『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電8~“再処理”とはどういうことなのか?~
前回、原子力発電における、バックエンド問題についてふれました。
それは、もんじゅ自体の技術的問題だけではありません。この、高速増殖炉の開発の前提となる、バックエンドと呼ばれる廃棄物の処理システムそのものが、さまざまな意味で実現可能な課題なのかどうか?という問題に行き着きます。
『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電7~原子力発電の推進体制を考える1・・・日本の原子力推進体制
そこで今回はまず、バックエンド問題を考えるにあたり、六ヶ所村や東海村の工場で行われている
“再処理”というものがどういったものなのかを調べてみました。
以下が再処理の工程です。
※上記の図は原子力資料情報室(CNIC)及び、『プルサーマルの科学/桜井淳』を参考に作りました。
それでは、再処理の流れを追ってみたいと思います。
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☆☆☆再処理の仕組み
原子力発電によって排出された使用済み核燃料(=核廃棄物)は、再処理工場(東海村と六ヶ所村)に運ばれます。取り出したばかりの核廃棄物は熱をもっているので、4年程度貯蔵プールで熱を冷まして(=核反応を進行させるため)から再処理工程に入ります。
これらの再処理工場では「ピューレックス法」と呼ばれる方法で使用済みの核燃料から、ウラン、プルトニウムを分離・精製します。
まず、使用済み核燃料を硝酸に溶かし、溶液にしてから「ウラン・プルトニウム溶液」と「その他の(放射性)核分裂生成物」とに分離します。この時の後者を「高レベル放射性廃棄物」と呼びます(残りのものをクリアランスと呼ぶ)。これらは、ガラスと一緒に固めてキャニスターと呼ばれる金属の筒で覆い、さらにその上から約2m厚のコンクリートで覆って地下300m以下の深い地層に埋めてしまいます。
一方の「ウラン・プルトニウム溶液」は精製工程により、「ウラン溶液」と「プルトニウム溶液」に分離・精製されます(このときのウラン溶液は燃えにくいウラン238)。前者のウラン溶液は硝酸を取り除かれ、酸化ウラン粉末になり、これらは「低レベル放射性廃棄物」としてドラム缶やセメントで覆ってから地中に埋設されます。
さて、残った「プルトニウム溶液」ですが、先ほど精製した「ウラン溶液」を1:1の割合で混合させますが、一般的な原子炉(=軽水炉)ではこの割合では燃料にならないので、再度ウラン(9):プルトニウム(1)の割合で混合すると、軽水炉でも燃える燃料になります。(いわゆるこれが『プルサーマル計画』というものです。)これらウラン・プルトニウム混合酸化物燃料が通称「MOX燃料」と呼ばれます。
☆☆☆“再処理”=プルトニウム回収
”再処理”というと核廃棄物を再度処理して、それこそ処分することだと思ってしまいますが、実は“再処理”とは、“核廃棄物の中から、ウラン、プルトニウム、その他の放射性核分裂生成物とを分離して、プルトニウムだけを回収すること”なのです。
そして残りの核廃棄物の”最終処分”は“全て”地中埋設することだということも分かると思います。
それでは、最終的には埋設される(保存・保管される)核廃棄物はどのようなものなのでしょうか。
☆放射性核分裂生成物(=放射性核廃棄物)の種類
使用済核燃料を再処理して、ウラン・プルトニウムを取り出した後には、様々な種類の放射性廃棄物が発生します。その中で、放射能レベルの高い廃液、またはその固化体のことを高レベル放射性廃棄物といい、それ以外の放射性廃棄物を低レベル放射性廃棄物といって、大きく2種類に区分しています。さらに、低レベル放射性廃棄物は、発生する放射線の強弱に基づいて処分方法が細分化されています。しかし、これらを区分する明確な基準として世界的に認められたものはありません。
☆高レベル放射性廃棄物の発生量と保管量
年間の発電量が100万KWの原発からは、1年間で約30トンの使用済核燃料が排出され、そこから約15m3の高レベル放射性廃液を生じます。この廃液を濃縮し容積を減らして、ガラスに溶け込ませてステンレス製の容器(キャニスター)に固化させることで、約30本のガラス固化体が作られます。2005年に閣議決定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する計画」によれば、2005年~2014年の10年間に、毎年約1,100本~約1,500本のガラス固化体に相当する高レベル放射性廃棄物が発生することになるとされています。(ただし、1,300本~1,600本との想定もある。)なお、この数字は、既にフランスとイギリスに再処理委託している使用済み核燃料は除きます。
2009年12月末時点で青森県六ヶ所村の日本原燃の施設に1,417本、茨城県東海村の日本原子力研究開発機構の再処理施設に247本、合計1,644本のガラス固化体が貯蔵されています。なお、再処理前の使用済核燃料は、それぞれの原子力発電所の敷地内や放射性廃棄物の再処理施設などに保管されています。2009年12月末までに日本の原子力発電所の運転に伴って排出された使用済核燃料の総量は、ガラス固化体にして約2万3,100本相当(フランスとイギリスに再処理委託して返還される約2,200本のガラス固化体を含む)になります。
☆ガラス固化体とは?
