達しているのか?
シリーズ10   計画通りに進まない“再処理”計画
シリーズ11   地球の物質循環から切り離された廃棄物の増量→蓄積の危機
シリーズ12   地球の物質循環から切り離された核廃棄物問題はトリウム発電でも同じ
シリーズ13   サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み1/2
シリーズ14   サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み2/2
シリーズ15   原子力発電の推進体制を考える2・・・共認収束の潮流に逆行する原子力推進体制
シリーズ16   原子力発電のまとめ1~(技術開発編)
シリーズ17   原子力発電のまとめ2~(推進体制編)

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コメント1件

 名無し | 2014.08.20 12:37

このページの恒星の誕生の図を夏休みの宿題に流用したいのですが著作権等問題ないでしょうか?
ご回答いただければ幸いです。

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