基礎からの原子力発電 ~第7回(最終回)動き出さざるを得ないプルサーマル計画~
第6回の記事(リンク)の続きです。
今回は『プルサーマル計画』について調べてみました。
(中国電力株式会社 伊方原子力発電所)
ここ数年、この 『プルサーマル計画』 という言葉をよく耳にします。
つい最近のニュースでも、
「泊原発、プルサーマル計画、北電が説明会」 : 2008年5月24日 毎日新聞
「愛媛県、伊方原発のプルサーマル計画を正式同意」 : 2007年10月14日 四国新聞
「島根県議会もプルサーマル容認」 : 2007年7月5日 山陰中央新報
と記事があり、また、私たちが日々お世話になっている 関西電力 も、
「2008年1月、プルサーマル計画の準備作業を再開することとしました 」
と発表しています。
どうやらここ最近、各電力会社はこの 『プルサーマル計画』 とやらを積極的に進めていこうとしているようです。
何か匂いますね。
にわかに動き出した感のあるこの 『プルサーマル計画』 、一体どういうことなのか、調べてみることにします。
続きはクリックしてからお願いします。
まずは、言葉の理解から。
①ブルサーマルとは
プルサーマルとは、プル(プルトニウム)とサーマル(サーマルリアクター:熱中性子炉、一般には軽水炉)の2つの言葉を合わせた造語で、軽水炉でプルトニウムをMOX燃料として利用することをいいます。つまりプルサーマルとは、
「余剰プルトニウムを混ぜたMOX燃料と呼ばれる特殊な燃料を、普通の原子炉で利用しまっせ!」
という計画のようです。ちなみに、MOX燃料(Mixed-OXide Fuel:混合酸化物燃料)とは、使用済み核燃料を再処理して得られた酸化プルトニウムと酸化ウランを混ぜたもので作った燃料のことです。
次に、プルサーマル計画の歴史と現状を見ていきましょう。
②プルサーマル計画の歴史
この計画は、前回紹介した高速増殖炉とセットで1960年代に誕生しました。プルトニウム利用計画の本命である高速増殖炉が実用化されるまであまりにも時間がかかり過ぎるので、その「つなぎ役」として考えられたようです。
1972年の「原子力の研究、開発および利用に関する長期計画」では、次のように述べられています。
(2) 使用済燃料から回収されるプルトニウム及びウランは,国産エネルギー資源として扱うことができ,この利用によりウラン資源の有効利用が図れるとともに,原子力発電に関する対外依存度を低くすることができるので,以下の方針に沿ってこれらを積極的に利用していくものとする。
[1] 使用済燃料は再処理することとし,プルトニウム利用の主体性を確実なものとする等の観点から,原則として再処理は国内で行う。
[2] 再処理によって得られるプルトニウムについては,消費した以上のプルトニウムを生成することができ将来の原子力発電の主流となると考えられる高速増殖炉で利用することを基本的な方針とし,2010年頃の実用化を目標に高速増殖炉の開発を進める。
[3] しかしながら,高速増殖炉の実用化までの間及びそれ以降においてもその導入量によっては,相当量のプルトニウムの蓄積が予想される。このため,資源の有効利用,プルトニウム貯蔵に係る経済的負担の軽減,核不拡散上の配慮等の観点から,プルトニウムを熱中性子炉の燃料として利用する。熱中性子炉としては,プルトニウムはもちろん減損ウラン及び劣化ウランをも燃料として有効かつ容易に利用できる新型転換炉を発電体系に組み入れることができるよう開発を進め,さらに, 発電用原子炉として広く利用されている軽水炉によるプルトニウム利用を図る。この両者については,いずれもできる限り早期に実用規模での技術的実証を行うとともに経済的見通しを得ることが必要であり,1990年代中頃までには,その実証を終了し実用化を目指す。
こうしてスタートしたプルサーマル計画ですが、その後日本では、1980年代末から沸騰水型と加圧水型、それぞれ1基ずつ使用実験が行われているようです。
(日本原子力発電敦賀1号機(BWR)1986~1990、関西電力美浜1号機(PWR)1988~1991)
③つなぎ役から中心的役割へ
1995年12月、前回紹介した核サイクル技術の本命である高速増殖炉「もんじゅ」が、ナトリウム漏れ事故を起こし運転停止となりました。これには当時の政府も焦ったようです。
「プルトニウムの利用先の可能性がなくなってしまった、このままでは余剰プルトニウムで溢れてしまう。今まで巨額の資金も投入しているし、このままでは国民に示しがつかない・・・。」
と考えたかどうかは定かではないですが、こうして1997年「プルサーマル推進計画」を発表。その後、「当面の核燃料サイクルの具体的な施策について」(原子力委員会決定)を発表、閣議決定を受け、電力会社側もこれに付き合い2010年までに16-18基でMOX利用を実施するという計画をまとめたのです。
④プルサーマル計画のその後
1997年の計画だと、現在までに10基ほどで実施されているハズですが、実際には、現在一基も実現されていません。関西電力と東京電力は、MOX燃料を作った英国燃料会社のデータ捏造事件やJCO臨界事故(1999年)、東京電力の原発でのトラブル隠しの発覚(2002年)などによって計画が白紙に戻され、現在、具体的な計画がでているのは、九州電力玄海原発3号機と四国電力伊方原発3号機、中国電力島根2号機、中部電力浜岡4号機だけなようです。
⑤なぜ今プルサーマル計画が必要なのか?
