2008-03-19

基礎からの原子力発電 ~第6回 核燃料サイクルから考える原子力1~

前回のkanonさんの記事で、放射能に汚染された廃棄物や使用済み核燃料の扱いにくさがわかりました。調べていくと、どうやら「危険だから厳重に保管する」ということ以外に、「将来的に再利用するから大切に保管する」という前向きな保管目的もあるようです。本当なのでしょうか?
というわけで今回は、使用済核燃料サイクル (いわゆる「高速増殖炉」や「ブルサーマル計画」など)
について数回にわけて調べてみることにします。
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(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 高速増殖原型炉「もんじゅ」)
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(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 新型転換炉原型炉「ふげん」廃止計画中)
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今回は、現在の核燃料サイクル技術のうち「高速増殖炉」「新型転換炉」について探っていくことにします。
%E6%A0%B8%E7%87%83%E6%96%99%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB2.GIF①夢の核燃料サイクル-高速増殖炉
今も昔も日本はエネルギー資源の乏しい国です。
原子力発電技術が確立された当時も同じで、燃料であるウランも海外から輸入しており、そのウランも限りある資源だという意識を持っていたようです。
そこで考えられた技術が、「高速増殖炉」という技術です。
高速増殖炉とは、原子力発電後に発生した使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、それを再度利用しようとい技術です。
この技術の特徴は、プルトニウムを高速増殖炉で燃やすと、不思議なことに投入した量以上のプルトニウムを取り出すことができ、そのプルトニウムをもう一度使って発電に使用できるという点にあります。
これにより、日本は将来数千年単位で独自のエネルギー源を確保することができるようになるという、まさに日本の将来を背負った技術と考えられていたのです。
ということで、1960年、夢の核燃料サイクル技術開発である高速増殖炉開発が「国策」としてスタートしました。
②高速増殖炉の開発計画
日本国民の期待を背負ってスタートした高速増殖炉ですが、当初の計画では「30年後には実用化される」と政府は明言していたようです。そして、最近では、なんと、「2050年までは高速増殖炉は実現されない」と政府は明言するようになりました。
30年前に30年後と言っておいて、30年経ったら50年後だと言う。50年たったら、100年後くらいになると言っているかもしれません。科学技術力を過信していたのかもしれません。
計画は、『原型炉→実験炉→実証炉→商業炉』
という形で、段階的に技術が確立され、実用化へ近づいていきます。
現在では、高速増殖炉の原型炉として茨城県に「常陽」が、実験炉として福井県に「もんじゅ」が建設されています。
③高速増殖炉の開発計画の現状
実験炉である「もんじゅ」は1994年に臨界を達成し、1995年8月に初送電を行いましたが、同年12月ナトリウム漏れ火災事故を起こし、その十数年経た現在まで停止しています。2003年には名古屋高裁金沢支部で設置許可は無効であると判断されていたのですが、2005年5月に最高裁で設置許可を認めるという逆転判決が下されています。国の判断も一転二転しているようです。
「もんじゅ」はまだまだ実験炉の段階。たとえ開発が再開されたからといってすぐに高速増殖炉が完成するかというと、そんなことないわけで、高速増殖炉は現在、まさに八方塞がりな状態なようです。
④新型転換炉
新型転換炉は、核反応を調整する減速材に重水を使い、プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料や天然ウランなど、さまざまな種類の燃料を燃やせるのが特徴で、再処理で取り出したプルトニウムを燃やし、それ以上のプルトニウムを生み出す「高速増殖炉」が実用化するまでのつなぎ役として期待されていました。新型転換炉の開発着手は早く、国内初の商業用原発である東海原発が運転開始したのと同じ1966年に原子力委員会が開発を決定し、70年に着工し、79年から運転が開始されました。 
⑤新型転換炉の現状
こちらは、中性子の減速材として使っていた重水が外部に漏れたり、冷却水から放射性物質のヨウ素が高濃度で検出されたりといった原子力事故が度重なったようで、2003年に廃炉されることが決定されました。「ふげん」は原型炉としてプルトニウムを利用していたようですが、「ふげん」の廃炉により日本のプルトニウム利用はストップすることになり、プルトニウムは溜まる一方となることになるようです。また、その施設の解体には、放射能の減衰の関係から周辺の環境に影響を与えないよう40年程度の歳月がかかり、解体費として約2000億円かかるとも言われています。
現状どの技術も八方塞がりで運転すら行われていない。
でも、原子力発電は動き続けるため使用済み核燃料は溜まる一方。
核燃料サイクル技術に可能性などないのかもしれません。

次回は、現在のもう一つの核燃料サイクル技術「ブルサーマル計画」について、調べていくことにします。

List    投稿者 isgitmhr | 2008-03-19 | Posted in F03.原子力発電ってどうなの?14 Comments » 

