2011-03-17

東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か3~そもそも見切り発車だった原子力発電~

2011日3月17日現在、政府会見やマスコミ報道では明らかにされない原発事故に対する情報が、ネット上では続々と投稿され続けています。

「今の政府や東電、マスコミの行っているのは情報の管理」(リンク
「気象庁:国民の方を向いてくれ!」(リンク
「若い人たちは、西に逃げてください。 老人と、公務員は、決死隊員になる覚悟を決めてください。 ◆副島隆彦」(リンク
「原発 政府・マスコミ、ごまかし。危ない?!」(リンク
「どこがまでが危ないか:計算結果②」(リンク

この様に甚大な被害を人類に与えようとしている原子力発電が、世界でも有数の技術力を持つといわれるわが国日本で、いったいどの様な将来的展望を持って推進されてきたのでしょうか?
『東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か~』シリーズ基礎編3日目の今回は、「わが国の原子力発電が、どのような展望を持って推進されてきたのか」について、過去の投稿をもとに再度押さえ直ていくことにします。
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わが国における原子力発電は、建設当初より名目上「核燃料サイクル」を前提に開発が進められてきました。具体的には、使用済核燃料から得られるプルトニウムを再利用する「高速増殖炉(もんじゅ)」「プルサーマル計画」などです。
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(1)高速増殖炉(もんじゅ)」と「新型転換炉(ふげん)」 (リンク
まずは、「高速増殖炉」について、概要を押さえることにしましょう。
%E6%A0%B8%E7%87%83%E6%96%99%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB2.GIF①夢の核燃料サイクル-高速増殖炉
今も昔も日本はエネルギー資源の乏しい国です。
原子力発電技術が確立された当時も同じで、燃料であるウランも海外から輸入しており、そのウランも限りある資源だという意識を持っていたようです。
そこで考えられた技術が、「高速増殖炉」という技術です。
高速増殖炉とは、原子力発電後に発生した使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、それを再度利用しようとい技術です。
この技術の特徴は、プルトニウムを高速増殖炉で燃やすと、不思議なことに投入した量以上のプルトニウムを取り出すことができ、そのプルトニウムをもう一度使って発電に使用できるという点にあります。
これにより、日本は将来数千年単位で独自のエネルギー源を確保することができるようになるという、まさに日本の将来を背負った技術と考えられていたのです。
ということで、1960年、夢の核燃料サイクル技術開発である高速増殖炉開発が「国策」としてスタートしました。
②高速増殖炉の開発計画
日本国民の期待を背負ってスタートした高速増殖炉ですが、当初の計画では「30年後には実用化される」と政府は明言していたようです。そして、最近では、なんと、「2050年までは高速増殖炉は実現されない」と政府は明言するようになりました。
30年前に30年後と言っておいて、30年経ったら50年後だと言う。50年たったら、100年後くらいになると言っているかもしれません。科学技術力を過信していたのかもしれません。
計画は、『原型炉→実験炉→実証炉→商業炉』
という形で、段階的に技術が確立され、実用化へ近づいていきます。
現在では、高速増殖炉の原型炉として茨城県に「常陽」が、実験炉として福井県に「もんじゅ」が建設されています。
③新型転換炉
新型転換炉は、核反応を調整する減速材に重水を使い、プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料や天然ウランなど、さまざまな種類の燃料を燃やせるのが特徴で、再処理で取り出したプルトニウムを燃やし、それ以上のプルトニウムを生み出す「高速増殖炉」が実用化するまでのつなぎ役として期待されていました。新型転換炉の開発着手は早く、国内初の商業用原発である東海原発が運転開始したのと同じ1966年に原子力委員会が開発を決定し、70年に着工し、79年から運転が開始されました。 
④新型転換炉 その後
こちらは、中性子の減速材として使っていた重水が外部に漏れたり、冷却水から放射性物質のヨウ素が高濃度で検出されたりといった原子力事故が度重なったようで、2003年に廃炉されることが決定されました。「ふげん」は原型炉としてプルトニウムを利用していたようですが、「ふげん」の廃炉により日本のプルトニウム利用はストップすることになり、プルトニウムは溜まる一方となることになるようです。また、その施設の解体には、放射能の減衰の関係から周辺の環境に影響を与えないよう40年程度の歳月がかかり、解体費として約2000億円かかるとも言われています。
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(2)プルサーマル計画 (リンク
次は、プルサーマル計画です。
福島第一原発3号機も、このプルサーマル運転中の原子力発電所でした。プルトニウムを利用するため放射線が漏れると、被ばくの危険性は通常炉の2倍になり、要避難距離も倍になると言われています。
①ブルサーマルとは
プルサーマルとは、プル(プルトニウム)とサーマル(サーマルリアクター:熱中性子炉、一般には軽水炉)の2つの言葉を合わせた造語で、軽水炉でプルトニウムをMOX燃料として利用することをいいます。つまりプルサーマルとは、
「余剰プルトニウムを混ぜたMOX燃料と呼ばれる特殊な燃料を、普通の原子炉で利用する」
という計画のようです。ちなみに、MOX燃料(Mixed-OXide Fuel:混合酸化物燃料)とは、使用済み核燃料を再処理して得られた酸化プルトニウムと酸化ウランを混ぜたもので作った燃料のことです。
次に、プルサーマル計画の歴史を見ていきましょう。
②ブルサーマル計画の歴史
この計画は、先ほど紹介した高速増殖炉とセットで1960年代に誕生しました。プルトニウム利用計画の本命である高速増殖炉が実用化されるまであまりにも時間がかかり過ぎるので、その「つなぎ役」として考えられたようです。
1972年の「原子力の研究、開発および利用に関する長期計画」では、次のように述べられています。

