2010-07-29

『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発電14~サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み2/2

『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電13~ サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み1/2より

サブガバメント組織をもう少し具体的に言うと、経済産業省(旧通産省)・文部科学省(旧科学技術庁)・これら官僚機構の所轄団体である、独立行政法人等(核燃料サイクル開発機構等)・経済産業省支配下の10電力会社の利害を共にする連合組織です。この組織は、政府内小政府とも言うべき性格を持ち合わせていて、政府からほぼ独立して、自らの組織に有利な意思決定を行うことが出来ます。そしてこの組織は、アメリカの軍産複合体と同様の性格を持っています。
このような組織が存在可能な理由の一つは、その組織維持に必要な資金を自らの手で獲得できるからです。その獲得方法に電気料金が使われているのです。

前回の記事では、電気料金のしくみをおさえました。電力会社は決して赤字が出ないよう様々なシステムで守られており、そのシステムを構築しているのは旧通産省(現経済産業省)を主とした官僚機構です。そして必ず利益があがるということを前提として電力会社が国(経済産業省)へ電源開発促進税を納税し、それが特別会計に組み込まれているのです。
今回はさらにその電気料金システムをくわしく見ていきたいと思います。
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☆☆☆電力会社の経営を支える様々な特権

ここから言えるのは、電力会社には経営外圧がかからないシステムになっていて、採算の悪い投資を行っていても決して赤字にならないようになっている、ということです。

『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電13~ サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み1/2より
全ての一般企業は、常に市場での競争圧力にさらされています。そこでは大きく1.価格競争と2.シェア拡大競争が発生します。結論からいうと電力会社はこの2点にしばられないという特権を国からもらっているのです。
☆ 独占禁止法対象外という特権
独占禁止法とは簡単に言えば、商売をするうえでの不当な独占を禁止し、自由な競争を促す法律で、一般企業はこの法律の中で切磋琢磨しています。
例えば、ライバル企業が商品を安くしてくれば、当然こちらも下げないと対抗できません。あるいは、ライバル企業が進出してくれば対抗策を考えるなどです。
もしもこうした決まりがなければ、顧客満足も考えずに不当に高額な商品価格を設定したり、その企業以外その業種に参入できないということになり、正当な競争が実現できなくなってしまいます。
ところが、独占禁止法は「自然独占事業に固有な行為」を適用除外とし、電気事業がそれに該当するとしています。肝心の「自然独占」とは何か?はよくわからないのですが、電気事業法はその独占的運営と、前回述べた「総括原価方式」による価格決定を規定しているのです。
つまり、国の法律によってその特権身分が保障されているのです。
☆ 公共性という大義名分に隠された、恣意的な価格決定システムという特権

その総括原価方式は、発電や送電、電力の販売に関わる全ての費用を原価として収支に反映させ、その上に一定の報酬率を上乗せした金額が、電気の販売収入とイコールになるように電気料金を逆算する方法をとっています。

『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電13~ サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み1/2より
一般企業の経営では、商品価格は市場競争の圧力に規定されます。しかし、公共性の高い電気料金は市場の圧力で価格が不安定になれば体制上大きな問題となります。ですから、価格をいかに安定させるかが体制上の大きな目的になります。
ですから、一般的に公共料金と呼ばれるたぐいのものはこの総括原価方式を採用して、価格変動の影響を最小限に食い止めようとしています。しかし、それらの運営は例えば市町村などの地方自治体の経営する公営企業であり利益を生むこと自体が目的ではなく安定供給、安定運営そして市町村住民への利益還元が目的となっています。
ところが、電力会社の電気料金の場合は、一方でこのような市場価格を抑える総括原価方式を援用しながら、他方では、サブガバメント組織の利益を底上げし、組織拡大のための資金になっています。
この部分が、公共性という大義名分に隠れて、恣意的な価格決定を行なっているという問題なのです。
☆ 核燃料を固定資産とできるということのからくり

その原価の中には固定資産(発電施設の建設費用等)も含まれ、さらにその固定資産には使用済核燃料も含まれています。使用済核燃料とは、原発稼動で生じる廃棄物であり、実際にはゴミにもかかわらず、固定資産として計上されているのです。つまり、高価な原子力発電所を建てても、利益は保証される仕組みになっているのです。

