『次代を担う、エネルギー・水資源』水生圏の可能性、水力エネルギーの活用13.水力比率37%に向かうロードマップ
都留市庁舎と小学校の間に設置された水車〈元気くん1号〉 こちらからお借りしました。
本ブログでは、次代の自然の摂理に則った電力の自給を目指すべく追求を続けていますが、現状、1階建て部分として期待されたマグネシウム発電は可能性がないとの結論がでています。
そこで水力発電に大きな期待がかかっていますが、シリーズ前回の投稿で将来の電力需要の37%を賄える可能性があるとの結論を得ました。水力発電は安定供給という点でやや弱点があるものの(季節変動等)、国産かつ自然の摂理に則ったエネルギーの中心として位置づけることができそうですね!!
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【1】2万箇所1500万キロワットの小水力発電所で電力自給37%を目指そう
前回のおさらいですが、電力需要の37%を水力で賄うためには、
・既存の(大規模ダムなど)水力発電所の稼働率を上げる(39%→64%)
・中小水力発電所を全面的に作って行く。1530万キロワット、既存一般水力の70%相当。
の2点を実現していくことになります。
これが実現できれば、将来の電力需要の37%を賄えます。具体的に以下に計算して見ます。
・ 一般水力は、今後つくれるものも含めて発電能力2,460万KWとし(現状2074万KW)、稼働率は64%とします。(1955年の実績が61%ですから、可能でしょう。)
・ 揚水型は、現在の能力のままで稼働率8%と設定します。(1995年の稼働率が6.5%ですから、可能な稼働率でしょう。)
・ 中小水力発電所は、環境省の試算を元にして、発電能力1,530万KWとします。地域密着型でメンテナンスもこまめにできることから、稼働率は75%とします。
⇒この結果、水力発電全体で、年間、2,564億KWhの発電ができます。現在の発電量777億KWhの3.3倍にもなります。
一方、必要電力供給量の方は、現在の70%(30%縮小)程度と想定します。この結果、水力発電で、電力供給の37%が賄えることとなります。
そして、これを実現するための課題は①全国に2万か所の中小水力発電所をつくること②これまでつくってきた大型発電所の稼働率を上げることの2点になります。以下、実現の為のロードマップを作成し見通しを立てて見ます。
【2】2万か所建設の為のロードマップ
さて、このように非常に大きな可能性を秘めている水力発電ですが、現状、国は必ずしも積極的に力を入れているとは言えません。国際石油資本の意向で電力供給は火力発電、原子力発電へと歪められてきました。国内的にも、必ずしも先端技術とはいえないローテク分野にたいして、可能性を感じにくかったということもあるかもしれません。
従って、(最終的には国に担って貰うとして、)まずは積極的に動いている地域に突破口を開いてもらうことを期待します。そして、そのような地方の事例が増えれば、他府県にも広がり、全国から、市民ファンドで資金を集めやすくなっていくと思います。最後に当然国家レベルの投資へ行い、水力比率37%を実現すると言う過程になるかと思います。
以下のような7年×3ステップの計画で実現を見通すことができるのではないでしょうか。
クリックするとポップアップします。
① 住民・市民パワーによる取組(第1ステップ)
最初の7年は、既に積極的にうごきだしている先進地域を中心に、最終目標2万箇所の1割、2000箇所が目標です。山梨、富山、青森など好立地にある先進県や先進自治体、さらに住民組織や社会的企業が主体的に取り組んでいきます。市民の高まる環境意識と、地域密着のコミュニティ再生=活性化の意識がこれを強く後押しします。
資金は、NEDOや環境省の補助金は当然のこととして、あるいは自治体単独の予算、住民基金や市民ファンドを主体として調達を目指します。また、この第1ステップは、標準技術や低コスト機器を開発していくことが重要な課題となります。(現在小水力発電の建設コストは、250万円/KWですが、これを引き下げていくことが次のステップに向けて重要な課題です。)
一方、既存の水力発電の活用に関しては、上記のような住民・市民パワーが電力会社に電力種別の見直しを要請し(圧力をかけ)、水力稼働率を暫定的に上昇させていきます。
②住民・市民パワー+全国自治体・都道府県による取組(第2ステップ)
第2ステップでは先進地の取組みでの成果を踏まえ、全国の都道府県にも展開して貰います。第1次の2倍4000箇所が目標です。全国への展開を図りつつもまだこの段階では、良好な条件の立地に展開していきます。(例えば、現状の平均コストの半分以下、100万円/KW以下で建設できる場所に展開する。)そして、資金的には、次第に国の予算を拡大さて行くことになります。
一方、既存水力発電については、国あるいは都道府県から『水力発電稼働率』の『ガイドライン』を出し、それに従って各電力会社が目標値を設定させます。
③全国総動員(第3ステップ)
いよいよ全面取り組みの段階です。14000箇所を建設し一気に中小水力発電、2万箇所を実現します。当然国の予算を全面投入することになります。第2ステップまでに蓄積した、技術、ノウハウ、それによって実現した低コストをもってすれば可能でしょう。
既存水力の活用に関しては、第2ステップのガイドラインからさらに進めて、電力事業者に対して目標とする稼働率を義務づけます。
