『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電13~ サブガバメントモデルを支える電気料金の仕組み1/2
☆☆☆原発推進組織の資金源としての電気料金
『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電7~原子力発電の推進体制を考える1・・・日本の原子力推進体制1より
日本の原子力開発推進体制は、官僚機構・電力会社を中心とした、政府からおおむね独立して意思決定を行える集団が、その制度を自ら強化し推進できる、自己増殖体制を確立したからです。アメリカの軍産複合体と酷似した体制的特長をもち、サブガバメントモデルともいわれています。官僚の暴走という現代的問題に重なります。
具体的には、官僚機構・電力会社の自己増殖集団は、社会的に要請される理由を超えたところで、原子力開発そのものに価値があるという共認と、世論の圧力をうけず強力に事業推進できる体制を持ち合わせてる、ということです。
この結果、世論に対して強行に政策実現できる体制が、推進派と反対派の対立を作り出し、とその狭間で地域住民の存在基盤である共同体をことごとく破壊してきたというのが日本の原子力開発の大きな流れです。
サブガバメント組織をもう少し具体的に言うと、経済産業省(旧通産省)・文部科学省(旧科学技術庁)・これら官僚機構の所轄団体である、独立行政法人等(核燃料サイクル開発機構等)・経済産業省支配下の10電力会社の利害を共にする連合組織です。
この組織は、政府内小政府とも言うべき性格を持ち合わせていて、政府からほぼ独立して、自らの組織に有利な意思決定を行うことが出来ます。そしてこの組織は、アメリカの軍産複合体と同様の性格を持っています。
このような組織が存在可能な理由の一つは、その組織維持に必要な資金を自らの手で獲得できるからです。その獲得方法に電気料金が使われているのです。
今回は、2回連載で、その仕組みに迫ってみたいと思います。
☆☆☆電力会社が赤字にならないように設定された電気料金
☆電気料金の価格決定の仕組み
電気料金はどのようにして決められているのでしょうか。
日本では電力のコストは電気事業法という法律に基づいて、「総括原価方式」という方法で計算されています。
その総括原価方式は、発電や送電、電力の販売に関わる全ての費用を原価として収支に反映させ、その上に一定の報酬率を上乗せした金額が、電気の販売収入とイコールになるように電気料金を逆算する方法をとっています。その原価の中には固定資産(発電施設の建設費用等)も含まれ、さらにその固定資産には使用済核燃料も含まれています。使用済核燃料とは、原発稼動で生じる廃棄物であり、実際にはゴミにもかかわらず、固定資産として計上されているのです。つまり、高価な原子力発電所を建てても、利益は保証される仕組みになっているのです。
ここから言えるのは、電力会社には経営外圧がかからないシステムになっていて、採算の悪い投資を行っていても決して赤字にならないようになっている、ということです。
☆☆☆電気料金の仕組み
では、私たちが毎月支払っている電気料金を具体的に見てみましょう。
☆電気料金の具体的中身
ポストに届いている電気料金の使用量のお知らせの表を見ると、
請求額の内訳のところには、
◆最低料金
◆1段料金
◆2段料金
◆3段料金
◆燃料費調整額
◆太陽光発電促進付加金
という項目が挙げられ、それぞれ金額が示されています。
最低料金は、いわゆる基本料金。電気を使うに当たり、最低かかる料金となっています。
使用料金は1段料金~3段料金の部分になりますが、気になるのは3段階に分けられているところ。また、燃料費額や太陽光発電促進付加金など聞きなれない料金も含まれていますが、これらはどういう料金なのでしょうか。
【三段階料金制度】 昭和49年6月~実施
従量電灯Aの料金形態の場合
三段階料金の料金単価は下記の通りとなります。
単位 料金単価
第1段 15kWh超過120kWhまで 1kWh 19円05銭
第2段 120kWh超過300kWhまで 1kWh 24円21銭
第3段 300kWh超過分 1kWh 25円55銭
一般の商品では、多く買えば買うほど安くなるのが普通だと思われますが、この三段階料金制度は、その逆となっています。これは電気は生活に欠くことのできない商品であることから、生活必需的な部分は安い水準とする一方、省エネルギーの観点から平均的な使用量を超える部分については料金が相対的に高くなっているということのようです。
【燃料費調整額】 平成21年5月~実施
電気料金のコストのうち、燃料費は経済情勢(為替レートや原油価格)の影響を大きく受けることから、電力会社の経営効率化の成果を明確にするため、燃料費の変動を迅速に電気料金に反映させる制度により定められた額。
燃料費調整単価は、基準燃料価格(31,500円/kl)と平均燃料価格に差が生じた場合、その差額にもとづき、ある計算方式で算出されます。その基準燃料価格を上回る場合は、調整額はプラスとなり、その単価に使用量を掛けたものが電気料金に加えられます。逆に下回った場合は、調整額はマイナスとなり、その単価に使用量を掛けた分が、電気料金から差し引かれる仕組みです。
