東北地方太平洋沖地震~原発は必要か否か21 放射性物質の測定結果は正しく情報公開されているのか?その1
先の東北地方太平洋沖地震による福島原発問題以降、政府やマスコミによる情報統制が進んでいるようです。
(2011.4.3)放射性物質予測、公表自粛を 気象学会要請に戸惑う会員
『福島第一原発の事故を受け、日本気象学会が会員の研究者らに、大気中に拡散する放射性物質の影響を予測した研究成果の公表を自粛するよう求める通知を出していたことが分かった。自由な研究活動や、重要な防災情報の発信を妨げる恐れがあり、波紋が広がっている。』
『気象学会員でもある山形俊男東京大理学部長は「学問は自由なもの。文書を見たときは、少し怖い感じがした」と話す。』
『小山真人静岡大教授「トップが情報統制を命じるのは、学会の自殺宣言に等しい」』
(研究成果さえ、公表自粛する様になるなんて……)
(2011.4.2)政府関係機関以外の情報を流すと警察庁は「デマ・憶測」として摘発
『今後、原発問題で、官房長官、原子力安全・保安院、原子力委員会、東電等、関係機関が発表する内容以外の情報を流したものには「デマ・憶測」として警察庁は摘発するとしており、事実上の戦時中の報道管制を敷いた』
福島原発に関する報道規制及び言論統制状態まとめより引用
このような情報統制下にあって、私達に重大な被害をもたらす可能性のある、放射性物質や放射線の情報は正しく情報公開されているのでしょうか?
報道で良く耳にするセシウム137やヨウ素131。これらの情報は良く出てきますが、当然のことながらその他にも放射性物質は原発から発生します。
その中で、ウラン235が崩壊することで相当量出てくるはずのストロンチウムの情報が一切出てきていない。
これは何故なのでしょうか?
今回の記事では、放射線や放射性物質の測定がどのように行われているかを理解することで、この間の情報統制がいかに原子力保安院や政府、東電、マスコミなどの誤魔化しであるかがさらに浮き彫りになっていきます。
またこれから私達自身が情報を判断していくための基礎知識としてもお役に立てればと思います。
☆☆☆どうやって放射性物質を測定しているのか
☆測定においても放射線と放射性物質は分けて考える必要がある
まず前提として、「放射線の測定」と「放射性物質の種類の特定」とでは分けて考える必要があります。なぜなら放射性物質の種類の特定は、放射性物質が崩壊する過程で出る“放射線”を測定することで、その放射性物質を間接的に特定する、という方法をとっているからです。
しかし、単純に放射線のみを測定した段階では、その崩壊元の放射性物質が何なのかは分かりません。そのため、その物質を特定するには、いくつか分析の段階を経る必要があります。ではそれを見ていく前に、まず「放射線」の測定原理を抑えておきましょう。
☆「放射線」はどのように測定しているのか?
放射線と物質が相互作用を起こした結果起こる物理的、あるいは化学的反応を利用することで間接的に放射線を測定しています。
もう少し具体的に言うと、物質に放射線が当ったり吸収したりすると、その物質は電離(陽イオンと電子が発生すること)したり、励起(電子が基底状態からエネルギーの高い状態に移ること)を起こし、二次的に化学反応や発光などの現象を引き起こします。これらの現象から、放射線の数やエネルギー量を測っています。
※参考:GM計数管(GMカウンター)
簡単な構造をもち広く使われている放射線検出器。当たった放射線の量に比例した電気パルスを発生する、放射線による気体の電離作用を利用したもの。主として、γ線、β線の検出測定に用いられ代表的な検出器。ガイガー・カウンタともいわれている。
引用元(リンク)
☆放射線の種類によって放射性物質を特定するのに難度の差が出る
では次に、放射線の数やエネルギー量が分かったところで、その放射線が何の放射性物質から発生したものなのかを特定しなければなりませんが、放射線の種類によって放射性物質を特定するのに難度の差が出てきます。
放射線には中性子も含めると、大きく分けて4つほど種類がありますが、放射性物質測定に用いられる放射線は以下の三つになります。
①α線(アルファ線):2個の中性子と2個の陽子からなるヘリウムの原子核
②β線(ベータ線) :電子
③γ線(ガンマ線) :電磁波
【γ線(ガンマ線)の場合】
これらのうち③のγ線は、物質が励起することによって、その物質毎に決まった軌道へ電子が移動することで放出するため、放射性物質固有のエネルギーがあります。
そのため、割と容易に放射線から放射性物質の特定が可能です。
例えば、セシウム137を測定する場合、その変化の過程中でバリウム137が放出する662kevという固有のエネルギーを持つγ線を、ゲルマニウム半導体検出器という装置を用いて捉えることで、セシウム137の量を測定しています。
【β線(ベータ線)の場合】
②のβ線も放射性物質固有のエネルギーがあるようですが、γ線の測定よりもエネルギー換算が難しく、測定難度は上がります。
原子力施設周辺モニタリングにおいて、空気中あるいは地面等からのβ線の測定に、壁厚の薄い側窓型β線用GM管を用いることがある。比較的高い感度を有するが、濃度や線量単位への換算は困難である。
引用元リンク
また、β線を出すストロンチウム90を測定する場合、空気中や土中などから採取した資料から化学的な処理をしてストロンチウムを取り出した後に測定をしなければなりません。このことからもγ線よりは放射性物質の特定に時間や手間がかかることが分かります。
【α線(アルファ線)の場合】
α線はヘリウム原子核であるため、その崩壊元の放射性物質固有の差があるわけではありません。ですからβ線と同じように、採取した資料からα線を出す放射性物質を化学的な処理をして分離してから改めて放射線を測定しなければなりません。したがってβ線以上に測定には手間と時間がかかるのです。
環境や生物に重大な被害をもたらすプルトニウムは、α線を出すため、即時的に測定できるものではないという点が重要です。
以上をまとめると、放射性物質の測定難度は、γ線<β線<α線の順で上がっていき、特にγ線以外を出す放射性物質は簡単に測定できるものではないということがわかります。
以下の表で原発において発生する主要な放射性物質毎の出す放射線をまとめました。
セシウム137とヨウ素131は測定しやすいγ線を測定することで放射性物質を特定することができます。現在の報道でセシウム137やヨウ素131を良く耳にするのは、このためです。
しかし、見方を変えると、彼らは「特定しやすい物質しか報道していない可能性がある」とも言えるのです。
現在の情報統制の問題性はこの辺りにありそうです。
~その2へ続く~
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