2011-08-12

素人が創る科学の世界~【光 子】2~二重スリット実験から見る量子論の不思議(後編)

みなさん、こんにちは~
素人が創る科学の世界【光子】シリーズ』です
前回の記事、
『素人が創る科学の世界【光子】シリーズ』~二重スリット実験から見る量子論の不思議~
では、二重スリットを用いたいくつかの実験を紹介し、それらの実験結果を考察しましたね 🙄
それでは、前回扱った実験の設定条件や結果をちょっと復習してみましょう
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以下、画像はこちらからお借りしました
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実験Aの結果からは「電子は波の性質をもつ」となり、実験Bの結果からは「電子は粒の性質をもつ」となりました。この時点で既に結果に不整合が生じていますが、実験Cの結果はもっと不思議です。
実験Cの結果は電子が「粒」の性質を持っていても、「波」の性質を持っていても矛盾します。
干渉縞という模様は二つのスリットがあってはじめて成立するもので、実際にどちらかのスリットをふさいで実験Cをやると干渉縞は出現しないのです。しかし、実験Cは一粒ずつ電子を発射するという条件で行われており、その条件ではどちらかのスリットにしか電子が通っていないことが実験B(追加実験)から言えます。つまり実験Cにおいてスリットは片方しか関係していないはずなのです。なのに、なぜ干渉縞ができたのか…何と干渉したのか…
この難解な問題をどう解釈すればよいのか?という点を今回の記事、
『素人が創る科学の世界【光子】シリーズ』~二重スリット実験から見る量子論の不思議②~
で勉強していきましょう
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☆☆☆二重スリット実験を巡る解釈問題
☆☆コペンハーゲン解釈
この「コペンハーゲン解釈」は二重スリット実験についての標準的解釈とされていますが、いったいどのようなものなのでしょう?以下に一般的な説明を記載しておきます!

コペンハーゲン解釈では、粒子は波のように広がった存在で、その位置も運動状態も無数の可能性が重なり合った状態にある。
しかし、それを観測すると同時に波が収束し、ほかのすべての状態が姿を消し、観測で得られた状態で粒子が現れる。

(ん?どういうこと?可能性が重なり合った状態?粒子が現れるって??)
なんだか、ちょっと難しいですね
では、このコペンハーゲン解釈を理解する足がかりとして、実験Cで観察された諸々の事象が一体どういうことなのか?ということを整理してみましょう
事象1)電子銃から発射された電子はスクリーン上で「点」として出現した。
 →電子は位置を持った「粒子のような存在」である。
事象2)最終的にスクリーン上には「干渉縞」が出現した。
 →「干渉縞」という模様は、スリットA、Bの両方が関係している場合に出現するもの。ということは、
  電子は空間的な広がりを持ち、2つのスリットを同時に通り抜けられる「波のような存在」である。
この2つの結果を素直に受け止めると、「電子は波のような、粒のような存在」となりますよね。
しかし、ここでもうひとつ興味深い事は、事象2は次のようにも考察できるということです
 →電子一個を発射したとき、スクリーン上のどこで観測されるか?という確立分布が干渉縞の形になっている。
つまり、干渉縞として見出される「波」とは、あくまで「粒子がここで見つかるかもしれない」という「確率の波」のことで、いわゆる「海の波」などの「エネルギーを伝える波」とは決定的に違うのです。言い換えるなら「電子が存在する場所の確率」が存在し、それが波のように漂っていると言ってもいいかもしれません。
以上をふまえて実験Cを説明してみると…
電子はスクリーンに到達して観測される前は「波」である。だから、波である電子は2つのスリットを同時に通り抜けることができて、干渉縞を作ることができる。
ただし、この「波」の正体は「粒子がどこで観測されるかの確率の波」である。
そして、電子がスクリーンに到達して観測されると、電子は「粒子」になる。

簡単に言うと、コペンハーゲン解釈では、
電子は、「観測される前は波であり、観測されると粒子になる」ということになるのです!
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そんなばかな…波になったり、粒になったり…そんな事ありえない!と思うかもしれません
しかし、「観測される前は波であり、観測されると粒子になる」と解釈すれば実験Cの問題を矛盾なく説明できてしまうのです!
それでも、多くの人は納得できないでしょう。
そもそも、実験Cにおいてどのように電子が飛んできているのかわからないのならば、いたるところに電子を感知するセンサーを設置して、電子の軌跡をとってみれば何かわかるんじゃないのか?そっちの方がこんな解釈よりも分かり易いし、実態に即しているじゃないか?と疑問に思いませんか??
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しかし、実際には原子や分子、電子、素粒子などの非常に小さなスケールの現象を扱う場合、粒子の位置と運動量は同時に両方を正確に測定することは原理的に不可能なのです。これを不確定性原理といいます。
☆☆☆不確定性原理と観測至上主義