(2) 使用済燃料から回収されるプルトニウム及びウランは,国産エネルギー資源として扱うことができ,この利用によりウラン資源の有効利用が図れるとともに,原子力発電に関する対外依存度を低くすることができるので,以下の方針に沿ってこれらを積極的に利用していくものとする。
  [1] 使用済燃料は再処理することとし,プルトニウム利用の主体性を確実なものとする等の観点から,原則として再処理は国内で行う。
  [2] 再処理によって得られるプルトニウムについては,消費した以上のプルトニウムを生成することができ将来の原子力発電の主流となると考えられる高速増殖炉で利用することを基本的な方針とし,2010年頃の実用化を目標に高速増殖炉の開発を進める。
  [3] しかしながら,高速増殖炉の実用化までの間及びそれ以降においてもその導入量によっては,相当量のプルトニウムの蓄積が予想される。このため,資源の有効利用,プルトニウム貯蔵に係る経済的負担の軽減,核不拡散上の配慮等の観点から,プルトニウムを熱中性子炉の燃料として利用する。熱中性子炉としては,プルトニウムはもちろん減損ウラン及び劣化ウランをも燃料として有効かつ容易に利用できる新型転換炉を発電体系に組み入れることができるよう開発を進め,さらに, 発電用原子炉として広く利用されている軽水炉によるプルトニウム利用を図る。この両者については,いずれもできる限り早期に実用規模での技術的実証を行うとともに経済的見通しを得ることが必要であり,1990年代中頃までには,その実証を終了し実用化を目指す。

こうしてスタートしたプルサーマル計画ですが、その後日本では、1980年代末から沸騰水型と加圧水型、それぞれ1基ずつ使用実験が行われているようです。
(日本原子力発電敦賀1号機(BWR)1986~1990、関西電力美浜1号機(PWR)1988~1991)
③つなぎ役から中心的役割へ
1995年12月、前回紹介した核サイクル技術の本命である高速増殖炉「もんじゅ」が、ナトリウム漏れ事故を起こし運転停止となりました。これには当時の政府も焦ったようです。
「プルトニウムの利用先の可能性がなくなってしまった、このままでは余剰プルトニウムで溢れてしまう。今まで巨額の資金も投入しているし、このままでは国民に示しがつかない・・・。」
と考えたかどうかは定かではないですが、こうして1997年「プルサーマル推進計画」を発表。その後、「当面の核燃料サイクルの具体的な施策について」(原子力委員会決定)を発表、閣議決定を受け、電力会社側もこれに付き合い2010年までに16-18基でMOX利用を実施するという計画をまとめたのです。
④なぜ今プルサーマル計画が必要なのか?
様々な理由があるようですが、
(中略、詳細は過去記事をご覧下さい)
簡単にまとめると、

