2010-03-23

『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発電5-1/2 トリウム資源はどこにどれくらいあるのか?』

『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発電2 核エネルギーを利用した発電システムを概観する2/2』では、トリウム原子力発電の可能性を追求する論点を示してくれています。今日は、そのうちのひとつを追求してみます。それはトリウムという元素はどのくらいあるのだろう?ということです。
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「花崗岩」 いつでもLOUPEさんよりお借りしました。 「モナザイト」 モナザイトさんよりお借りしました。 「ウラン鉱石」 ウラン鉱石さんよりお借りしました。
★トリウムを含むモナザイト(モナズ鉱石)ってなに?
「トリウム燃料サイクルの研究開発と動向」(東京大学名誉教授 山脇道夫他 日本原子力学会誌Vol47 2005)によるとトリウムはウランや希土類(レアアース)とともに鉱石に含まれており、地殻中に4~10ppm含まれると言われています。トリウムを含む鉱物として代表的なのが、花こう岩1Kg中に80g程度含まれるとされているモナザイトです(モナザイトはレンズの研磨剤とかテレビのブラウン管、健康器具のセラミックボールなどに使用されています)。
モナザイトはトリウムを含む鉱石というよりは、レアアース(希土類)を含む鉱石としてのほうが有名で、希土類を取り出した後の残渣(残りかす)にトリウムが含まれるという言い方をされるほうが多いようです。
モナザイトにはトリウムばかりではなく、ウランも含まれていることがあります。ブラジル南部海岸のモナザイトにはウラン0.3%、トリウム6%が含まれているそうです。
一般的に、モナザイトは海岸の砂や川床に集積していて、その採掘はウランのように地下深くまで掘り下げる必要がないことから非常に容易だということです。また、モナザイト中のトリウムの含有量は約10%近くあり、ウラン含有量の低いウラン鉱石よりも効率的な採取が可能です。さらには、採掘から精錬過程においての被爆のリスクもウランより低いという利点もあるようです。
では、トリウム(モナザイト)はどのような国にあるのでしょう。
それではトリウム探索の航海へ!
いつもありがとうございます。

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改めて、問題意識を整理するために『次代を担う、エネルギー・資源』 トリウム原子力発2 核エネルギーを利用した発電システムを概観する2/2』より引用します。

5.トリウムという元素はどのくらいあるのだろう?
トリウムの埋蔵量はウランの3から4倍といわれ、ウランに比べれば遍在しています。、残念ながら日本にはありません。また、アメリカでは再調査の結果、従来の発表の6倍ほどあったと報道されています。これで、今のところアメリカが世界一の埋蔵量になります。
この状況では、エネルギー自給という課題は達成できませんが、将来日本が同盟を結べそうな、意識的な共通点がある国に埋蔵されているかどうかの判断も含めて次の課題になります。

★トリウムの確認埋蔵量はどれくらい?

米国のウラン資源保有量は世界第4位となってはいるが、コスト競争力のある資源がほとんどない。今、ロシアからも輸入している。 しかし、トリウム資源は豊富。 しかも、今年になって高品質トリウムの大鉱床がアイダホ州とモンタナ州に見つかり、2008年まで、16万トン(Th)とされていたトリウム確認埋蔵量が米地質調査所(USGS)の最新のトリウム鉱物年報(Thorium Minerals Yearbook)によると、91万5000トン(Th)に跳ね上がっている。世界第1位とされていたオーストラリアでも30万トン(Th)であったので、ごく最近になって、米国が第1位に躍り出たわけだ。資源ウォーズの世界地図 日経ビジネスオンライン2009年8月30日の記事より引用

「情報源によってばらつきがあるものの、確認埋蔵量に推定埋蔵量を加えた総量として全世界的に約400万トン程度は存在していると考えてよいだろう。現状はトリウムについての関心が低く、積極的な探索が行なわれていないことを考えると、実際の埋蔵量はもっと多いと推定でき、一般的にトリウムの資源量はウランの3~4倍近いといわれている」(「トリウム燃料サイクルの研究開発と動向」(東京大学名誉教授 山脇道夫他 日本原子力学会誌Vol47 2005))より引用。

