東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か9~原子力を巡る世界の動き、米独は開発取やめ、日仏は推進、なぜか。官僚主導の弊害では?
平成20年度原子力白書さんからお借りしました
東北地方太平洋沖地震は、すでに発生から1週間以上たちますが、いまだ安否確認もできない方が多数いらっしゃる状態が続いています。被災された関係者の方々には心よりお見舞い申し上げます。
本シリーズ第8段は、世界の原子力を巡る政策を見ていきます。日本にいると、先進国は基本的に原発推進の方向で動かされていると思っていたのですが、実際はそうでもないようですね。そんな危険なもの受け入れられないというのが普通の人々の感覚ですから、世界的には大きくは開発取りやめの流れがあるように思います。どうでしょうか。見てみましょう。
主に過去のシリーズ投稿、『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発電6-1/2 ~原子力発電を巡る世界の動き【先進国編】~から抜粋、再編集し、新しい視点を加えて書きます。
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■世界の原子力発電の概況
2008年12月現在、世界で稼動中の原子力発電所基数は436基、約3億7千万KWを発電できる設備があり、世界の1次エネルギー供給量の5.6%、世界の発電力量の16%(2007年現在)を供給。
日本では一次エネルギー供給量の11%、発電電力量の26%(2008年現在)が原子力による。
※一次エネルギーとは、石油・石炭・天然ガス・原子力発電の燃料であるウランなど、自然から直接得られるエネルギーのことを指す。これに対し、電気・ガソリン・都市ガス等、一次エネルギーを変換や加工して得られるエネルギーのことを二次エネルギーという。
また、2008年末現在、世界で建設中・計画中の原子力発電所は、27カ国で151基、約1億5千万KWの規模であり、このうち6割が中国、インドなどのエネルギー需要が高まりつつあるアジア諸国におけるものになっている。発展途上国における原子炉開発およびウラン濃縮には、フランス・アメリカ・ロシアなどの先進国が関与している。
発展途上国が原子力開発に積極的であることは現状では一定致し方ないと思われます。
重要なのは先進国がどういう方針を採っているか。中国、インドなども一定経済成長した後は、現在の先進国と同じ立場になるわけですから、そういう意味でも、日米英仏独がどういう動きをしているのかが、今後の原子力発電を読む上で重要に成ります。
■開発取止めの方向?アメリカとドイツ
アメリカ
・1977年にカーター政権が、再処理で取り出されるプルトニウムが核兵器の拡散につながるとして、商業用再処理の禁止を打ち出して以来、核燃料の再処理工場の建設・操業を中止している。ブッシュ政権下では、使用済み核燃料の再処理施設や高速増殖炉の建設計画が持ち上がり、30年ぶりの再処理路線復帰と見られていた。しかし、オバマ政権になって原子力政策を転換し、原子力発電所の使用済み核燃料の商業用再処理施設や高速増殖炉の建設計画を取りやめる方針を発表した。
・オバマ政権は、ヤッカマウンテンの最終処分場(再処理を行なわずに、地中に直接埋設する方式)について反対を表明し、原発敷地内での中間貯蔵(※)を当面続けることにしている。
※使用済み核燃料などの放射性廃棄物を、処分場の開設までの期間保管すること。
・1979年にスリーマイル島の原子力発電所2号機の事故を経験しており、これも原子力消極策の1原因となっている。
・2008年12月現在、稼動中の原発が104基ある。
ドイツ
・環境保護勢力を支持基盤とする緑の党が、州・連邦政府へ参加したこともあり、核燃料サイクルを含めた原発開発は大幅な後退を余儀なくされた。
・将来の原子炉建て替えの需要を見込んで、シーメンス社が、フランスのアレバ社と共同で欧州加圧水型炉(EPR)と呼ばれる新型軽水炉の開発を進めているが、原発反対派と推進派の協議が進展しない現在の政治情勢からして、詳細設計段階まで進む可能性は今のところない。
・軽水炉で、プルトニウムとウランの混合酸化物 (MOX) 燃料を利用するプルサーマルがさかんに行なわれており、8機の原発にMOX燃料が装荷されている。
・2008年1月現在、17基、2,137万KWの原子力発電設備を保有し、総発電量の約30%を原子力発電が占めているが、建設中・計画中の原子炉は1基もなく、新規の原子力発電所が建設される見込みもない。
○環境先進国といわれるドイツのみならず、アメリカも大きくは原子力発電の開発は取りやめる方向になっている。
