2009-11-10

シリーズ新エネルギー⑦『石油を原料とする化学製品はどうなる?-循環型リグノフェノール複合材料の可能性』

%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%83%E3%82%AF%E8%A3%BD%E5%93%81%E3%80%80.jpg
   
画像は『株式会社 アイビック』さんよりお借りしました  
      
新エネルギーについて考えるとき、燃料としての石油に代わる何か、という着眼点が一般的だ。しかし、石油からは燃料以外にも、プラスチックなどの高分子化合物も抽出、加工している。この原料は、原油の6%ほどのナフサと呼ばれる成分だ。
   
ここで、身の回りを見てみると、この石油製品の含まれていないものを見つける方が困難なくらいだ。それは単に家電製品のようなものだけではなく、車・医療器具・メガネレンズ・コンタクトレンズ・衣服・家具・風力発電の風車まで、現在社会を支えている物はすべて、この石油製品に支えられているといっても過言ではない
   
今回は、石油由来のプラスチック製品等に替わる技術を紹介しよう。
   
内容は『緑ループ』を参考に編集した。
   

 にほんブログ村 環境ブログへ


まずは、
    
☆☆☆プラスチックはどれくらい使用されているのか?
     
%EF%BE%8C%EF%BE%9F%EF%BE%97%EF%BD%BD%E3%83%81%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E7%94%9F%E7%94%A3%E9%87%8F.gif
    
画像は『プラスチック図書館』さんよりお借りしました
   
生産量は、約2億2400万t/年。1秒に約7t。国別に見ると、一人が使うプラスチックの量が多いのはベルギー、アメリカ、ドイツで、日本は11番目になる。日本では、1960年には、1人が1年間に使うプラスチックの量が約5.8㎏だったが、2000年には91.4キログラムと、40年間に16倍にふえている。
     
    
☆☆☆石油が手に入らなくなったらプラスチックはどうする?
     
現在は、燃料抽出の際の副産物を利用しているため、極めて安価に高分子化学製品が供給されていて、環境問題(ゴミ問題)の一つにもなっている。しかし、もしこれが簡単に手に入らなくなると、あらゆる産業も生活も大打撃をうける。このような状況にありながら、これらを自給できるのか?という重大な問題は今まであまり議論されていない。
     
そこで、プラスチックのような高分子化合物は石油からしか取れないのか・・・という単純な疑問から入ってみよう。
     
実は植物からも取り出せるのだ。順を追ってみていこう。
   
    
☆☆☆植物は太陽光エネルギーを使って、炭素と水素の化合物を合成する工場
       
01.gif
       
植物は二酸化炭素と水を原料とし、太陽光エネルギーを使って、炭素と水素の化合物に合成する工場だ。つまり、空気中の二酸化炭素と根から吸い上げた水で、自分の体となる材料(=木材)を合成しているのだ。そのため、樹皮や葉っぱなどの木の表面以外(セルロースなど)は、二酸化炭素と水の構成原子である、H・C・Oだけで出来ている。
   

光合成の模式図
画像は『be Well』さんよりお借りしました

    
    
☆☆☆石油由来のプラスチックの構成材料は、現在と同じ植物生命が合成した炭素と水素の化合物
    
石油も石炭も、その原料は植物生命が合成した炭素と水素の化合物からできている。これらと、現在の植物との違いは、何億年(石炭なら何千万年)もかかって、人間が利用しやすい形に分解されたということだけだ。この分解にも、太陽エネルギーや地熱などの自然エネルギーが使われている。
     
このように、高分子化合物(≒プラスチック)原料である石油と現在の植物の構成材料はほぼ同じものだということが分る。だから、石油から取れるプラスチックは人工的・化学的に人間が作り出した物と考えてしまうのは単なる先入観なのだ。
     
実態は、生物の合成した分子をうまく加工しているだけなので、木材資源から分子構造をそのままにして分離できれば、現在の植物からも高分子化合物(≒プラスチック)は出来るのだ
    
    
☆☆☆地球上の有機物質資源として、もっとも大量に蓄積しているリグニン
          
120-12.jpg     

リグニンの推定構造
画像は『研究の森から』さんからお借りしました

     
樹木の主要化学成分は「セルロース」「リグニン」「ヘミセルロース」であり、全成分の約95%を占めている。セルロースは、細胞壁の主要部分に存在し、樹木を支える役割を果たしている。リグニンは、特に細胞間に高濃度で存在し、細胞壁と細胞壁をくっつける役割を果たしている。ヘミセルロースは、セルロースと同様に、主に二次壁部分に存在する。
     