様々な理由があるようですが、
(1)主に海外で再処理し発生したプルトニウムがあり余っている(イギリスとフランスに約40トン) 。
(2)日本は余剰プルトニウムを持たないとの国際公約をしている。
(3)各地の原発で使用済み燃料貯蔵施設が満杯になってきている。2004年3月末現在で、全国の貯蔵量の合計は約1万1000トン。容量は約1万7000トン。数年で満杯になるところが次々とでてくる
(4)あふれ出た使用済み燃料を送り込む場所は現在のところ六ヶ所村再処理工場の受け入れ貯蔵プール(容量3000トン)しかない。
(5)このプールの容量は後半分しか残っていない。(05年12月まで搬入量1524トン)。
(6)このプールに余裕を持たせるには再処理工場で処理するしかない。つまり、早く再処理を開始しなければならない。
(7)再処理工場を運転すると余剰プルトニウムの量がさらに増える。
(8)国際公約から、プルトニウムを消費しないと再処理工場が運転できず、そうすると、再処理
工場の受け入れ貯蔵プールが使えない。結果、各地の原発の燃料貯蔵施設が満杯となって、原発からでてくる使用済み燃料の行き場がなくなり、原発が止まるから、プルサーマルを認めて欲しい。
といったところが主な理由のようです。
ややこしいので簡単にまとめると、
原子力発電で発生し続ける使用済み核燃料の保管場所がなくなってきている
(現在は原発サイト内の貯蔵所で保管)
↓
保管場所がなくなれば原子力発電を止めなければならない、電力会社は大損害
↓
保管場所として余力があるのは、六ヶ所村の再処理工場の受け入れ貯蔵プールのみ
↓
その貯蔵プールも一杯になってきた
↓
再処理工場を稼動させて貯蔵プールを空けないといけない
↓
再処理したらプルトニウムが増える
↓
国際公約で余剰プルトニウムを持たないことになっている
↓
プルサーマルでプルトニウムを消費しないといけない
ということになっているようです。
実は、六ヶ所工場を動かしても最大で年間800トンの使用済み燃料しか処理できず、全国で毎年発生する使用済み燃料の量は約1000トン。いずれにしても、余った部分を貯蔵するためには、原発サイト内かサイト外に「中間貯蔵」設備を設けるしかないらしいです。
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場当たり的で目先だけの対応としか言いようがないです、こんな技術に私たちは将来を懸けていていいのでしょうか?
つい先日(5/16付)のニュースで、あの「もんじゅ」に「プルトニウムが輸送された」という記事がひっそりと発表されていました。輸送するために核爆弾16発分のプルトニウムが混雑する首都高を通って渋谷を走り抜けたようです(リンク)。
「もんじゅ」は今年の10月に運転再開が予定されています。
これら一連の動きには、原子力発電技術を要するメーカーや、ウラの金融資本家の利権争いも絡んでいます(リンク)。
名残惜しいですが今回でこのシリーズは最終回です。
『基礎からの原子力発電』と題して7回にわたり、素人の目で基礎から原子力発電というものを見てきましたが、わかったことは、「いかに人間は自然の摂理に反した愚かなことをしているのだろうか」ということです。単純な話、利益追求を止め、自らの保身を止め、無駄な消費を止めれば、現在のような八方塞がりな状況も生まれなかったハズです。
『人々は、これまで無数の常識(規範とか観念。現在もっとも支配的な観念は、自由とか個人とか人権だと云って良いでしょう)に則って家庭生活を営み、あるいは経済生活を営んできました。しかしその結果が、先進国における全面的な行き詰まり(世界バブル・財政破綻・環境破壊・精神破壊)であり、崩壊の危機であるとすれば、それらを導いてきた常識群の根幹部が(従って、大部分の常識が)根本的に間違っているからだと考えるしかありません。おそらく人類は今、全文明史を覆すほどの大転換期に入ったのではないでしょうか。』 (るいネット)
人類は今、全文明史を覆すほどの大転換期に入っている。
エネルギー問題、消費問題も大転換期に突入していることを自覚し、自然の摂理に則った抜本的な大転換が必要だということを再認識しました。
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コメント3件
きよ | 2008.10.09 20:32
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きよ | 2008.10.09 20:32
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ぴー | 2008.10.09 11:54
アレルギーが起こる仕組みが初めて何となく理解できました☆
外部の物質から守るための免疫機能から発展してアレルギーが生じてしまうなんて、何だか本末転倒な感じがしちゃいますね(´-`)