2010-09-24

『次代を担う、エネルギー・資源』原子力発電のまとめ2~(推進体制編)

1954年の第五福竜丸事件以降、日本では「反米」「反原子力」気運が高まっていく。

そんな中、衆院議員に当選した正力松太郎・読売新聞社主とCIAは、原子力に好意的な新米世論を形成するための「工作」を開始する。
原潜、読売新聞、日本テレビ、保守大合同、そしてディズニー。
正力とCIAの協力関係から始まった、巨大メディア、政界、産業界を巡る連鎖とは――――。
『原発・正力・CIA 機密文書で読む昭和裏面史』
この背後に官僚がいたのだ――――

原子力発電に対する一般の人々の漠然とした印象である、
『なんとなく危険そうだが、国や電力会社がやっていることだから、それなりの安全性への裏づけはあるのだろう。』
『現実に、日本の電力供給において、かなりの部分を担っているのだから、なんらかの安全性に対する根拠があるのだろう。』
上記のような考えは、原発推進側が、都合のいいところだけを取り出し、都合の悪いところは隠蔽することで、意図的な社会共認を形成してきた結果形成されたものです。
ここでは、そのような情報制御が、どのような体制によって成し得たのか?その問題の本質は何か?についてまとめていきます。
いつもありがとうございます。

 にほんブログ村 環境ブログへ


☆☆☆原子力発電の推進体制であるサブガバメント組織とは
☆政府内小政府とも言うべき性格を持ち合わせる官僚および電力会社が構成する集団

サブガバメント組織をもう少し具体的に言うと、経済産業省(旧通産省)・文部科学省(旧科学技術庁)・これら官僚機構の所轄団体である、独立行政法人等(核燃料サイクル開発機構等)・経済産業省支配下の10電力会社の利害を共にする連合組織です。
この組織は、政府内小政府とも言うべき性格を持ち合わせていて、政府からほぼ独立して、自らの組織に有利な意思決定を行うことが出来ます。そしてこの組織は、アメリカの軍産複合体と同様の性格を持っています。
シリーズ13サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み1/2

具体的には、官僚機構・電力会社の自己増殖集団は、社会的に要請される理由を超えたところで、原子力開発そのものに価値があるという共認と、世論の圧力をうけず強力に事業推進できる体制を持ち合わせてる、ということです。
シリーズ7原子力発電の推進体制を考える1・・・日本の原子力推進体制

では、どのようにしてこのような組織が成立するのでしょうか?
☆自ら特権を構築することで、自己増殖する意思決定集団
官僚機構は法案をつくり、国会へ提出します。そうやって仕組みをつくり、随時法改正をしていきます。電気事業法における決して赤字にならないよう設定できる電気料金は、仕入れ価格や不確定要素である価格変動を消費者に転嫁できるシステムとなっています。また、そこに含まれる電源開発促進税は上記のサブガバメント組織の潤沢な資金源となります。そして財政法における特別会計で、それらを外部の圧力を受けることなく、天下りネットワークなどに自ら運用できる仕組みとなっています。
こうした特権を一度構築してしまえば、その枠組みの中で自分たちの意思決定を最優先することが可能になるのです。
参考:シリーズ14サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み2/2
例えば、政治家集団も国家に近い位置にありますが、彼らには任期があり、世論によってはすぐに総辞職という風に一定の圧力が働きます。しかし、官僚集団にはそれすら働きません。
☆☆☆都合のいいところだけを取り出す意図的な社会共認
上記のような特権を構築した結果、組織に都合のよい意図的な社会共認を形成することも可能になります。
☆次々と変わってゆく原子力発電推進理由

原子力開発の推進理由は次から次へと変わっています。初期は、夢のエネルギーとして、石油に比べて効率的優位性が謡われていました。次に、効率的優位性は無いことが明らかになり、石油に代わり増加するエネルギー消費をまかなえるのは原子力だけという理由に変更されました。そして現在、温暖化を防ぐ救世主としての原子力という理由が主流になってきました。
このように、首尾一貫した理由は無いにも拘わらず、長年の間、計画的に原子力発電所が建設されてきました。
シリーズ7原子力発電の推進体制を考える1・・・日本の原子力推進体制

世界で唯一の被爆国である日本では、原子力発電の導入は抵抗が強く反対運動がふきあれました。しかし、読売新聞をはじめとしたマスコミの「平和利用」「夢のエネルギー」というキャンペーンもあいまって、あっという間に導入されることになりました。
一方では、その後も数多く発生する原発事故を受けて、反原発意識が高まっていきますが、次々と変わる原発推進理由は、結果的にこうした都合の悪い現実を覆い隠すかたちとなっています。
前回の記事『次代を担う、エネルギー・資源』原子力発電のまとめ1~(技術開発編)
でもふれたように、都合の悪い部分は隠蔽しながら、開発を進める原子力技術開発の問題も、冒頭に述べたような「なんとなくだが原子力発電は安全」と思わされていくのもこの意図的な社会共認によるものなのです。
☆☆☆官僚制度そのものが孕む構造的欠陥
上記のような現象がまかりとおってしまう構造的欠陥は官僚制度そのものにあります。
☆集団を超えた国家を統合するのが、単一集団(官僚)であるという構造的欠陥

