2011-06-13

福島第一原発・・・炉内の放射能量を推計する

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写真解説:放射線の分布を測定できる「ガンマカメラ」で撮影した福島第1原発1号機の原子炉建屋1階。放射線量が高いところは赤色、低いところは青色に着色されている=20日(東京電力提供)

これまで「メルトダウンはあり得ない」「原発は安全」だと報道されてきました。しかし、今になって1~3号機全てがメルトダウンしていたとの発表があり、政府やマスコミの出す情報にはいよいよ信憑性が無くなってきました。

このような情報統制が敷かれているということは、危険な状態は今も続いているということの証明でもあるでしょう。

こういった状況に対し、今後どのように行動し、対策を講じていかなければならないのか?それらを私たち自身で判断していくために、最悪の事態を想定し、まず福島第一原発にはどの程度『放射能』が存在しているのか?について調べてみました。

しかし、重要な値にもかかわらずこの値はちゃんと公表されていません。よって、複数の公表データをもとに推計し、わからない部分は仮定も含めて算出しました。かなり細かい表なのでダウンロードして使用してください。

『福島第一原発の炉内の放射能量の推計』

また、データがない部分は多くの推定が入っていますので、より正確なデータや推定方法をお持ちのかたはぜひコメントしてください。

これ以降本文では、この表の代表数値のみの簡易表に変換した内容で記事を書きます。これは、表の説明も兼ねています。細かいですが最後までお付き合いいただければ幸いです

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☆☆☆今、福島原発の中にはどれくらいの放射性物質があるのか?

これを算出するには、何段階かの計算が必要です。まずは、東日本大震災時点での推定存在量を算出して、それ以降、放出されたり核変化したりした放射性物質量を推定する必要があります。そこでまずは、東日本大震災時点(3月11日時点)での推定量を算出してみます。

その場合、原子炉内と使用済み核燃料プール内とに分かれて存在しています。この2箇所の放射性物質は、反応状況が異なりますので別々に推計します。まず今回は、原子炉内の放射性物質の推計から。

☆☆☆東日本大震災時点での原子炉内放射性物質の推定存在量を算出

現在、東京電力のHPでは装荷されている燃料及び使用済み核燃料の量は公開されていないので、昔の東電のHPを公開している2つのサイトから、各々の燃料の量(t)と体数を算出しました。

旧東電のHP( GIGAZINE 福島第一原発1号機の核燃料が溶け出た可能性)

原子力情報資料室

☆☆☆福島第一原発の炉内に装荷されている燃料量を推計する

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福島第一原発の原子炉1号機から5号機内に装荷されていたウラン燃料の総t数は478tです。もともとはウランですが、核反応後には様々な物質に変化します。その際、質量は減少しますが、その量は微小なので無視します。

☆☆☆原発を運転した後の放射性物質の生成量は?

原発を運転させた後にウラン燃料は様々な放射性物質を生成します。それらの放射性物質がどのような比率で生成されるのか?は過去の実績を参考に算出しました。福島第一原発では1.2.4.5.6号機はウラン燃料、3号機はMOX燃料(ウランにあらかじめプルトニウムを混合させた燃料)なので、別々に算出します。これらは、燃料を4年間燃焼させることを前提にした数値です。

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☆表の解説1:ウラン燃料を使った場合の核分裂生成物の生成量は?(表中 赤字

1.2.4.5.6号機について、原発を約4年間運転させた後、ウラン燃料1t当りどのくらい核分裂生成物(≒放射性物質)が生成させるのかの指標値をまとめました。

☆表の解説2:MOX燃料を使った場合の核分裂生成物の生成量は?(表中 青字)

3号機のみはMOX燃料なので、通常のウラン燃料での生成率と異なります。しかし、私たちが調べた範囲ではMOX燃料を使用した後の核分裂生成物の詳細なデータが無かったので、原子力市民年間2010(著/原子力資料情報室)P182のプルトニウム含有量を参考に指標値を算出しました。沸騰水型原子炉の燃料中に4.3%のプルトニウムが混合されていると仮定しています。残りはウラン燃料です。

このとき4年間燃焼でMOX燃料1t当たりどれくらいの放射性物質を出すのかは、先のウラン燃料の表『原発を運転した後の放射性物質の生成量』を加工して作成しました。MOX燃料に場合、ウラン燃料軽水炉の3.2倍のプルトニウムを生成するとしました(原子力市民年間2010(著/原子力資料情報室)P177)。これが増えた分、ウラン238の量を減らして表を完成させています。

☆表の解説3:放射性物質1g当たりにどれくらい放射能があるのか?(表中 黒字

生成された放射性物質1g当たりにどれくらい放射能があるのかは、「比放射能(Bq/g)」として定義されています。放射能の強さ(Bq:ベクレル)は「決められた時間(1秒間)にいくつの原子核が崩壊するか」で測り、単位重量(1g)当たりのその値は、質量数と半減期の関数として表されます。

比放射能は質量数と半減期の積積に反比例します。半減期が短い物質ほど単位時間当たりの崩壊数は大きい=放射能は強い、ということになります。

比放射能 1.32×10^16/(質量数×半減期)

この式を元に各放射性物質の比放射能を算出しました。
☆☆☆燃焼時間の想定から放射性物質量及び放射能(Bq)を推定

原子炉の中で、燃料は約4年間燃焼されると先の表のような、放射性物質に変換されます。だだし、一度のすべての燃料を入れ替えするのではなく、1年に1/4ずつ交換しているようです。これを模式図にすると下表のようになります。

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ここで、ある時点での炉内燃料の燃焼年数は(4+3+2+1)年/4=2.5年になります。また、4年間燃焼を100%とすると、この数値は、(2.5年/4年)%=62.5%になります。ここで、燃焼時間に応じて、先の放射性物質が生成されると簡略化した仮定を行うと、炉内には、

①4年間燃焼した常態の放射性物質    62.5%

②新規に投入した反応前のウラン燃料    37.5%

の混合常態にあることになります。そこで、反応後(4年間燃焼時点での数値)の62.5%と、反応前(ウラン燃料)の37.5%を合算して、現時点で、福島原発の中にある放射性物質量および比放射能(Bq/g)を想定しました。

それらを一覧にした表が『福島第一原発の炉内の放射能量の推計』です。これを、各号機の合計と、上位15物質までを表示して、簡略化したものは以下の表です。

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炉内の全放射能量は、4.22×10^25 (Bq)となります。細かな分析は後に回しますが、

保安院の解析によると、事故後1週間に放出された放射性物質は77万テラベクレル(1テラは1兆)。4月12日に公表した推定では、事故後1カ月の放出量を37万テラベクレルとしていた。また、保安院は事故後1週間で放射性物質の大部分が大気中に放出されたと指摘した。

WSG日本版

単純計算でも、上記77万テラベクレルは、炉内単純推定量の10万分1%程度にしかなりません。

次回は、『福島第一原発・・・使用済核燃料プール内の燃料量を推計する』について扱います。

お楽しみに

List    投稿者 sinsin | 2011-06-13 | Posted in F04.東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否かNo Comments » 

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