2011-03-24

東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か10~原子力発電に伴う廃棄物処理という宿命~

みなさま、こんにちは。
この度は、東北地方太平洋沖地震の被災された皆さまに、心からお見舞い申し上げます。
そして、一日も早く復旧されますことをお祈り申し上げます。
本シリーズ第9回では、前回の「世界各国の原子力を巡る政策」の記事に引き続き、全ての原子力発電の可能性を考える上で避けては通れない、原子力廃棄物問題の宿命をお送りします。
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写真はこちらよりお借りしました。
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○バックエンド(原子力廃棄物処理システム)を巡る状況とは?
原子力発電所では、『燃料製造・発電所建設・運転』などの「フロントエンド」と呼ばれる事業に対し、『原子炉の廃炉費用や放射性廃棄物の処理、核燃料サイクルにかかわる』事業を「バックエンド」事業と呼んでいます。
長期的視点で、全ての原子力開発の可能性を考える上で、その大前提となるものが、このバックエンドと呼ばれる廃棄物処理システムなのです。このシステムをどのように構築していくかについて、現状、日本におけるバックエンド・原子力推進体制の問題点に迫っていきます。
(まずフロントエンドの安全性を確保することは絶対条件のはずなのですが、今回の福島原発事故でもわかるように、地震や津波に対して非常に不十分な対策がされていることが発覚しました。短期的にはこちらの問題も非常に重要なのですが、今回は長期的視点での運用に基いて、その問題点をお送りします。)
現状、バックエンドを巡る問題において、以下の項目が存在します。
(過去、本ブログの原子力特集における記事よりご紹介させて頂きます。)

①:再処理とは安全に処理することではなく、核廃棄物の中からプルトニウムを取り出すことであり、その他は埋めるしかないということ
②:軽水炉などの濃縮ウランを用いた核廃棄物から再処理する技術は、非常に困難であり、未だ確立された技術ではないということ
③:プルサーマルや高速増殖炉を実現させるには、再処理技術の確立が絶対条件であること
④:それにもかかわらず、再処理技術は確立されている前提で、これら(プルサーマル、高速増殖炉)の研究が先行されていること
⑤:高速増殖炉は(プルサーマルも基本的には同じ)燃料生産のためであり、最終処分の問題は何も解決していないこと

写真はこちらよりお借りしました。
※記事の詳しい内容はこちらより

上記の事実からわかることは、現状のバックエンド(最終処分)とは、不確定要素を多々含む放射性廃棄物を、半永久的に埋設することを「最終処分」と呼び、あくまで「再処理」とは核廃棄物中から、プルトニウムを分離・回収することなのです。
つまり、「安全に処分する技術ではない」のです。

また、燃料の再処理利用を前提とした高速増殖炉では、軽水炉よりもはるかに高いエネルギーが詰まった高温の原子炉なので、危険度もはるかに増し、制御技術も格段に高度になります。
 
軽水炉と同じく、高速増殖炉によって出た核廃棄物の中にもまた、ウランやプルトニウム、その他核分裂生成物(放射性核廃棄物)が多く混在しており、その中から「再処理」によってプルトニウムを取り出さなければなりません。
  
従って、再処理技術が確立して初めて、高速増殖炉によるプルトニウム燃料利用が可能になるのです。そもそも、高速増殖炉で燃料生産を確立させるには、再処理技術の確立が必要なのです。
しかし、現状それが進んでおらず、根本的な最終処分地をどうするのかに対する回答も、ずっと棚上げとなっているのが現状なのです。
 
 
  
○再処理計画は今までどのように行われてきたの?
上記の内容を踏まえた上で、では今までこの問題に対し、具体的にどのような「再処理計画」を行ってきたかを押さえてみましょう。