以上、概略今後の水力発電比率37%実現のロードマップを見てきましたが、どうでしょう。これは行けそうだ!という気になってきましたね。
【3】既に動き出している第1ステップ
そして上記ロードマップは未来の話でなく、既に現実に始まっています!!住民、市民パワーは既に大きく動き出しており、地域密着型の小水力発電所が続々と建設されています。以下に事例を紹介します。まずは、水力発電のまち山梨県都留市です。
山梨県都留市は、2005年から市街地中心部を流れる準用河川「家中川」の豊富な水量を利用して、都留市が事業者となってドイツ・ハイドロワット社製の下掛け水車〈元気くん1号〉を回している。発電した電気は市庁舎で利用され、使用量の15~20%(金額にすると約170万円)をまかなっているそうだ。
この小水力発電が注目されているのは、地域特性を生かした「市民参加型」で実行されたところ。事業費の一部は、山梨県初の試みである市民ミニ公募債「つるのおんがえし債」でをまかなわれたが、人口3万5000人の小都市で、40人募集のところに実に161人が応募、約4倍の倍率での抽選となった。
水路つけ変え工事まで含めて事業費は約4000万円、年間の維持費は15万円ほど(ほとんどが保守管理料)。開放型水車のため、部分的な損傷は、パーツ交換ですむ。除塵機の設置によって流入したゴミが目に見えるようになり、ゴミの量が減るという思わぬ環境教育効果も上がったという。
30戸規模の集落が発電機を入れて、自分たちの電力をまかなうケースを想定してみましょう。1軒の家庭が1年間で消費する電力は、5000kWhぐらいです。ということは1軒につき1kWの発電設備でまかなえますから、30軒で30kWの発電機があればいいわけです。仮に1kW100万円として、30世帯で3000万円集めて初期投資し、あとは維持管理のコストを見ておけば採算は取れます。
こういう集落が増えたら、不足分が出たり余ったりしたときにお互い融通し合えばいい。小さな集落がお互い融通し合うことで、自立していけることが私の描く農村の理想図です。
ミツカン水の文化センター 小水力の包蔵力より
住民・市民の主体的な取組みの勢いが感じられる例ですね。さらにもう1つ。
小水力発電をめぐる試みとして、その資金をどう調達するかという大きな課題があります。実際、小水力発電は初期投資にかなりの資金が必要になる。そこで、一般から資金を募って小水力発電を建設、利益を投資した人に還元するという事業スキームが誕生している。
おひさまエネルギーファンド株式会社が富山県で日本初の市民ファンドによる「立山アルプス小水力発電事業」をスタートさせた。約11億円を投資して、最大出力1000KWの発電設備を整備するもので、3~7%の年間利回りを予定しているという。
これは電気代5000円/月支払っている世帯なら、約2000世帯をまかなう規模で、逆に、11億円÷2000世帯=55万円/世帯の初期投資をシェアできさえすれば、電気を自給自足できる計算になる。小水力発電は電気の自給自足の可能性を秘めている。
本シリーズ7弾.全国小水力発電所めぐりより
このような事業スキームが動き出していると言うことは、人々の潜在的な欠乏が大きな力として顕在化しつつあることの証明だと思います。非常に期待できますね。
水力発電による電力自給37%への道が動き出しているのを感じてもらえたでしょうか!
さて、これで本シリーズは完結となります。今まで読んでいただき有難うございます。水力発電は将来の電力需要の実に37%を賄える可能性があることがはっきりしました。
これで自然の摂理に則った、自給自足が可能なエネルギーの確保への、大きな前進となったように思います。これを足場にして、引き続き、残り60%をどう実現するか、追求を積上げていきたいですね。
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コメント3件
匿名 | 2012.01.03 14:32
あけましておめでとうございます。
科学というと自然の中から法則を見出すことが学問の中心かと思っていたのですが、記事を読ませて頂いて、それが国家統合のために利用されている側面があることに驚きました。
次からのシリーズも楽しみです。
2U | 2012.01.05 23:42
このシリーズ本当にどの記事もおもしろいです!。
目からうろこ・・の事実が満載ですね。
特にこの記事では、
>末期には科学者自身にとっても魂の救済が第1義課題となる
という記述が非常に興味深かったです。
科学技術が魂を救済する?って不思議な感じがしますが、それほど「魂の救済」を求める社会の期待が大きかったのでしょうね。さらにそこにキリスト教が拡大していく。
>「無からなにも生じない」とするギリシャ思想に対してキリスト教は「無からの創造」を説く
これは本当に大きなパラダイム転換だったとおもいます。このような認識転換ができた背景にはどのような社会的外圧状況があったのしょうか?
非常に興味があります。
匿名 | 2012.01.02 16:48
あけましておめでとうございます☆
無からの創造、錬金術‥
自然にはあり得ないことが、思想的に是とされ、その土台に科学がのせられていく。
こうして歴史を俯瞰してみると、科学って自然を対象にしたものではなく、手段として発達していったことがよくわかります。
この先も楽しみにしています☆