官僚制と試験制の構造的欠陥
企業集団のような民間集団であれば、競合集団が存在しているため、社会が必要としていないのに、自らの集団の膨張のみを目的とするような馬鹿げた集団は淘汰されるしかない。しかし集団を超えた国家の次元に位置する「官僚機構」には企業間競争のような同類闘争の競争圧力は働きにくい。そうした集団間競争という圧力を超えたところに位置するという特権性は、官僚機構が自閉化し、腐敗する構造的原因をなしているのだ。つまり超集団=社会を統合する組織が単一の集団である、という点が、「官僚機構」の最大の問題なのである。

その結果、

国益よりは省益、省益よりは私益(特別会計による省益の拡大)
無駄事業の量産(公共事業と天下り構造・官僚個人の私益の追求)
特定の専門家集団の暴走(官僚機構の際限のない肥大化)

環境問題の改革を進めるには、新しい社会統合機構が不可欠!8『官僚制の突破口は、「半専任・半事業⇒参勤交代制」』

ということになってしまっています。
これが官僚制度そのものが孕む構造的欠陥なのです。
☆☆☆官僚制度の突破口は半専任・半事業の参勤交代制
☆エネルギーの消費者がエネルギー供給の当事者となる

現在、環境問題は環境省、エネルギー問題は経済産業省(資源エネルギー庁)という2つの組織によって担われています。ここでは、2集団の対立構造の作り出す圧力しか、環境問題の抑止力はありません。かつ、経済産業省のエネルギー供給政策の方は、常に環境破壊のベクトルしか持ちえません。しかし、エネルギーの消費と供給の一体的計画の中で初めて環境問題は解決するというのが事実です。つまり、エネルギーの消費者がエネルギー供給政策の当事者になり、消費にも供給にも責任を持つことが必要なのです。
環境問題の改革を進めるには、新しい社会統合機構が不可欠!8『官僚制の突破口は、「半専任・半事業⇒参勤交代制」』

このこと自体は、昭和初期までの村落共同体では当たり前のように行なわれてきました。村落共同体では、現在のような大量生産、大量消費という前提はありません。限られた生産で賄える消費という風に、消費と供給は一体として担われてきました。
大きく違うのは、それまでは村落共同体という集団のなかで実現してきたということです。したがって、この形態を超集団である社会で具体的に実現するにはどうするか?という問題となります。
☆「半専任・半事業の参勤交代制」で官僚制度の欠陥を突破する

これを実現するためのシステムが、副業として担うことができる半事業組織です。そこでは、エネルギー供給政策を担う新しい社会統合機構を設立し、期間限定で専業の生産集団から政策担当者を出向させ、自集団も含めたあらゆる集団へのエネルギー供給政策を担わせることになります。そして、その給料は、仮に所属集団かその一つ上位の階層のグループが負担するということにします。
そうすると、期間限定であること、専業の生産集団(出向中はその給与も負担している)は別に存在することから、国益よりは省益、省益よりは私益に代表される、自閉性は無くなります。そうなると、そこで得られるものは、いかに社会のためになる政策を打ち出し実行してきたかという評価のみになります。当然、その評価を獲得するように、自集団からの期待もかかります。それも、在任期間に成果を出す必要から、公務員のようなサボリも発生しないでしょう。これを例えるならば、現代の参勤交代制ということになるかもしれません。
環境問題の改革を進めるには、新しい社会統合機構が不可欠!8『官僚制の突破口は、「半専任・半事業⇒参勤交代制」』

突破口としての参勤交代制を実現するためには、官僚制度や大量生産、大量消費といった前提をつくりだしたものは何か?にも踏み込む必要があります。もっと言えば、環境問題に関わらず、現在のような問題が作り出されてきたことを鑑みれば、これまでのエネルギー開発を牽引してきた思想に根本的な誤りがあるということになります。
これは、前回の記事でもふれた「現代の科学技術がもつ思考的欠陥」とも無縁ではありません。
この本質的問題は、次回の最終回で扱います。
<『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発電シリーズ バックナンバー>
シリーズ 1   核エネルギーを利用した発電システムを概観する1/2
シリーズ 2   核エネルギーを利用した発電システムを概観する2/2
シリーズ 3   核化学反応におけるウランとトリウムの比較
シリーズ 4   炉の構造におけるウラン原発炉とトリウム溶融塩炉の比較
シリーズ 5-1/2 トリウム資源はどこにどれくらいあるのか?
シリーズ 5-2/2 トリウム資源は日本にあるのか?
シリーズ 6-1/2 原子力発電を巡る世界の動き【先進国編】
シリーズ 6-2/2 原子力発電を巡る世界の動き【発展途上国編】
シリーズ 7   原子力発電の推進体制を考える1・・・日本の原子力推進体制
シリーズ 8   “再処理”とはどういうことなのか?
シリーズ 9   再処理は実用の域に達しているのか?
シリーズ10   計画通りに進まない“再処理”計画
シリーズ11   地球の物質循環から切り離された廃棄物の増量→蓄積の危機
シリーズ12   地球の物質循環から切り離された核廃棄物問題はトリウム発電でも同じ
シリーズ13   サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み1/2
シリーズ14   サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み2/2
シリーズ15   原子力発電の推進体制を考える2・・・共認収束の潮流に逆行する原子力推進体制
シリーズ16   原子力発電のまとめ1~(技術開発編)
シリーズ17   原子力発電のまとめ2~(推進体制編)

List    投稿者 hirakawa | 2010-09-24 | Posted in E03.トリウム原子力発電No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2010/09/775.html/trackback


Comment



Comment


*