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コメント14件

 hihi | 2008.07.19 21:03

太陽との位置が絶妙で、その上大気と水があって初めてこの環境なわけですね。絶妙。

 finalcut | 2008.07.19 21:12

地球上の生命の源泉が水だというのはよく知られています。表面の水によって気温が安定するという構造も大きな要素ですね。
さてどうして地球にだけ水が大量に存在するのでしょうか?
不思議です。

 waterboy | 2008.07.19 22:59

最近ではかぐやからの地球の映像が記憶に新しいところですが、地球の青さ・美しさ・環境の素晴らしさは多分に水のおかげであるとも感じます。
気温の安定にも大気・水の循環が大きく寄与していることを再認識しました。

 mame | 2008.07.20 14:11

地球環境は「奇跡のような確率で成り立っている」とよく言われますが、正にその通りですね。次回も楽しみです。

 egisi | 2008.07.21 22:54

hihiさんコメントありがとうございます。
改めて、地球は水の惑星ですね。水の不思議にこれからも迫る予定なので、応援よろしくお願いします!。

 egisi | 2008.07.21 22:58

finalcutさん、こんにちわ!。
地球誕生、水の誕生の成り立ちは、今後ご紹介させてもらう予定です。お楽しみにー!。

 egisi | 2008.07.21 23:06

waterboyさんこんにちわ!。
地球が美しいと感じ取れるは、刻々と移り変わる青さと大気のタペストリーに、生命を感じ取ることが出来るからかもしれません。水=生命と本能に刻まれているからでしょうね。
次回も応援よろしく、お願いします!。

 egisi | 2008.07.21 23:11

mameさん、応援ありがとうございます!。
僕も、本当に奇跡だと思います(笑)。
次回はさらその奇跡、地球と水の関係に迫りますので、お楽しみに!。

 スパイラルドラゴン | 2008.07.23 18:52

>地球大気は熱を吸収してこれを再放出します。このうち96が再び地表に吸収されます。これが地球大気の『温室効果』と呼ばれるものです。
すると、どうしたら上昇気流は発生するのでしょうか。
それに夜明け前の地表面のCO2濃度が高くなっていて、日が射して気温が上昇するに従ってCO2濃度が低くなるのは、CO2が地表放射の赤外線を吸収して軽くなり、上空へと拡散するからです。
そして、水蒸気がなぜ温室効果ガスと呼ばれるかというと、赤外線を吸収したら保持する性質が高いからだと思います。
だから、上昇気流の湿度は高いのです。
逆に二酸化炭素も温室効果ガスに分類されていますが、こちらは周囲の熱を奪って保持する性質が高いからであり、だから工業分野で「冷媒」として広く使われているのです。
実験室で調べれば判明すると思いますが、水蒸気が赤外線を吸収した後は、再放射することによる熱エネルギーの放出は、殆ど無いのだと思います。

 saasa | 2008.07.24 11:57

大気中に0.01%しかない水蒸気が、こんなに重要な役割を果たしていることに衝撃でした!大気ではこんなにも絶妙なバランスで熱収支がおこなわれているんですね。熱収支の図も分かりやすくて、矢印を指でたどりながら読みました☆
なぜ水が生まれたのか?も知りたいので、今後もシリーズ楽しみにしています。

 mamayo | 2008.07.24 21:56

乾燥した砂漠の気候が厳しいのも、気温が高めの季節の雨の日は暖かく、気温が低い季節の雨の日が寒いのも、みんな水蒸気のせいなのね。
分かりやすい「水の原理」、これからの期待しているわ。

 egisi | 2008.07.25 16:18

saasaさん、こんにちわ☆!。
コメントありがとうございます。
水の特徴シリーズも佳境を迎えてきました。次回からも、今までの水の特徴を踏まえて、地球の歴史⇒水の誕生について追求していくので、応援よろしくお願いします!。

 egisi | 2008.07.25 16:30

mamayoさん、コメントありがとうございます。
天気、季節と水の関係は、非常に密接ですよね。地球上にこれだけ多種多様な地域・生物が存在しているのも、この水のおかげですね。
水の物性にまつわる気付きを、これからも発信していくんでよろしくお願いします!。

 ホイホイ | 2008.07.26 21:55

スパイラルドラゴンさんへ
教えてくださいo(>スパイラルドラゴンさんへ
教えてくださいo(><)o >逆に二酸化炭素も温室効果ガスに分類されていますが、こちらは周囲の熱を奪って保持する性質が高いからであり、だから工業分野で「冷媒」として広く使われているのです。 よく分からなくなってしまいました・・・ 素人目で見ると、周囲の熱を奪うってことは、温まった空気中の熱も奪ってくれて、気温は下がるってこと??と思えてしまって・・・そうなると、温室効果ガスとしてどうやって機能しているのでしょう??

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