原子力発電で発生し続ける使用済み核燃料の保管場所がなくなってきている
(現在は原発サイト内の貯蔵所で保管)
  ↓
保管場所がなくなれば原子力発電を止めなければならない、電力会社は大損害
  ↓
保管場所として余力があるのは、六ヶ所村の再処理工場の受け入れ貯蔵プールのみ
  ↓
その貯蔵プールも一杯になってきた
  ↓
再処理工場を稼動させて貯蔵プールを空けないといけない
  ↓
再処理したらプルトニウムが増える
  ↓
国際公約で余剰プルトニウムを持たないことになっている
  ↓
プルサーマルでプルトニウムを消費しないといけない

ということになっているようです。
実は、六ヶ所村の再処理工場を動かしても最大で年間800トンの使用済み燃料しか処理できず、全国で毎年発生する使用済み燃料の量は約1000トンです。いずれにしても、余った分を貯蔵するためには、原発サイト内かサイト外に「中間貯蔵」設備を設けるしかないらしいです。
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(3)原子力発電サイクル技術の現状
このように「核燃料サイクル」を前提に開発が進められてきたわが国の原子力発電ですが、現状はどうなっているのでしょう。
①高速増殖炉(もんじゅ)の現状
1994年に臨界達成、1995年8月に初送電.
  ↓
1994年12月ナトリウム漏れ火災事故を起こし運転休止。
  ↓
2003年名古屋高裁金沢支部で設置許可は無効であると判断される。
  ↓
2005年5月最高裁で設置許可を認めるという逆転判決が下される。
  ↓
2010年5月運転再開。臨界確認。各種の試験を経て2013年春に本格運転を目指す。
  ↓
2010年8月原子炉容器内に筒型の炉内中継装置が落下。吊り上げによる回収が不可能と判明。長期の運転休止中。
②プルサーマル計画の現状
1997年の計画だと、現在までに10基ほどで実施されているハズですが、実際には福島第一原子力発電所3号機を含め全国で4基の原子力発電所がプルサーマル運転を行っていました。(福島第一原発3号機以外は現在も稼動中)
・九州電力 玄海原子力発電所3号機
2009年11月より試運転開始。同年12月より営業運転を開始。
・四国電力 伊方原子力発電所3号機
2010年3月より試運転開始。同年3月より営業運転を開始。
・関西電力 高浜原子力発電所3号機
2010年12月より試運転開始。2011年1月より営業運転を開始。
・東京電力 福島第一原子力発電所3号機
2010年9月より試運転開始。同年10月より営業運転を開始する。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により被災。原子炉冷却水の水位が低下し、燃料棒が露出水素爆発が発生し、建屋のコンクリート壁が吹き飛ぶ。炉心に海水注入。使用済み核燃料貯蔵プールが冷却できない状態になる。先ほど(2011年3月17日午後7時)警視庁の高圧放水車による地上からの放水が、(同日午後7時35分)自衛隊の特殊な消防車による放水が行われ、今なお懸命な冷却作業が行われている。
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(4)まとめ
『原発は必要か否か?』
その答えはこの悲惨な現状を見れば明らかで、『不要』です。
そもそも、安全性の保証のかけらもなく、将来の展望も全くなく、見切り発車で推し進められてきたものです。その結果が、今回の原発事故そのものなのです。

『人々は、これまで無数の常識(規範とか観念。現在もっとも支配的な観念は、自由とか個人とか人権だと云って良いでしょう)に則って家庭生活を営み、あるいは経済生活を営んできました。しかしその結果が、先進国における全面的な行き詰まり(世界バブル・財政破綻・環境破壊・精神破壊)であり、崩壊の危機であるとすれば、それらを導いてきた常識群の根幹部が(従って、大部分の常識が)根本的に間違っているからだと考えるしかありません。おそらく人類は今、全文明史を覆すほどの大転換期に入ったのではないでしょうか。』 (るいネット

世界の人々がこの認識を少しでも早く共認し、新しいエネルギー統合システムリンク)等の構築によって、この恐ろしい原発が廃絶されることを心から望みます。
明日は、市場拡大の一つの手段となっている『原子力産業』という視点から、原子力発電が必要か否かを考えていくことにします。
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(過去のバックナンバー)
第1回 東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か1~基礎編~(リンク
第2回 東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か2~放射線、放射能って何?~(リンク

List    投稿者 isgitmhr | 2011-03-17 | Posted in F04.東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否かNo Comments » 

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