2010-12-05

『次代を担う、エネルギー・水資源』水生圏の可能性、水力エネルギーの活用7. 全国小水力発電所めぐり

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  長野県大町市 くるくるエコプロジェクトの水車(水力発電)

2008年2月にミツカン水の文化センターから「水の文化」第28号特集「小水力の包蔵力」が発行されました。この特集の中で小林久さんが「エネルギー自立型から供給型へ」という文をまとめ、なぜ小水力発電に注目するのか、これからどのように可能性を探っていくのかを提起しています。
今回は、ミツカン水の文化センターさんのガイダンスで、全国の小水力発電所めぐりをしてみます。小水力発電には、戦後まもない頃、電気のない農村地域に設置されたもの、そして、2000年代に入って新エネルギーへの転換の流れの中で設置されたものとがあります。まずは、前者から。

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①中国地方で今でも現役で発電している農山村発電所

昭和20年代は(1945年~)まだ電気が通っていない農村地帯が日本中に数多くありました。そこで行なわれたのが農村電化事業。農協などが発電用の水利権を取り、発電機を入れて日本の各地で農山村の電化に取り組みました。 
 
1952年(昭和27)に施行された「農山漁村電気導入促進法」がこの事業を後押しする形で、農村電化は一定の盛上がりをみたようです。しかし、9電力会社の配電網が農山村を広くカバーするようになり、農村電化事業はやがて下火になります。 
 
実は中国地方には今もこの事業の名残が残っています。農協などが持っている発電所がいっぱいあり、現在も電気を中国電力に売っています。すべて1000kW以下の小規模発電所ですが、中国地方全体で50カ所ほど稼動しています。
エネルギー自給型から供給型へ

50カ所ほど稼動している中から、2カ所紹介します。
源流・ダム・水力発電所めぐりをしている『水のプログラム』さんのHPからです。

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こちらからお借りしました。 
 
香々美発電所(岡山県鐘野町)。小屋の上のほうに見えているのが導水管です。
水系:香々美川・香々美ダム。事業者:香々美川土地改良区。発電開始:昭和45年8月。
出力:540KW。水量:0.8m3/S。落差:82m

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こちらからお借りしました。
南谷発電所(鳥取県倉吉市)。左が水路、右が水車からベルトでつながった発電機です。
水系:小鴨川。事業者:中部電力。発電開始:昭和28年5月。
出力:90KW。水量:0.45m3/S。

水のプログラムさんが動画紹介をしてくれています。動画の後半に発電小屋の内部があり、水車につながったベルトで、発電機が回っています。ベルトの脇に大きな輪が回っていますが、これは回転を安定させる『はずみ車』です。 
 
 
 
 
②全国小水力利用推進協議会の設立
世界的な新エネルギーへの転換の動きを背景に、新たに小水力発電を見直し建設する動きが出来つつあります。日本では、小林久さんたちが発足させた「全国小水力利用推進協議会」の設立が契機となっているようです。以下、設立主旨です。

設立主旨書

「自然エネルギーの利用が大切だ」と多くのひとが考えています。太陽光・風力・バイオマスなどの利用は拡大しつつありますが、残念ながら小水力利用はほとんど広がりを見せていません。
水力は他の自然エネルギー源にくらべて、各地で利用された歴史が長く、しかも安定した良質のエネルギーが得られるのに、なぜなのでしょうか。
水力利用というと大規模水力発電しか頭に浮かばない方も多いようです。しかし、つい数十年前までは小川の水車から数十、数百キロワットの小水力発電などにいたる小水力利用が、この国の生活や産業を支え、エネルギー供給に大きな役割を果たしていました。
いまでも、自然河川・灌漑水路・山間小渓流から上下水道・工場の余剰水圧利用等にいたるさまざまな小水力利用可能地点・場所がほとんど無数にあり、その総出力は数百万キロワットに達すると見込まれています。
(中略)
小水力は他の自然エネルギーにない経済面・普及面の特長があり、さらに地域の活性化とエネルギー自給を支える核として頼れる力を持っています。
小水力利用を進めるためには、小水力について一般の理解や関心を深め、その技術的進歩をはかり、実施上の障害を取り除き、規制緩和などをすすめ、情報を交換し知恵を出し合うため、関係者が相互に協力する必要があると考えます。こうした問題意識を共有する各方面の方々が力を合わせ、日本中に小水力利用の環を広げるため、本協議会を設立します。