このうちリグニンは、地球上の有機物質資源として、もっとも大量に蓄積している。しかし、木材そのものを使う以外は破棄されていた。だから、リグニン製品は皆無だったのだ。例えば、パルプ製造も、木材からリグニンをバラバラに破壊して取り除いたあとのセルロースを使用する。『バイオエタノール』を作る際も同じような過程を踏んでいる。
     
    
☆☆☆リグニンを丁寧に分離する技術
     
120-11.jpgリグニンを取り出す原料は、おがくず、廃材、新聞紙などで、分子構造がそのまま残っていれば、旧くても小さくても何でもよい。新聞紙はパルプの様に思われているが、実は薄くスライスした木片の集まりのようなものだ。これらを、ある媒体液で包み込み、酸溶液の中に入れて攪拌するだけで、糖とリグニンに分離できる。

粉末状のセルロース(左)とリグニン(右)
画像は『研究の森から』さんからお借りしました

       
このとき極めて複雑分子構造のリグニンは、すこし分解されてリグノフェノールという化学的に変換容易な安定した分子になっている。このような実証実験がすでに三重大学で行われている。
     
%E5%AE%9F%E8%A8%BC%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%88%EF%BC%92.jpg
     

三重大学大学院生物資源学研究科・生物資源学部(実証プラント)

    
         
☆☆☆リグニンから出来る製品
     
この化学物質から出来る可能性がある製品には、
          
%E3%83%AA%E3%82%B0%E3%83%8B%E3%83%B3%E6%A3%92.jpg    
・循環型リグノフェノール系プラスチック
・循環型リサイクル複合材料 (バイオエステル系無機材料)
・各種ポリマー
・接着剤
・電磁派シールド材
・分子分離膜
・フォトレジスト
・紫外線防御フィルム
・リグニン太陽電池。

三重大学大学院生物資源学研究科・生物資源学部
(循環型リグノフェノール―セルロース複合材料)

 
など、石油化学製品と近似している。かつ、まず木材を原料とした製品が先にあって、その使用後に分子を少しずつ小さくしながら段階的に加工利用することが可能になる。そして最後は燃焼により炭酸ガスとして大気に返すというサイクルができる。
    
     
☆☆☆森林資源を取り込んだ持続可能な化学工業
     
この技術に注目する理由はもう一つある。それは、持続可能な生産を可能に出来るからだ。つまり、植物が太陽エネルギーを利用して生産した『部分』だけを消費するので、土壌がやせることは無い。循環する葉っぱと樹皮の部分は森から持ち出さなければよい。
     
あとは、植林再生の時間に合わせて生産・消費サイクルを作ればいい。つまり、太陽エネルギーを利用して植物が生産するサイクルに合わせた、生活と生産のスタイルを創出すればいいことになる。これは江戸時代を分析した『日本は植物国家』の内容そのものだ。しかしそれは、単に江戸時代に帰れということではない。
     
植林→木材利用→一次的プラスチック製品利用→二次的プラスチック製品利用・・・燃焼して二酸化炭素と水に戻す。それを植物が吸収合成して新しいサイクルが始まる・・・
     
という、現在の木材利用より長い段階的サイクルが成立し、かつ化学製品も生産できる。これはエネルギー生産と消費をどのようなバランスで行っていけばよいかという課題でもある。現在使われている指標として『EPR』などがあるが、どれも経済的換算値であり、エネルギー循環再生指標ではない。
では、どのような指標が必要なのか?が次の課題になる。これを次回扱おう。

List    投稿者 sinsin | 2009-11-10 | Posted in E.次代を担う、エネルギー・資源15 Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2009/11/623.html/trackback


コメント15件

 もちもち二の腕 | 2010.08.18 23:27

>エネルギーの消費者がエネルギー供給政策の当事者になればいい
この言葉、ずっしりと胸に響く言葉ですね。
環境問題にせよ、経済問題にせよ、結局は当事者となっていけるかどうか?それに思い切って飛び込んでいけるかどうか?が、問題解決の糸口なんだと改めておもいました。
それが、何よりも安心した社会をつくれるってことも。
長シリーズ、おつかれさまでした!

