原発事故で、放射能はどのように拡散するのか? 2.首都圏への広がりと累積被ばく量
前回は、福島県内への飛来状況をみてみました。
今回は、関東から首都圏への放射能物質の飛来です。
5月中旬に、群馬大学の火山学者である早川由紀夫氏が、柏から葛飾区金町にかけて、放射線強度の高い区域が存在すると、発表しました。周辺より放射線が高い区域が島になっているので、ホットスポットといわれています。
金町といえば、東京都の浄水場があり、一時、水道水の汚染でパニックになった場所ですね。
守谷-柏-金町汚染スポットより
早川氏によると、このホットスポットは、3月21日から始まったとしています。
月日が固定されたのは、柏市には東京大学柏キャンパスがあり、5月15日から測定していたからです。
(但し、東大は測定結果から、社会にその危険性を発信しませんでした。HPでのコメントは、「危険性があるレベルではない」というものです。)
それでは、関東、首都圏への放射能物質の飛来状況をみてみましょう。
そして、累積被ばく量(μシーベルト/時の日累積、月累積量)をみてみます。
3.首都圏では、汚染の高い場所が千葉県北部から東京都東部まで達している
4.累積被ばく量が、1ミリシーベルトを超える地点とその時期
本文に行く前にクリックをお願いします。
3.首都圏では、汚染の高い場所が千葉県北部から東京都東部まで達している
まずは、前回と同じ方位図です。
(ポップアップです)
関東、首都圏には、2回に渡って飛来した
最初は、第一原発から南西(SW)方向です。
方位・南西(第一原発→宇都宮)
(ポップアップです)
原発から40km以内の地点は高い値を示しています。そして、宇都宮市、前橋市、さいたま市の値は、3月16日には、1μシーベルト/時に測定をしていますが、翌日には、0.1μシーベルト/時レベルに低下しています。
宇都宮、前橋、さいたまの放射線測定は、地上20m或いは18mで行なわれているものです。16日には、爆発後の放射線が関東上空に達している事を示しています。そして、地上に降下したので、翌日からは小さな値になったのでしょう。
方位・南南西(第一原発→日立市・水戸市)
この方位で特徴的な事は、3月12日~15日の爆発直後に放射線強度が上昇したのではなく、3月21日、22日に大きく上昇していることです。
(ポップアップです)
上のグラフは、原発から近い地点のデータです。
45地点(18km)、44地点(27km)、74地点(42km)のいずれも、21日以降に跳ね上がっています。
下のグラフは、ひたちなか市・水戸市から首都圏の遠い地点のデータです。
3月16日からの測定データがあるのが、水戸市、東京大学柏キャンパス、新宿です。このいずれもが、3月21日以降に数値が跳ね上がっています。
21日以降の跳ね上がりはさいたま市でもみられます。
水戸市 3月19日0.17μシーベルト/時 → 22日0.38μシーベルト/時
東大柏 3月19日0.14μシーベルト/時 → 21日0.75μシーベルト/時
新宿 3月19日0.05μシーベルト/時 → 22日0.13μシーベルト/時
さいたま 3月19日0.055μシーベルト/時 → 22日0.109μシーベルト/時
これは、21日から22日にかけて、海沿いに南に向けて放射能物質が飛来してきたことを示しています。
関東・首都圏への放射能物質の飛来は、12日~15日の爆発直後の飛来と3月21日以降の飛来の2回が有ったのです。
爆発直後の飛来は、福島県の中通り(福島・郡山・白河の平坦地)を下って、関東平野に至る経路です。20日以降の飛来は、海沿いに南に飛来し、霞ヶ浦、利根川下流の低地を経て、首都圏に至る経路です。
千葉北部・東京東部のホットスポット
上記のグラフでも分るように、柏市、流山市、葛飾区金町の放射線強度は、ひたちなか市や水戸市の数値を上回っています。
4月1日の数字でみると、ひたちなか市0.30μシーベルト/時、水戸市0.19μに対して、柏市後田第一公園0.51μ、東大柏0.49μ、流山市美田0.60μ、葛飾区金町0.49μです。
関東、首都圏の汚染状況を前回と同じく地図上にプロットしてみました。数値は、4月1日の空間線量μシーベルト/時です。
柏、流山、葛飾区金町の3つが、0.5~0.9μシーベルト/時の一段高い値になって、集まっています。
なお、柏市からは、庭の植物に奇形が多く発生しているとの報告が上がっています。
今年の春は こんな花が!!
