東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か 6~原子力が無くても日本の電力は不足しない~
昨日の、原発は必要か否か 5~1978年9月以前に着工された原子炉25基は原子炉設置基準を満たしていない~では、日本で稼動中の原子炉55基のうち、実に半数近い25基がそもそも明確な耐震基準ができる1981年以前のものであることをお伝えしました。
耐震基準を満たしておらず、あるいは、満たしていても阪神大震災や今回の東北地方太平洋沖地震クラスの揺れには対処できない可能性が高い。これでは、いつ、地震や津波による新たな原発事故が起きるか非常に不安になります。
しかし、電力会社(や政府)は、「原発がなければ電力が不足する→原発は不可欠」という主張(脅し?)を崩しません。改めて、「そもそも原発も含めた電力事情はどうなっているのか?」「本当に原発を無くせば必要な電力がまかなえないのか?」という疑問について追求していきたいと思います。
<東北地方太平洋沖地震 緊急シリーズ:これまでの記事>
原発は必要か否か1~基礎編~
原発は必要か否か2~放射線、放射能って何?~
原発は必要か否か3~そもそも見切り発車だった原子力発電~
原発は必要か否か 4~原子力産業の再編:BWRとPWRとは?~
原発は必要か否か 5~1978年9月以前に着工された原子炉25基は原子炉設置基準を満たしていない~
応援よろしくお願いします。
■全電力会社の設備概要と電力消費量
今後、「原発が必要か否か?」を考える上でも必要となる現在の日本の10電力会社の設備概要と各地域での電力消費量を見てみましょう。
10電力会社ともに、発電所の最大出力合計では、火力が60%前後を占めており、原子力は30%にも満たないのです(発電量が30%と高くなるのは、原子力の設備利用率が最も高いからです)。
ちなみに、今回の地震において、原発が停止したことによって東京電力のエリア内では計画停電が実施されています。しかし、それは原発がなくなったために行われているのかどうかがはっきりしません。東電が発表している内容を元に推測してみました。
参考:東京電力プレスリリース
実態は、予想以上に火力発電所も被害を受けており、原発が止まったことだけの電力ダウンではないはずです(但し、火力発電所の最大出力は1基単位では把握できないため、実際にはもう少し、停止電力分は少なくなると思われますが、少なくとも半分くらいは火力発電の要因では?)。
■ 原発が止まったら本当に電気は不足するのか?
『原子力は即刻やめても困らない』
日本では現在、電力の30%を超える部分が原子力で供給されています。そのため、ほとんどの日本人は、原子力を廃止すれば電力不足になると思っています。また、ほとんどの人は今後も必要悪として受け入れざるを得ないと思っています。そして、原子力利用に反対すると「それなら電気を使うな」と言われたりします。
しかし、発電所の設備の能力で見ると、原子力は全体の20%しかありません。その原子力が発電量では30%になっているのは、原子力発電所の稼働率だけを上げ、火力発電所のほとんどを停止させているからです。原子力発電が生み出したという電力をすべて火力発電でまかなったとしても、なお火力発電所の設備利用率は7割にも達しません。それほど日本では発電所は余ってしまっていて、年間の平均設備利用率は5割にもならないのです。
つまり、発電所の半分以上を停止させねばならないほど余っているわけです
ただ、電気は貯めておけないので、一番たくさん使う時にあわせて発電設備を準備しておく必要がある、だからやはり原子力は必要だと国や電力会社は言います。しかし、過去の実績を調べてみれば、最大電力需要量が火力と水力発電の合計でまかなえなかったことすらほとんどなかったのです(図7参照)
「愚かな核=原子力利用」京都大学 原子炉実験所 小出 裕章氏よりお借りしました。
予想もつかない検証結果だといえます。原発が必要で、なければ電力が不足して日常生活も不便になってしまうと思い込まされていましたが、実際にはそうでもなさそうです。少なくとも原発がなければ日本の生活や経済は成り立たないということではないといえます。
次回は、これまでの原発事故等、そして脱原発の可能性について考えていきたいと思います。
ありがとうございました。
<参考>
資源エネルギー庁 電力調査統計
日本原子力産業協会
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