 tintin | 2010.08.19 0:14

環境問題解決の答えはこれだ!という気持ちになりました。きっと殆どの人も同じように可能性を感じるのではないでしょうか。細かな仕組みの前に、これから大きくどの方向に進んでいけばよいかを照らしてくれるすばらしい記事だと思います☆

 rei | 2010.08.19 10:25

エネルギー問題について、供給側だけでなく、消費者側も含めた双方の問題点が非常に明快になった素晴らしい記事だと思います。
エネルギー消費者が、供給(生産)の責任も持つという視点は可能性があると思いました。
もともと電気供給で言えば、日本の電気エネルギー供給を10電力会社だけでまかなっているという体制そのものが、利益重視だけでなく、電気供給システムに負担を強いているのだと思いました。
だから、発電効率などが重視され、原子力発電の開発などが推進される理由のひとつになっているのではないでしょうか。
エネルギー供給における、副業として担うことができる半事業組織。
今後も、追求していきたいと思いました。

 Xmen | 2010.08.19 11:43

シリーズを通して読ませていただきました。
官僚の運営体制とそれを可能たらしめた「消費する自由は絶対」という価値観は本質をついたご指摘だと思います。
そしてたかが思想とはいえ、こうした近代思想が統合機構の構築にあたっても実は大きな影響力を持っているということを感じます。
ですから、その価値観に対する「エネルギー消費者も供給責任を負う」という新たな提起はすばらしく目から鱗の思いです。
また、「半専任」という組織形態まで提起されているところに非常に可能性を感じました。問題提起だけにとどまらず具体方針まで提示しようという貴ブログの趣旨に賛同し、また感銘を受けました。

 rino | 2010.08.19 13:38

>問題提起だけにとどまらず具体方針まで提示しようという貴ブログの趣旨に賛同し、また感銘を受けました。(Xmenさんコメント)
私も同様の感想です。
また、消費者側がいかに当事者意識を持って取り組むべき課題であることを切り口に、”既存”の省エネ対策やエコ運動などとは全く異なる、半専任の半事業組織の提案。非常に可能性を感じました。
今回の記事をベースにまた追求が加わり、より具体性をもったものが出来上がっていくのが楽しみです。勉強になりました、ありがとうございました。

 rino | 2010.08.19 13:47

追記させてください。
>そうすると、期間限定であること、専業の生産集団(出向中はその給与も負担している)は別に存在することから、国益よりは省益、省益よりは私益に代表される、自閉性は無くなります。そうなると、そこで得られるものは、いかに社会のためになる政策を打ち出し実行してきたかという評価のみになります。
「税金」というシステムではなく、「給料のその自集団が負担する」という点も「なるほど!」と思いました。この視点は全くもって無かったです。
なんか、エネルギー開発だけでなく、社会統合という大きな枠として見ても可能性のある提案だと思います。

 sinsin | 2010.08.19 15:21

もちもち二の腕さんへ
>環境問題にせよ、経済問題にせよ、結局は当事者となっていけるかどうか?それに思い切って飛び込んでいけるかどうか?が、問題解決の糸口なんだと改めておもいました。
そうですね、環境問題や経済問題を分析して解決策を出そうとするとき、つい、表面に現れる論理に気をとられがちです。
しかし、問題の根本を探っていくと、以外に単純で『当たり前のことやっていないだけ』という事実が見えてきたりします。
今回の『当事者』になる、はその好例だと思います。

 sinsin | 2010.08.19 15:46

tintinさんへ
>環境問題解決の答えはこれだ!という気持ちになりました。
嬉しいコメントありがとうございます。まだまだ荒削りですが、この方向で、過去のさまざまなエネルギー事例を見直していきたいと思います。

 sinsin | 2010.08.19 16:02

reiさんへ
>エネルギー消費者が、供給(生産)の責任も持つという視点は可能性があると思いました。
これも、本来、人が生きていくうえで当たりまえのことだったはずなのですが、近代思想のどっぷりつかっていると解らなくなってくる、ということだと思います。
>もともと電気供給で言えば、日本の電気エネルギー供給を10電力会社だけでまかなっているという体制そのものが、利益重視だけでなく、電気供給システムに負担を強いているのだと思いました。
>だから、発電効率などが重視され、原子力発電の開発などが推進される理由のひとつになっているのではないでしょうか。
☆独占禁止法対象外という特権
☆公共性という大義名分に隠された、恣意的な価格決定システムという特権
(http://blog.sizen-kankyo.net/blog/2010/07/000755.html)
に守られた、官僚・電力会社連合は、電気供給システムに負担を強いていることすら、彼らの権限強化のために利用しているのではないか?と思います。その結果としての、原子力発電の開発なのではないでしょうか?