奇形の植物と3月21日の雨の関連性
次に、累積被ばくを簡単にみておきます。
4.累積被ばく量が、1ミリシーベルトを超える地点とその時期
放射線被ばくは、空間線量から来る外部被ばくと放射能物質を体内に取り込んだ内部被ばくがあります。
内部被ばくは把握するのが難しいので、今回は、空間線量の単純な累積値(外部被ばくの累積値)をとりました。
一日の被ばく量は、Xμシーベルト/時×24時間とします。この一日の被ばく量を日・月で積算しました。5月以降は、便宜的に4月30日の数字を採用しています。
各地点の累積被ばく量は、測定開始の日からの累計です。多くの測定点が空間線量の最も高い時期を過ぎてからですので、累積値は小さめの数字になります。
累積値が、1ミリシーベルトに達する時期がいつかを、図にプロットしてあります。
福島県内は、6月末までには、累積被ばく量が1ミリシーベルトを超える
★福島県内の累積値が1ミリシーベルトを超える時期
放射能物質が大量に飛来した北西方向では、多くに地点が10日後の3月21日には1ミリシーベルトを超え、殆んどの地点が3月末には1ミリを超えました。
比較的飛来が少なかった地点でも、4月末で1ミリを超え、より少ない地点でも、6月末には1ミリシーベルトを超えます。
福島県の放射能物質の汚染が、いかに深刻化わかります。
首都圏では、ホットスポットが6月、7月に1ミリシーベルトを超える
次は、関東、首都圏の累積被ばく量のプロットです。
★関東、首都圏の累積値が1ミリシーベルトを超える時期
首都圏では、柏市、流山市、葛飾区金町などのホットスポットが、事故6ヵ月弱の8月末までに、1ミリシーベルトを超えます。より具体的には、流山市が6月末、柏市と葛飾区金町が7月末です。
続いて、日立市、水戸市、つくば市、我孫子市、本郷などが、9ヶ月後の11月末に、1ミリシーベルトを超えます。
その他の新宿、さいたま市、前橋市等は、9ヶ月後でも、1ミリシーベルトに達しませんので、安全圏域と見ることができます。
(但し、これらの観測値は、地上18m、20mの観測ですから、年間で1ミリシーベルトを超えている可能性も残ります。)
首都圏は、現在の状況では、概ね安全圏域とみることができますが、200km離れた地点でも、3ヶ月、4ヶ月で、外部被ばく累積量が、1ミリシーベルトを超える区域が登場した点が、やはり注目です。
次回は、放射能物質の飛来方向や距離を決める、風向きと地形について、考えてみます。何故、福島では、中通りの汚染が高いのか、首都圏のホットスポットは何故できたのか です。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.sizen-kankyo.com/blog/2011/06/906.html/trackback
コメント2件
naomietaki2010 | 2012.09.04 22:17
53年前小学生6年時に定期購読していた小学生6年向けの科学雑誌で富士火山帯の南から噴火し富士山噴火する。と説明あり。その後、そのとうり。去年富士山周辺で地下水が大量にあふれていた。私はこれも、地下で圧力がかかったためかと疑う。阪神大震災の前の秋に大阪府北部の能勢、猪名川で震度1の群発地震つずいた。12月にぴたりと止まった。後に群発地震は地下水が圧力をうけて地盤の弱い所に上がるためだったと学者が考察。現在琵琶湖の湖底でガスか水蒸気があがっている。湖面まで泡が昇っている。MBSTVで半年程前みた。
これも地震の前兆かもと思う。コメントを入力してください
naomietaki2010 | 2012.09.04 22:17
53年前小学生6年時に定期購読していた小学生6年向けの科学雑誌で富士火山帯の南から噴火し富士山噴火する。と説明あり。その後、そのとうり。去年富士山周辺で地下水が大量にあふれていた。私はこれも、地下で圧力がかかったためかと疑う。阪神大震災の前の秋に大阪府北部の能勢、猪名川で震度1の群発地震つずいた。12月にぴたりと止まった。後に群発地震は地下水が圧力をうけて地盤の弱い所に上がるためだったと学者が考察。現在琵琶湖の湖底でガスか水蒸気があがっている。湖面まで泡が昇っている。MBSTVで半年程前みた。
これも地震の前兆かもと思う。コメントを入力してください