福島第一原発・・・使用済み核燃料プール内の放射線量を推計する
4号機使用済み核燃料プール画像。東京電力発表:水中カメラで撮影。核燃料棒が保管されている。瓦礫などの散乱も伺える。
前回の記事では、福島第一原発の原子炉内の放射能量を推計しました。
引き続き、今回は使用済み核燃料プール内の放射能量を推計します。
使用済み核燃料とは、原子炉で大体2.5年から3年間燃焼させた後に取り出した核燃料で、非常に強い放射能を持つと言われます。その根拠は使用前と比べて猛毒であるプルトニウムの量が増えるからだと言われています。
これは言わば燃えカス、ゴミなのですが、将来再処理やプルサーマルというリサイクルに使用するという目的で「使用済み核燃料」と呼んでいます。けれども強い放射能を持ち、しかもどこにも捨て場がないことから、原子力発電所内に置いておくしかない状態です。
使用済み核燃料は放射線を出すとともに崩壊熱を出し、その熱が更なる崩壊を促進します。ですから、半減期を迎えるまで長いものでは数万年の間、冷却する必要があります。そこで原子力発電所内では、いったん水をはったプールに入れて管理しているのです。
今回の事故では、プールの冷却装置にも被害が及び、放射性物質が発生しています。
原子力発電所が爆発でもしたら、使用済み核燃料プールの放射線量も当然、問題となります。
報道によると、4号機プールは50度くらいまで温度が上がり、湯気によって作業が困難になっているとのことです。
また1号機の湯気からは4000ミリシーベルトの放射線が計測されています。これはたった4分浴びたら即死、一瞬浴びても30日以内に死亡するとされている数値です。この事実からは、水をかけて冷却すれば絶対安心というわけではなく、放射能の発生をできるだけ防いでいるということにすぎないことがわかります。
それでは3月11日時点での福島第一原発の使用済み核燃料プールには一体どのくらいの放射能量があるのでしょうか。
今回も前回同様、
『福島第一原発の放射能量』
を元に展開します。
☆☆☆福島第一原発の使用済み核燃料量を推計する
使用済み核燃料プール内の量は、燃料集合体としての「体数」のみの情報であったので、上記の炉内「装荷燃料量/燃料集合体(≒0.17t)」を元に各々「t数」を算出しました。
・旧東電のHP( GIGAZINE 福島第一原発1号機の核燃料が溶け出た可能性)
・原子力情報資料室
【使用済み核燃料プールの燃料量(t)】
福島第一原発の1号機から6号機内のプールに存在する使用済み核燃料の総t数は773tです。
実際は使用済み核燃料以外にも高レベル放射性廃棄物や低レベル放射性廃棄物がドラム缶などに入れられて保管されているとの話もありますが。今回はそれは無視しています。
前回の記事でふれたように、原子炉内の装荷燃料の総t数は478tでしたから、使用済み核燃料はその約2倍存在することになります。
☆☆☆使用済み核燃料の放射性物質量は?
使用済み核燃料は炉内で燃焼したものを取り出したものですから、放射性物質量も前回記事から推計することもできますが、ここでは日本原子力研究所の資料(ATOMICA記載)から放射性物質の存在量を求めています。この値は再処理にまわす前段階という設定なので、炉内から取り出して5年経過した場合の数字です。比放射能(Bq/g)は前回同様、1.32×10^16/(質量数×半減期)で算出しています。
炉内から取り出して、5年経っているので、臭素やモリブデンなどいくつかの物質は放射能量が0になっています。ヨウ素は半減期が8日間であり、5年も経っているのにまだ存在しているのはなぜか?とも思えますが、半減期はあくまで「元々の量から半分に減る」までの期間であり、必ずしもゼロにはなりません。また、炉内から取り出しても高い熱を持っているため、微量ではあるが、ウランが崩壊して新たに放射性物質を生み出すことも考えられます。
福島第一原発の1号機から6号機の使用済み核燃料の放射能量は1.90×10の26乗ベクレルとなります。前回記事による炉内の放射能量は4.22×10の25乗ベクレルでした。
使用済み核燃料のトン数は装荷燃料の約2倍でしたが放射能量は単純計算でも約10倍となっています。このことからも、原子力は使えば使うほど危険なゴミが増えていくことが伺えます。
次の表は、前回の記事による炉内の放射能量と今回の使用済み核燃料の放射能量の総計です。
福島第一原発には3月11日時点で2.32×10の26乗ベクレルの放射能量が存在したことになります。
今回もデータの提示にとどめ、次回はこれまでの時間経過による放射能量の変化も鑑みながら、具体的な数字の分析に入っていきます。お楽しみに。
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