『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電13~ サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み1/2より
もう少しくわしく総括原価方式を見てみますと、電気料金は適正利潤+適正原価で決定されます。
どちらにも「適正」と書かれているように、要は電力会社が「適正」だと判断した金額ということになります。適正原価とはまさにかかった全ての費用およびかかるであろう費用まで含みます。そして適正利潤が、固定資産に一定の報酬率をかけて決まります。
この構造がわかると、「核燃料」を固定資産に含むということのからくりが見えてきます。一般の会計では、燃料というものは費用に計上されます。当然、核燃料も使用していけば費用になっていきますが、3年間炉内にあり徐々に発電に寄与していくからということで総括原価方式の計算上、固定資産でもあるとしているのです。
とすると、核燃料は費用にも計上されるし、固定資産にも計上されるということになります。そして核燃料の償却が終わったあとは、。使用済み核燃料と名前を変えただけで、新たに固定資産に計上され、法定の償却年数まで電気料金の底上げに寄与することになるのです。
☆☆☆電気料金は高いのか、安いのか
原子力発電所がどんどん建設されている以上、普通に考えればそれに比例して電気料金はどんどん安くなっていくはずですが、実際はどうなのでしょうか。
☆ 電気料金の基本料金は横ばいということが意味するのは実際は「電気料金は高い」ということ
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グラフはGarbagenews.comさんよりおかりしました。
グラフの元データは総務省統計局における【小売物価統計調査 調査結果】です。
グラフは東京都限定のものですが、ネットで探しても全国データが見つからなかったので、一旦このブログでは、全国においても同様の数字だと推定します。
電気料金の基本料金は1975年以降ほぼ横ばいとなっています。
一見すると、横ばいだから、電力会社の価格設定は妥当で電気料金は上がっていないと解釈することができます。
しかし、電気料金の基本料金価格とは、上で示した使用済み核燃料やもんじゅを始めとした原子力発電開発費用、電源開発促進税などを含めて決定された価格であり、特別会計に組み入れられた莫大な余剰金が存在します。その結果が「横ばい」だとすれば、もしもこれらの無駄を排除すれば、基本料金は大幅に下がることが予想されます。
次に、電力会社の電力販売量の推移を見てみます。
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グラフは産業データベースさんよりお借りしました。
出展は、電気事業連合会資料より。販売量は、1970年度までは9電力の合計。それ以降は10電力の合計です。
グラフを見ると販売電力量はどんどん増えています。
一般的な経済原理では、大量に販売できたり、投資による減価償却が済めばそれは価格に反映されて安くなっていきます。しかし、電気料金はそうなっていません。
販売量が増加するということは売上の増加を意味し、普通は単価は安くなっていくにも関わらず、基本料金が変わらないということは、大幅な利益の余剰分が増加していることに他なりません。特別会計の余剰金の蓄積はそれを物語っている証拠と言えるのではないでしょうか。
実際、3段階料金制度でも明らかなように、使用すればするほど料金が高くなる仕組みとなっており、まるで累進課税のようになっています。
以上見てきたように、電気料金を下げられる要素はいくつも存在します。しかし、現状横ばいで推移しているということは、「電気料金は高い」ということになります。
☆☆☆新たなエネルギー開発体制の仕組みを考えていく必要がある。
官僚を中心としたサブガバメント組織は、法律によって電気料金をあげる仕組みをつくっています。そしてその結果、電気料金はサブガバメント組織の拡大に使用できるようになっています。
この仕組みそのものが、エネルギー開発資金が特定の特権を持った組織に集中し、本当に国民にとって必要な部分にまわらない現状をつくりだしています。
ですから、今後有効なエネルギー開発体制をどのように構築していくかという視点からすると、現在のような独占状況を崩して、みんなの期待が集まる部分に資金を分配していく仕組みを考えていく必要があるのです。

List    投稿者 hirakawa | 2010-07-29 | Posted in E03.トリウム原子力発電No Comments » 

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