次の表は、「トリウム燃料サイクルの研究開発と動向」(東京大学名誉教授 山脇道夫他 日本原子力学会誌Vol47 2005)の第5表「Th資源の存在状況(1)」の表におけるUS地質調査所(2007)のデータおよび以下のデータを組み合わせて作成しました。
・Wllson:D.J.Willsomによる代替核燃料トリウムの使用についての研究
・NEA/IAEA:経済協力開発機構原子力機関/国際原子力機関
・USBM:米国鉱山局
・UN, Energy Statistics Yearbook 2005
・IAEA REDBOOK2006
また、資源ウォーズの世界地図 日経ビジネスオンラインのアメリカがトリウム埋蔵量第一位となったという報道からアメリカの値を修正しました。
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作成した表では確認埋蔵量を比べています。確認埋蔵量とは、今どこに埋もれているか解かっている、掘り出そうと思えばすぐにでも掘れる「鉱物量」をさします。これに対し、推定埋蔵量とは文字通り推定の埋蔵量です。
この埋蔵量が、調査元によってけっこうばらつきがあります。例えば、ウランの確認埋蔵量は400万トンというデータもありますが、推定埋蔵量を合わせて400万トン(あるいは500万トン)だとするデータも存在します。
一方トリウムは、「推定埋蔵量も合わせて400万トンさらに探索すればウランの3~4倍」とのことですから1200万トンあるということになりますが、このような情報では曖昧ですので、いったん確認埋蔵量にしぼって比較しています。
確認埋蔵量は、ウランもトリウムも総量はほぼ同じです。産出量はウランではオーストラリア、トリウムではアメリカが突出しています。表を見る限りは、ウランに比べれば広範な範囲に存在していますが、構成比には偏りがあり、「遍在性が高い」と言えるかどうかは微妙なところです。
ところで、「確認埋蔵量」の定義でもふれましたが、あくまでその量は「鉱物」レベルで表わしているということです。ただし、本当にウランやトリウムの埋蔵量の単位が鉱物レベル単位(ウランならウラン鉱石、トリウムならモナザイトなど)なのかどうかがいろいろなサイトを見てもわかりません。
そこで某研究所に電話をかけて質問してみました。親切な担当の方が答えてくださいました(ありがとうございました!)。

「一般的に確認埋蔵量という言い方をするときは、鉱石の量です。なぜなら、その鉱石によってウランなどの含有量は変わりますし、鉱床において均一の含有量であるかの判定は事実上不可能だからです。」
「ウラン金属換算と言われる場合、含有量を加味した数字だと言われる方もありますが、正直調査元によってその計算方法はマチマチです。数字的にも大きく動きませんので、鉱石の量だと判断していただいて大して問題はないと思われます。」

確認埋蔵量が鉱石の量だとすれば、含有率の差もウランとトリウムの資源量に大きく影響します。
そこで、『次代を担う、エネルギー・資源』トリウム原子力発電3  核化学反応におけるウランとトリウムの比較』で作成されたデータをもとに、新たに表を作成してみました。

★つまり、同じ天然資源質量から取り出せるエネルギーは、天然ウランより天然トリウムのほうが、約150倍大きいということになります。また、これに、固体燃料型と液体燃料型の発電効率の差(推定値でしかありませんが)を加味すると、約200倍の差があることがわかります。
★他方、トリウムの資源埋蔵量はウランの3~4倍です。そうすると少なく見ても、ウランと同量で約150倍。資源量が3倍。両方の要素を考慮すると、150×3倍=450倍になります。つまり、ウランの450倍のエネルギーが取り出し可能なトリウムが、世界には埋蔵されていることになります。これは、安全性や日本には無いという問題はあるとしても、十分検討に値する課題だと思います。