☆ 再処理技術の計画推移
東海村処理工場は計画より3年遅れて、1974年に稼動しましたが1972年の使用済燃料排出予測ではすでに1977年に処理能力を超えると予測されています。これでは間に合わないため、1978年には民間により2つ目の再処理工場をつくり1985年には稼動させる計画を立てています。これが六ヶ所村の再処理工場です。しかし稼動計画は実現できず、稼動時期は1990年→2000年→2007年と先延ばしされて、現在も完成していません。
ようやく2006年にアクティブ試験(本物とほぼ同様に再処理を行い、結果を分析する)を開始し、2010年フル稼働を目指しています。
☆ 計画通りに進んでいないという現実
日本原燃の説明によれば、再処理とは、貴重な資源であるウランとプルトニウムを、原子力発電により生じた使用済核燃料から取り出し、リサイクルすることです。そして再処理をすることで、使用済燃料を直接処分する場合(ワンススルー)と比べて、放射性廃棄物の発生を1/2以下に減らすことができるそうです。
また再処理の目的の大半を占めているのが、プルトニウムを使用してさらに燃料生産をするという高速増殖炉です。
それらが有用か否かという価値判断を置いてみても、現状はほとんど実現できていません。
それでも原子炉だけは先行して増加していっているというのが現状です。当然、使用済み核燃料はどんどん出てきます。これらをどうするのか?という問題が厳然として存在します。
※記事の詳しい内容はこちらより

⇒現状、再処理技術開発は計画通り進んではいないのにも関わらず、原子力発電所は一貫して増加し続け、累積廃棄物量も増加する一方なのです。

☆ 使用済み核燃料及び再処理後放射性廃棄物が安全な物質になるまでに数万年以上かかる
使用済核燃料や再処理後の放射性廃棄物が安全な状態になるのにかかる時間は数万年(数百万年という試算もある)と言われています。ですから、仮にガラス固化により地下に埋設したとしても、その維持管理にはそうとうな労力と費用がかかることになります(ステンレス容器に入れられたガラス固化体は、さらにオーバーパックと呼ばれる炭素鋼の容器に入れられ、まわりは粘土の緩衝材で固めるとされています。この人工のバリアと天然のバリア(地層のこと)が、溶けだして地下水に運ばれる放射能が人間の居住空間まで到達することを遅らせると期待されています)。
一口に数万年と言えば、氷河期の時代にまで遡ることになりますが、果たして氷河期の時代に埋設されたガラス固化体が数万年後も安全であるかというのは誰にもわかりません。
ましてやその量は原発が稼動し続ける以上、増加こそすれ、減ることはないのです。
国はその維持管理に責任を持つということですが、それはすなわち私達の税金で賄われるということです。安全な物質になるのに数万年かかるということはそれが半永久的に続くということに他なりません。


写真はこちらよりお借りしました。
※記事の詳しい内容はこちらより

  
 
 
○原子力発電に伴う廃棄物処理という宿命をどうとらえるか?
改めておもうことは、人智を超えた力が今回の地震ならば、原子力発電とは全くの未知の力なのかもしれません。
人類史においても、原子力発電から得られる力は、とてつもなく強く大きなものです。
そして、その「力」を持つ者も強いものでありました。
日本の原子力開発推進体制は、官僚機構・電力会社を中心とした、政府から概ね独立して意思決定を行える(人々の意識から離れたところでも事業を遂行できる)集団として、その制度を自ら強化し、推進できる自己増殖体制を確立してきました。
しかし今回の原発事故は、組織の強さ・巨大さが故に逆に力に魅入られてしまい、自らが本当にそれを制御する力があるかどうかということを考えなくなってしまった、思考停止の状態の末路なのかもしれません。
改めて、知力でも技術力でも、権力でも、力の行使が制御できなくなった時点で、力は腐敗していくのです。
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写真はこちらよりお借りしました。
原発の本質とは、今は電気を作っているように見えますが、再処理という観点から考えると何万年という途方もない時間をかけて管理しなければならない代物です。
エネルギーを生み出すと同時に、永遠の倦怠を生む核のゴミを封印するためには、膨大な労力・エネルギー(石油・電気)が必要となります。
それはこれからの地球に生きる生物全体の目から見れば、今作っているエネルギー以上のエネルギーが必要になることは、まず間違いありません。
そして、実際にそれら(核廃棄物や閉鎖した原発)を管理していく者は、私たちの子孫なのです。
今回の原発事故を教訓に、これ以上の原発の増設を見直すこと、さらには既存の原発をも見直すこと、そして原発にかわる新たなエネルギー供給の道をみんなで今こそ考えていくことが、重要な課題ではないでしょうか?

 
 
 
<参考>
トリウム原子力発電7  ~原子力発電の推進体制を考える1・・・日本の原子力推進体制
トリウム原子力発電8  ~“再処理”とはどういうことなのか?
トリウム原子力発電9  ~再処理は実用の域に達しているのか?
トリウム原子力発電10 ~計画通りに進まない“再処理”計画

List    投稿者 egisi | 2011-03-24 | Posted in F04.東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否かNo Comments » 

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