全国小水力利用推進協議会のHPには現在90件の小水力発電所が掲載されています。
小水力発電データベース

では早速、新エネルギーへの関心が高まりつつある2000年代に入って設置された小水力発電所を、見ていきたいと思います。

③2000年以降新たに設立された発電所


都留市 水力発電のまち アクアバレーつる

山梨県都留市の市街地を流れる家中(かちゅう)川。1636年(寛永16)甲州谷城城主、秋元但馬守秦朝が3年の歳月を費やして開削し完成した人工河川だ。桂川の水を引き込み、防火をはじめ生活用水や農業用水として、日常生活に欠くことのできない水路として利用されてきた。
富士山の裾野として湧水が多く、傾斜もきついため、流量、落差ともに発電には充分。大きな位置エネルギーを望める、小水力発電の適地である。
スペック:直径6m最大出力20kW、平均8.8kW落差2.1m水量0.77~2.00 t / s
山梨県都留市は、2005年から市街地中心部を流れる準用河川「家中川」の豊富な水量を利用して、都留市が事業者となってドイツ・ハイドロワット社製の下掛け水車〈元気くん1号〉を回している。発電した電気は市庁舎で利用され、使用量の15~20%(金額にすると約170万円)をまかなっているそうだ。
この小水力発電が注目されているのは、地域特性を生かした「市民参加型」で実行されたところ。事業費の一部は、山梨県初の試みである市民ミニ公募債「つるのおんがえし債」でをまかなわれたが、人口3万5000人の小都市で、40人募集のところに実に161人が応募、約4倍の倍率での抽選となった。
水路つけ変え工事まで含めて事業費は約4000万円、年間の維持費は15万円ほど(ほとんどが保守管理料)。開放型水車のため、部分的な損傷は、パーツ交換ですむ。
30戸規模の集落が発電機を入れて、自分たちの電力をまかなうケースを想定してみましょう。1軒の家庭が1年間で消費する電力は、5000kWhぐらいです。ということは1軒につき1kWの発電設備でまかなえますから、30軒で30kWの発電機があればいいわけです。仮に1kW100万円として、30世帯で3000万円集めて初期投資し、あとは維持管理のコストを見ておけば採算は取れます。
こういう集落が増えたら、不足分が出たり余ったりしたときにお互い融通し合えばいい。小さな集落がお互い融通し合うことで、自立していけることが私の描く農村の理想図です。
さらに理想を進めると、石油にまったく依存しない農村が生まれればいいと思います。
かつての富山では農家の9割が、10万以上の持ち運び式の螺旋水車を稼動させていたといわれています。昭和初期の水車の本があるんですが、それを見ると現在ある水車の理論がほとんど載っている。効率なども含めて、計算の原型になっているようなものがあります。そのころにはもう、海外から導入された技術も確立して、村の鍛冶屋さんがその辺りの計算までできるほどになっていたということですね。

コラム「水力発電のまち アクアバレーつる」

市民参加のファンドで運営しているというのが面白いですね。なんと4倍の募集があったというのはスゴイ。自然の摂理に則ったエネルギーへの関心が高まっているというのが分ります。後段にかかれているような自分たちでエネルギーを自給しようと言う発想がこれからはもとめられて来るのかも。冒頭で紹介した農山村発電所のように、かつては、実現されていた地域があったのですね。

そして、平成22年10月16~17日に、「第1回全国小水力発電サミットin都留」が開催されました。全国から、自治体関係者・研究者、市民・高校生や高専生からの研究発表・報告が行われ、交流の機会が設けられました。農山村の活性化と地球温暖化防止に貢献する小水力発電をいっそう推進し、小水力発電の普及における課題の解決に向け、力を合わせて取り組んでいくことを確認しあったのです。

閉会式には、鳩山前首相からの挨拶もあり「身近な水車は地球温暖化対策を進めるためのカギ」との小水力発電への期待の言葉もありました。今後も注目されるこのサミットは、第2回開催の富山県黒部市に引き継がれていきます。
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都留市庁舎と小学校の間に設置された水車〈元気くん1号〉 こちらからお借りしました。