この記事では、単純にトリウム埋蔵量はウランの3倍(という推定埋蔵量)で計算していますが、今回確認埋蔵量に修正しました。確認埋蔵量はウラン約220万トン、トリウム約280万トンですが、いったん両者の確認埋蔵量は同じだとして比べてみました。
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・確認埋蔵量は鉱石の量で同じ総量と仮定。
・含有量はウラン0.3~0.7%→0.5%、トリウム数~10%→5%と仮定。
・反応成分量はウランはウラン235が全て反応すると仮定し、トリウムは核スポでU233へ変化後としました。
確認埋蔵量はいったん同じだとして、トリウムの含有量はウランの約10倍です。さらに有効反応成分量を比べれば、トリウムはウランの約1260倍になります。つまり、ウランの1260倍のエネルギーが取り出し可能なトリウムが世界には埋蔵されていることになります。
もし、今後も原発が必要だとされるならば、圧倒的にトリウムは資源として優位だと言えます。ただし、トリウム資源が日本にはないということならば、貿易など各国との関係も課題となっていきます。
★日本にない。。。って本当?
モナザイトは花こう岩に含まれる鉱石です。そして火山国である日本には花こう岩は至るところに存在しています。
本当に日本にはモナザイトはないのでしょうか?
それで調べてみると実は日本にも「ないわけではない」ことがわかりました。
日本にもあるとすれば、新たな可能性が見えてきます。続きは次回にご期待ください。

List    投稿者 hirakawa | 2010-03-23 | Posted in E03.トリウム原子力発電3 Comments » 

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コメント3件

 雑草Z | 2011.03.07 23:09

 排出権取引制度は、はじめから胡散臭く、市場拡大が狙いだと感じていた人は多いと思いますが、この記事により、その具体的な内容がよくわかりました。さらに
>リーマン・ショック後の排出権取引の動向
を読んで
恐慌や不況など経済がダウンした時は、排出権取引は二酸化炭素の排出を促進するように働くと感じました。排出権を売る側の国は、削減努力して排出を減らした分を売っている訳でもなさそうですね。
おそらく、排出権取引では、世界全体の二酸化炭素排出量の削減効果はないでしょうね。それどころかもっと排出量が増えているかも知れません。何より、原発の放射性廃棄物など、二酸化炭素よりも遥かに環境汚染の酷いものを排出しています。本末転倒です。
 そもそも二酸化炭素排出量の計算もかなりいい加減なものがあるようです。(・・このあたり調べられましたらまた記事にして下さい。)・・しっかり算出など出来ないでしょう。
 排出権取引によって市場は拡大しましたが、環境は改善どころかますます悪化したことでしょう。

 tutinori | 2011.03.08 11:16

雑草Z様
いつもコメントありがとうございます。
>恐慌や不況など経済がダウンした時は、排出権取引は二酸化炭素の排出を促進するように働くと感じました。
まさにその通りだと思います。本当本末転倒ですよね。昨年、私達のチームでは原発の記事を書いていたので、放射性廃棄物の件は存じ上げています。
>そもそも二酸化炭素排出量の計算もかなりいい加減なものがあるようです。(・・このあたり調べられましたらまた記事にして下さい。)・・しっかり算出など出来ないでしょう。
これも今の近代科学では限界があるのだと感じています。今後、西洋を起源にした価値意識を背景にした近代科学の限界と市場原理の限界には密接な関係があるということを記事にしていきたいと思っていますので、今後も宜しくお願いします。

 Bruxelles | 2012.04.17 9:49

はじめまして
ー排出権取引というのは、『CO2削減という目的はあくまで二義的であり、本来の目的は「市場拡大」だということ』がはっきりしましたー
あからさまな、金融詐欺ですね。どうしてこんなものに、ひっかかるんでしょう、日本って、お人よし?
エネルギー問題と切り離せないので、厄介ですね。
以前ボランティアで、森林活動をしていました。森林大好き人間です。

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