東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か 5~1978年9月以前に着工された原子炉25基は原子炉設置基準を満たしていない~
昨日の、「原子力産業の再編:BWRとPWRとは?~」では、原発の主流である軽水炉型のBWR(沸騰水型)、PWR(加圧水型)についての基礎を整理しました。
では、次に気になるのは今回の福島第一原発はどちらだったのか、ということです。
そして、「原発全体ではどうなのか?」、「他は大丈夫なのか?」といった疑問について追求していきたいと思います。
<東北地方太平洋沖地震 緊急シリーズ:これまでの記事>
原発は必要か否か1~基礎編~
原発は必要か否か2~放射線、放射能って何?~
原発は必要か否か3~そもそも見切り発車だった原子力発電~
原発は必要か否か 4~原子力産業の再編:BWRとPWRとは?~
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■以前から問題が指摘されていた福島第一原発
日本では、東電を盟主とするBWRと、関電を盟主とするPWRに分かれています。
「プルサーマルと核のごみ」京都大学原子炉実験所 小出 裕章氏よりお借りしました
東電はBWRが中心で、技術的には、
「原子炉で発生した蒸気をそのまま発電に利用するため、、「放射能を帯びた蒸気の取り扱いには細心の注意が必要です。具体的には、蒸気を回収して再び原子炉の中を循環させるだけでなく、関係する設備を全て遮蔽し、放射能が外部に漏れることを防いでいます。」
という課題をはらんでいます。さらに、今回の原発では、
『事故原発は“欠陥品”? 設計担当ら35年ぶり仰天告白』 2011.03.18
>米メディアの報道と設計者の証言をまとめると、もともと事故時の危険が高い米国発の原発が、津波や地震のリスクを十分に考慮せず建設、運転されてきたことになる。前出のブライデンボー氏は今回の事故について、「マーク1型格納容器が、他の原子炉ほど地震や津波の負担に耐えられないことから(事故が)生じた」と分析している。
福島第1原発の1号機が運転を開始したのは71年。40年もの間、周囲を巻き込む深刻な事故を起こさなかったのは奇跡だったともいえる。
ZAKZAKより引用
というように、専門技術者の観点からは、事故を起こしても不思議ではない異常な状態であったことが推測されます。
では、その原発本体を格納する建物の安全性はどうなのでしょうか?
■1978年9月以前に着工された原子炉25基は原子炉設置基準を満たしていない
◇建築基準法の3倍
「工学的な安全裕度を考慮して、原子力発電所の安全上重要な機器、建物などは、建築基準法の3倍の地震力を考慮して耐震設計しています。」と説明しています。
しかし、「原子力発電所は関東大震災の3倍の地震に耐えられる」という安全論が、原発のPRで頻繁に使われてきましたが、これは誤りを通り越して、大嘘 であると広瀬は指摘しています。図7に示すように日本の原発のうち最大耐震性を持つ浜岡原発3・4号機の耐震性でも神戸・淡路地震の最大加速度(833ガ ル)には不十分です。◇津波に対する対策
発生する津波の高さに対する対策はとられていますが、津波の発生要因によっては更に大きな津波も想定されることも推察されます。また、津波が発生した後 沖合まで海水が引いた場合に、原子炉が冷却不能の事態になればどうなるかなどの危険性が他にも多数あることが指摘されています。◇旧型の原子炉の問題点
日本では、1966年に第1号として東海原発が運転を開始していますが、これら旧型の原子炉が設計された時代には、原子炉を設計するための耐震性の指針さえなく、プレート運動による地震の発生メカニズムも知らぬまま、電力会社が自己判断に基づいて設計していました。初期に建設された原発は、実際の地震に 比較して小さな揺れにしか耐えられないものとなっています。
「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」は1981年に原子炉安全委員会によって正式決定されたものです。したがって、広瀬は1978年9月以前に工事に着手された原子炉25基は、原子炉設置基準を満たしていないという重大な事実を指摘しています。
以上、問題点も多く、現状の原子力発電所の地震に対する安全性は信頼できるものではありません。また、関東・東海地方の地震の確率も高いことから、一度大地震が発生すれば未曾有の事態も懸念されます。
「よくわかる原子力」より抜粋引用
「1981年に原子炉安全委員会によって正式決定された耐震基準以前の原子炉は、電力会社が自己判断に基づいて設計されており、実際の地震に比較して小さな揺れにしか耐えられない」という事実には驚かされます。
では、その危険な25基とは、いったいどの原発なのか?日本で運転されている全原発を、建設年度の古い順から一覧表にしてみました。
これを見ると、今回の福島第一原発の1号機は、「BWR」かつ建設も2番目に古く、さらにはグラフで見ても、もっとも低い耐震性能であることがわかります。
また、福島第一原発は、6基ともその25基のうちに該当しています。
※なお、広瀬氏は25基とされていますので、おそらく1979年度(12月)までに建設開始した女川-1号機までを対象にしていると考えられます。
もはや、原発が安心であるなどとは誰もいえなくなっているのではないでしょうか?
にも関わらず、電力会社や政府、マスコミは、「原発がなければ必要な電力をまかなえない」と主張を繰り返しています。それは、はたして本当なのでしょうか?
これは、次の記事で考えてみたいと思います。
※後半の論点は、分割しました(3/24)。
<参考>
資源エネルギー庁 電力調査統計
日本原子力産業協会
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