■原発推進の日本、フランス
日本
・核廃棄物の処理については、再処理により抽出したプルトニウムと、ウランの混合酸化物燃料(MOX燃料)を利用するプルサーマル計画、高速増殖炉の開発など、再処理方式による研究を進めている。(東海村やもんじゅの事故などのトラブルが続き、思うように進展していない。)高速増殖炉もんじゅは、1995年のナトリウム漏れ事故以来14年に渡って運転を停止しているが、2010年3月には国による安全審査が全て終了した。(毎日jp 2010年3月18日)
・また、現在稼動中の原子炉の耐用年数が過ぎる2030年頃から発生すると見込まれる代替炉建設需要に対応することを目指して、次世代軽水炉の開発を進めている。
・2009年1月末現在、運転中のものが53基・建設あるいは計画中のものが13基。
フランスの高速増殖炉「スーパーフェニックス」ウィキペディアよりお借りしました
フランス
1990年代後半、内閣に原子力推進に反対する緑の党が参加したことから、高速増殖炉スーパーフェニックスの閉鎖、原子炉の新規建設発注の見送りなど、部分的な停滞をしていた。しかし、2002年以降は、原子力推進派の保守政権が誕生し、既設の原発を建て替えることが、国家エネルギー政策として確認されている。原発燃料については再処理を行なうことを前提に、各種設備の開発が進められている。
・欧州加圧水型炉(EPR)と呼ばれる新型軽水炉の開発が進められているほか、核融合ではトカマク試験装置などによって研究を進めるとともに、欧州原子力共同体を通じてITER(国際熱核融合実験炉)計画など、国際的な研究開発に参加している。2008年1月現在、59基、6,602万KWの原子力発電設備を保有し、発電電力量の約80%を原子力が占めている。
・サルコジ大統領は、中東・湾岸諸国へ積極的な訪問を行なっているほか、2010年には、国際金融機関による原発開発資金の融資や原発安全性の評価順位発表など6つの案を発表するなど、自国の原発の輸出を促進しようと躍起になっている。(中央日報2010.03.10)
○フランスでも緑の党のが閣内参加した時代には原子力開発に歯止めがかかったようだが、そのとき以外は、なぜか大きくは原子力積極策のようだ。発電電力量の80%が原子力によるというのは驚愕の数値。日本も地球温暖化→原子力推進が強く宣伝されているように、原子力発電の総発電量に占める割合は増え続けている。
一般大衆レベルの意識は明らかに原発反対と感じられる。日本やフランスではなぜ時代に逆行する、みんなの意識に反するような政策が採り続けられているのでしょうか?
■なぜ、日本、フランスは原子力積極策をとり続けるのか?
すぐに、思いつくのは世界経済を動かしている「金貸し」の影響力。フランスはヨーロッパロスチャイルド勢の影響下にあると考えれば原子力に積極なのは理解できる。しかし、同様にロスチャイルドの力が強いと思われるドイツは原子力に消極的。日本もロックフェラーの影響下だから、本来(ロスチャ勢の牙城である)原子力に積極的になるのはは考えにくい。「金貸し」の力学とは別の事情で決まっていると考えられる。
ここ数日テレビに登場する原子力安全委員会や東電の「役人」的な受け答えを見ていい感じたのだが、フランス、日本に共通するのは、両国とも中央集権的かつ官僚の力が非常に強い国だということ。
すでに本ブログでは何度か展開されている論点ですが、国民や政治家が主導するのでなく、官僚が政策を主導すると、縦割りで与えられ仕事「だけ」が存在基盤である官僚は、それまでの自らの課題に固執することになる。状況が変わり、国民が原子力不要と言っても色々理屈をつけて自らの存在基盤に固執する。日本とフランスだけが相変わらず時代遅れの原子力に積極的なのはそういう事情なのではないか。
因みにアメリカでは、大統領が変ると、高級官僚は一緒に総入れ替えとなり、新たに大統領が指名する。官僚が勝手に政策を決めることはない。ドイツは、連邦体制の下、地方の力が強いので比較的民意が広がりを持ちやすく、国政にも民意が反映されやすいと思われる。(もちろん、これからの共認時代、官僚主導から政治主導、中央集権から地方分権へと改めるだけでは不十分ではありますが。)
いずれにしろ、専任の国家官僚が及ぼす害悪は原子力限らず甚大である。誰もが自らの仕事を持ちながら、交代で国家の仕事を勤める【半専任の参勤交代制】がこれに対する答えであると思われます。
こちらもぜひお読みください。官僚制の突破口は、「半専任・半事業⇒参勤交代制」
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