つまり、一般の会社なら最も注意を払うべき仕入れコストの部分を消費者に転嫁可能なシステムになっているのです。
【太陽光発電促進付加金】 平成22年4月~実施
平成21年11月より開始された「太陽光発電の買取制度」により、国民全員参加による低炭素社会の実現を目的とし、太陽光発電によって発電した電力のうち、自家消費せずに余った電力(余剰電力)を電力会社が買い取り、その買い取りに要した費用を電気を使用する全ての人が負担することとなっています。
これも、もともと採算の取れない太陽光発電を広めるために発生する不利益を、消費者に転嫁するシステムになっているのです。
☆☆☆電気料金の中に含まれている税金
☆電源開発促進税
電気料金の中には、電源開発促進税という税金が含まれています。
電源開発促進税とは、電源開発促進税法に基づいて、発電施設の設置促進、運転の円滑化、利用促進、安全確保、電気の供給の円滑化などを目的に、一般電気事業者の販売電気に課す税金です。
創設時(1974年)の目的は、当時のオイルショックにより石油に代わる代替エネルギーを模索し、原子力発電所などの設置を促進するために制定されました。
納税義務者は電力会社となり、2007年4月1日段階では、1000kwhにつき375円と制定されています。
税収の推移は
1997年度(平成9年度) – 3539億5400万円
1998年度(平成10年度) – 3572億9200万円
1999年度(平成11年度) – 3650億9100万円
2000年度(平成12年度) – 3745億5900万円
2001年度(平成13年度) – 3686億2000万円
2002年度(平成14年度) – 3767億9100万円
(※財務省の統計を参照)
以上のとおり、膨大な税収です。
納税義務者は電力会社ですが、その電力会社に電気料金を支払っているのは私たち一般家庭です。つまり、電気料金にかかる5%の消費税に加え、名目は違えど、更なる税金を私たちは知らず知らずのうちに支払っているのです。
☆☆☆税金の使い道
では、これら徴収された税金はどのように使われているのでしょうか。
☆反対の多い原発建設を推し進めるための資金
電源開発促進税として徴収された税金の使い道は、主には
電源立地特別交付金:企業導入・産業近代化事業、企業立地資金貸付事業等に要する費用
電源地域振興促進事業費補助金:電源地域への企業立地等を促進するための企業に対する費用
電源立地等初期対策交付金:発電用施設等の立地にかかる合意の形成に資する知識の普及、企業導入・産業近代化等の事業に要する費用
となっています。
複雑な形態ですが、簡略化したのが下記のとおりとなります。
上記の表は経済産業省資源エネルギー庁がモデルケースとして出力135万kWの原子力発電所の立地に伴う財源効果を試算したもので、環境影響評価開始の翌年から運転開始までの10年間で合計約391億円、その後運転開始の翌年度から10年間で合計約502億円となります。20年間では、電源立地地域対策交付金が545億円、固定資産税が348億円で合計約893億円もの額に上ることになります。
過疎化に悩む自治体にとって、20年間で総額893億円という交付金と固定資産税は大きな魅力となり、原理力発電所の立地が推進されることとなります。しかし、運転開始後の固定資産税は設備の減価償却に伴い年々減少していくため、運転開始語十年、二十年とたつと自治体の収入が急激に減少していきます。
そうなると、地元は再び次の原発建設を誘致しないと税収を確保できなくなります。原発の集中立地が目立つ背景には、こうした交付金制度の存在があるとされます。
☆サブガバメント組織の資金源
会見検査院の平成13年度決算における検査報告書によると、下記グラフがあらわすように、税金として徴収されたお金は全て使い切っているわけではなく、そのうちの過半が余剰金として、特別会計の中でプールされている状態となっています。
電源立地勘定の歳入歳出決算等の推移
出典:会計検査院 H13年度決算報告書
これが、霞ヶ関埋蔵金として問題視され、会計検査院の中でもこの問題点について、余剰金の減少策、及び今後の多額の余剰金が発生しないための方策について検討することが望ましいとされています。
このように、多額の余剰金は、特別会計に組み込まれているため、原発推進以外の目的では使用できません。つまり、電気料金の中に含まれている税金=電源開発促進税をはじめとする税金はこういったサブガバメントモデルを支え、かつ増殖を可能にする資金となっているのです。
このように、官僚機構を中心とした、サブガバメントモデルに新エネルギー開発を委ねても、自組織の関連のない分野には決して資金は回らないというのが、現状だといえます。
つづく。
参考サイト
会計検査院 平成13年度決算検査報告
東京電力
原子力発電所 ウィキペディア
電源開発促進税 ウィキペディア
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