長野県大町市 くるくるエコプロジェクト

マイクロ水力発電で、地域おこしに取り組んでいる市民団体があります。地域の個性を生かした仕事おこしをしよう、と旗揚げした「NPO地域づくり工房」の小水力発電への取組みに学びます。
「NPO地域づくり工房」の代表理事である傘木宏夫さんは、国からの援助や補助金、プロジェクトに頼りがちな傾向が強い中で、地域の個性を生かした仕事おこしをしていこうと、有志で会を発足させた。
小水力、いやマイクロ水力発電とも言うべき「くるくるエコプロジェクト」は、市内に張り巡らされた用水路を資源として生かそうというものだ。
大町には2つの土地改良区があって、それを1枚の水路図にまとめてみた。そこに書かれた水路を全部つなげると、実に220kmにもなるという。この辺りには、山から南に向けて標高100mから200mの扇状地が広がっている。鹿島川と高瀬川という2本の川が流れている間を、クモの巣のように支流が張り巡らされている。
農業用水路には、田んぼに水を入れる、山から出てきた冷たい水を温める、酸素を混ぜる、という3つの目的があって、そのため水路の途中に落差工(らくさこう)というのをつける。
落差工は50mから100mに1カ所ぐらいずつあるので、大町市内全体でいったら、それこそ無数にある。こういうものを地域のエネルギーとして生かせないか、そのエネルギーを利用して地場産品をつくれないか、そしてそこを地域の新しい拠点として、遊び学習やらイベントやらを展開していこうじゃないか、というのが「NPO地域づくり工房」のコンセプトなのだ。
「NPO地域づくり工房」の発電所の特色の一つには、「見て楽しい」ということがある。水が回っている、うねっている、落ちていく、という姿が見えるのは、魅力的だ。大町は観光地でもあるので、「見て楽しい」という要素は重要だ、と思ってやっているという。

ミニ発電でくるくる地域づくり

実際には1kW以下の発電所で採算を取るのは非常に難しいようですが、見学や視察に来る人は年間2000人にのぼるらしい。エコへの関心の喚起、啓発のための拠点としての実績ができつつある。さらに、発電のために水路を利用しようという人がもっと増えれば、法の整備が進む可能性が開かれると思う。


おひさまファンド

小水力発電をめぐる試みとして、その資金をどう調達するかという大きな課題があります。実際、小水力発電は初期投資にかなりの資金が必要になる。そこで、一般から資金を募って小水力発電を建設、利益を投資した人に還元するという事業スキームが誕生している。

おひさまエネルギーファンド株式会社が富山県で日本初の市民ファンドによる「立山アルプス小水力発電事業」をスタートさせた。約11億円を投資して、最大出力1000KWの発電設備を整備するもので、3~7%の年間利回りを予定しているという。
これは電気代5000円/月支払っている世帯なら、約2000世帯をまかなう規模で、逆に、11億円÷2000世帯=55万円/世帯の初期投資をシェアできさえすれば、電気を自給自足できる計算になる。小水力発電は電気の自給自足の可能性を秘めている。

約11億円の事業費のうち、環境省からの補助金などを除いた、7億9千万円を市民出資に仰ぐ計画で、市民出資のタイプは、一口50万円のA号出資と一口300万円のB号出資の2種類である。A号出資の募集目標額は、5億8千万円(1,160口)、B号出資の目標額は2億1千万円(67口)である。
「立山アルプス小水力発電事業」募集要項

2010年9月8日から出資募集を開始した。一口50万円のA号出資は、募集後わずか3ヶ月の12月1日現在、出資者数190名、出資総額3億6100万円にも達している。

「僅かな蓄えでも投機や戦争に使われたくない。憧憬の剱山麓に発電所!必ず見に行きます。」
「大好きな山々の恵みを、おかりして自然エネルギーの未来へ!!参加できて、うれしいです。」
「今回の出資・・・ドキドキしつつとても楽しみです。私たちのお金を最大限活用して下さい!」
上記は、出資者の声です。
出資者の記名の木

以上、現在稼動している小水力発電所を見てきました。最後まで読んで頂きありがとうございます。次回は、小水力発電の可能性をさらに広げていく為の基盤をどこに求めていくかを扱います。次回もよろしくお願いします。

List    投稿者 fwz2 | 2010-12-05 | Posted in E07.水力エネルギーの活用No Comments » 

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