たとえば、なぜ「そこに野球のボールがある」と認識できるかというと、「太陽なり、電球なりから発せられた光が、ボールに当たり、ボールから反射した光が、目の網膜に届く」からである。
もし、光がボールとぶつかっても跳ね返らなければ、透明なボールとなり誰もそこにボールがあるとは気付かないだろう。ようするに、光がボールとぶつかって跳ね返るからボールの存在を認識できるのだ。我々にとって「何かの位置を測定する」というのは「ナニカ(光など)を飛ばして、ナニカが反射してくればその位置に何かがある」ということをやっているにすぎない。
どんな測定器でも、この仕組みは同じなのだ。
さて、野球のボールくらい大きければ、何も問題ない。問題は、電子のように、とても小さいものについて測定するときだ。たとえば、電子に光を当てて、電子の位置を調べるとする。だが、電子はあまりにも小さいので、もし、光の波長が赤外線のように長いと光は電子を通り過ぎてしまい、電子の正確な位置はわからない。では、紫外線のように波長を短くすれば良いかというと、今度は電子を勢いよく弾き飛ばしてしまう結果になってしまう。波長が短いということは、つまり波の勢いが強いということだ。(たとえば、赤外線は、皮膚を通り抜けて進むが、紫外線は、皮膚に強烈にぶつかって火傷を引き起こす。)
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そんなわけで、電子を弾き飛ばしてしまうと、「電子がそこにあった」という位置についてはわかるが「その電子がどこから飛んできて、どこに飛んでいったか?」という運動については、よくわからなくなるのだ。これは、光の波長をどんなにうまいこと調節しても、不可能で、
「位置を正確に測ろうとすると、電子の運動が正確にわからなくなる」
→(光の波長を短くして、鋭くぶつけると、電子を弾き飛ばしてしまう)
「電子の運動を正確に測ろうとすると、電子の正確な位置がわからなくなる」
→(光の波長を長くして、優しくフワッとぶつけると、通り過ぎてしまう)
というジレンマが起きてしまい、結局「位置と運動量(質量×速度)を同時に正確に知ることはできない。一方を正確に知ろうとすると、一方が不確定になる」ということになってしまうのだ。
これは、今後どんなに科学や技術が進んでも避けようのない原理的な問題であるため不確定性『原理』と呼ばれる。

みなさん、上の説明を読んでこう思いませんでしたか?
「なるほど。正確に観測できないってことはわかった。でもそれって、あくまで『観測が正確ではない』という話であって、実際には電子の位置と運動量はちゃんと決まっているんじゃないの?」
「宙を飛んでいる野球のボールを観測するときに、たまたま測定器の性能が悪くてボールの正確な位置や運動を知ることができないと言っても、ある時刻におけるボールの位置や運動は当然決まっているはず。たまたま、人間がそれを知りうる測定器を持っていないというだけのお話…?」

うんうん、普通はそう考えますよね??
しかし!量子力学においてはそういう話にはならないのです!
量子力学には一見奇妙とも思える「観測至上主義」というものの見方があって、つまりは…
電子のような量子スケールの物質は、観測されて初めて位置や運動量が決定されるのだよ!観測されないときに、電子がどの位置にあるかとか、どういう運動しているかなんて、わからない!『不確定』で決まっていないんだよ!
ということなのです 😥 😥
つまり、不確定性原理を量子力学的に(観測至上主義的に)結論づけるとすれば、
原理的に観測には限界があり、一定の不確かさを避けられない。そして、観測が不確かな範囲においては、位置も運動量も、決まっていない。なぜなら、観測できないから。
二重スリット実験でおこった矛盾を説明するためにコペンハーゲン解釈(や多世界解釈やパイロット解釈など)のような解釈が広く受け入れられているのもこの不確定性原理と観測至上主義があるからなのですね~
「本当(事実)はどうなっているの?」という問いに対して「それはわからない!なぜなら観測できないんだもん。」と言い切ってしまう観測至上主義に少し違和感を感じてしまいました 😥 😥
さて、先週と今週に渡って掲載した「二重スリット実験から見る量子論の不思議」楽しんでいただけたでしょうか?
次回は光子(フォトン)の視点から、電磁波とは何か?というテーマに迫っていきたいと思います
(今回の記事はこちらを参考にさせていただきました

List    投稿者 YAGU70 | 2011-08-12 | Posted in C02.素粒子(量子・光子)No Comments » 

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