 sinsin | 2010.08.19 16:37

Xmenさんへ
>ですから、その価値観に対する「エネルギー消費者も供給責任を負う」という新たな提起はすばらしく目から鱗の思いです。
これも、昭和初期の村落共同体の中では当たり前のことでした。しかしそれは、目に見える集団レベルの事例でしかありません。
今回はそれを超えて、社会レベルまで昇華させるというところがポイントだと思います。しかし、その前提としては企業等の共同体化により、社会の構成要素が共同体集団であることも条件になるような気がします。
なぜならば、「エネルギー消費者も供給責任を負う」という価値は、かつての共同体の中で育まれてきたものだからです。

 sinsin | 2010.08.19 16:51

rinoさんへ
>「税金」というシステムではなく、「給料のその自集団が負担する」という点も「なるほど!」と思いました。この視点は全くもって無かったです。
今回の記事を書いている最中に、社会統合にかかるお金をどのように捻出するかという問題も結構重要だと思いました。
なぜならば、税という観念自体が、支配による統合を前提としているのでは無いか?という疑いがあるからです。
そこで今回記事では、仮に社会統合機構への出向の際には「出向者の給料のその自集団が負担する」というアイデアを書きました。
もう一つあるのは、税ではなく、あくまでも投資であると捉えることです。それも個人投資ではなく集団としての投資です。
それであれば、投資集団は社会統合機構に対して、その政策や運営に、意見を出すことが出来ます。
この辺りも次の重要なテーマかもしれません。

 tiger lily♪ | 2010.08.19 19:18

現代の参勤交代!
新しい発想ですね~♪
でも、同じ社会に生きるものとして、一部の人間だけでなく、みんなが社会統合を担うことって、ある意味当たり前☆
そして、何よりすごくて、やっぱり当然あるべき姿だと思ったのが、
>いかに社会のためになる政策を打ち出し実行してきたかという評価のみになります。
という点!!
一見、斬新と思うアイディアでも、みんなの充足につながっていると思えるから、スーッと入ってきますね♪

 sinsin | 2010.08.19 20:09

tiger lily♪さんへ
>一見、斬新と思うアイディアでも、みんなの充足につながっていると思えるから、スーッと入ってきますね♪
そうですね。
ここは重要だと思います。近代思想に導かれた現代社会では、『自由』や『権利』という言葉に隠れた欺瞞性のため、それぞれが自分の要求を通すことが善と、実態的には共認されています。
それを野放しにしておくと社会はバラバラになるので、すべての法律は禁止や抑制を目的としています。そして、それを実行するのが主に官僚なのです。
このような状況なので、充足基調に転換した普通の人々から見ると、官僚の作る法律・政策などには何の可能性を感じません。
だから、これからは、みんなの充足につながっていると思えるような、政策立案が必要になってくるのだと思います。
それは、当然、自分たちの社会は自分たちで創っていくという当事者意識が前提になってきます。
すこしでも、ここに近づくよう追求を続けていきたいと思います。

 さんぽ☆ | 2010.08.20 17:29

環境問題って、最終的には組織、体制の問題に行き着くのですね!
今までの環境問題の解決法をみても実現されていく気がイマイチもてなかったのも、ここまで踏み込んでいなかったからですね。
この組織体制ならば、常に外圧がかかり続けますね!
やっぱり、みんなの期待圧力がかかる構造にしていかなと、成果は出せないですね!

 sinsin | 2010.08.20 18:24

さんぽ☆さんへ
>環境問題って、最終的には組織、体制の問題に行き着くのですね!
そうですね。
しかし今までは、組織、体制の問題というと、すぐ規制による統合方式を考えてしまい、期待圧力からは遠くなっていました。
これは、意識潮流の変化をつかめないまま、固定観念(近代思想そのものですが)で物を考えてしまうからだと思います。
だから、
>やっぱり、みんなの期待圧力がかかる構造にしていかなと、成果は出せないですね!
という、新しい意識潮流を組み込んだ視点で政策を考える必要があるのだと思います。

Comment



Comment


*