六ヶ所再処理工場のガラス固化は東海再処理工場のガラス固化施設(TVF)で開発された技術を用いており,東海の例では固化体重量の約4分の1が高レベル廃液です。 ガラス溶融炉が入っているセル(密閉された部屋)の、コンクリートの壁は厚さが約2mあリます。地震対策とかの問題ではなく放射線を遮蔽するためです。それでも労働者を被ばくさせるようなものすごい量の放射線が外側に放出されます。ガラス溶融炉には温度計やセンサーがたくさんありますが、この中は人間が近づけないので、全部中央制御室からの遠隔操作で運転します。
製造直後のガラス固化体は非常に高い熱をもっていて、ガラス固化体の発熱量が高いまま、地層に処分してしまうと、人工バリア(ガラス固化体自身も含む)の温度を上昇させてしまい、人工バリアの健全性を損なう可能性が考えられます。したがって、ガラス固化体は、処分するまで30年から50年の間うまく熱を逃がしながら貯蔵することにしています。
☆低レベル放射性廃棄物の量
2008年末時点で、約41万3,000トン(200リットルドラム缶換算で82万6,621本※)の低レベル放射性廃棄物が保管されています。 ※200リットルドラム缶1本を0.5トンとする。
☆高レベル放射性廃棄物の最終処分について
ガラス固化体にして、30年~50年間一時保管して冷却された高レベル放射性廃棄物は、最終的に地下300mより深い地層中に埋められて処分すると”されて”います。
しかし、現時点では最終処分場はまだ開設しておらず、2030年代~2040年代半ばの操業開始を目指して候補地を公募するとともに、地層処分の研究を実施している独立行政法人 日本原子力研究開発機構の施設が、北海道幌延町(幌延深地層研究センター)と岐阜県瑞浪市(瑞浪超深地層研究所)に建設され、地層処分の研究開発が行なわれている段階です。
☆再処理とは安全に処分することではない
このように、不確定要素は多々あるにもかかわらず、半永久的に埋設することを“最終処分”と呼び、あくまで“再処理”とは核廃棄物の中から、プルトニウムを分離・回収することなのです。
つまり、“安全に処分することではない”のです。
分離・回収するだけなので、総物理量が減るわけではありません。(一般のごみ処理も、燃やす(=化学反応)ことによって水や二酸化炭素等になって拡散しているだけなので、総物理量が変わっているわけではない)
では、図の最後でも書いたように、プルトニウムを取り出すのは、MOX燃料としてプルサーマル利用するためのもののようですが、現在“再処理”技術は、実用の域に達しているのでしょうか?
次回はこの点を扱いたいと思います。
参考資料
●原子力の社会史/吉岡斉
●プルトニウムの恐怖/高木仁三郎
●プルサーマルの科学/桜井淳
●「原子力発電環境整備機構(NUMO)ホームページ」
●「原子力資料情報室(CNIC)」
●独立行政法人 日本原子力研究開発機構 地層処分研究開発部門 ホームページ
●独立行政法人 日本原子力研究開発機構幌 延深地層研究センター ホームページ
●独立行政法人 日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター ホームページ
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